医学のあゆみ281巻5号 腫瘍免疫―免疫ネットワークから考える基礎と臨床

  • ページ数 : 220頁
  • 書籍発行日 : 2022年4月
  • 電子版発売日 : 2022年4月26日
¥6,490(税込)
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内容

企画:和田 尚(大阪大学大学院医学系研究科臨床腫瘍免疫学)

・2010年の抗CTLA-4抗体と2012年の抗PD-1抗体医薬の臨床効果報告が,免疫を用いたがん治療を世間に浸透させた.
・腫瘍免疫には非常に多くの因子が関与し相互に作用しあう免疫ネットワークの存在がある.免疫による抗腫瘍効果を理解するには,この複雑なネットワークを俯瞰的に観察することが大事である.
・本特集では,絡み合った腫瘍免疫ネットワークを各因子・細胞に個別化して解説し,それぞれがネットワーク全体にどのように影響を及ぼすかに言及する.


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序文

はじめに


マウスでは,腫瘍をいったん取り除いた後に再移植した同じ腫瘍細胞を拒絶しうるが,体内からCD8 T細胞を除去するとその効果は消失する.免疫が腫瘍を拒絶する能力を持つことはマウスでは証明されていた.しかし,ヒトでのがん免疫療法の試みは,ヒトでも同定されたがん特異抗原を用いたがんワクチンをはじめとして,十分な臨床効果を示さなかった.ヒトでは腫瘍に免疫なんて働かないのではないか,腫瘍免疫療法は絵空事で,いい加減開発研究はやめたらどうか.2000年代初頭までこんな議論が学会で交わされていた.

今では腫瘍免疫が厳然と存在することは一般臨床医にも広く認知されている.2010年の抗CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)抗体と2012年の抗PD-1(programmedcell death 1)抗体医薬の臨床効果報告が,免疫を用いたがん治療を世間に浸透させたのはご存じのとおりである.そして,抗PD-1抗体医薬の適応はがん腫を超えて原発不明がんにも認められるほどになっている.劇的ともいえる効果を示す症例の蓄積はリバーストランスレーション研究となり,遺伝子変異検索をバイオマーカーとして臨床に還元し,ネオ抗原研究の発展にも寄与した.これら近年の腫瘍免疫療法開発の躍進に機械や技術の進歩も欠かせない.特に遺伝子領域では,ゲノム解析の効率化はいうまでもない.90%以上の有効率を示す新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)mRNA(messenger RNA)ワクチンという新規手法の登場も腫瘍免疫に影響を与えそうである.ビオンテック社が長年培ってきたmRNAを用いたがんワクチン研究が,感染免疫の分野で実を結んだわけで,腫瘍免疫の分野にもリバースされることであろう.

とはいえ,CTLA-4,PD-1に対する抗体医薬もヒトで抗腫瘍効果を示す機序は不明な点が多いままである.原因のひとつに,腫瘍免疫には非常に多くの因子が関与し相互に作用しあう免疫ネットワークの存在があると思われる.免疫による抗腫瘍効果を理解するには,この複雑なネットワークを俯瞰的に観察することが大事である.

本特集では,絡み合った腫瘍免疫ネットワークを各因子・細胞に個別化して解説し,それぞれがネットワーク全体にどのように影響を及ぼすかに言及することで,入門者にはわかりやすい,そして専門家には最新の情報を提供することを目的に監修されている.各専門家の解説は,読者の知的好奇心を満たすに十分であり,そしてさらなる探求心とその成果の獲得に貢献しうる内容となっていることを確信している.


和田 尚
大阪大学大学院医学系研究科臨床腫瘍免疫学

目次

第5土曜特集:腫瘍免疫―免疫ネットワークから考える基礎と臨床

はじめに

腫瘍免疫総論―正と負のネットワークの理解から個のバイオロジーへ―

【ネットワークの各因子と,その因子を応用or標的とした基礎研究の現在と可能性】

がん免疫ネットワークに影響を与える因子

腫瘍細胞からネットワークへ─遺伝子変異とサイトカインネットワークによる腫瘍微小環境の形成と制御

ネットワークにおけるT 細胞の役割─CTL,活性疲弊,チェックポイント

ネットワークにおける自然免疫の役割─NK,ILCs

がん免疫ネットワークへの制御性T 細胞の影響およびその治療応用

腸内細菌とがん免疫微小環境

腫瘍微小環境の“3 低”の改善による腫瘍免疫の向上

がん微小環境TME 内の免疫ネットワーク解明の研究手段

免疫組織化学技術の勘どころとマルチプレックス免疫組織化学の特性 フローサイトメトリー,マスサイトメトリーを用いた腫瘍微小環境の病態解明

網羅的ゲノム解析によるTME評価─全ゲノム/全エクソーム/RNA シークエンス解析

シングルセル解析による抗腫瘍免疫応答の解析

ICI臨床的バイオマーカーの理解への基礎知識

腫瘍におけるPD-L1発現とそのバイオマーカーとしての意義

腫瘍免疫におけるがん抗原の役割─ネオアンチゲン,TMB,MSIの基礎知識

【免疫チェックポイント阻害薬の成功から続く展望】

腫瘍別の免疫作動薬の現状と展望(単剤→併用・新規)

進行期悪性黒色腫への免疫療法

非小細胞肺がんの免疫療法─開発中の免疫療法を中心に

泌尿器科がん(腎細胞がん・尿路上皮がん)への免疫療法─特殊性と類似性

血液腫瘍に対する免疫療法─ホジキンリンパ腫,成人T 細胞白血病リンパ腫

頭頸部がんへの免疫療法─現状と展望

リンチ症候群を中心とした大腸がんへの免疫療法

消化器がん(胃がん・食道がん)への免疫治療

婦人科がんへの免疫療法

新規治療法

腫瘍融解ウイルス療法とがん免疫

補助に終わらない免疫アジュバント

iPS 細胞から再生したT 細胞を用いたがん免疫療法─即納型汎用性T 細胞製剤の開発

遺伝子導入T 細胞による養子免疫療法

近赤外光線免疫療法(光免疫療法)によるがん免疫の誘導と活性化

新規がん免疫治療薬の開発

基礎研究と臨床応用への谷間をつなぐ橋渡し研究の重要性

がん免疫療法のバイオマーカー・コンパニオン診断法の探索

がん免疫療法に起こる,そして起こりうる副作用と対策

がんゲノム医療と免疫治療の現状と展望

人工知能(AI)を用いたがんの不均一性,多様性への挑戦

【結語】

がん免疫療法の展望─免疫制御機構に関する最近の知見をもとに

次号の特集予告

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書籍情報

  • ISBN:9784006028105
  • ページ数:220頁
  • 書籍発行日:2022年4月
  • 電子版発売日:2022年4月26日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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