臨牀消化器内科 2023 Vol.38 No.1 消化管内視鏡治療のリスク克服に向けて

  • ページ数 : 120頁
  • 書籍発行日 : 2022年12月
  • 電子版発売日 : 2022年12月22日
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商品情報

内容

特集「消化管内視鏡治療のリスク克服に向けて」

内視鏡治療は,大きく待機的(予定された)内視鏡と緊急内視鏡に,また通常(普及した)内視鏡と先進内視鏡に分けることができ,一般的にいずれも後者のほうが治療に伴う偶発症リスクが高い.今回の特集では,治療内視鏡を待機的,緊急,先進という3 つのカテゴリーに分け,治療内視鏡に潜むリスクとその対処法についてわかりやすく解説していただいた.

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序文

巻頭言

内視鏡診療の進歩は目覚ましく,診断のみならず治療においても外科手術に匹敵するような高度な治療が行えるようになった.一方,高度で複雑な治療を行うに当たり,医療安全を担保することも求められる.消化管内視鏡治療の歴史は,polypectomy を嚆矢として,内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)1)が開発され,その後,内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)2)が登場し,瞬く間に普及していった.ESDは一括切除が可能であり,従来のEMRでは切除が困難であった大型病変や瘢痕症例も切除ができるメリットがある反面,従来のEMRでは経験しなかった長時間の治療や遅発穿孔などの偶発症をいかに予防するかを議論しながら進歩してきた.

内視鏡治療を安全に施行するためのリスク管理では,さまざまなリスク因子(患者の年齢,合併疾患,抗血栓療法,鎮静,感染対策など)を考慮する必要がある.昨今の診療の現場では,80歳以上の高齢者の割合が激増し,複数の基礎疾患を併存するハイリスク症例も多く経験する.抗血栓療法を施行している割合も高く,抗血小板薬,抗凝固薬については出血と血栓塞栓症のバランスを考慮したうえで休薬を行わねばならない.2017年に日本消化器内視鏡学会から「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」(追補版)3)が出された.直接経口抗凝固薬(DOAC)を含めた抗凝固薬の対応について記載された追補版であり,エビデンスが乏しい領域ではあるが,抗血栓薬の休薬を最小限にする取り組みが示され徐々に浸透しつつある.

長時間にわたる治療内視鏡において鎮静は必須であるが,鎮静時に使用する薬剤は保険適用がなく,おもにベンゾジアゼピン系薬剤が適用外で使用されている現状がある.鎮静薬による偶発症は,前処置に関連する偶発症のなかでも頻度が高く,死亡例も報告されている.さまざまな基礎疾患を併存する高齢者が増加し,鎮静下で内視鏡治療を行う場合には,事前に基礎疾患の状態を把握するとともに,十分なモニタリングを併用したうえで治療に臨むことが重要である.日本消化器内視鏡学会から「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン」(第2版)4)が出されているが,保険適用を取得している薬剤がない状況での制限された内容となっている.

感染症対策も重要であり,とくに新型コロナ感染症の蔓延により内視鏡診療の現場においては感染リスクを常に念頭におかなければならない.日本消化器内視鏡学会からは防護策,内視鏡室の環境など感染拡大のなかでいかに内視鏡診療を安全に行うかについての提言が示されている.

緊急の内視鏡治療もさまざまな病態に対して日常で行われている.緊急内視鏡治療の特殊性として,夜間や休日などマンパワーが少ないなどの悪条件で行われる場合が多い.消化管出血や胆道感染による敗血症性ショックなど,全身状態の管理を行いながら内視鏡治療を施行する場面も多々経験する.全身状態が悪い状況では十分な全身管理のもとで内視鏡治療を行うことが要求されるが,実際の現場では少ないマンパワーのもとで治療を行っているのが現状である.ハイリスク患者の緊急内視鏡治療においては,可能なかぎりの人員を集めて,十分なモニタリングを併用したうえで治療を行うことが望まれる.一方では,2024年4月から医師に対する「働き方改革関連法」が適用されるため,多くの医療機関が対応に追われている.タスクシフト,夜間・休日のオンコール制度などの見直しが必要であり,そのためには医師あるいはコメディカルの意識改革など従来の職場環境を大きく見直さねばならない.高齢者やハイリスク患者が増加するなか,安全を担保しなければならない一方で,医師の業務時間は制限されるという難しい課題を突き付けられている.

一方,治療が高度化するにもかかわらず,周術期管理については標準化した指針が示されておらず,施設ごとに行われているのが現状である.内視鏡治療を含めた内視鏡診療を安全に行うために日本消化器内視鏡学会の附置研究会「内視鏡検査・周術期管理の標準化に向けた研究会」が2016年春に発足した.日本全国から内視鏡診療に携わる医師のみならず,看護師や技師も参加し活発な議論を行った結果,2022年6月に「消化器内視鏡検査・周術期管理の標準化ハンドブック」(日本メディカルセンター)が出版された.医療安全の観点からも,周術期管理を標準化して行うことは高度な内視鏡治療を高齢者などのハイリスク患者に行ううえでは必須と考える.今回のハンドブックはまず基本となる内容を示し,周術期管理を標準化していくうえでの第一歩である.今後は本ハンドブックを検証しながら,さらにブラッシュアップしていくことが重要である.

消化管内視鏡治療は今後もさらに進化し,早期の消化管腫瘍の多くで内視鏡治療を行う時代が到来するものと確信している.内視鏡治療をさらに発展させるためには,日本消化器内視鏡学会やその他の学会から出されているガイドラインを遵守して治療を行うことが大前提となる.ガイドラインの適応を逸脱して治療を行い,重篤な合併症で患者を失うことは避けねばならない.


文献

1) Tada M, Karita M, Yanai Y, et al:Treatment of early gastric cancer using strip biopsy, a new techniquefor jumbo biopsy. Takemoto T and Kawai K(eds):Recent topics of digestive endoscopy. 137‒142, Excepta Medica, Tokyo, 1987

2) 細川浩一,吉田茂昭:早期胃癌の内視鏡的胃粘膜切除.癌と化学療法 25;476‒483,1998

3) 加藤元嗣,上堂文也,掃本誠治,他:抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン 直接経口抗凝固薬(DOAC)を含めた抗凝固薬に関する追補2017.Gastroenterol Endosc 59;1549‒1558,2017

4) 後藤田卓志,赤松拓司,阿部清一郎,他:内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2 版).Gastroenterol Endosc 62;1637‒1681,2020


田邉  聡
Satoshi Tanabe
*北里大学医学部新世紀医療開発センター

目次

【特集目次】 「消化管内視鏡治療のリスク克服に向けて」

巻頭言 /田邉  聡


1.待機的内視鏡治療に潜むリスクとそのマネジメント

(1)食道・胃静脈瘤治療/引地 拓人 他

(2)食道EMR/ESD/吉井 俊輔,石原  立

(3)PEG/櫻谷美貴子,比企 直樹

(4)胃EMR/ESD/八田 和久 他

(5)大腸ポリペクトミー/豊島  治 他

(6)大腸EMR/ESD/山村 健史 他

(7)消化管ステント/佐々木 隆

2.緊急内視鏡治療に潜むリスクとそのマネジメント

(1)上部消化管止血術/舩坂 好平 他

(2)下部消化管止血術/新倉 量太

(3)異物除去/保坂祥介,小野 敏嗣 他

(4)結腸軸捻転解除術/木下  淳,井口 幹崇

3.先進内視鏡治療に潜むリスクとそのマネジメント

(1)経口内視鏡的筋層切開術(POEM)/井上 晴洋 他

(2)内視鏡的逆流防止粘膜切除術/太田 和寛,竹内 利寿 他

(3)十二指腸EMR/ESD/窪澤陽子,加藤 元彦 他

(4)小腸内視鏡治療/矢野 智則

[連載]

大腸ポリープに挑む

 第8回 出血傾向にある患者における大腸ポリープ切除の注意点/間部 克裕    

「胃炎の京都分類」の使い方/第7 回 腸上皮化生の診断(WLI)/川村 昌司    

内視鏡の読み方/大腸炎症性筋腺管ポリープ 小澤/俊文 他  

消化管異物の診断と治療/食道異物の診断と治療/石山晃世志 他  

胆 膵超音波内視鏡の読み方と描出法

 第7回 胆囊病変/竹下宏太郎,肱岡  範    

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書籍情報

  • ISBN:9784004003801
  • ページ数:120頁
  • 書籍発行日:2022年12月
  • 電子版発売日:2022年12月22日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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