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- ゼン先生の栄養管理講座Ⅲ
商品情報
内容
● 正しい臨床栄養法の普及と、本物の栄養管理のプロ(Medical Nutritionist)の育成に向けた著者の活動記録を、紀行文と会話形式でまとめたユニークな読み物
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序文
ゼン先生の栄養管理講座 Ⅲ
発刊にあたって
大阪大学国際医工情報センター 栄養ディバイス未来医工学共同研究部門で仕事をさせてもらうようになって10年が経過しました。2013年4月から2023年3月までです。長い間、お世話になりました。
このゼン先生の栄養管理講座は、2014年1月に第1回をホームページに掲載しています。以来、109回、毎月、書き続けました。第1回から第40回までをⅠとして2017年12月に、その後の第76回までをⅡとして2021年4月に本としてまとめました。今回は、2020年5月(第77回)から2023年1月(第109回)の約3年間の記事をⅢとしてまとめました。研究部門の活動が終わるので、活動内容を整理しなければならないのです。
この本にまとめたのは、実際には、2020年4月から2022年12月のことを書いた記事です。2020年2月からは新型コロナの蔓延状態が続いているので、コロナ禍の約3年間の記事です。活動がものすごく制限され、出かける機会も減ったので、全国の友人から写真を送ってもらったり、過去の写真を引っ張り出したりしながらなんとか記事を書き続けました。学会や研究会、講演会など、活動内容もガラッと変わりました。出かけることなくオンライン開催、ハイブリット開催、となりました。しかし、その中で、講演、参加・開催した学術集会、それに関連した話題、いわゆる世間話などを書かせていただきました。相変わらずの小越先生との会話です。栄養管理に関して、世の中全体を見回しながらテーマを探し、小越先生に説明し、いろいろ諭される、そんな感じの会話を続けました。
この3年間に本を5冊出版しました。「静脈経腸栄養ナビゲータ」「PICCナビゲータ」「脂肪乳剤ナビゲータ」、そして「漢字『栄養』のルーツをたどって」と「栄医養伝:静脈経腸栄養開発物語」です。学会や講演会が減った分の時間を使って書いた、と思われるかもしれませんが、出かけることはなくてもオンラインでの講演などはありましたので、そうではありません。どれも、出版したくてたまらなかった、出版する必要があると考えていた内容です。本という形で残せたことは、よかったのではないかと思っています。
2000年頃からNST活動が日本に広まりました。全国の多くの病院にNSTが設立されました。ある意味、ブームになりました。その結果、2010年には診療報酬として「栄養サポートチーム加算」が認められました。日本静脈経腸栄養学会などの努力の成果だと思います。しかし、加算が認められることにより、加算の診療報酬として申請できる症例数を増やす、その方向に動いた部分があるのではないか、と考えるようになりました。こういう問題についても小越先生と会話しました。さらに、考えるべきなのは、NSTの普及に伴って、NSTの活動内容、それに伴う日本全体における栄養管理の内容、それは、レベルアップしているのか、です。ここを真摯に反省するべきだと思っています。
短腸症候群症例のHPNは、長期留置用のCVポートやブロビアックカテーテルを用いますが、カテーテル感染を繰り返す症例が多く、何年も、何十年も合併症を起こすことなく管理できる施設は多くありません。さらに、短腸症候群に対する新薬の登場により、HPNが不要になった症例も出てきているそうです。しかし、HPNが必要な症例はまだまだ多いのは間違いありません。この考え方により、逆に、適切なCVポートやブロビアックカテーテルの管理ができる施設が減るような気がします。注意が必要です。
入院患者さんに対して適切な栄養管理ができているでしょうか。カテーテル感染を恐れるあまり、静脈栄養は実施しないほうがいい、と考えて、TPNの実施が控えられるようになっていないでしょうか。PPN製剤は、ダブルバッグ方式になり、静脈炎のリスクを下げるためにpHを7.4に近くする、滴定酸度を下げる、そんな工夫が行われています。優秀な製剤になっていると評価しています。しかし、一方、患者に優しいPPN輸液は微生物にも優しくなったのか、微生物で汚染すると急速に増殖します。この事実が明らかになった結果、PPNは実施しないほうがいい、電解質輸液だけでいい、そんな傾向が出てきています。この輸液の性質を理解したら、それに対策を講じながら積極的にPPNを実施する、これが重要なはずです。しかし現実は、PPNを実施すれば栄養状態を維持・改善させる可能性があるのに、電解質輸液だけを投与して栄養状態を低下させている症例が増えています。
脂肪乳剤? 必須脂肪酸欠乏症なんてなかなか発生しないんだから投与する必要はない、面倒だ、そういう傾向があります。そういう傾向に対して「脂肪乳剤ナビゲータ」を出版しました。
胃瘻は、単なる延命措置だ、胃瘻を造設すると食事が食べられなくなる、そんな誤解のために、経鼻胃管で長期間、苦痛に耐えている患者さんが増えています。胃瘻バッシングで胃瘻を造設できないなら、診療報酬が高いCVポートを使えばよい、という考えでCVポート留置症例が増えています。年間何百例とCVポートを入れている施設も出現しています。胃瘻の代わりのCVポートが非常に多いのです。そのCVポートの管理は適切でしょうか。合併症を起こして短期間で入れ換えたりしていないでしょうか。輸液処方としては、TPN輸液を投与しているのでしょうか。エネルギー量やアミノ酸量を計算して処方しているのでしょうか。微量栄養素の必要量を考えているでしょうか。キット製剤を、中身を考えることなく処方しているだけなのではないでしょうか。
経腸栄養法も普及しています。しかし、経腸栄養剤の内容や投与量を考えて決めているのでしょうか。画一的になっていないでしょうか。半固形状流動食やとろみ状流動食が使われるようになりました。本来、胃瘻を用いた経腸栄養法において、合併症を予防する、生理的な消化管運動を回復させる、などが目的だったのに、現状は、投与時間を短縮する、に主眼が置かれています。適切な経腸栄養を実施することにより、栄養状態を維持・改善し、同時にQOLも維持・改善するが本来の栄養管理の目的のはずです。
コロナ禍のために、臨床栄養に対する関心が低下しているのではないかと危惧しています。日本全体として、栄養管理、特に、静脈栄養や経腸栄養に対する関心が低下しているように感じています。経口栄養には力が入っているようです。しかし、この傾向により、適正な栄養管理の恩恵を受けられない患者さんが増えているように思います。静脈栄養や経腸栄養によってサポートしながら、栄養状態を維持しながら、経口栄養、食事が増えるのを待つ、それが近代臨床栄養のはずです。相変わらず、50年以上前の医療、栄養管理として「がんばって食べないと元気になりませんよ」です。原因は、医療者の栄養に対する関心が低いことです。
またまた、愚痴を書いてしまいました。本書の中では、私のその愚痴に対して、小越先生が「まあまあ」という感じで受け止めてくださったり、こうしよう、と次の手を考えてくださったりします。時間がある時に手に取って読んでいただき、この会話の中から、栄養管理は大事だと、認識、あるいは再認識していただきたいと思っています。
新型コロナ禍のために、本当に世の中が変わりました。まもなく、感染症法上の5類の位置づけになり、活動制限も緩和されます。しかし、学会や研究会、講演会やセミナーは、オンラインやハイブリッドのままになる可能性も高いと思います。対面での議論がしたいんだけどなあ、と思いながら、でも、利便性なども考えたら・・・といろいろ考えています。コロナ禍で、第11回と第12回の静脈経腸栄養管理指導者協議会(リーダーズ)の学術集会を、それぞれ、2022年3月に熊本市で、2022年9月に吹田市(千里金蘭大学)で開催しました。ハイブリッド開催としましたが、会場での議論沸騰、やはり、現地開催がいい、と実感しました。第9回と第10回の血管内留置カテーテル管理研究会もしかり、2022年8月に開催した「Medical Nutritionistセミナー」もそうでした。今後も、この活動は続けていきたいと思っています。
10年間の、当研究部門の活動にご支援いただき、ありがとうございました。勝手な意見を吐いているだけじゃないかと評されているかもしれませんが、少しは、この臨床栄養の領域に貢献できたのではないかと思っています。
この4月からは、千里金蘭大学栄養学部で特別教授として働かせていただきます。もう少し、臨床栄養の領域で仕事をさせていただきますので、今後ともよろしくお願いします。10年間、ありがとうございました。
令和5年3月
大阪大学 国際医工情報センター
栄養ディバイス未来医工学共同研究部門
特任教授 井上善文
目次
第77回 『新型コロナウイルスで大変な時でも、本来の臨床栄養の重要性を見失わないようにしなければ』
第78回 『コロナ対策として医療用物資が不足:再使用できるものは再使用すべきです<経腸栄養投与経路>』
第79回 『本気でONSをやるなら、もっと正確に食事摂取量を評価しなければならないのでは?』
第80回 『管理栄養士の仕事は傷病者の療養のための栄養管理が主なんでしょう?』
第81回 『ケーブルのない、本体に画面が組み込まれたポケットエコー、IPエコーの開発秘話』
第82回 『HPN患者は増えたけど、HPNの管理レベルは下がっている、重大な問題です』
第83回 『経腸ライン、そろそろENFitへ切り替えなくてはなりません』
第84回 『PICCの感染率:鎖骨下と上腕内側部の体表温の差はわずか0.43℃』
第85回 『2021年を臨床栄養のRe-STARTにしよう:静脈経腸栄養ナビゲータ出版!』
第86回 『リーダーズとしては、地味ですが、いろいろ学術活動をしています』
第87回 『経口栄養の本当の意義を考えながら栄養管理をしましょう』
第88回 『NSTは、栄養管理のレベルアップのために、もっともっと静脈栄養に力を入れるべきです』
第89回 『胃瘻バッシングへの対応は栄養管理のレベルアップ』
第90回 『胃瘻の代わりのCVポートも、真の適応を考えてください』
第91回 『HPNを長期間実施するには、10年先まで考えた管理システムが重要!』
第92回 『適正な栄養管理を実施するためには、適正な静脈栄養が実施できるようにならなくては!』
第93回 『経腸ラインの複数回使用が可能だと言えるデータを論文にしました』
第94回 『エンフィット:ISO80369-3の適応は、液体と気体だけ、半固形やミキサー食は適応外!』
第95回 『もっとイントラリポスを使ったら新しい脂肪乳剤が使えるようになる!』
第96回 『PICC:使いすぎ!適応を本気で考える時が来ました』
第97回 『2022年も適正な栄養管理の普及のためにがんばらなくては!栄医養!』
第98回 『栄養管理の現場では看護師さんの役割がものすごく大きいんです』
第99回 『医薬品の経腸栄養剤、静脈栄養剤の薬価を上げないと、臨床栄養はどんどん衰退します』
第100回 『日本の臨床栄養の歴史:食べられない患者さんに対する栄養管理として発展してきたのです』
第101回 『脂肪乳剤の本を執筆したので出版したいのですが・・・』
第102回 『ボランティア的NST活動をしていた頃の気持ちを思い出そう』
第103回 『経腸栄養ライン接続部:旧規格Lフィットはこれからも使えます』
第104回 『適正な栄養管理の普及には臨床栄養教育の充実が基本、特に医師!』
第105回 『クローン病・HPNの雅史くん、長い間ご苦労さまでしたね』
第106回 『イントラリポスの添付文書:禁忌は本当に禁忌?』
第107回 『NSTの起源は1968年、ダドリック先生のペンシルベニア大学です』
第108回 『栄養管理について、管理栄養士は視点を変える必要があると思う』
第109回 『経腸容器、経腸ラインは単回使用にしなければならない?』
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書籍情報
- ISBN:9784862702524
- ページ数:276頁
- 書籍発行日:2023年3月
- 電子版発売日:2023年3月31日
- 判:A4判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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