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- 救急医学2023年3月号(47巻3号) 人類 対 餅!?;窒息を科学する
商品情報
内容
Ⅰ.窒息に関する基礎知識
Ⅱ.窒息の予防と早期発見・対応
Ⅲ.窒息解除の手技とそのエビデンス ほか
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序文
特集:人類 対 餅 !? 窒息を科学する
人類の歴史は,まさに窒息との戦いの歴史です。
ヒトの喉頭はほかの哺乳類に比べて低く,類人猿などと比べても顕著に尾側にあります。乳幼児は例外的に1 歳半頃までは喉頭の位置が高く,ミルクを摂取しながら息を吸うことができますが,成長につれて喉頭位置が下がっていき,話ができるようになる頃には窒息のリスクが著明に高まります。その後は死ぬまで,窒息に怯えて生きていくことを強いられるのです。ヒトは,「話す」という機能を手に入れる代わりに,「食事をする」というもっとも基本的な行為の最中に突然死する,窒息という身近で重大なリスクを抱えて生きることになりました。
しかし,ヒトも,窒息という脅威に対していつまでもずっと黙っているわけではありません。1974年に,米国のハイムリック医師が腹部突き上げ法,通称「ハイムリック法」を発表しました。その手技によって窒息が解除されたという症例報告や小規模研究でのポジティブな効果から,ハイムリック法は気道異物による窒息の基本的な解除手技となり,約50年が経過しています。しかし,その効果を支持するエビデンスの質はいまだ低く,ハイムリック法による胃破裂や脾損傷などの合併症も複数報告されています。また,ハイムリック法の最大の問題点の一つ,高齢者による実施の困難性は解決されておらず,老老介護社会となった現在において,窒息解除のもっとも効果的な方法が何であるかは明らかになっていないのが現実です。
人類と窒息の戦いは,いまだに終わりがみえません。とくに日本は,世界でもっとも高齢化が進んでいるにもかかわらず,窒息リスクが高いもの(例えば,餅)を好んで食べ,窒息リスクが高い風習(例えば,恵方巻き)もある,“戦いの激しい国”です。本誌読者の救急医にとっても,窒息との戦いは日常茶飯事でしょう。だからこそ「窒息」は,しっかりと学び理解すべき,重要なテーマと考えます。
そこで今号では『人類 対 餅⁉ 窒息を科学する』と題し,窒息をとことん深掘りし,考える特集を企画しました。窒息の診療や研究に携わるエキスパートが,窒息の疫学・研究の最前線や,臨床で役立つ窒息解除手技のポイント・エビデンスをまとめる,まさに集大成的な特集です。非常に身近で,でもなかなかしっかり勉強する機会がないであろう窒息について,多くの救急医の先生方に改めて興味をもっていただく,貴重な機会になると信じています。
日本人 対 餅。人類 対 窒息。この永年の争いを,私たちの代で終わらせましょう。
特集企画ゲストエディター:ニューメキシコ大学医学部 乗井 達守
目次
特集
Ⅰ.窒息に関する基礎知識
人類の“負の進化”と窒息
新潟医療福祉大学リハビリテーション学部理学療法学科 奈良 貴史
窒息に関する日本・世界の疫学
筑波大学ヘルスサービス開発研究センター 谷口 雄大
Ⅱ.窒息の予防と早期発見・対応
窒息予防を考慮した嚥下評価,食形態の選択
日本医科大学付属病院 杉山 理恵
摂食嚥下リハビリテーションの重要性
鉄蕉会亀田リハビリテーション病院 永田 智子
窒息の早期発見の重要性
日本医科大学救急医学教室/日本医科大学付属病院高度救命救急センター 五十嵐 豊
窒息対応に関する啓発・教育の取り組み
日本医科大学医学部 赤岩 茉莉 他
Ⅲ.窒息解除の手技とそのエビデンス
背部叩打法と腹部突き上げ法
日本医科大学救急医学教室/日本医科大学武蔵小杉病院救命救急センター 吉野 雄大 他
マギール鉗子による気道異物除去
大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター 酒井 智彦
掃除機および携帯型suction deviceを用いた気道異物除去
大阪歯科大学附属病院歯科麻酔科 佐久間 泰司
気管挿管,en bloc法,Down & Up法
自治医科大学附属さいたま医療センター集中治療部 深野 賢太朗
Ⅳ.患者・状況別の対応と注意点
病院前における窒息対応
日本体育大学大学院保健医療学研究科/日本医科大学付属病院高度救命救急センター 須賀涼太郎 他
小児の異物誤嚥による窒息の現状と予防
東京警察病院救急科 山形梨里子 他
精神疾患を有する患者の窒息の特徴・対処法
総合病院国保旭中央病院神経精神科 大塚 祐司
介護施設や医療施設内における窒息事故の特徴と課題
ニューメキシコ大学医学部 乗井 達守
窒息に関する医療訴訟から学ぶ
増田・横山法律事務所 増田 聖子
窒息Tips
ヘビはどうして,獲物を丸呑みしても窒息しないの?
日本大学生物資源科学部 竹内 寛彦
餅はどうして危ないの?
地域医療機能推進機構大阪病院救急部 永田 慎平
窒息しにくい食事のひと工夫
日本医科大学付属病院栄養科 酒井 良子
通信指令員による窒息対応の口頭指導
京都橘大学健康科学部救急救命学科 北小屋 裕
「餅すすり」って何?
佐賀大学医学部附属病院高度救命救急センター 木庭 真由子
連載
出張版Dr.ʼs Prime Academia
第3回 維持血液透析患者の回診 診るべきポイント
岐阜大学医学部附属病院医師育成推進センター 伊藤 貴康
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書籍情報
- ISBN:9784012004703
- ページ数:128頁
- 書籍発行日:2023年3月
- 電子版発売日:2023年3月8日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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