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- めまいを見分ける・治療する〈ENT臨床フロンティア〉
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内容
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序文
序
「めまい」という言葉は,実際にはいくつかの異なった身体の異常感覚を指しています.自身や外界の回転,あるいは流れるような感覚,安静時や運動時にふらふらとよろけてしまいそうな感じ,頭から血の気が引いて意識がなくなりそうな感覚など,それぞれ詳しく説明すれば違いを表現できますが,一言でいえばどれも「めまい」になってしまいます.このため,「めまい」診療には必然的に複数の全く異なる,ときに危険な病態が混在し,日常診療では自身の専門外の領域も含むきわめて多様な疾患の可能性を前にして途方に暮れることになります.
本書では,めまいの性状や随伴症状に応じて,いかに診断を絞りこむかについて,さまざまな入り口から確定診断に至る道筋を示しました.とくに,種々のめまいを救急医療,神経内科,耳鼻咽喉科などの異なる視点から,繰り返し取り上げることで,他科領域を含めた広い観点を持っていただけるように工夫しています.
一方で,めまい診療には詳細な生理学的知識が患者さんの診療に生かされ得るという醍醐味もあります.私は以前,米国UCLA のHonrubia 教授の下で前庭生理学の基礎研究をしていましたが,毎週火曜日には神経内科Baloh 教授の回診(Eye-round)がありました.症例に関する教授からの質問には冷や汗の連続でしたが,そのなかで「この患者さんの眼球運動を見ると,おそらく側方視時の外転神経核細胞の発火は毎秒20 回もないだろうね」と言われたことを憶えています.当時,UCLA では眼球運動について多くの生理学的基礎研究が行われていましたが,それが実際の患者さんを前にして論じられる感動は今も心に残っています.本書には,個々のめまい疾患について,耳鼻咽喉科や神経内科の専門の先生による詳しい解説もあります.本書が読者の先生方にとって,さらなる医学的探求のきっかけになればと思います.
本書では治療の項目にも力を入れました.「めまい」医療はしばしば,「診断は詳しいが治療は同じ」などと揶揄されますが,実際にはそんなことはありません.薬物療法,リハビリテーションや生活指導,外科的治療など,頭の中の「引出し」が多いほど,患者さんの診療がきめ細かく行えます.本書を個々の患者さんに合った最適の治療を見つける手がかりにしてください.
最後になりましたが,以上のような目標のもと,各専門領域における深い学識と豊富なご経験に基づいた実践的で魅力的な内容のご執筆をいただいた著者の先生方に厚く御礼を申し上げます.本書が,めまい診療の現場で活用され,めまい患者さんの診断と治療に役立つことを願っております.
2012年9月
神戸市立医療センター中央市民病院
内藤 泰
目次
第1章 めまいの見分け方
めまいの性状で見分ける−救急・総合診療としての対応
はじめに−めまいの診断ステップ
vertigo:回転性めまいを引き起こす疾患
presyncope:気が遠くなりそうなめまいの原因疾患
ill-defined dizziness:「はっきり表現できないめまい」を引き起こす疾患
めまいの持続時間で見分ける
めまいの持続時間からみた疾患分類
平衡機能を担う感覚器と神経回路
めまいの持続時間と原因疾患
一瞬のめまい感の原因疾患とその機序
血圧の瞬間的な変動による場合(起立性低血圧)
外リンパ圧刺激
速度蓄積機能からの放出
10秒から数分のめまい感の原因疾患とその機序
耳石の移動
一過性の循環障害
一過性の神経発火異常
数時間から半日くらい続くめまいとその機序
メニエール病発作
前庭水管拡大症によるめまい発作
片頭痛性めまい
1日以上あるいはずっと続くめまいとその機序
めまいの機序と原因疾患
診断
対象疾患
めまいの誘因で見分ける
誘因のないめまい
診断の進め方の大方針
めまいの性状別の代表的疾患
頭の位置を変えたり傾けたりしたときに起こるめまい
まずBPPV かどうかをチェックする
典型的BPPV と異なる点があれば,それを明確にする
BPPV 以外の頭位めまい疾患について知る
起立や歩行時などに起こるめまい
気の遠くなるようなめまい(presyncope)か否か
ふらつき(dizziness)を見分ける
高齢者のふらつきと転倒
随伴症状で見分ける
随伴症状のないめまいと難聴・耳鳴を伴うめまい
めまいの随伴症状
随伴症状のないめまい
難聴・耳鳴を伴うめまい
身体の麻痺やしびれを伴うめまい(蝸牛症状以外の神経症状を伴うめまい)
身体の麻痺やしびれを伴うめまい
四肢の運動失調や,起立・歩行障害を伴うめまい
身体の麻痺やしびれを伴うめまいの鑑別で知っておくべき末梢性めまいの特徴
実際の診察の流れ
症例提示
他の神経症状を伴うめまいにはどのようなものがあるか
頭痛を伴うめまい
椎骨脳底動脈循環不全
脳底動脈閉塞症
その他の特殊な原因による中枢性めまい
第2章 めまいの検査法
めまいの初期診療
血圧・脈拍・血算・血液生化学検査でわかること
めまいと初期診療検査
診察の進め方
神経内科医でなくてもできる神経学的所見の取り方
めまい診療における神経学的診察
診察の進め方
神経学的所見に異常がないめまいの原因推論
めまい診療における脳CT・MRI の適応と意義
めまいの性状と疾患の診断
救急外来のめまい
耳鼻咽喉科のめまい
眼振・眼球運動観察と鑑別診断のポイント
良性発作性頭位めまい症の眼振,メニエール病の眼振の特徴は?
良性発作性頭位めまい症(BPPV)
メニエール病
中枢性疾患を疑う眼振にはどのようなものがあるか
中枢性病変(障害部位)による眼振と発現機序
中枢性疾患を疑う眼振とその特徴
眼振の検査手順と末梢性・中枢性めまいの鑑別診断
前庭眼反射の見方とその解釈
日常外来診療における前庭眼反射の観察・計測法
VOR 検査による左右前庭機能の評価
中枢機能評価
症例提示
外来での複視や眼球運動検査法と異常所見の解釈は?
単眼性複視と両眼性複視
外転神経麻痺と動眼神経麻痺
複視をきたす異常眼球運動
複視を診た場合の外来における検査の具体的な進め方は?
外来で行える眼球運動検査とは?
参考になる症例
眼振観察以外の検査とその意義
ロンベルグ検査,マン検査の実施法と意義
体平衡維持のメカニズムと体平衡障害
静的体平衡検査
ロンベルグ検査,マン検査の診断的意義と留意点
足踏み検査,歩行検査の行い方と結果の解釈
足踏み検査,歩行検査の位置づけ
検査の進め方と結果の解釈
重心動揺検査の臨床的意義は?
臨床検査としての重心動揺検査
重心動揺検査の流れ
重心動揺解析と評価
症例提示
第3章 さまざまなめまいの鑑別と治療方針
末梢性めまいの鑑別
メニエール病の診断と鑑別診断
メニエール病の診断基準
メニエール病非定型例について
メニエール病の症状の特徴と診断にあたっての注意事項
内リンパ水腫推定検査
遅発性内リンパ水腫
メニエール病の鑑別疾患
BPPV 診断と鑑別のポイント?半規管結石とクプラ結石
めまい・眼振を引き起こす原因とメカニズム
眼振所見の取りかた
BPPV の診断
BPPV 診断における注意点
後半規管と外側半規管由来のBPPV の違いは?
初診時に観察されたBPPV および関連した頭位眼振の頻度
後半規管BPPV と外側半規管BPPV の臨床像
後半規管BPPV と外側半規管BPPV の眼振所見
外リンパ瘻によるめまいの特徴と手術治療の効果
外リンパ瘻総論
外リンパ瘻各論−その特徴と治療法
鑑別診断
前庭神経炎の前庭機能とめまいの特徴は?
前庭神経炎とは
診断の進め方
症例提示:激しいめまいが続く
前庭神経炎の治療の概要
中耳炎・中耳真珠腫・突発性難聴・ハント症候群に伴うめまい
中耳炎(急性)に伴うめまい
中耳真珠腫に伴うめまい
めまいを伴う突発性難聴
ハント症候群に伴うめまい
脳に原因のあるめまいのポイント
脳梗塞によるめまいの特徴は?
脳梗塞とめまい
後方循環系(椎骨脳底動脈系)の虚血によるめまい
耳鼻科医への注意点:末梢性めまいと小脳梗塞によるめまいの鑑別
大脳病変によるめまい
脊髄小脳変性症と多発性硬化症のめまいの特徴は?
脊髄小脳変性症
多発性硬化症
椎骨脳底動脈循環不全によるめまいの診断と治療
椎骨脳底動脈循環不全(VBI)によるめまいの病態
hemodynamic VBIの診断の手引き
hemodynamic VBIの治療
不整脈(心疾患)・貧血・脱水によるめまい
めまいのまれな原因疾患
不整脈(心疾患)によるめまい
貧血(消化管出血を含む)によるめまい
脱水によるめまい
頭頸部外傷とめまい・平衡失調
頭部外傷後に起こるめまい
頭部外傷性めまい
側頭骨骨折
内耳振盪
中枢性障害(脳幹・小脳障害)
鞭うち症
脳脊髄液減少症
頸や腰の筋肉からめまい・平衡失調は起こる
診断と検査
原因が特定しにくいめまい・特殊なめまい
不定愁訴としてのめまい
不定愁訴としてのめまいとは
不定愁訴の多い患者の診察のコツ
訴えと検査所見が一致しない場合
不定愁訴の多いめまい患者の治療のコツ
心因性めまいはどのように診断するか
心因性素因とめまい
初診時の心がけ
心理テストとは
心因性めまいの対処
自律神経失調によるめまいの診断と治療
自律神経失調症の概念
自律神経失調症によるめまい
乗り物酔いへの対策は?
乗り物酔いとは
乗り物酔いはなぜ起こる
乗り物酔いへの対策
こどものめまい
先天性の前庭機能障害は小児の運動発達にどのように影響するか
どのような症状のときに前庭機能障害が疑われるか
正常児の運動発達のmilestoneの2011年版
歴史的に前庭・三半規管の姿勢と運動への役割について初めて気がついた人は誰か
どのように半規管・耳石機能を検査するのか
なぜ遅れるのか,その病態生理
どのように遅れを取り戻すのか
水泳での溺水事故の予防
視覚と触覚の重要性
成長してどこまで獲得するのか
小児良性発作性めまいとはどのような疾患か
小児のめまいにはどんな疾患が多いのか
小児良性発作性めまいとは
小児良性発作性めまいの診断基準
小児良性発作性めまいの診断の進め方
予後
治療方針
第4章 めまいの治療法
めまいの理学療法
良性発作性頭位めまい症の理学療法(1)
歴史的背景
BPPV 病態の診断方法
治療
良性発作性頭位めまい症の理学療法(2)
BPPV理学療法の概念と分類
病態別,病型別の治療方略
BPPV理学療法のinstruction(動機づけと生活指導)
めまいの運動療法,リハビリテーションはどのように行うか(1)
めまいリハのコツと実践
めまいリハ効果の根拠
まとめ:めまいリハの勧め
めまいの運動療法,リハビリテーションはどのように行うか(2)
平衡訓練の対象となる疾患
平衡訓練計画の進め方
メニエール病に対する有酸素運動の効果
偶然から生まれた新治療
新治療の具体的内容
治療成功のポイント
浸透圧利尿薬や内リンパ嚢開放術はなぜ無効か?
メニエール病治療になぜ生活改善が必要か?
有酸素運動の実践がなぜ有効か?
めまいの薬物治療
各めまい疾患の薬物治療
急性期のめまいに対する薬物治療
抗めまい薬
メニエール病に対する薬物治療
BPPVに対する薬物治療
前庭神経炎に対する薬物治療
起立性調節障害によるめまいに対する薬物治療
脳循環障害によるめまいに対する薬物治療
めまい疾患における抗不安薬の使い方
めまい疾患に対する抗不安薬の適応
抗不安薬の種類
抗不安薬の依存性
抗不安薬の作用時間の違い
具体的な用い方
漢方薬
抗不安薬としての抗うつ薬
最新の非ベンゾジアゼピン系の薬剤
代替療法を含むその他の薬物治療とその医学的根拠
メニエール病のステロイド療法と補助・代替薬
頭重・頭痛を伴うめまいに対する選択肢の一つ
自律神経失調症を背景にもつ患者への対応と投薬
高齢者のめまい感・不安定感(平衡不全)に対する改善
向神経ビタミン
めまいの外科治療や特殊な治療
メニエール病の外科治療
メニエール病のめまい
メニエール病の聴覚障害
自然寛解とプラセボ効果
外科治療によるめまい制御
外科治療による聴力改善
難治性の良性発作性頭位めまい症の外科的治療
後半規管膨大部神経切断術と半規管充填術
半規管充填術の適応
半規管充填術のインフォームドコンセント
病巣半規管の同定
半規管充?術の手術の実際
半規管遮断術の効果と術後聴力
聴神経腫瘍とめまい
聴神経腫瘍と前庭症状
聴神経腫瘍患者の手術と前庭症状
症例提示
付録 診察に役立つ資料集
めまい問診票
患者への説明用イラスト
聴覚・平衡機能
耳石顆粒の迷路内での浮遊移動
半規管およびクプラ結石症の病態
急性期めまいへの対応/メニエール病診断の過程
メニエール病診断基準(簡易版)
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書籍情報
- ISBN:9784521734620
- ページ数:368頁
- 書籍発行日:2012年10月
- 電子版発売日:2021年12月15日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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