若年性特発性関節炎 カナキヌマブ治療の理論と実際

  • ページ数 : 108頁
  • 書籍発行日 : 2021年5月
  • 電子版発売日 : 2021年7月21日
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商品情報

内容

実際にこれまでカナキヌマブを使用してきた小児リウマチ医の先生方にご自身の経験した症例を提示していただき,その使い方・注意点を具体的かつコンパクトに纏めた症例集。

序文

序文

若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis:JIA)は,16歳未満に発症し,少なくとも6週間以上持続する,原因不明の慢性関節炎である。小児リウマチ性疾患のなかで最も多くみられる疾患だが,関節炎が進行すると不可逆的な関節破壊をきたすことになるため,早期の炎症鎮静化が必要となる。

JIA の診断・治療・管理において,2007年に『若年性特発性関節炎初期診療の手引き』が公表され,続いて『若年性特発性関節炎初期診療の手引き2015』が発刊されたことにより,一般小児科医あるいは内科医,整形外科医に対してより具体的なJIA の初期診療の内容が示され,全国的に標準的な診療が施されることになった。

一方,初期治療を受けたなかでも治療反応性に乏しい例,薬剤の副作用などにより十分な薬効が得られない例に対しては,次の段階の治療が必要となる。生物学的製剤による治療がそれに該当する。これまで全身型JIA(systemicJIA:sJIA)に対しては,2008年にトシリズマブ(商品名:アクテムラⓇ点滴静注用)が登場して以来10年が経過して,漸く欧米で標準的に使用されているカナキヌマブ(CAN,商品名:イラリスⓇ)が本邦でも承認となった。

CAN は,炎症性サイトカインの1つであるインターロイキン(IL)-1βに対する遺伝子組換えヒトIgG1モノクローナル抗体製剤であり,IL-1βに結合し,その活性を中和することで炎症を抑制する。CAN 皮下注製剤は2020年3月時点で世界約70ヵ国で承認されており,本邦においても2011年にクリオピリン関連周期性症候群,2016年には高IgD 症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症),TNF 受容体関連周期性症候群および既存治療で効果不十分な家族性地中海熱の治療薬として承認され,そしてついに2018年7月に既存治療で効果不十分なsJIA に対する適応を取得するに至った。

臨床の場でCAN が使用できるようになり,どのような症例に使ったほうがよいか,どのタイミングで導入すべきなのか,どのような点に気を付けて使っていくべきか,マクロファージ活性化症候群のときに使用できるのかなど,さまざまなご質問をいただく機会が多くなってきた。

そこで,この度CAN に対するさまざまなご質問に答えるべく,本書『若年性特発性関節炎 カナキヌマブ治療の理論と実際』を発刊することとなった。実際にこれまでCAN を使用してきた小児リウマチ医の先生方に,ご自身の経験した症例を提示していただき,その使い方・注意点を具体的かつコンパクトに纏めた症例集である。ご使用を躊躇され,あと一歩が踏み出せずにいる読者の皆さんに勇気を与えられる一冊になっていると私は信じている。

最後に,ご多忙のなかご執筆をお引き受けいただいた先生方に深謝申し上げたい。


2021年4月

日本小児リウマチ学会 理事長
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座 教授
森 雅亮

目次

第1章 総論

1.全身型若年性特発性関節炎(sJIA) 野澤 智

2.マクロファージ活性化症候群(MAS) 清水正樹

3.カナキヌマブ(CAN) 岩田 直美

第2章 症例報告

1.経過良好

症例 1 CAN投与開始後,速やかにPSLを減量でき,CANのみで寛解を維持できている症例 水田 麻雄

症例 2 関節炎のコントロール不良でGCの副作用が問題となったが,CAN導入後GCを中止できた症例 井上 なつみ

症例 3 関節炎での再燃に対しCANが有効で,GCを再開せずに寛解した症例 真保 麻実

症例 4 GCのさまざまな副作用に難渋したが,CAN投与開始後にGCを減量でき,副作用も改善した症例 真保 麻実

症例 5 TCZで一時はGCを中止できるまで寛解したものの,その後の再燃に対してCANが必要となった症例 山﨑  晋

症例 6 TCZ投与中,再燃の度にMASと重度の肝機能障害を合併し,CANへの変更が必要となった症例  山﨑  晋

症例 7 TCZ投与後にMASを合併したが,CAN投与開始後は寛解維持を継続している症例 阿久津 裕子

症例 8 CAN投与開始後,比較的速やかにGCを減量・中止できた症例 梅林 宏明

症例 9 CAN投与開始後,関節病変の著明な改善を認めた症例 八代 将登

症例 10 MASに対する血漿交換およびmPSLパルス療法に続きCANを投与し,寛解が得られた1例 秋岡 親司

症例 11 CAN投与開始後,PSLおよびCyAが中止でき,CANのみで寛解を維持できている症例 安村 純子

CAN投与開始後,速やかに寛解し,PSLおよびCANを中止後も寛解を維持している症例 山﨑 雄一

症例 13 CAN投与開始後,一度再燃が疑われたが速やかに落ち着き寛解を維持できている症例 楢﨑 秀彦

症例 14 CAN投与開始後,CyA,PSLが中止可能となり,CANのみで寛解を維持できている症例 河邉 慎司

2.経過不良

症例 1 CAN投与開始後も関節炎が持続し,無効と判断した症例 服部 成良

症例 2 PSL減量に伴い関節炎の再燃を繰り返し,CANを併用してもPSLを減量できなかった症例 中岸 保夫

症例 3 CAN投与開始後,症状は消失したが,PSL減量開始直後に再燃し,投与を中止した症例 中瀬古 春奈

3.マクロファージ活性化症候群(MAS)

症例 1 CAN投与下でMASを発症し,GCのみで軽快した症例 西村 謙一

症例 2 CAN投与下でMASを繰り返した症例 西村 謙一

症例 3 CAN治験中,胃腸炎を契機にMASへ移行した症例 山﨑 雄一

症例 4 CAN投与開始後,早期にMASを反復した症例  金子 詩子

4.感染症

ヘルペス性歯肉口内炎 CAN投与中に,初発のヘルペス性歯肉口内炎に罹患した症例 安村 純子

水痘 CAN投与中に水痘を発症した症例 村瀬 絢子

帯状疱疹CAN投与中に帯状疱疹を発症した症例 村瀬 絢子

インフルエンザ CAN投与中にインフルエンザに罹患し,ペラミビルを3日間投与した症例 西村 謙一

蜂窩織炎 CAN投与開始後から皮下膿瘍を生じ

繰り返しているが,CANを継続している症例 服部 成良

多発皮下膿瘍 CAN投与開始1ヵ月後に蜂窩織炎を合併した症例 服部 成良

5.予定手術

大動脈弁逆流症 CAN投与中に心臓血管手術を行った症例 西村 謙一

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書籍情報

  • ISBN:9784779225673
  • ページ数:108頁
  • 書籍発行日:2021年5月
  • 電子版発売日:2021年7月21日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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