ワンランク上の 令和の医学常識 —医療リテラシーを高めるために—

  • ページ数 : 300頁
  • 書籍発行日 : 2023年7月
  • 電子版発売日 : 2023年8月1日
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商品情報

内容



巷に氾濫している健康に関する情報は玉石混交であり、自分に必要な情報を見極めて最善の選択をすることが必要です。本書はこの知識の拠り所となるもので、正しい知識を習得することで健康な生活を送ることができます。

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序文

はじめに

昨今は、いろいろな数多くの医学関連の情報が普段は医療に関わりのない一般市民の耳目に届くようになっている。普段は医療に関係なく、また関心もなくても、体調が悪かったり、インフルエンザの流行期が近づいてきたり、最近のように新型コロナウイルスによる感染症のような恐ろしげな感染症が身近で流行したりするといやでも関心を持たざるを得ない。さらには、高齢化が進んでだれもが、言われてみれば少し身体の調子がすぐれないという気がしてくるようなことも多くなる。そして、体調不良感をあおるような文言のもとに、いわゆる健康食品やサプリメントのコマーシャルがテレビの画面を賑わし、新聞の一面を占めるような大きな広告がいやでも目に入るこのご時世である。コマーシャル番組や新聞広告の中には、というよりもそれらのほとんどが根拠のはっきりしない効能を謳うたっている。世の中に出回っているこれらの物を一つずつ取り上げていくときりがない。どうすればよいのだろうか。一般市民自身が判断する能力を身につけるしかない。その意味で、今ほど一般市民といえどもある程度の医療・医学の知識を持つ、あるいは知識がなくとも謳い文句の真偽を見極めるだけの思考力を持つこと、要するにリテラシーを高めることが求められる時代はない。

医学概論という言葉があるが、この言葉は使う人によってさまざまな意味合いを持っている。「医学全般を大きく見渡す総論」、「医学の入門的側面の記述」、「医学の歴史的側面の記述」、「医の倫理的側面に関する議論」、「医学に関する哲学」などが意味され、医学部における講義もこれらの1つあるいはいくつかを取り上げていることが多い。ある医学生向きの医学概論の教科書には、医学概論とは、「医学の本質を問い直す学問」と書かれている。そして、「概論」にはただ単に概要というだけではなく、「物事の本質を問い直す」というもう1つの意味があるとも書かれている。この、もう1つの意味であるならば、医学生のみならず、医学概論は一般市民がヘルスリテラシー(あるいは、医療リテラシー)を高めるためにも必要なものであろう。ただしその場合、狭い意味での医学知識がなくても理解できるものである必要がある。

本書の目的は、巷に氾濫している医療情報を正しく読み取るために必要な知識を紹介し、自分で判断できる能力を身につけることができるようにすることである。

医療リテラシーを身につけるには、まず、病気とは何かを理解することが必要である。

第I章では、病気とは何か、診断、治療について、そして、病気の予防としての環境整備の重要性、体質の改善・強化の大切さ、予防接種、早期発見・早期治療について述べる。基礎知識として西洋医学と東洋医学の違い、民間薬、健康食品、サプリメントについても言及する。

第Ⅱ章では、人体の仕組みと働きについて述べる。医療情報が対象としている人体の仕組み、各臓器の働きを知っておくことで、その医療情報の真偽を見分ける際の助けとなる。

第Ⅲ章では、医療の仕組みと医療制度について述べる。医療の仕組みを知っておくことで、医学博士の肩書は診療の質には関係がないことや、専門家と称する人の信頼性も理解できるであろう。

最後の章(第Ⅳ章)では、リテラシーを身につけるコツを紹介する。

本書が、読者の医療情報を正しく理解するための基礎となり、読者の生活の質の維持向上のために役立つことができれば望外の喜びである。


目次

I.病気と医療のリテラシー

1.病気とは何か

(1)「病気」は、どう考えられてきたか

(1)「病気」は、どう考えられてきたか

(2)なぜ病気になるのか

(3)ヘルスプロモーションという考え方が重要

2.診断とは、健康状態や病状を判断すること

3.治療とは、病気の状態を元の健康な状態に戻すこと

(1)治療の目的・目標

(2)治療には4つの原則と形式がある

(2)治療には4つの原則と形式がある

4.予防にはどんな方法があるか

(1)清潔な水の供給をはじめとする環境整備の重要性

(2)体質の改善・強化の大切さ

(3)予防接種は有効なのか

(4)早期発見・早期治療 (疾患スクリーニング)

5.知っておきたい「基礎知識」としての医療リテラシー

(1)歴史から見た人類と医療

(1)歴史から見た人類と医療

(2)西洋医学と東洋医学の大きな違い

(3)「薬剤」は何がどのようにして「薬剤」となったか

(4)民間薬、健康食品、サプリメント

II.人体の仕組みと働きについてのリテラシー

1.体内を一定に保つには、エネルギーが必要

2.エネルギーは、グルコースを酸素に結合させて獲得する

3.酸素は、血流によって、脳や心臓などの臓器に運ばれる

4.消化管の働き

(1)消化と吸収の仕組み

(1)消化と吸収の仕組み

(2)腸内は細菌だらけ

(3)便をじっくりと観察してみよう

5.呼吸器の働き

6.循環器の働き

7.腎臓・泌尿器系の働き

8.肝臓の働き

(1)化学工場としての肝臓

(1)化学工場としての肝臓

(2)貯蔵庫としての肝臓

(3)肝炎と肝炎ウイルス

9.膵臓の働き

(1)膵臓の外分泌腺

(2)膵臓の内分泌腺

10.運動器の働き

11.血液の働き

(1)有形成分は、どこで作られるか

(2)液性成分 (血漿)には何があり、何をしているか

12.免疫の働き

13.内分泌の働き

(1)間脳下垂体系によるホメオスターシスの維持

(1)間脳下垂体系によるホメオスターシスの維持

(2)甲状腺―放射線と甲状腺がんとの関係―

(3)副腎はデュアル臓器―髄質と皮質はすべてが異なる―

(4)糖尿病は、失明や腎不全、末梢神経障害の原因ともなる

(5)副甲状腺は、カルシウム代謝に関係するホルモンを分泌する

(6)その他の内分泌腺と存在部位

14.神経系は、皮膚と同じ起源を持つ

(1)神経細胞の構造と機能は、コンピュータに似ている

(2)神経系には、3つの「系」がある

(3)脳は、領域によって機能分担している

(4)脳の発達は、生まれてから1000日までが鍵

(5)脳は、酸素やエネルギーの大食らい臓器

(6)末梢神経は、機能的に2つに分けられる

(6)末梢神経は、機能的に2つに分けられる

(7)脳神経は、頭頸部の運動や感覚を扱う

(8)感覚の仕組み

(9)認知症―高齢者の5人に1人―

(10)依存症と快感は、記憶と深い関係にある

15.水と電解質は、浮腫や高血圧の原因として重要

16.がんは、死亡原因の第1位だが、高齢化と関係している

(1)どのようにして「がん」はできるのか

(2)組織や器官の形成のされ方 (発生学)

(3)細胞の複製―複製の失敗は、「がん」の始まりだが、「進化」のためには必要―

(4)複製の間違いの処理の失敗が「がん」の始まり

(5)がんに関する遺伝子は、「がん家系」や「若年性のがん」に関係している

(5)がんに関する遺伝子は、「がん家系」や「若年性のがん」に関係している

(6)がんを発生しやすい体質は、遺伝する

(7)がんの発生要因―特に小児がんについて―

17.中毒性疾患と公害を考える

(1)公害は、慢性の中毒性疾患

(2)慢性毒性では、生物濃縮からの健康被害も起こる

(3)有名な中毒事件・公害を知っておこう

(4)農薬中毒―DDTから蚊帳へ―

(5)生物毒 (微生物以外の有毒な生物)も知っておこう

(5)生物毒 (微生物以外の有毒な生物)も知っておこう

18.地球温暖化は、新興感染症に影響を与えている

III.医療の仕組みと医療制度を考える

1.「医学」と「医療」の関係は、「科学」と「技術」の関係

(1)「医学博士」の肩書きは、診療の質には関係ない

(2)「医学」、「医療」と「医術」

(3)「医療法」と「医療現場」の乖離が問題

(4)社会的な施策としての「社会保障」

2.さまざまな医療職で構成された「チーム医療」

(1)社会生活における心の取り扱いの重要性

(2)医療における専門分化の利点と注意点

(3)医療供給体制と医療経済―医療は社会的共通資本―

(3)医療供給体制と医療経済―医療は社会的共通資本―

IV.医療リテラシーを身につけよう

メモ:衛生仮説と旧友仮説

・ヘルスプロモーションに関連する国際的な宣言

・プラシーボ効果 (偽薬効果)およびノシーボ効果

・3大感染症に対する国際支援

・新しい学問としての疫学

・肥満度 (body mass index = BMI)の計算と必要エネルギーの計算

・DOHaD = Developmental Origins of Health and Disease

・睡眠障害

・睡眠負債

・副作用、副反応、有害事象

・がん検診における2つのバイアス 51

・医療技術の評価

・WHOによる伝統的中国医学の公認

・システマティック・レビュー

・あるアミノ酸サプリ

・果糖の代謝過程から見る果物の利点

・エネルギーの産生と保存の過程

・肺の表面活性剤としてのサーファクタント

・たばこの煙には、高濃度の一酸化炭素が含まれている

・腎臓で尿が作られる仕組みと尿崩症

・アルコールの運命

・2種類のビリルビン

・骨の強度

・鉄を多く含む食材は

・チアノーゼがあっても必ずしも酸欠ではない!

・酸素の毒性―有酸素運動は有害か

・下垂体の発生を知ると病気の症状が分かる

・先端肥大症と巨人症との関係

・失楽園仮説

・水と電解質の恒常性維持は、腎臓の大切な機能の1つである

・遺伝の「優性」と「劣性」

・発がんの2ヒット説

・薬害・公害の発生要因と科学者の態度

・3時間待ちの3分診察の本質

おわりに

参考文献



索引

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書籍情報

  • ISBN:9784883784554
  • ページ数:300頁
  • 書籍発行日:2023年7月
  • 電子版発売日:2023年8月1日
  • 判:四六判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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