急性難聴の鑑別とその対処〈ENT臨床フロンティア〉

  • ページ数 : 320頁
  • 書籍発行日 : 2012年7月
  • 電子版発売日 : 2021年12月22日
¥14,300(税込)
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商品情報

内容

聴覚は人間の五感のうち,視覚と並んで最も重要な感覚であり,それが突然に失われる急性難聴は患者さんのQOLを著しく障害します.そのため,耳鼻咽喉科診療において,急性難聴の迅速・正確な診断と治療は主要な部分の一つです.本書では急性難聴の鑑別と対処を,一般診療施設にある最小限の機器で確実に診断できるようにまとめました.最新の知見や,患者さんへの対応についても解説しています.

あわせて読む → 「ENT臨床フロンティア」シリーズ

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序文

聴覚は人間の高度の社会生活を支える五感のうちでも視覚と並んで最も重要な感覚で,それが突然に失われる急性難聴は患者さんのQOL を著しく障害します.そのため,耳鼻咽喉科診療の中でも急性難聴の迅速,正確な診断,治療は主要な部分の一つといえます.その一方で,最近の医学の進歩により,上半規管裂隙症候群などが新たに知られるようになるなど,急性難聴をきたす疾患も多岐にわたることが分かってきていることもまた事実です.

本書では,この急性難聴の鑑別と対処をテーマにまとめました.まず,前半の診断・鑑別診断については,医師側から診断を進める経過に沿って,問診,鼓膜所見,検査でどれほど疾患を絞り込めるかを解説し,それに加えて緊急性がある要注意疾患もまとめて解説する章も設けました.

また,検査も特殊施設にしかないような高度な機器を用いるものよりも,一般診療施設にある最小限の機器で確実に診断できる方法を解説するように心がけました.とくに,一般に普及している検査法について,このようなことまで診断できる,あるいはあまり知られていない使用上のコツなどもコラム,アドバイスで記されています.

後半は急性難聴をきたす諸疾患の診療の各論を専門家に解説してもらうようにしました.急性難聴をきたす各疾患を取り扱ううえではそれぞれ最重要事項があります.ある疾患ではそれは治療開始を急ぐことであり,また別の疾患では外科治療の適応決定であり,あるいはそれが患者への病因や予後の説明や診断書の書き方である疾患もあります.このような各疾患の重要ポイントを知っておくことは,実は日常診療で最も重要な部分の一つであり,本書では疾患ごとにそれを解説することにも重点を置きました.

また,本シリーズ既刊の『実戦的耳鼻咽喉科検査法』,『耳鼻咽喉科の外来処置・外来小手術』と同様に,巻末に各種のイラストなどがついていますので,患者さんへの説明等にご活用いただければと思います.

このように本書は最前線で活躍しておられる耳鼻咽喉科の先生方や専門医を目指す若手耳鼻咽喉科の先生方に診療中でもすぐに参考にしていただけるようにコンテンツをまとめました.日常診療におおいにお役立ていただければ幸いです.


2012年7月

長崎大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科
髙橋晴雄

目次

第1章 急性難聴とは

急性難聴とは

 概念

 急性難聴の分類

 難聴以外の主訴に伴う急性難聴

 診断のための検査

 急性難聴の診断にあたって注意すべき点

第2章 問診・視診でどこまでわかるか

病歴から診断する

 代表的症例(病歴)

 鑑別診断:病歴からのポイント

 急性感音難聴診断のための問診のポイント

随伴症状から診断する

 耳漏

 耳痛

 耳閉感

 耳鳴

 めまい

 急性難聴および随伴症状の経過からの鑑別

難聴の経過から診断する

 難聴の経過をパターンとして分類する

 進行性,反復性のパターンと原因

 すでに明らかな一側性難聴がある場

鼓膜所見からどこまでわかるか

 正常な鼓膜所見のもつ意味

 外耳道疾患

 中耳換気不全に基づく疾患

 炎症性疾患

 外傷

第3章 検査の進め方と鑑別診断のポイント

急性難聴をきたす疾患と鑑別のポイント

 急性難聴をきたす疾患

 伝音難聴

 感音難聴

 内耳障害と後迷路障害の鑑別

聴覚系検査から鑑別する

 ポイントとなる検査

 さらに鑑別が必要な場合に加える検査

 実際の検査・診断手順

画像検査から鑑別する

 急性難聴における画像診断

 内耳炎

 外傷(外リンパ瘻)

 聴神経腫瘍

 前庭水管拡大症

 一側感音難聴

 突発性難

 内リンパ水腫

第4章 緊急性のある疾患を見逃さないコツ

中枢疾患,全身疾患,悪性腫瘍の一症候として

 中枢疾患

 全身疾患

 悪性腫瘍

第5章 成人急性中耳炎

骨導低下は内耳障害か? その対処は?

 急性中耳炎と内耳障害

 診断の進め方

 対処法

 中耳炎から内耳障害の発症機序

 中耳から内耳への炎症の波及経路

第6章 外傷性鼓膜穿孔

治療アルゴリズム

 診断

 治療の手始め

 留意すべき合併症

 パッチは有効か?

 自然閉鎖率と手術に踏み切るタイミング

 手術治療

 診断・治療の進め方

他人に原因のある外傷性鼓膜穿孔

 頻度

 問診

 視診

 純音聴力検査

 処置

 経過

 学校において発生した外傷性鼓膜穿孔例への対応

インフォームドコンセントの実際

 鼓膜穿孔の自然閉鎖率

 注意事項

 手術

第7章 頭部打撲による難聴(交通事故,転落事故)

側頭骨骨折

 まずチェックすべきポイントは?

  急性期・救急段階でのチェックポイント

  耳鼻咽喉科診療でのチェックポイント

 確実な診断法は?

  自覚症状と視診所見

  側頭骨骨折の分類

  縦骨折

  横骨折

  高次脳機能障害の合併

 随伴症状のプライマリケアはどこまで可能か?

  聴覚系随伴症状

  前庭系合併症

  顔面神経麻痺

耳小骨離断

 診断のポイントは?

  耳小骨離断の原因と病態

  症状

  診断

 手術適応は?

  外傷の範囲と程度による治療方針の決定

  耳小骨離断とともに外リンパ瘻が疑われる例

  耳小骨離断単独例での治療方針

第8章 気圧外傷

病因別の症状の特徴

 気圧外傷の病態

 外耳気圧外傷

 中耳気圧外傷

 内耳気圧外傷

治療のポイント

 気圧外傷の治療のポイント

 外因性

 内因性:鼻咽腔〜耳管経由の加圧に基づく気圧外傷

再発予防のアドバイス

 気圧外傷を起こす危険な圧変化と因子

 気圧外傷の予測

 気圧外傷の予防

第9章 外リンパ瘻

診断のポイント

 外リンパ瘻総論

 外リンパ瘻各論

 鑑別診断

保存治療はどこまで有効か−治療方針

 カテゴリーA

 カテゴリーB,C,D の外リンパ瘻5

手術療法の適応とタイミング

 先天性外リンパ瘻(耳性髄液漏)

 外傷性外リンパ瘻(耳かき棒などによる直達性や側頭骨骨折によるもの)

 特発性外リンパ瘻

医原性—その対処,説明

 医原性に外リンパ瘻をきたす可能性があるもの

 外来診療中,外リンパ瘻を誘発してしまったら

 外リンパ瘻をきたした際の患者,家族への説明

 外来診療で注意すべき点

第10章 内耳炎

内耳炎の原因は?

 細菌性内耳炎の臨床像

 内耳炎をきたす疾患

プライマリケアでのポイント

 診断の進め方

 診断のポイント

 各疾患の診断と治療

第11章 ウイルス性難聴

ムンプス難聴への最適な対処は?

 ムンプスの流行状況

 ムンプス患者への対応

 学童への対応

 ムンプス難聴

 一側性難聴

 聴力検査

 ムンプス難聴の発症機序

 ムンプス難聴の治療

 両側ムンプス難聴症例に対する人工内耳

ムンプス以外の急性難聴をきたすウイルスは?

 ウイルス性内耳炎

 先天性難聴

 顔面神経麻痺(ラムゼイ・ハント症候群)

 ウイルス性中耳炎

ムンプス難聴の予防は可能か?

 ムンプスワクチン

 現状と今後の課題

第12章 メニエール病,蝸牛型メニエール病,遅発性内リンパ水腫

難聴からみた診断のポイント

 メニエール病,蝸牛型メニエール病,遅発性内リンパ水腫について

 純音聴力検査

 グリセロールテスト

 蝸電図検査(ECoG)

急性期の治療法

 どのような疾患か

 治療

リハビリは有効か?

 平衡訓練とその効果

 平衡訓練の方法

 平衡訓練のEBM

再発防止のための日常的アドバイス

 メニエール病の発作予防対策

 メニエール病に対する生活指導

第13章 急性低音障害型感音難聴

疫学

 患者数

 患者数の推移

 性別・年齢分布

 自覚症状

 発症前の状況

 予後

 予後を規定する因子

すべてが内リンパ水腫か?

 急性低音障害型感音難聴の病態

 急性低音障害型感音難聴からメニエール病への移行

 急性低音障害型感音難聴における非内リンパ水腫病態の考え方

その病因−遺伝的要因,環境的要因?

 メニエール病

 内リンパ水腫との関連性

 低音障害型難聴の遺伝子解析

準確実例の診断と最も重要な鑑別診断

 ALHLの準確実例の診断

 鑑別を要する最も重要な2 疾患

 鑑別を要するその他の疾患

最適な治療は何か?

 薬物治療

 安静・食事

 治療をめぐる問題点

 治療法の選択

再発防止は可能か?

 ALHLとメニエール病は同じか?

 再発予防の方法は?

 更年期障害や睡眠障害にも注意

インフォームドコンセントの実際

 初診時のインフォームドコンセントと治療

 再来時のインフォームドコンセントと治療

第14章 突発性難聴

最低限必要な鑑別診断,必須の検査は?

 突発性難聴と鑑別すべき疾患

 鑑別診断のための問診と検査

予後診断は可能か?

 年齢・性

 発症から治療開始までの期間

 初診時聴力レベル

 オージオグラムの聴力型

 めまいの有無

 耳鳴の有無

 聴力回復過程

 歪成分耳音響放射(DPOAE)

 温度眼振検査における半規管麻痺(CP),前庭誘発筋電位(VEMP)検査

 生活習慣病

 MRI画像所見

 多変量解析による聴力予後の推定

紹介の最適のタイミングは?

 めまいのある症例

 安静

 難聴の進行する症例

 糖尿病など全身の合併症がある症例

 聴力の改善が乏しい症例

 耳鳴が残存した症例

 画像診断

 機能検査

陳旧例は治らないのか?—高圧酸素療法を中心に

 突発性難聴の陳旧例治療

 症例の背景

 治療効果評価法

 治療効果

 突発性難聴陳旧例に対する高圧酸素療法の適応

ステロイド鼓室内注入療法について

 初期治療と救済治療

 問題点と今後の課題

 内耳へのドラッグデリバリーシステム

 投与方法の実際

第15章 音響外傷

最適なプライマリケアは?

 音響外傷とは

 海外の音響外傷に対する啓蒙

 どんな音がNIHLをきたすのか?

 問診

 検査

 どこが障害を受けるのか?

 診断

 治療

 NITTSかNIPTSかの判断

 protect-防御

 社会への啓蒙

インフォームドコンセントの実際

 いわゆるディスコ難聴

 いわゆるヘッドホン難聴

 銃火器による音響外傷

 音響外傷を防ぐために

職業性のものへの配慮は?

 騒音性難聴の診断の要件

 騒音性難聴における臨床上の問題点

第16章 中枢性難聴

突発性難聴との鑑別診断のポイントは?

 急性感音難聴をきたす頭蓋内疾患

 診断の進め方

 症例からみる鑑別診断

その最適なプライマリケアは?

 診断の進め方

第17章 機能性難聴

その最適な診断法は?

 診断の進め方

インフォームドコンセントの実際

 診療過程において発症原因を振り返る

 診断後に話す内容について

 今後の方針・予後について

付録 患者への説明用

患者への説明用書類 実例集

 外傷性鼓膜穿孔について

急性低音障害型感音難聴について

 音響外傷について 和田哲郎,原 晃

 機能性難聴について

患者への説明用 イラスト

 耳の構造

 蝸牛の構造

付録 画像でみる代表的疾患の鼓膜所見

中耳換気不全に基づく疾患

炎症性疾患

外傷

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書籍情報

  • ISBN:9784521734613
  • ページ数:320頁
  • 書籍発行日:2012年7月
  • 電子版発売日:2021年12月22日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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特記事項

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※コンテンツの使用にあたり、M2Plus Launcherが必要です。

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