実践!失語症のリハビリテーション~症例から学ぶ訓練プランの組み立て方

  • ページ数 : 136頁
  • 書籍発行日 : 2022年3月
  • 電子版発売日 : 2022年2月21日
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商品情報

内容

脳が言葉を取り戻すために、言語聴覚士は失語症者とどう向き合い、いつ何をすべきか。

言語訓練立案の基礎知識、具体的手順と方法について、随所に臨床上のポイントと注意点を交えわかりやすく解説。目の前の失語症者に今どのような訓練や支援が必要なのか、立ち止まって考えたい時に参考となる1冊。

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序文


本邦における失語症に対する言語訓練は,1960年初頭に米国でリハビリテーション学や言語病理学を学んだ少数の指導者が帰国したことから始まりました。そして1960年代後半に,本格的リハビリテーション病院が国内に2 ~ 3施設オープンしました。

そのうちの1つが伊豆韮山温泉病院でした。この病院の2代目の院長であった長谷川恒雄先生が,病院のメインテーマに失語症を据え,1969年にわが国の失語症にかかわる最高の英知を集めた「韮山カンファレンス」,別名「失語症研究会」という研究会を創設しました。この組織のもとで,失語症に関する研究や検査法の開発(現在の標準失語症検査SLTA)が開始されました。

また,失語症者へのリハビリテーションを,米国から帰国されたばかりの竹田契一先生を中心に展開し,その理想像を追い求めました。同時に,多くの言語聴覚士の養成と研究活動を行いました。リハビリテーションに携わる言語聴覚士には,失語症者一人ひとりの人格に向き合い,温かい訓練場面を作り,かつ可能な限りのエビデンスを科学的に求めながら訓練法の開発を行うことが求められました。そしてここからは多数の指導者を輩出することになりました。

「韮山カンファレンス(失語症研究会)」は後に「日本失語症学会」となり,現在の「日本高次脳機能障害学会」へと発展していきました。伊豆韮山温泉病院で育てられた失語症のリハビリテーションの体系は,当時同病院で仕事をしていた加藤正弘先生(現 社会福祉法人仁生社理事長・江戸川病院名誉院長,元 日本高次脳機能障害学会理事長)の指導のもと,1983年から社会福祉法人仁生社江戸川病院にも引き継がれました。

江戸川病院における失語症者のリハビリテーションでは,失語症者とその家族を心理的社会的にしっかり支えながら,穏やかな雰囲気の中で,科学的にもまた経験的にも妥当と思われる言語訓練を行い,同時に研究活動も鋭意行ってきました。そしてできるだけ長期間言語訓練を行い,「失語症とはどのようなメカニズムで起きる障害で」「どのような経過をたどるのか」「どのような訓練や支援がいつどこで必要か」などを失語症者から学び,これを多くの失語症者に還元するよう努めました。

そしてこの40年近い日々に,多くの失語症者から学ばせていただいた知見を,次世代の言語聴覚士の方々に伝えていきたいというのが,私たちの願いでもありました。

このたび,長年蓄積してきた言語訓練の内容や経過,訓練プランの組み立て方に関する知見を出版という形で,言語聴覚士に提供できることになりました。(株)新興医学出版社林峰子社長,編集を担当された岡崎真子氏には大変お世話になりました。心から厚く御礼申し上げます。

また,たくさんの失語症者とその家族の方々から,症状変遷の記載や,その症状の映像搭載について,即座に気持ちよくご了解をいただきました。言葉にできないほどの感謝の気持ちでいっぱいです。現在これらの記録や映像をもとに,言語訓練経過をタイプ別にまとめた症例集を出版準備中です。失語症者と言語聴覚士とのやりとりやその経過から,本書で述べた考え方がより深く理解できると思います。ぜひあわせてご参照ください。

なお,下記の言語聴覚士の諸氏が,部分執筆,データの整理や校正などに大変尽力をされました。特に笹嶋侑子氏と近藤郁江氏の協力なしには,本書の完成には至らなかったことは間違いありません。ここに記して,謝意を申し上げたいと思います。


笹嶋 侑子 (現 江戸川病院リハビリテーション科言語室)

近藤 郁江 (現 江戸川病院リハビリテーション科言語室)

原  未来 (現 江戸川病院リハビリテーション科言語室)

木下 結理 (現 江戸川病院リハビリテーション科言語室)

北條 具仁 (元 江戸川病院リハビリテーション科言語室,現 国立障害者リハビリテーションセンター病院 リハビリテーション部門言語聴覚療法)

木嶋 幸子 (元 江戸川病院リハビリテーション科言語室,現 株式会社在宅支援総合ケアサービス 稲毛駅前訪問看護ステーション)

岩佐 香菜美 (元 江戸川病院リハビリテーション科言語室,現 株式会社言語生活サポートセンター)

中村 菜都美 (元 江戸川病院リハビリテーション科言語室,現 国立病院機構東京病院リハビリテーション科)


多くの方々のご協力のもとに本書を世に送り出すことができました。

この本が,失語症の臨床現場で,何かしらお役に立つことを心から願っています。

ここからがまた新たな始まりです。


2021年12月

中川 良尚
佐野 洋子
船山 道隆

目次

序章 はじめに

第Ⅰ章 失語症言語訓練の概要

1 失語症の言語機能回復訓練立案のための基礎知識

失語症の典型的症状と脳の状態の理解

失語症のタイプ分類の理解―新しいタイプ分類の提唱―

失語症の障害構造の分析

発症からの時期やライフステージを考慮したリハビリテーション

2 失語症の長期経過

失語症の回復にかかわる要因

自験例における失語症の長期経過に関する先行研究

第Ⅱ章 訓練時の注意点と手順の概要

1 失語症言語訓練の展開に関する注意点と手順の概要

失語症言語訓練の展開に関する注意点

具体的手順

2 失語症の周辺症状の鑑別診断

病前の視力や聴力の程度:知覚機能障害

失語症に合併するその他の高次脳機能障害

3 語聾症状・発語失行

語聾症状

発語失行(アナルトリー・失構音)

第Ⅲ章 訓練の実際(1) 各失語症状に対する言語訓練

1 意味理解障害に対する検査と訓練法

意味理解の検査

意味理解障害に対する訓練法

2 音韻処理機能障害に対する検査と訓練法

音韻処理機能の検査

音韻処理機能障害に対する訓練法

3 表出の障害に対する検査と訓練法

発話障害

発話機能の検査

発話障害に対する訓練法

特殊な発話諸症状に対する分析と対応

書字障害

書字機能の検査

書字障害に対する訓練法

仮名文字障害に対する特殊な訓練法

実用的コミュニケーション能力を補う手段の確保と実践

第Ⅳ章 訓練の実際(2) 失語症タイプ別言語訓練

1 失語症タイプ別言語訓練を行うにあたって

2 非流暢性失語症(発語失行あり+意味理解障害あり)

全失語

重度混合型失語(重度運動性失語・重度Broca失語)

中等度混合型失語(中等度運動性失語・中等度Broca失語)

軽度Broca失語(軽度運動性失語・軽度混合型失語)

3 流暢性失語症(発語失行なし+意味理解障害著明)

Wernicke失語タイプ1(音韻性錯語・新造語が著明な流暢性失語)

Wernicke失語タイプ2(語性錯語中心流暢性失語)

Wernicke失語タイプ3(意図的・自動的発話乖離型流暢性失語)

Wernicke失語タイプ4(音韻想起困難型流暢性失語)

超皮質性感覚失語

4 流暢性失語症(発語失行なし+意味理解障害軽度)

超皮質性運動失語

Broca領域失語

5 流暢性失語症(発語失行なし+意味理解良好)

伝導失語

健忘失語

6 特殊型

基底核限局病巣失語

基底核伸展病巣失語

視床失語

純粋発語失行(アナルトリー)

付録

「失語症ドリル改訂版」課題見本

2-1 ~ 2-8 絵-文字単語照合課題

3-1 ~ 3-4 名詞句- 動詞句線結び式文章完成課題

4-1 ~ 4-5 文章完成課題

5-1 ~ 5-3 仮名文章完成課題

6-1 ~ 6-2 自由記入式文章完成課題

7-1 ~ 7-3 助詞穴埋め課題

8-1 ~ 8-4 仮名振り課題

9-1 ~ 9-2 談話レベル文章の意味理解ならびに表出課題

COLUMN

1. 医師が失語症の専門家である言語聴覚士に求めること

2. ST1年目の帰り道

3.「今日は言語室に行ける。楽しみ!!」

4. 楽しい仲間たち

5.「失語症の方の深い悲しみを,人生経験の浅いSTの私が,受け止められるのでしょうか?」

6. 戦友

7.「言語室って,取調室みたい。行きたくない!」

8. 馬券が買いたくて,初めて家から外へ

9. 言語聴覚士だって昼食後は眠くなる!

文献

索引

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  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

  • ISBN:9784880021188
  • ページ数:136頁
  • 書籍発行日:2022年3月
  • 電子版発売日:2022年2月21日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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