泌尿器外科 2020年4月号(Vol.33 No.4)【特集】全国自治体(市区町村)による前立腺がんPSA検診に対する根拠の薄い批判; 泌尿器科専門医不在の周回遅れの根拠のない批判を斬る

  • ページ数 : 138頁
  • 書籍発行日 : 2020年4月
  • 電子版発売日 : 2022年9月7日
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商品情報

内容

特集 全国自治体(市区町村)による前立腺がんPSA検診に対する根拠の薄い批判; 泌尿器科専門医不在の周回遅れの根拠のない批判を斬る
本特集企画の意義─米国と周回遅れの議論─/自治体によるPSA 検診実施への風圧の周辺事情/米国における近年の前立腺がんの傾向と背景因子の変化および日本の現状 ほか

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序文

序文


昨年11月23日の日本経済新聞朝刊記事を読んで唖然とした。

日本の5大がんの検診受診率を上げるには何が課題なのかというのが記事の表向きの趣旨と読み取れるが,本文を読むと5大がん以外の検診軽視に徹したものとなっている。中で,前立腺がんのPSA検診に対する公的補助がやり玉にあげられている。その根拠もおよそ10年以上前の米国で巻き起こったPSA検診の国家プロジェクトへの否定論に用いられたロジックをそっくりオウム返ししたものとなっている。現在では,その根拠は見直され,PSA検診を否定したために,進行前立腺がんの診断率が上向きに転じ,死亡率さえ増加の兆しを示すようになったというのに。これらの経緯は,本特集に寄稿してくださったエキスパートの方々の記事にまとめられている。

今回,本特集企画における序文に変えて,2012年に当時のJ-CaP研究会副理事長であられた宇佐美道之氏(故)が寄稿されたJ-CaP(http://j-cap.jp)ニュース・レターの文章を紹介したい。

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現役を離れて

宇佐美道之(J-CaP(NPO)副理事長)


現役当時の毎日続いていた緊張感から解き放たれ,時間の流れをゆっくり楽しむ毎日を過ごすようになってしばらく時が過ぎました。

新聞紙上では,暗いニュースが続いていますが,最近,私が尊敬しておりました米長永世棋聖が急逝されたと報道されました。69歳でこの11月末までご活躍されておられたにもかかわらず前立腺がんで亡くなられたということに愕然といたしました。闘病中「ふり返っても仕方ない。

人生全て感謝。」という意の御言葉があったと知りました。泌尿器科医であった私にはとても辛く響きました。進行癌の状態で発見されたと思われるからです。

現役当時,多くの方を早期診断し早期治療をさせていただいた一方,PSA検査を初めて受けられて異常高値で私のところへ来られ,その後の検査でリンパ節や骨へすでに転移してしまっている進行癌と診断し,患者さんとそのご家族に病状と予後を説明しなければならない辛さをどれ程経験してきたかを思い出します。PSA検査をもっと以前に,もっと広く受けられる社会環境を構築してこなかった泌尿器科医の努力不足ですと,患者さんの状況によっては思わず謝った方も何人かおられます。疫学の観点からはPSA検査を集団検診に取り入れる意義は低いという意見があり,泌尿器科学会と紛糾しております。しかし現場の目からしますとPSA検査を何らかの機会にもっと早く受けていてくださったら,根治まで持っていけた患者さんのグループは確実に存在すると断言します。

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宇佐美先生と同様の経験は,私自身も含めほとんどの泌尿器科専門医であれば,経験している事実である。

近年の報道で,前立腺がんの5年生存率が90%を越えていることを短絡的にとらえ,前立腺がんは予後の非常に良いがんであり,過剰診断・過剰治療が大きな問題との安易な考えが,前立腺がんの専門家である泌尿器科医の関与しないところで,流布しているようでならない。

このような状況は,PSA検診,あるいはPSA検査を容易にできる環境下での話であり,宇佐美氏の文章のようにPSA検査なしでは,早期がんとして前立腺がんを診断するのは不可能に近いという事実を医療関係者のみならず,すべての人がしっかりと認識すべきなのである。PSA検査が確立する以前の世界の状況や現在でもPSA検査が確立してない中低所得の国々の現状をかんがみれば異論をはさむ余地はない。日本をはじめ多くの医療先進国では,すでに,PSA検査によって発見された早期前立腺がんの治療ガイドラインは確立しており,早期がんに対する治療が適切に行われている。

PSA検診による前立腺がん発見率は他の5大がんの検診効率より10倍程度高率であり検査のコストも軽微である。前立腺がんの病期別治療法を理解しないと,治療コストや侵襲性の多寡に関する考察が支離滅裂になってしまい,あたかも高齢者の前立腺がんを早期に診断することが医療経済上問題とのロジックに走りかねない。

本当は,PSA検査という安くて効率の良い検査法で早期がんのうちに診断し,対処することが大切なのに! PSA検査をせずに進行した段階で診断した場合,たとえ高齢者であろうとも治療は不可欠であり,そのコストは早期がんに対する治療コストをはるかに凌駕することになる。

現在欧米では,HNPCに対して高価な新薬が,治療の第一選択肢として推奨される流れが止まりません。


東京大学大学院情報学環・学際情報学府総合癌研究国際戦略推進寄付講座
 特任教授
赤座 英之

目次

編集委員会緊急特集:全国自治体(市区町村)による前立腺がんPSA 検診に対する根拠の薄い批判; 泌尿器科専門医不在の周回遅れの根拠のない批判を斬る

序文

東京大学大学院情報学環・学際情報学府総合癌研究国際戦略推進寄付講座 特任教授 赤座 英之

本特集企画の意義─米国と周回遅れの議論─

東京大学大学院医学系研究科泌尿器外科学分野 久米 春喜

自治体によるPSA 検診実施への風圧の周辺事情

東京大学大学院情報学環・学際情報学府 河原ノリエ

米国における近年の前立腺がんの傾向と背景因子の変化および日本の現状

札幌医科大学医療統計学 樋之津史郎

前立腺がん検診の重要性─前立腺がん検診ガイドライン(2018 年版)から─

群馬大学大学院医学系研究科泌尿器科学 鈴木 和浩

前立腺がん検診の功罪─根拠の薄いPSA 検診中止意見に対する泌尿器科医の反論─

医療法人社団美心会黒沢病院泌尿器科 伊藤 一人,他

前立腺がん検診に多面的かつ公正な論議を望む

奈良県立医科大学泌尿器科学教室 藤本 清秀

座談会

高リスク転移性ホルモン療法感受性前立腺癌患者の臨床転帰を観察するレジストリ試験

松山 豪泰,溝上  敦,鈴木 蘭美

連載

第112回 泌尿器科領域におけるトラブルシューティング

長期間留置された尿管ステントに対する対処法

慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室 武田 利和,他

第32回 泌尿器科診療に役立つ周辺手技と処置

胃管・イレウス管留置法

東京都済生会中央病院救命救急センター 菅原 洋子

研究会記録

第12回 BCG 注入療法研究会記録

総説

新規アンドロゲン受容体阻害薬ダロルタミドの特徴および臨床試験成績:(第1 回)

非転移性去勢抵抗性前立腺癌患者における有効性および安全性

バイエル薬品株式会社研究開発本部オンコロジー開発 秋山 政直,他

臨床研究

去勢抵抗性前立腺癌患者を対象としたエンザルタミドの安全性および有効性の検討─長期特定使用成績調査の最終報告─

アステラス製薬株式会社メディカルアフェアーズ本部メディカル推進部 飯野 裕子,他

使用実態下における骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌患者を対象とした塩化ラジウム-223 の安全性と有効性─使用成績調査結果─

公益財団法人がん研究会有明病院総合腫瘍科 髙橋 俊二,他

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書籍情報

  • ISBN:9784865173697
  • ページ数:138頁
  • 書籍発行日:2020年4月
  • 電子版発売日:2022年9月7日
  • 判:A4判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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