Dr.平岩 動画で直伝 子どもの発達障害 外来診療の工夫

  • ページ数 : 256頁
  • 書籍発行日 : 2022年11月
  • 電子版発売日 : 2022年12月28日
¥4,400(税込)
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商品情報

内容

発達障害が認知されるようになり,外来で子どもを診ている医師なら誰でも気になる子に遭遇するようになった.発達障害の第一人者 平岩幹男先生が,かかりつけ医に向けて,こだわり,忘れ物,けんか,偏食,学習障害,不登校など,困りごとを少しでも軽くする対応策を伝える.専門家として親子と一緒に悩んだ経験から得た,外来での言葉かけ,保護者への助言,福祉の利用は即実践できる.QRコードから,各テーマを深掘りしたYouTube動画に簡単にリンク!

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序文


発達障害を専門としていなくても,地域で医療に貢献していただいている先生方のところには,さまざまな子どもたちが訪れます.発達障害を抱えている子もそうでない子も,抱えているかどうかわからない子どもたちも診療室を訪れることがあると思います.

健診や予防接種だけではなく,何か困ったときにいわゆるon demandで相談できる先生がいてくださることは,子どもたちにとっても保護者にとっても,とても心強いことだと感じています.

実際に地域で活動しておられる先生方とお話をする機会もしばしばありますが,私の主な診療領域である発達障害については,どう対応するのか,どこまで対応すればよいのか,どこに紹介すればよいのかなどの質問を受けることが多々あります.それについての私なりの答えを本書にまとめてみました.

発達障害という言葉にもみられる「障害」とは,何らかの症状があって,社会生活を送るうえでその症状のために困難が生じた場合に使われるのであり,ただ症状があるだけでは身体障害などとは異なり,障害と呼ぶことはできません.

社会生活上の困難は,それぞれの環境によっても主観によっても判定が異なることがありえますので,なかなか絶対的基準とはなりにくい面があります.たとえば落ち着きのなさや片づけが苦手などのいわゆるADHDの症状は私にもありますが,何とか日常生活を送っているとすれば,それは障害とは呼ばれません.同じように私には自閉症スペクトラム障害でしばしばみられる過集中もありますが,原稿を書いていても時間になれば会議に参加するなどはできますので,これも障害とはいえないかもしれません.そう考えれば発達障害のかけらは,大小は別としても誰もが抱えているものだと感じています.

このように,障害という診断が必要なのではなく,社会生活上の困りごとがあれば,それに対してどう対応するかがより重要であることが理解できると思います.かかりつけ医にとって,やってくる子どもたちはすべて「かけら」を抱えています.しかし,それによって困難を抱えている場合もあればそうでない場合もあります.困難を抱えていても,診断やそれに基づく対応がされているとは限りませんが,地域医療ではその子が抱えている「困難」に何らかの手を差し伸べることが多くなると思います.その手の差し伸べ方によって,子どもたちの抱える困難が軽減することもあれば,逆に増強してしまうこともあると思います.それを軽減するための手立てについても,2章を中心としてお話しさせていただきます.

たとえ診断を受けて専門医療機関に受診していたとしても,子どもたちは地域で暮らしていますから,感染症でも予防接種でも腹痛でも,かかりつけ医のところを訪れます.そのときにBPS(bio-psycho-social),すなわち「からだ」「こころ」「社会性(対人関係)」の観点から,「からだ」の主訴であったとしても「こころ」「社会性」を見通すことも必要になることがしばしばありますし,発達障害の抱える困難さの多くはそこに存在しています.

子どもたちは何かがあって,必要になったときにかかりつけ医のところを訪れます.自分は行きたくないけれども保護者に連れられていやいやながら受診する思春期の子どもたちも,もちろんいるかもしれません.

一目見ただけではわからない,しかし話していくうちにその子が抱える困難が見えてきたとき,必要なのはプライマリケアで何ができるかであり,疑ったから専門医療機関に紹介すればよいというものではないと思います.そして専門医療機関が少ないことに加えて,どこまで踏み込んで対応してくれるのかという問題も大きいと思います.

発達特性や悩みごとに気がついたときに,「様子を見ましょう」といってとりあえず先送りされた子どもたちに,これまでも出会ってきました.地域の先生方は普段の様子をご存知だからこそ,何かに困っているときのサインにも気づきやすいと思いますし,保護者も相談しやすいことが多いと思います.そのため「様子を見ましょう」ではなく,少しでも具体的なアドバイスをしていただくことができればと考えたことも,本書をまとめるきっかけになりました.自分自身でも試行錯誤を続けながら外来診療を行っている日々ですが,かかりつけ医の先生方のお役に少しでも立つことができればと願っています.そこで2章には「言っていただきたくないこと:Don’t say」と「代わりに言っていただきたいこと:Say instead」を入れました.

また,これまでにもこの領域について無料のYouTube動画での発信を行ってきました.動画はすでに100本を超え,さらに内容を充実すべく作業中で,本文の内容や説明を補完するものとして,本文中にQRコードを掲載しています.動画は基本的には医師向けではなく,一般向けに作成していますので,保護者の方などにQRコードを読み取っていただいてご覧いただくなどの利用も問題はありません.

本書は,参考図書については巻末に一括掲載するとともに,それぞれの項目のところに関連図書を番号で示しました.関連文献についてはなるべく新しい総説(review)などを中心として,各項目の最後にQRコードで示しました.ご活用いただければと思います.

本書を作成するにあたっては,70歳を過ぎていることもあって,自分の思い込みに陥りやすいことから,どちらも発達障害診療を専門にしていない女性小児科専門医X先生,男性小児科専門医Y先生に原稿のチェックをお願いいたしました.ご協力に心より感謝申し上げますとともに,編集を担当していただいた中山書店の益子弘美さんにも深謝いたします.


2022年10月

平岩幹男(Rabbit Developmental Research)

目次

1章 発達障害をどう考える

発達障害の基本的な考え方

発達障害という表現について

発達障害はどこにでもある

診断がゴールではない

診断よりも対応を

地域医療の協力は欠かせない

発達障害のさまざま

発達障害のさまざま

自閉症スペクトラム障害(自閉スペクトラム症)

注意欠陥・多動性障害(注意欠如・多動症)

特異的(限局性)学習障害

 ディスレクシア

 算数の障害

発達性協調運動障害

その他の発達障害

 Tourette障害

 選択性鍼黙

 吃音

多様性と重なり・診断とグレーゾーン

発達検査・知能検査

子どもたちへの対応-療育や介入をめぐって

健診と園医・学校医の果たす役割

診断書・意見書

自立支援医療受給者証

訪問看護指示書

特別支援学級,特別支援学校

特別児童扶養手当

合理的配慮

障害基礎年金

メモ:連携支援・ケースカンファレンス

2章 外来でできる発達障害対応

幼児後期~学童期の子どもとのインタビュー

思春期の子どもたちとのインタビュー

慎重に言葉を選ぶ

BPSに基づく面接対応

問診票の活用

言語発達の遅れ

言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション

いつ(適正年齢), どのように診る

言語発達の遅れで考えられるのは

 難聴

 知的障害

 表出性言語遅滞

 自閉症スペクトラム障害(ASD)

言葉かけの基本

ほめる・叱る

NG (No Good) ワード(使いたくない表現

3大NGワード

失敗の予告

多動・衝動

ABC分析による対応

練習-ライフスキルトレーニング

忘れ物が多い

百均でも買える対応グッズ

 フリクションペン

 カラビナ

 傘,水筒

 洗濯ばさみ

 リストアップ

忘れ物が急に増えたとき

こだわり,感覚過敏

感覚過敏

聴覚過敏

触覚過敏

味覚過敏

嗅覚過敏

かんしゃく,パニック

切り替えができない

気持ちの切り替えと行動の切り替え

 じゃんけんで負けたら「まあ,いいか」と言ってみる

 クールダウントレーニング

 がまんシール

対人トラブルが多い

不潔な行動,不適切な発言

あいさつ,お願い,ヘルプサイン

人との距離感

集団になじめない,友だちができない

質問されることが苦手,話しだすと止まらない

しゃべらない

しゃべらない子への対応

吃音

偏食とその周辺

偏食相談

小児歯科への紹介

給食で食べられたものを家庭でも

保護者が食べてみせる

調理法の工夫

学校給食

睡眠トラブル

影響要因への対策

 生活リズムの安定

 むずむず脚症候群

 運動量

 気圧,騒音

 ICT機器

 睡眠導入剤

読み書きの苦手さ

ディスレクシア

 症状

 対応方法一段階的練習とソフトの活用

算数の苦手さ

姿勢を保つのが苦手

ひこうき, かかし

リングウィッティ,スタイルキッズ

バランスボール

ぐっポス

縄跳び

その他のサポート用具

トレキング

いじめ

不登校

ICT機器との付き合い方

digital native世代

スマホ

パソコン,タブレット

ゲーム

SNS

不定愁訴

聴くことから始める

うつ病

希死念慮

子どもの避難所としてのかかりつけ医

性の問題をめぐって

法律

マスターベーション

人工妊娠中絶

LGBT

セクハラ

保護者とどう情報を共有するか

保護者は気にしていない?

ドアノブ・コメント

投薬はどこまでするか

メチルフェニデート(コンサータ®), リスデキサンフェタミンメシル酸塩(ビバセ®)

アトモキセチン(ストラテラ®),グアンファシン塩酸塩(インチュニブ®)

リスペリドン(リスパダール®), アリピプラゾール(エビリファイ®)

その他の精神安定剤

入眠導入剤

漢方薬

その他

3章 発達障害と社会資源

専門医療機関

地域の療育センター

児童発達支援事業

児童福祉法

受給者証

児童発達支援事業所

放課後等デイサービス

経済的支援

自治体へ問い合わせることから始まる

 障害者手当と手帳

 特別児童手当

 就学奨励費

 就学支援金

 成年後の経済支援

 移動支援

発達障害に対する介入(療育)

主な療育方法

ABA

SST,LST

訪問看護サービス

補完代替療法

園か療育施設か

小学校への就学

就学相談

特別支援学級,特別支援学校

就学猶予

個別支援計画,意見書,診断書

中学校などへの進学

特別支援教育

制度改革と支援対象

特別支援教育コーディネーター

合理的配慮

GIGAスクール構想とICT

家庭以外の生活場所

就労そしてその後ヘ

1時間問題,3時間問題

一般就労(一般枠,障害者枠)

福祉就労(就労継続支援)

生活介護

就労移行支援

生活の場所

将来に必要なこと

発達障害の支援に関する資料

1.インターネットによる外来予約例

2.合理的配慮にかかわる意見書・診断書の例

3.初見の文章と質問例

4.こんなときどうする?

5.今日は何があったかな?

6.読み書きについての学校へのお願い

7.勧告と異なる就学,就学猶予の意見書・診断書の例

8.就学前の学校への情報提供例文(特別支援学級・特別支援学校用)

9.就学前の学校への情報提供例文(通常学級用)

参考図書

オフ会(あとがきに代えて)

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書籍情報

  • ISBN:9784521749785
  • ページ数:256頁
  • 書籍発行日:2022年11月
  • 電子版発売日:2022年12月28日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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