特集1:絶対苦手分野にしない 鼻副鼻腔病変の画像診断
勤務先が耳鼻咽喉科を標榜していなくとも,頭部のCTやMRIで偶発的に副鼻腔の腫瘤を認めた,18F–FDG PETで鼻腔にFDGの異常集積を認めた,などの理由から鼻副鼻腔のCTやMRIが施行され,診断レポートの作成に迫られた経験はないでしょうか? 普段は頭頸部画像診断にほとんどかかわらないけれど,鼻副鼻腔のCTをなんとなく危うい思いをしながら読影せざるをえなくなったことはありませんか?そんなときほとんどの先生方は頭頸部領域の画像診断に関連する書籍を引っぱり出し,それを参考にしながらレポートを作成していることと思います。
洋の東西を問わず,頭頸部画像診断学の優れた教科書はたくさんあり,疾患名,提示画像,図の説明などとともに,一般的知識,診断基準や治療法などがまとめられていますが,実践的なレポートの作成法を鼻副鼻腔領域について系統的に記述したものはないように思います。インターネットは多くの情報を手軽に得られる優れたツールですが,レポート作成のポイントについて具体的に詳述したウェブサイトを私は目にしたことがありません。
そこで本特集では鼻副鼻腔領域のCT・MRIの画像を提示し,“患者の診療に役立つレポート“を完成させるために必要な基礎知識,画像のどこに注目し,どのように観察し,得られた情報をどのように解釈して文章にまとめればよいのか,といったことに主眼を置いて疾患別にまとめました。
執筆は頭頸部画像診断について豊富な臨床経験をおもちの先生方にご依頼しました。まず,鼻副鼻腔とその周囲の正常画像解剖については勇内山大介先生らにお願いしました。次いで,CT・MRIのレポート作成については,齋藤尚子先生に副鼻腔炎,髙井由希子先生らに良性腫瘍,久野博文先生に悪性腫瘍,荻野展広先生らにそのほかの重要な疾患について,初学者にもわかりやすく,ベテランにも新しい発見があるように解説していただきました。奇をてらった面倒そうなテーマであったにもかかわらず,皆様執筆を快諾してくださったと聞きおよんでいます。この場を借りて感謝の意を表したいと思います。
でき上がったものを通読してみると,外傷を除けば日常診療においてCT・MRIで遭遇しうる大部分の鼻副鼻腔疾患は網羅されたと考えています。鼻副鼻腔領域の画像診断に苦手意識のある先生方にも,自信のある先生方にも,読影室,検査室などで今すぐお役に立つ特集になったと確信しています。試しに一読してから,鼻副鼻腔のCT・MRIを読影してみてください。
企画・編集:浮洲龍太郎 北里大学医学部 放射線科学画像診断学
特集2:COVID-19ワクチン関連の画像所見
新型コロナウイルスの世界的なパンデミックが始まってから,はや3年が経とうとしている。日本国内でも,想定を超える第8波に見舞われ,2023年1月末現在で累計3,300万人を超える感染者が報告されている。
ちょうど1年前,COVID–19後遺症の特集を本誌で組ませていただいた。そのときはポストコロナを見据えた企画であったが,現時点でもまだまだパンデミックの終息はみえない状態である。2023年1月末現在,日本国民の6割以上がCOVID–19ワクチン3回目を接種終了している。4回目以降の接種として,従来株およびオミクロン株BA.1,または従来株およびオミクロン株BA.4–5に対応した2価ワクチンが接種可能となったが,ウイルス変異とのいたちごっこは続き,変異株対応可能なユニバーサルワクチンの開発まで,まだまだCOVID–19ワクチンとは縁が切れない状態である。日本政府はついに5類への移行を決定し,季節性インフルエンザワクチンのように,毎年COVID–19ワクチンを打ち続けるという噂も現実味を帯びてきた。否が応でもCOVID–19ワクチン接種後の患者をみることは避けて通れないし,意外にも画像にさまざまな所見が現れてくる。
本特集では,TVなどのマスメディアでもおなじみの日本医科大学の北村義浩先生にCOVID–19ワクチンの基本について解説いただいた。『臨床画像』の長い歴史のなかでも,ワクチンの構造や免疫について解説した企画はまれであると思うが,このmRNAというユニークな構造のワクチンを放射線科医といえども一度おさらいしておく機会になればと思う。
北海道循環器病院の相川忠夫先生らにはCOVID–19ワクチン関連の心血管合併症を,自治医科大学附属さいたま医療センターの真鍋 治先生らにはCOVID–19ワクチン後のPET所見について,ミシガン大学の黒川真理子先生らにはCOVID–19ワクチン後の画像所見(中枢神経そのほか)についてと,放射線科医として目にする可能性のある画像所見を中心にご解説いただいた。
COVID–19ワクチンによる副反応なのか,現時点では証明しえない部分も多いが,われわれが前向きにデータを積んでいくことでしかエビデンスとして確立できない。まずは問診などで接種歴を確認,所見を拾い,疑うという基本が大事である。
本特集が明日からの皆様の診療にお役に立てば幸いである。
企画・編集:真鍋徳子 自治医科大学附属さいたま医療センター 放射線科