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- 医学のあゆみ270巻12号 がんの多様性を司るがん間質のバイオロジー─新たな診断・治療法の創生につなぐ
商品情報
内容
企画:渡邉昌俊(三重大学大学院医学系研究科基礎医学系講座腫瘍病理学)
・日本では2019年6月から“がん遺伝子パネル検査”が公的医療保険の適用となり,いよいよがんゲノム医療の本格的開始となった.がんは遺伝子病であり,その浸潤・転移能などの特性が知られている.
・がん組織では正常組織固有の“構造”が喪失し,その喪失具合と“がん”の悪性・進展具合は密接に関連している.がん細胞は種々の細胞や基質と相互作用し,自分に有利な環境を作り出していくと思われる.
・本特集では,がんの多様性をがん間質の視点から研究されている先生方に最新の研究データと考えをまとめていただく.がん間質の役割に興味を持つ機会になれば幸いである.
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序文
はじめに
2015年1月に,アメリカのオバマ前大統領が「Precision Medicine Initiative」を発表した.患者のゲノムや生体分子情報に基づくprecision medicineが注目され,次世代シーケンサー(next generation sequencer:NGS)の出現により遺伝子を容易に検査できるようになった.日本でも,2019年6月から“がん遺伝子パネル検査”が公的医療保険の適用となり,いよいよがんゲノム医療の本格的開始となった.がんは遺伝子病であり,その浸潤・転移能などの特性が知られている1).この概念は治療介入を示唆する重要なモデルであるが,腫瘍の多様性や腫瘍環境(がん微小環境)などの重要な問題が欠けている.たとえば,腫瘍環境は種々の細胞と基質で構成される不均一な集合体であり,これががんの挙動あるいは治療抵抗性などに影響を与える.
“構造”と“機能”の関係を読み解くことは病理学の基本である.がん組織では正常組織固有の“構造”が喪失し,その喪失具合と“がん”の悪性・進展具合は密接に関連している.がん微小環境において,がん細胞は種々の細胞や基質と相互作用し,自分に有利な環境を作り出していくと思われる2,3).がん微小環境という複雑性に富んだ“構造”が何らかの“機能”を有するのか,“機能”など持たない,ただの喪失した“構造”にすぎないのか,興味が尽きない.
本特集では,がんの多様性をがん間質の視点から研究されている8名の先生方に最新の研究データと考えをまとめていただいた.がんの多様性を司るがん間質の“構造”と“機能”の関係が理解・解明され,がんという病を克服するための新たな診断・治療法が創生されることを期待する.また,本特集が読者の皆さんにとって,がん間質の役割に興味を持つ機会になれば幸いである.
渡邉昌俊(三重大学大学院医学系研究科基礎医学系講座腫瘍病理学)
[文献]
1)Hanahan D, Weinberg RA. Hallmarks of cancer:The next generation. Cell 2011;144(5):646-74.
2)Bhome R, Bullock MD et al. A top-down view of the tumor microenvironment:structure, cells and signaling. Front Cell Dev Biol 2015;3:33.
3)Alkasalias T et al. Fibroblasts in the Tumor Microenvironment:Shield or Spear? Int J Mol Sci 2018;19(5):1532.
目次
特集:がんの多様性を司るがん間質のバイオロジー─新たな診断・治療法の創生につなぐ
CAFsのバイオロジー概論――CAFsのがん促進能,細胞多様性およびエピゲノム変異……目澤義弘・折茂彰
がん関連線維芽細胞に依存した,がん細胞の浸潤機構……石井源一郎
がん細胞と線維芽細胞の物理的相互作用……加藤琢哉
前立腺がん治療反応性に関わる線維芽細胞の多様性……石井健一朗
がん抑制性機能を有するがん関連線維芽細胞の同定とその意義……榎本篤
がんによる血液凝固に基づくがん間質形成……松村保広
がん間質を標的としたバイオ医薬品の創薬ターゲット探索……鎌田春彦
TOPICS
【耳鼻咽喉科学】
外科的気道確保の現在……齋藤康一郎
【神経精神医学】
5-HT2A受容体の構造から解明された薬剤の受容体選択機構……島村達郎
【臨床検査医学】
標準採血法ガイドライン(GP4-A3)改訂のポイント……大西宏明
連載
【医学・医療におけるシミュレータの進歩と普及】
30.採血・静注シミュレータ……鈴木利哉
【健康寿命延伸に寄与する体力医学】
18.糖尿病の予防・治療と運動・減量・食事療法――メリットとエビデンスの限界……勝川史憲
【地域医療の将来展望】
3.行政とへき地・地域医療体制──これまで,そして今後に向けて……鎌村好孝
フォーラム
最新の揮発性吸入麻酔薬デスフルラン――患者に優しい麻酔法……境倫宏
【日本型セルフケアへのあゆみ】
1.健康と病気の情報を自ら知る……児玉龍彦
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書籍情報
- ISBN:9784006027012
- ページ数:70頁
- 書籍発行日:2019年9月
- 電子版発売日:2022年5月11日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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