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基礎から学ぶ 胃癌の病理
塚本 徹哉 (著) / 日本メディカルセンター
商品情報
内容
胃癌は複数の遺伝子異常の積み重ねで起こることが分かってきているが,実際にその診断をする場合,Helicobacter pylori感染を背景に,慢性萎縮性胃炎,腸上皮化生,さらには胃癌,と様々な情報を判別しなければならない.そのためには,その対照となる正常胃粘膜の腺上皮の構築,細胞分化,増殖を正しく理解し,そこからのずれを質的量的に把握し,異型性や異型度の判定をするということが必要になってくる.本書は,自分が病理を始めて右往左往していたころを思い出しながら,臨床の先生方や若い病理の先生にも,胃粘膜の正常構造・機能・分化,そして,そこから徐々にずれていく様々の胃の病変の成り立ちを分かって頂けるようにとの思いで綴った.
序文
序文
胃癌は複数の遺伝子異常の積み重ねで起こることがわかってきているが,実際にその診断をする場合,Helicobacter pylori 感染を背景に,慢性萎縮性胃炎,腸上皮化生,さらには胃癌,とさまざまな情報を判別しなければならない.そのためには,その対照となる正常胃粘膜の腺上皮の構築,細胞分化,増殖を正しく理解し,そこからのずれを質的量的に把握し,異型性や異型度の判定をするということが必要になってくる.
本書は,日本メディカルセンター『臨牀消化器内科』2013 年1 月~ 6 月号に,「基礎から学ぶ胃癌の病理」と題して執筆した連載をベースにしている.当時,実験病理とともに診断にも力を入れなければと思っていた時期であった.そんな折,和歌山県立医科大学第二内科教授 一瀬雅夫先生より,連載のお話,さらに書籍化のお話をいただきお引き受けした次第である.
本書は,自分が病理を始めて右往左往していたころを思い出しながら,臨床の先生方や若い病理の先生にも,胃粘膜の正常構造・機能・分化,そして,そこから徐々にずれていくさまざまの胃の病変の成り立ちをわかっていただけるようにとの思いで綴ったが,果たしてその目的が達せられたかどうか,ご意見いただければ幸いである.どこを開いてもそこだけで十分な情報が得られるようにしたため,いろいろな所に若干重複があるがご了承いただきたい.
自分のやってきたことを振り返ると,分子生物学,動物実験,実験病理,乳癌,肺癌,胃癌,大腸癌など,癌の研究というところでは共通項はあったが,どちらかというと行き当たりばったりでいろいろなことをやってきたような気がしていた.しかし,今,ヒトの病理診断をやっていると,ようやく断片的な自分の経験が繋がってきたような心境である.何のためにこの研究をやっているのか.それが顕微鏡の先に見えているのが病理のいいところである.病理診断と研究は異質のもののように思われる方も多いと思うが,研究をやるか診断をやるかの二者択一ではないと思っている.免疫染色や遺伝子解析をして「こんな遺伝子変異が○○癌のリスクファクターです」というのも必要なことだが,日々の病理診断で「こんなことがまだわかっていないんだ」とか「この病気のこの所見は実はこうなんじゃないか」といろいろ思い巡らすことがすでに研究の始まりであると思っている.まずは初めの一歩を踏み出して,究極的には研究したことを臨床に返していけるといいなと思う次第である.
一瀬雅夫先生には,常日頃からいつも励ましていただき,臨床的側面から胃癌発生や予防について教えていただいている.本書が形になったのも一重に一瀬先生のお陰である.愛知県がんセンター研究所時代,立松正衞先生(元 愛知県がんセンター研究所副所長・同腫瘍病理学部部長,現 日本バイオアッセイ研究センター客員研究員)には,本書の基礎となるようなヒトと動物の胃癌の実験病理について基礎から教えていただいた.黒田 誠先生(藤田保健衛生大学医学部病理診断科Ⅰ教授)には,実際の病理診断では病理所見だけでなく臨床的側面の重要性を丁寧に教えていただいた.坂倉照妤先生(三重大学大学院医学系研究科修復再生病理学分野名誉教授)は,大学時代から自分の実験病理研究の師と思っているがなかなかそこには辿り着けない.連載時には,渡辺英伸先生(ピーシーエルジャパン病理・細胞診センター特別顧問,新潟大学名誉教授)にVienna Classification やGroup 分類改訂の経緯や解釈に関してご教授いただいた.
日本メディカルセンター『臨牀消化器内科』編集室の澤村玲子さん,有田敏伸さんには言葉では言い尽くせないほどお世話になった.とくに澤村さんには,何度「遅れてすみません」と言ったことか,である.
お世話になった皆様にこの場を借りて心よりお礼申し上げます.
2015年4月
藤田保健衛生大学医学部病理診断科Ⅰ
塚本 徹哉
目次
1. 胃粘膜の正常構造と細胞分化
解剖/胃粘膜の構造/胃底腺/幽門腺/神経内分泌細胞/付録:各種分子の発現パターン
2. Helicobacter pylori感染,慢性胃炎,腸上皮化生
H. pyloriとその棲息環境/慢性胃炎/慢性萎縮性胃炎と腸上皮化生/胃炎の評価
3. 胃生検組織診断分類(Group分類)の概要
胃生検組織診断分類(Group分類)-13版から14版への改訂のポイント/Group X/Group 1/Group 2/Group 3/Group 4/Group 5
4. 胃癌(腫瘍)の肉眼型分類,深達度
胃癌の肉眼型分類/胃癌の深達度
5.胃生検診断フローチャート
腫瘍細胞量は十分か?/腺管の異型性の判定/細胞の異型性の判定/間質を見る
6.Group分類別の病理学的鑑別の実際
(1)過形成性および再生性病変(Group1)
ポリープの肉眼分類/ポリープの組織分類/再生異型/その他
(2)腺腫性病変(Group3)
腸型腺腫および腺癌/胃型腺腫
(3)癌確定診断に至る過程(Group 2,Group 4)
癌の診断に至る過程:初回Group2の場合/初回Group3の場合/初回Group4の場合
(4)胃癌の組織診断と免疫組織学的分類(Group 5)
胃癌の病理形態的分類/構成する細胞の分化を元にした胃癌の分類/胃・腸分化マーカー以外の免疫組織学的分類
コラム
民族の文化と細胞分化/ピロリ菌かゴミか?/Viennna Classification/縦切りと輪切り/外か中か?
Side memo
HE染色での色調/PAS染色/免疫染色の色素/細胞分化を規定する転写因子/胃隆起性病変の肉眼分類/中間フィラメント/欧米の胃癌の分類/HER2neu/Epstein-Barr Virus(EBV)
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書籍情報
- ISBN:9784888759144
- ページ数:136頁
- 書籍発行日:2015年5月
- 電子版発売日:2018年11月23日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:2
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