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- 胆と膵 2021年8月号(Vol.42 No.8)【特集】 膵癌,膵炎の病態解明と新規治療開発にむけた研究の最前線
商品情報
内容
膵癌微小環境での補体因子が及ぼす癌進展機構への関与/膵癌肝転移における好中球細胞外トラップの役割/膵癌進展における酸化ストレス応答Keap1−Nrf2 経路の関与 ほか
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序文
序文
急性膵炎の基礎研究では膵腺房細胞内におけるオートファジー,ミトコンドリア,小胞体ストレス,細胞内カルシウム動態など,これらの機能異常が連鎖的に進行する病態メカニズムとして解明が進んでいる。また,膵腺房細胞のみならず,チモーゲン顆粒を貪食したマクロファージ内部のカテプシンB により活性化されたプロテアーゼを介してNF‒kB が活性化され,全身性炎症へ進行し重症化する機序がある。一方,基礎研究の進歩に比べ,急性膵炎の急性期治療は輸液,蛋白分解酵素阻害薬,抗菌薬,経腸栄養の早期開始が主体であり,薬物療法は数十年前からほとんど進歩していない。膵炎の進行や重症化阻止に有効な新規薬物療法の開発は,炎症性腸疾患やリウマチなどの他の炎症性疾患の薬物療法に比べて大きく遅れをとっている。重症急性膵炎の治療と予後改善には,内視鏡的インターベンション治療の貢献によるところが大きい。急性膵炎の進行,重症化の機序の解明は進歩しているので,その成果が臨床に反映されることが求められる。
慢性膵炎関連遺伝子変異はPRSS1 変異の発見以降,SPINK1,CFTR などの多くの遺伝子変異が発見されている。近年ではカルシウムを選択的に透過する膜タンパク質TRPV6 遺伝子変異が報告され,カルシウムチャンネルが膵炎に対する防御機能として作用することが報告された。これらの膵炎関連遺伝子変異の解明から新しい膵炎治療の開発が期待される。
オートファジーは不要なタンパク質や細胞内小器官などを分解し再利用することで,細胞の生存や発生,分化,恒常性の維持に必須な細胞内機構である。また,急性膵炎におけるトリプシノーゲン異所性活性化,ならびに不全状態は慢性膵炎発症などの疾患発生にも関与する。腫瘍との関連についてもさまざまな報告があり,癌の進行を促進または抑制することが知られている。膵癌の発生段階においてオートファジーは前癌病変の発生を抑制するが,進行した段階では腫瘍の発育を促進し,癌の時期による異なる作用が報告されている。KRAS 変異型膵癌細胞において,RAF‒MEK‒ERK カスケード阻害薬投与によりエネルギー代謝プロセスを阻害し,オートファジー依存性を高めると,オートファジー阻害剤との併用により腫瘍抑制効果を相乗的に増強することが報告された。オートファジー阻害薬と抗腫瘍薬併用の臨床試験が行われているが,膵癌におけるオートファジーの調節経路と効果の解釈が複雑で今後の更なる検討が必要である。
膵癌周囲の間質は癌微小環境として,膵癌の浸潤,転移,抗がん薬治療抵抗性など膵癌の悪性度を増強する相互調節機能を有することが知られている。膵癌微小環境には膵星細胞,癌関連線維芽細胞,免疫調節細胞,血管内皮細胞,骨髄由来抑制細胞などの多くの細胞が含まれ,エクソソームやさまざまなサイトカインや代謝産物を介した相互作用が豊富にある。近年,癌関連線維芽細胞には癌促進性と抑制性の2 種類があることが報告されている。膵癌間質を膵癌の治療標的とするさまざまな研究が行われているが,抗がん薬との併用でも期待される効果が得られず試験中断となる研究もあるなど,いまだ有効性は確立されていない。エクソソームはタンパク質やmicroRNA,mRNA などの機能分子を多数含み,発癌機構,浸潤,転移にかかわることから,診断のみならずエクソソームをドラッグデリバリーシステムとして用いるなどの治療応用の研究も行われている。
本企画では膵炎,膵癌に関する最新の研究情報を紹介し,膵炎,膵癌の病態解明と新規治療法開発のために,基礎研究と臨床医の共同研究の橋渡しの一助となることを期待する。
清水 京子
東京女子医科大学消化器内科
目次
特集:膵癌,膵炎の病態解明と新規治療開発にむけた研究の最前線 企画:清水 京子
序文 清水 京子
膵癌微小環境での補体因子が及ぼす癌進展機構への関与 高野 重紹ほか
膵癌肝転移における好中球細胞外トラップの役割 武居 晋ほか
膵癌進展における酸化ストレス応答Keap1−Nrf2 経路の関与 濱田 晋ほか
アドレナリンβ2 受容体を介した膵癌の神経―腫瘍間相互作用 高橋 良太
膵癌治療標的としての新規因子Vasohibin−2 佐藤 靖史
膵癌間質のヒアルロン酸代謝亢進による悪性化メカニズム 佐藤 典宏ほか
癌抑制性癌関連線維芽細胞の同定とその臨床応用について 水谷 泰之ほか
膵癌におけるエクソソームを用いた診断・治療への応用 高橋 賢治ほか
膵癌におけるcirculating tumor DNA(ctDNA)解析の有用性 本谷 雅代ほか
膵癌の分子サブタイプとEUS−FNA検体を用いた解析 須藤研太郎ほか
膵炎発症におけるリソソーム酵素とオートファジー 岩間 英明ほか
膵内・外分泌機能と亜鉛 山本 明子ほか
PI3K/Hippo経路と慢性膵炎 小玉 尚宏ほか
慢性膵炎のゲノム解析に関する最新の知見 濱田 晋ほか
慢性膵炎からの発癌メカニズム 松尾 洋一ほか
膵癌のメタボローム解析によるバイオマーカーと新規治療の開発 小林 隆ほか
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書籍情報
- ISBN:9784865174359
- ページ数:100頁
- 書籍発行日:2021年8月
- 電子版発売日:2022年6月29日
- 判:A4判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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