画像診断 2022年2月号(Vol.42 No.2)“-pathy”でせまる中枢神経疾患

  • ページ数 : 116頁
  • 書籍発行日 : 2022年1月
  • 電子版発売日 : 2022年2月4日
¥2,750(税込)
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商品情報

内容

中枢神経系に関連する,数ある 「-pathy」の中から一部を取り上げ,最近話題となっている-pathyと称される疾患群に関して疾患概念や分類,画像所見等に関して総括.認知症をはじめ各疾患や病態に様々な側面があることが明確になる特集.

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序文

序説


英語の接尾辞-pathyはギリシア語の“-patheia”,“pathos”(感情,苦悩)に由来するものであり,語尾について「苦痛,感情,病気,療法」の意味の名詞を造る.今日用いられる-pathyと名のつく疾患群や概念は,いわゆるumbrella termとして複数の疾患を共通の機序や原因によって横断的に総括するものが多く,このような総括により,ひとつの疾患に様々な側面があることも明確となる.例えばAlzheimer病はアミロイドβの蓄積で特徴づけられるが,タウ蛋白の蓄積を来すタウオパチーとしての側面もある.このような,“-pathy”として複数の疾患を横断的に分類・把握することは,疾患機序の解明や理解,画像所見の評価,あるいは共通する治療法の開発のもととなりうると考える.

本特集で取り上げた“-pathy”として,タウ蛋白が神経細胞やグリア細胞内に異常蓄積する病変に基づく疾患であるtauopathy(安野論文),タウ陰性ユビキチン陽性封入体の主要構成成分TAR DNA-binding protein of 43kDa(TDP-43)が病態と密接に関係する神経変性疾患であるTDP-43 proteinopathy(渡辺論文),α-synucleinが病態機序の中心的役割を担うと想定される疾患群を総称するα-synucleinopathy(江面論文)やglial fibrillary acidic protein(GFAP)に対する自己抗体を原因とした自己免疫性髄膜脳炎・髄膜脳脊髄炎であるGFAP astrocytopathy(木村論文)のように疾患に関連した原因物質などをキーとするumbrella termは,ある意味定義が明瞭であり,議論にあいまいさを残さない.

一方,ciliopathyは一次繊毛の異常による疾患の総称であり,多くの遺伝子異常が明らかになっているが,それがどのような経路で異常を来すかの解明は十分できておらず,各症候群の境界もあいまいで厳密に区別することはしばしば困難である(安藤論文より).また,duropathyは主に脊柱管前部硬膜に欠損あるいは損傷があり,それに伴ってくも膜にも異常を来し,髄液が硬膜外に漏出することにより起こる疾患群とされるが,例えば平山病がduropathyに入るかどうかという議論もある(柳下論文より).これらのように,原因となる構造や機能に関連したumbrella termについてはその定義の境界が難しくなる.本特集最後の項目であるcentral nervous system(CNS) interstitial fluidopathyは後者に属するumbrella termであり,現状では間質液動態がその病態に関連する疾患の存在については認識されているものの,含まれる疾患や機序に関しては不明な点が多く,これからの研究で明らかにしていく必要がある.

このようなumbrella termのありように触れた論文がある1).「Global Healthとは何か」を論じたものであるが,論文の本題とは別に,umbrella termの定義をどのように行うことが適切かということにも議論が及んでいる.傘による本影と,半影すなわちpenumbraは光源と傘の距離によって変化するが,図-Aのように厳密にしすぎると重要な要素が用語のpenumbraの中に含まれないということが起こりうる一方で,図-Cのように範囲を広げすぎるとpenumbraを含めた用語の定義自体が薄く,希薄となってしまうという点が指摘されている.

本特集で取り上げた,tauopathyやTDP-43 pro­teinopathy,α-synucleinopathyといった比較的定義の明確な群についてはpenumbraを小さくした議論が可能であるが,ciliopathyやduropathy,ひいてはCNS interstitial fluido­pathyについては,宿命的にpenumbraに相当する部分が存在することになる.例えばCNS interstitial fluidopathyでは,特発性正常圧水頭症に関してはほぼ確実に間質液動態が疾患機序に深く関わっていると考えられるが,Parkinson病に関しては様々な研究が報告されているものの,penumbraに相当するといわざるを得ない.しかし,その用語に含まれる,含まれない,白か黒かということで議論を限定することが得策であるとは考えられない.グレーゾーンであるpenumbra部分の存在を認め,その境界のありかたも含めた研究や議論・思考を行うことで,包括的な意味で疾患機序の解明や治療法の開発に資すると考えている.


田岡俊昭(名古屋大学大学院医学系研究科革新的生体可視化技術開発産学協同研究講座)

目次

【特集】“-pathy”でせまる中枢神経疾患

序説にかえて ─umbrella termの意義とpenumbra  田岡 俊昭

Tauopathy ─タウ蛋白の異常集積による認知症  安野 史彦

TDP-43 proteinopathy ─TDP-43を背景病理に有する神経変性疾患  渡辺 宏久,大嶽 れい子ほか

α-synucleinopathy ─凝集α-synによる細胞毒性  江面 道典,長谷川 隆文

Duropathies ─硬膜欠損と髄液漏出  柳下 章

Ciliopathy ─細胞のアンテナとその異常  安藤 久美子,石藏 礼一

Autoimmune GFAP astrocytopathy ─自己免疫性髄膜脳炎・髄膜脳脊髄炎  木村 暁夫

CNS interstitial fluidopathy ─膜と水動態の異常  田岡 俊昭

【連載】

すとらびすむす

一念天に通ず  西江 昭弘

画像診断と病理

著明な嚢胞変性と骨破壊を伴った三叉神経鞘腫  淡路 正則,熊谷 和樹ほか

ここが知りたい!画像診断2021年9月号特集

「妊孕性・機能温存のための画像診断 −Keep the QOL of Women−」  藤井 進也,國近 瑛樹ほか

Picked-up Knowledge from Foreign Journals

COVID-19画像診断・最新情報  小野 修一

CASE OF THE MONTH

Case of February  木田 友佳子,北原 均ほか

The Key to Case of December  小谷 知也

読影レポートLesson

脊椎編「椎体終板の信号変化」  稲岡 努

Refresher Course

腎周囲の後腹膜解剖と画像の関係  越智 敦彦,秋田 恵一

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書籍情報

  • ISBN:9784780905496
  • ページ数:116頁
  • 書籍発行日:2022年1月
  • 電子版発売日:2022年2月4日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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