医療 vs. 他業種 安全文化 十番勝負 他業種に学ぶ安全管理学

  • ページ数 : 224頁
  • 書籍発行日 : 2022年8月
  • 電子版発売日 : 2022年10月7日
¥1,760(税込)
ポイント : 32 pt (2%)
今すぐ立ち読み
今すぐ立ち読み

商品情報

内容

本書は、東京医科大学が10回にわたって開催した“異業種安全文化講演会”の概略と講演後に行われた講師との対談をまとめたものである。医療以外の様々な業種の安全の専門家から、それぞれの安全への取組みや安全管理の基本を学び、自らに、またはチームに、または組織にフィードバックさせ、自らの文化の一部として吸収する。明日の安全につながるヒントや叡智を得ることができる本書は、医療従事者をはじめ、安全業務に携わるすべての人に最適な一冊である。

※本製品はPCでの閲覧も可能です。
製品のご購入後、「購入済ライセンス一覧」より、オンライン環境で閲覧可能なPDF版をご覧いただけます。詳細はこちらでご確認ください。
推奨ブラウザ: Firefox 最新版 / Google Chrome 最新版 / Safari 最新版

序文

発刊にあたり

標語(スローガン)看板「 安全+第一」は、あらゆる業種の営業所や事業所で掲げられています。しかし、この10年に限っても悲惨な事故は後をたちません。2014年4月16日に発生した韓国の大型客船セウォル号沈没事故では300名以上、2016年1月15日に発生した軽井沢スキーバス事故では15人の犠牲者がでました。数多くの若者が亡くなる痛ましい事故であり、未だに私の脳裏に焼き付いています。そしてまたしても直近の2022年4月23日には知床遊覧船事故が繰り返されました。

事故原因が明らかになるにつれ、当然のように掲げられてきたスローガンの一部は、全くの〝まやかし〟であったことが露呈されました。人の命を扱う場面で必要な基本的安全概念が欠如し、業務効率や利益追求が優先され、安全体制の整備や安全教育はおろそかにされていたのです。多くの犠牲者が発生して初めて、〝まやかし〟が明らかになりました。つまり、事故が起きなければ、事業は当たり前のように継続されていたのです。かけがえのない人命が失われてやっと立ち止まるというのはあまりにも理不尽で、大きすぎる対価です。

一方、新型コロナウイルスが猛威を振るった2020〜2021年ほど「安心安全」という言葉が叫ばれた時期はありません。業界を問わず、サービスの提供に際して「安心安全」は欠かせないキーワードとなりました。有事とはいえ、濫用される「安心安全」がいささか陳腐に響くことは否めません。しかし、「安全文化」の確立につながる出来事として、前向きに捉えることはできそうです。

さて、東京医科大学は、2000年代初頭に起こした大きな医療事故(中心静脈誤穿刺による死亡事故、心臓血管手術連続死亡事案など)を教訓とし、2009年に医療の質・安全管理学分野(当時は医療安全管理学講座)を発足させました。以後、同分野と病院医療安全管理室を中心に、「大学病院の医療安全とは何か」を全職員で模索し、安全を極めるための終わりなき闘いに挑み続けてきました。その過程で開催を決めたのが、「異業種安全文化講演会」でした。多くのスタッフから「医療以外の業種に、安全につながるヒントや叡智はないか」と声が上がったこと、そして、他業界の痛ましい事故を自分ごととして捉えるフィードバックに意義を感じていたことが、私を講演会開催へと駆り立てました。

当初、安全について先駆的な取り組みをしている2、3の業種から講師をお招きしようと考えていました。しかし、異業種から得られる学びは想像以上に深く、最終的には、航空運航、テーマパーク、鉄道事業、建設業、ハイパーレスキュー、原子力事業、航空整備、環境整備、サイバーセキュリティ、宇宙開発という10種の業界から安全の専門家をお招きし、それぞれの安全に向かう思想や知恵、安全文化について意義深いお話を伺うことができました。どの回も大変聴き応えがあり、業界特有の安全対策に驚かされると同時に、安全に対する基本的な考え方は変わらないことも強烈に再認識できました。事故を限りなくゼロに近づけるため、講演者をはじめとした人々が継続的に活動されています。「基本は安全が最優先」という当たり前の安全文化の構築と醸成に、骨身を惜しまず取り組まれています。その事実が、私たちの安全への想いをより強めることにつながりました。この10回にわたる「異業種安全文化講演会」の記録が、医療安全の関係者のみならず、読者のみなさまの安全管理に役立つならば、望外の喜びです。講演会開催に際しては、早稲田大学理工学術院の小松原明哲教授のご指導、ご支援をいただきました。そして、和田 淳准教授、浦松雅史准教授を中心とした当教室関係者、東京医科大学病院医療安全管理室員に周到な準備をいただきました。ここに深く感謝申し上げます。

また、本書の編纂については、岡島 梓氏にきめ細かくご尽力いただきました。撮影は今福寛玄氏に依頼し、臨場感あふれる写真で良い記念にしていただきました。

最後になりましたが、すべての関係各位に心より感謝の意を表します。


令和4年 初夏

三木 保

目次

第1回 航空運航 「安全確保のためのチームワークとコミュニケーション」

講師:小林宏之(航空評論家(元 日本航空 機長)リスクマネジメント・危機管理講師)

はじめに

安全管理の要諦は「愚直なまでの基本確認の徹底」

現場の安全を確保する六つの習慣/安全・安心はチーム力で/

安全を支えるコミュニケーション術

まとめ

対談

第2回 テーマパーク 「ディズニーリゾートで考えるセーフティ」

講師:石坂秀己(接客向上委員会 & Peace 代表(元 オリエンタルランド研修インストラクター))

はじめに

笑顔で安全に働くための、シンプルで覚えやすい行動指針

ゴールから逆算すれば、おのずと行動は決まる/

職場の雰囲気を決定づける「ストロークとディスカウント」

すべてはゲストの安全のために

まとめ

対談

第3回 鉄道事業 「安全をどう高めていくか ― JR 東日本の取組み事例 ―」

講師:楠神 健(東日本旅客鉄道株式会社 JR東日本研究開発センター 副所長(ヒューマンファクター))

はじめに

人と仕組みを両輪で整えていく。JR東日本の安全計画

安全文化を根づかせるために

安全マネジメント体制を

磨くために

安全力アップに必要なノンテクニカルスキルを磨く「ヒューマンファクターツール」

安全力を高めるために、

社員や組織はどうあるべきか

まとめ

対談

第4回 建設業 「建設に関わるすべての人の安全を目指して ―大林組の安全に対する取組み ―」

講師:田渕成明(株式会社大林組 東京本店 建築事業部安全部 部長)

   甲賀一也(株式会社大林組 東京医科大学西新宿工事事務所 所長)

はじめに

死亡災害ゼロを目指す大林組のATKY活動

一般的な「想定外」まで想定した、念入りな安全対策/

東京スカイツリーの建設現場で行われた安全意識高揚への取組み

多くの技術者をまとめ日本一の大学病院を建設するために/

東京医科大学病院の建設を支えている安全への取組み

まとめ

対談

第5回 ハイパーレスキュー 「災害救助における安全管理」

講師:五十嵐幸裕(東京消防庁 第六消防方面 本部長)

はじめに

事故現場での経験を生かし、消防庁が高めてきた安全管理

最前線で働く人を支えることが、現場の安全に

つながっている

想定外しか起こらない苛烈な現場でも、各自が持ち場を守ること

まとめ

対談

第6回 原子力事業 「福島第一原子力発電所の事故対応からの教訓 ―レジリエンスエンジニアリングの観点から―」

講師:吉澤厚文(日本原子力発電株式会社 フェロー)

はじめに

人間の行動の原動力は、感情の揺れから生み出される

現場の状況が伝わらないことは、なぜ問題なのか/

「人」は、システムの安全を脅かすリスクか、安全に必要な資源か

人の力を信じるSafety-IIとレジリエンスエンジニアリング

という考え方

まとめ

対談

第7回 航空整備 「航空機の整備 ― 点検・確認で運行の安全を守る ―」

講師: 酒井忠雄(エヌエス航空技術総研代表(元 日本航空整備本部 副本部長))

はじめに

安全を守るために、関わるすべての人、場、システムが役割を果たす

五感を働かせ、整備業務/

事故を起こさないために、過去に学び、安全文化を育てていく

安全を守る鍵「コミュニケーション」は、人間関係を温める

ことから

真の原因を探るための「ジャスト・カルチャー」

まとめ

対談

第8回 環境整備 「施設環境から考える患者安全」

講師:筧 淳夫(工学院大学建築学部 建築デザイン学科 教授)

はじめに

療養環境に潜む患者安全リスクに意識を向ける/スタッフ本人ではなく、作業環境にも事故のリスクは潜んでいる/

医療事故の背景には、患者の高齢化や看護単位にまつわる課題がある

まとめ

対談

第9回 サイバーセキュリティ 「サイバー空間で戦うホワイトハッカー」

講師:佐々木伸彦(ストーンビートセキュリティ株式会社 代表取締役)

はじめに

インターネットを取り巻くセキュリティ脅威

インターネットにつながるデバイスから情報が盗まれる実態/

「守るべき情報資産」を脅威から守るためのセキュリティ対策

強い倫理観をもつホワイトハッカーとともに、適切なセキュリ

ティ対策を

まとめ

対談

第10回 宇宙開発 「生命を預かる現場でのチーム連携強化 ― 宇宙を事例として ―」

講師:山口孝夫(有人宇宙システム株式会社(元 宇宙航空研究開発機構(JAXA))

はじめに

事故を反省し、異業種に学んで構築したチーム連携力の強化訓練

未知の環境に挑むための「脱マニュアル主義」/

プレッシャーのかかる環境で任務を果たすチーム連携力の強化法

VUCA(ブーカ)の時代に必要な資質が磨かれる宇宙訓練/

まとめ

対談

【特別対談】 「10回の講演会を振り返って」

三木 保(東京医科大学名誉教授、前 東京医科大学病院長・医療安全管理部長)×

小松原明哲(早稲田大学理工学術院 創造理工学部 経営システム工学科 教授)

あとがき ー異業種安全文化講演10話を伺って〜imagine〜 ー

便利機能

  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応
便利機能アイコン説明
  • 全文・
    串刺検索
  • 目次・
    索引リンク
  • PCブラウザ閲覧
  • メモ・付箋
  • PubMed
    リンク
  • 動画再生
  • 音声再生
  • 今日の治療薬リンク
  • イヤーノートリンク
  • 南山堂医学
    大辞典
    リンク
  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応

対応機種

  • ios icon

    iOS 10.0 以降

    外部メモリ:11.1MB以上(インストール時:24.4MB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:44.3MB以上

  • android icon

    AndroidOS 5.0 以降

    外部メモリ:11.1MB以上(インストール時:24.4MB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:44.3MB以上

  • コンテンツのインストールにあたり、無線LANへの接続環境が必要です(3G回線によるインストールも可能ですが、データ量の多い通信のため、通信料が高額となりますので、無線LANを推奨しております)。
  • コンテンツの使用にあたり、M2Plus Launcherが必要です。 導入方法の詳細はこちら
  • Appleロゴは、Apple Inc.の商標です。
  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

  • ISBN:9784621307403
  • ページ数:224頁
  • 書籍発行日:2022年8月
  • 電子版発売日:2022年10月7日
  • 判:四六判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

まだ投稿されていません

特記事項

※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。

※コンテンツの使用にあたり、m3.com 電子書籍が必要です。

※eBook版は、書籍の体裁そのままで表示しますので、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。