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商品情報
内容
●そんなことにならないよう、医療現場でしっかりと、きちんと、脂肪乳剤を使うための手引書
●脂肪乳剤の歴史から、代謝と特徴、適切な投与と管理など、基本から実践までを詳述
●目次を見渡して自信がない項目があるなら、ぜひ読んでください
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序文
プロローグ
なぜ,日本では脂肪乳剤が使われないのか? その問題点と対策
「現在,短腸症ガイドラインを作っています。オメガベンやSMOFlipidの有用性が世界ではずいぶん前から示されていますが,日本では使えなくて困っています(世界中で今や使えないのは北朝鮮と日本だけです)。学会としても医薬品検討委員会を作って活動していますが,状況は遅々として進んでいません。脂肪製剤のマーケットが狭く,製造自体に手間もかかるので,企業の協力も望めません。このままではせっかく短腸症ガイドラインを作っても,オメガベンやSMOFlipidを推奨することもできません。何か良い方法があればご教授ください」とのメールをいただいた。
このメールに対し,私なりの考えで返信した。
「脂肪乳剤については,正直,どうすることもできないと思います。基本的に,日本の医師というか,医療全体の中で静脈栄養が非常に軽視されていることが問題です。TPNキット製剤を使えば静脈栄養は簡単に実施できる,そういう考えの医師ばかりになってしまっていることが問題です。TPNキット製剤の中身については考えていない,これがふつうの考え方になっています。さらに,脂肪乳剤は,必要最小限の使い方しかされていません。できるだけ使いたくない,そういう考え方の医師がほとんどです。かつて,4製剤販売されていた脂肪乳剤が,イントラリポスだけになったこと,これが,日本の現状です。なぜ,脂肪乳剤が4製剤から1製剤になったのか? 日本の医師が脂肪乳剤を使わないからです。その結果,製薬企業は,儲からないのだから,ビジネスとして成立しないのだから,と考えて脂肪乳剤の市場から撤退してしまったのです。ここで,海外で使われているオメガベンやSMOFlipidという新しい脂肪乳剤を導入しなければならないといっても,企業が参画するのは難しいのではないでしょうか。
とにかく,日本全体の静脈栄養のレベルが下がっていることがその根本的な原因ですから。だから,私は,この問題については,まず,日本の栄養管理のリーダーたる人たちが,もっときちんと静脈栄養を実施しよう,脂肪乳剤もちゃんと使おう,とアピールというか,啓発活動をしなければならないと思っています。いわゆる栄養関連の学会では,もはや静脈栄養についての議論はほとんどありません。あっても非常に低いレベルの議論しかできません。また,臨床医学関連の大きな学会でも,栄養管理が取り上げられることはめったにありません。栄養管理に関するセッションはなくなってしまっています。その状態で,『短腸症候群にはオメガベンが必要です,SMOFlipidも導入しなければなりません』と叫んでも,脂肪乳剤使用に関して前向きになるのは難しいと思います。私には力がないので申し訳ないのですが,やはり,この領域を引っ張る力がある大学の教授達が,『静脈栄養は大事だ,脂肪乳剤,今はイントラリポスだけだが,これをもっと使おう,次のステップのためにはそうしなければならない』と活動していくことが大事だと思います。そういう動きが活発になれば,企業も動き出すのではないかと思います」と返信した。
ここで,「私には力がないので申し訳ない」と言ってしまったが,長年,この臨床栄養,静脈栄養という領域に関わっている者として,何かできることはないか,と考えて,この本を執筆することにした。既にリタイアの立場になってはいるのだが,少しは貢献できるかもしれない,その程度の力しかないのであるが,と考えてのことである。小さな活動ではあっても,正しい脂肪乳剤の使い方についての考え方が普及すれば,脂肪乳剤の使用量が増え,新しい脂肪乳剤の導入をサポートできるのではないか,そう思いながら・・・。
しかし,実は,正直なところ,私は,脂肪乳剤の代謝に関して,何の業績もないし,もともと生化学は苦手である。脂肪乳剤を適正に投与するにはどうすればいいか,どのように投与すればいいのか,この問題に関しては,使用経験は豊富なので,それなりにデータもあるし,論文も書いている。第3章では脂肪乳剤の代謝についても記載しているが,正直,この章は削除するほうがいいのか,とも思った。しかし,私程度の生化学や代謝に関する知識しかない者がどのように理解しているかを示すことによって,逆に,理解しやすいと思っていただけるのかもしれない。そんな思いで,「恥ずかしながら」という気持ちを持ちながら書かせていただいた。第10章の,海外で使用されているさまざまな脂肪乳剤についても,私自身は使った経験はないので,正しい記載ができているのかという不安もある。しかし,これについては,今後,導入される場合にはレベルアップした説明がなされるはずだから,とりあえず,必要最小限の情報だけを提供させてもらおう,そんな気持ちで書かせていただいた。
さらに全体を読み返してみると,同じような内容を繰り返している部分もあることに気付いてしまった。しかし,その部分部分での理解度を高めるためには,この繰り返しもあってもいいのではないかと思い,そのまま掲載させていただくことにした。
要するに,本書の目的は,脂肪乳剤,本邦ではイントラリポスだけなのであるが,に対して興味をもってもらおう,現在の考え方をまとめておこう,である。私自身のデータとしてのものは少ないが,静脈栄養の適正な普及のために活動している者として,ある意味,使命感で執筆させていただいた。いろいろな批判があると思われるが,その批判が出ること自体,実は,本書の目的である。議論にならなければ進歩はない。この議論が脂肪乳剤を使用して,よりレベルアップした静脈栄養を実施しようという気持ちになってくれる,刺激になる,それを願っている。
目次
プロローグ:なぜ,日本では脂肪乳剤が使われないのか?その問題点と対策
第1章 脂肪乳剤に対する日本の医療者の考え方と脂肪乳剤の歴史
1 日本の栄養管理の現状と脂肪乳剤
2 現在の日本の脂肪乳剤使用における問題点
3 日本への静脈栄養導入の歴史
4 現在の日本の医療従事者の脂肪乳剤に対する考え方
5 脂肪乳剤開発の歴史
1 世界初の脂肪乳剤は日本で開発された
2 イントラリピッド:Intralipidの開発と日本の対応,日本製脂肪乳剤
6 脂肪乳剤の現状と,われわれがなすべきこと
第2章 日本では脂肪乳剤はどのくらい使われているのか?
1 脂肪乳剤に関する全国アンケート調査結果
2 脂肪乳剤の使用状況に関する調査結果
3 調査結果からの,本邦における脂肪乳剤使用状況についての推察
第3章 脂肪乳剤とは(代謝,製剤の特徴)
1 脂肪乳剤とは
2 人工脂肪粒子の血中代謝
1 トリグリセリド値が異常高値,なんと850mg/dL!
2 脂肪乳剤の粒子は網内系細胞に取り込まれるのか? 加水分解されるのか?
3 人工脂肪粒子はカイロミクロンと同じように血管内で代謝されるのか?
4 日本人における脂肪乳剤の安全な投与速度の決定
3 卵黄リン脂質の代謝
4 脂肪乳剤中のリン
5 脂肪乳剤中の大豆タンパク
6 脂肪乳剤中のビタミンK
7 脂肪乳剤中のフィトステロール
8 脂肪乳剤中のビタミンE
9 脂肪乳剤使用上の問題点 -添付文書から考察する
第4章 脂肪乳剤を投与する目的
1 必須脂肪酸欠乏症(essential fatty acid deficiency:EFAD)予防のため
2 有効なエネルギー源であるから
3 脂肪肝(fatty liver)の抑制
4 NPE/N比の調整
5 CO2発生量の低減
6 高血糖の予防
7 末梢静脈栄養における静脈炎の予防
第5章 脂肪乳剤の投与方法・管理方法
1 脂肪乳剤の投与速度
2 脂肪乳剤はどのくらいの量まで投与できるのか?
3 10%製剤と20%製剤,どちらを選択する?
4 投与経路の選択
5 脂肪乳剤をTPNラインに側注の形で,TPN輸液と並列で投与できることを証明した実験について
6 脂肪乳剤をTPN輸液投与ラインに側注する場合,両者はほとんど分離して流れる
7 参考:過去の脂肪乳剤の投与方法について
8 さまざまな薬剤とイントラリポスとの配合変化のデータが必要
9 脂肪乳剤の投与経路について
1 DEHP〔di-(2-ethylhexyl) phthalate;フタル酸ジ-(2-エチルヘキシル) 〕
2 ポリカーボネート
第6章 脂肪乳剤投与と感染
1 脂肪乳剤を投与した場合にはカテーテル関連血流感染症発生頻度が高い?
2 脂肪乳剤中での微生物増殖に関する報告
3 脂肪乳剤中での微生物増殖に関する実験
4 脂肪乳剤の投与に使用する輸液ラインの交換頻度について
第7章 長期間、CVポートから脂肪乳剤を投与すると,カテーテルが閉塞する恐れがある!
1 長期CVポート使用症例における脂肪乳剤関連閉塞物の解析
2 脂肪乳剤に関連した閉塞物が形成されるメカニズムについて:閉塞症例の解析より
3 ヘパリンロックが脂肪乳剤を凝集させてCVポート閉塞の要因となる!
4 薬液残留性が低い構造のCVポートを開発する(CVポート内室を薬液残留性が低い構造にする)
1 市販されているCVポートの内室形状の分析
2 ポート内室の中を薬液が流れる際の薬液の残留性についてシミュレーションし,薬液残留性の違いを予測する
3 ポート内室の形状による薬液の残留性を実験的に評価する
4 まとめ
5 新しいCVポートの開発
第8章 在宅における脂肪乳剤の投与
1 2014年4月 外来で脂肪乳剤を処方できなくなった!
2 2016年4月 外来で脂肪乳剤を処方できるようになった!
3 日本在宅医療学会と大塚製薬工場の対応
4 3-in-1製剤のミキシッドを在宅で使えるようにしてほしい
5 在宅栄養管理においても脂肪乳剤は投与するべきである
6 在宅での脂肪乳剤の投与方法
第9章 日本における3-in-1製剤
1 TPN用3-in-1バッグ製剤(ミキシッドL輸液/H輸液:大塚製薬工場)
2 PPN用3-in-1バッグ製剤:アミノ酸・糖・電解質・脂肪・水溶性ビタミン液(エネフリード輸液:大塚製薬工場)
第10章 海外で使用されている脂肪乳剤と日本への導入
1 海外で使用されている脂肪乳剤とその特徴
1 大豆油製剤 イントラリピッド
2 MCT配合製剤 Lipofundin
3 オリーブ油配合製剤 ClinOleic
4 魚油配合製剤 Omegaven
5 4種類油配合製剤 SMOFlipid
2 海外で使用されている脂肪乳剤を本邦にも導入するべきである
第11章 脂肪乳剤の具体的使い方
慎重投与症例に対する脂肪乳剤投与
具体的な脂肪乳剤投与方法・管理方法
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書籍情報
- ISBN:9784862702517
- ページ数:176頁
- 書籍発行日:2023年1月
- 電子版発売日:2023年2月10日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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