麻酔 2021年12月号 投稿論文掲載号

  • ページ数 : 131頁
  • 書籍発行日 : 2021年12月
  • 電子版発売日 : 2021年12月10日
¥2,860(税込)
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投稿論文掲載号

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序文

産業革命とエネルギー革命


NHKの大河ドラマを見ていると,主人公の渋沢栄一が江戸末期に開催されたパリの万国博覧会で蒸気機関を見て驚くシーンがあった。当時の日本は人が籠を担いで移動していたのであるから,蒸気機関で動くエレベーターは大きな驚きであったと思う。

1769年にイギリスのジェームズ・ワットが発明した蒸気機関は石炭を燃やし,水を熱して高圧の水蒸気ガスを作り,ピストンを動かし,そのピストンの動きを回転運動に変えている。よくこれだけ複雑な構造物を作ることができたと思う。この蒸気機関は工場の生産性を向上させ,蒸気機関車や蒸気船により人や物の移動を大きく改善することとなった。

次に生まれたのが内燃機関である。1964年にドイツのニコラウス・オットーがエンジンを発明し,渋沢栄一が参加したパリ万博で金賞を受賞している。その後,小さくて高出力を発生するガソリンエンジンが蒸気機関に取って代わり全盛を迎えることとなる。ガソリンは引火性が高いため,当初,ガソリンエンジンは社会に受け入れられなかったが,動力性能が高く社会に浸透していった。

ガソリンエンジンは現代社会に浸透し,町を歩けば草刈り機,オートバイ,自動車と,そこら中でガソリンエンジンを見ることができる。ガソリンという高エネルギー燃料が社会を動かしているのである。中東の油井からくみ上げられた原油がタンカーではるばる日本まで運ばれ,精製されてガソリンが作られる。ガソリンは日本中津々浦々までタンクローリーで運ばれ,ガソリンスタンドで一般消費者に提供されている。

このガソリンエンジンを積んだ自動車の販売が2030年に各国で禁止されることとなった。ガソリンの燃焼による炭酸ガス排出と地球温暖化を食い止めることが必要になったためである。これからはエンジンに代わってモーターが主役の座を占めそうである。ガソリンはエネルギー源としての役割を終え,これからは電気がエネルギー源として社会を動かしていくと考えられる。

ここで未解決の問題がいくつか存在する。まず,いかにして電気を作るかである。ガソリンエンジンの熱効率は40%程度であるが,火力発電所の熱効率は55%以上なので,火力発電で作った電気で電気自動車を走らせても,炭酸ガス排出量は少し減少する。しかし,できれば炭酸ガスを排出しない方法が望まれる。再生可能エネルギー,もしくは原子力発電である。

風力や太陽光といった再生可能エネルギーはエネルギー密度が低いので,まとまった電力を得るには広い敷地が必要である。そのうえ,エネルギー変換効率が低く,太陽光発電は光エネルギーの20%程度しか電力に変換できない。風力は40%程度のエネルギー効率があるが,設置場所が限られる。また,原子力発電も,事故の危険性や廃棄物の貯蔵施設の問題があり,展望が開けていない。低コストで日本に適した発電方法の探索が望まれる。

もう一つの問題が電力の貯蔵である。ガソリンはタンクがあれば備蓄できるが,電気は蓄電池以外よい貯蔵方法が存在しない。社会的要請があり,蓄電池は急速な発展を遂げてきた。日本で発明されたリチウムイオン電池はエネルギー効率95%と高効率であるが,高コストのため大規模充電施設に不向きである。そのような状況で注目されているのが水素である。原子周期表でリチウムの上にある水素は理論的に最高の蓄電池になるパフォーマンスを秘めている。そのうえ,ガソリンと同じようにタンクに貯めておくことができる。水素タンクを積んだ自動車は少し怖い気もするが,ガソリン自動車と同様,社会に浸透していくのかもしれない。

2030年を目標に,世界はガソリンから電気へとエネルギー革命を迎えようとしている。リチウムイオン電池や水素を用いた燃料電池といったインフラの鍵となる技術が,日本で開発され実用化されつつある。これからの10年,渋沢栄一が感じた驚きを,われわれも経験できるかもしれない。


東邦大学教授
武田 吉正

目次

巻頭言

産業革命とエネルギー革命 (武田吉正)

総説

筋弛緩モニターの現状と今後 (阿部理沙ほか)

原著

ロピバカインを用いた小児の腕神経叢ブロックにおけるデキサメタゾンによる鎮痛延長効果―prospective randomized double-blind study― (小寺智子ほか)

講座

統計ノート-24 差の信頼区間(2)(浅井 隆)

症例対照研究

傍脊椎ブロックと脊柱起立筋面ブロックの術後鎮痛効果:若年気胸患者における胸腔鏡下手術での検討 (岩田正人ほか)

オピオイドフリーの術後管理が胸部外科手術後の悪心・嘔吐の発生に与える影響―傾向スコアマッチングを用いた後ろ向きコホート研究― (久保飛鳥ほか)

大腿骨近位部骨折患者に対する術前輸液は麻酔導入時の低血圧を抑制する (植木正明ほか)

症例集積研究

小児心臓手術における術中トロンボエラストメトリーのA10と術後出血量との関係性 (森 英明ほか)

症例報告

カテコールアミン誘発性多型性心室性頻拍の小児患者に対する全身麻酔経験 (山崎克晃ほか)

術中高血圧を呈したB型モノアミン酸化酵素阻害薬内服中の患者の麻酔経験 (沼田祐貴ほか)

急性A型大動脈解離の緊急手術を施行したBm血液型亜型の1症例 (小野寺慧洲ほか)

心臓移植から21年が経過した患者に対する緊急開腹術の麻酔経験 (足立佳也ほか)

ロボット支援腹腔鏡下胃全摘術の麻酔管理中にたこつぼ型心筋症を発症した1症例 (卜部一弘ほか)

神経調節補助換気(NAVA)併用長期人工呼吸管理を行っていた超低出生体重児の麻酔経験 (李 由希ほか)

口峡部の狭小化を伴い経口挿管が不可能なピエールロバン症候群の麻酔経験 (土谷 妙ほか)

低侵襲僧帽弁形成術の術後鎮痛に脊柱起立筋膜面ブロックが有効であった1症例 (秋泉春樹ほか)

極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症患者におけるミダゾラムを用いた全身麻酔の1症例 (谷中亜由美ほか)

メトホルミン内服とプロポフォールを用いた全静脈麻酔が原因と考えられた乳酸アシドーシスの1症例 (長松大子ほか)

紹介

気管挿管用密閉気密ボックスの作製 (田中 暢ほか)

麻酔科術前外来における周麻酔期看護師による麻酔同意書取得補助業務 (井出悠紀子ほか)

蘇生の歴史:57.呼吸機能の解明(8):Jan Baptista van Helmontによるアリストテレス説の否定 (浅井 隆)


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書籍情報

  • ISBN:9784014007012
  • ページ数:131頁
  • 書籍発行日:2021年12月
  • 電子版発売日:2021年12月10日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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