臨牀消化器内科 2019 Vol.34 No.1 血流障害と消化管疾患

  • ページ数 : 120頁
  • 書籍発行日 : 2018年12月
  • 電子版発売日 : 2019年3月1日
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商品情報

内容

消化器の臨床現場になくてはならない最新情報をお届けすべく,1986年1月に創刊。

【特集】血流障害と消化管疾患
・血流障害と消化管疾患の疾患概念
・虚血性腸病変 (1) 虚血性大腸炎
・虚血性腸病変 (2) 虚血性小腸炎
 他

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序文

巻頭言

消化管に血流障害をきたす疾患は多種多様であるが,それらを発生機序別に分類する と,① 急性虚血型,② 血管炎型,③ 血管変性型,④ その他,の四つのカテゴリーに大別 できる.血流障害による消化管病変は,粘膜の浮腫,発赤,アフタ,びらん,潰瘍,出血, 壊死,穿孔ならびに漿膜炎,蛋白漏出症などさまざまであるが,これらの多くは上部消化 管よりも下部消化管の病変として報告されている.

急性虚血型は消化管病変部支配領域の主要血管に「明らかな閉塞を認めない(非閉塞型)」 と「器質的閉塞を認める(閉塞型)」の二つの病態に分けられ,閉塞型は概して重篤なものが多い.急性虚血型に含まれる疾患として,虚血性大腸炎,虚血性小腸炎,急性腸間膜虚血(AMI)などが挙げられるが,これらの患者の多くは循環不全をきたしやすい基礎疾患 (便秘,動脈硬化,脱水,糖尿病,心疾患,腹部手術や外傷,門脈圧亢進症など)を有している.虚血性大腸炎は,主幹動脈の明らかな閉塞を伴わない可逆的な限局性虚血性病変と定義されている.病型により一過性型,狭窄型,壊死型に分けられていたが,近年,壊死型は主幹血管の閉塞の存在が疑われたり,閉塞がなければ後述する非閉塞性腸間膜虚血 (NOMI)に含めたほうがよいとする考え方もある.虚血性小腸炎は腸間膜動脈の末梢での循環障害か腸管壁内の微小循環障害によって生じると考えられ,病変の形状は縦走潰瘍よりも区域性の全周性潰瘍やそれによる管状狭窄を呈することが多い.AMI発生部位の多くは上腸間膜動脈領域であり下腸間膜動脈領域はまれである.AMIには上腸間膜動脈閉塞症 (SMAO),上腸間膜静脈血栓症(SMVT),NOMIなどがある.さらにSMAOには上腸間膜動脈塞栓症(SMAE)と上腸間膜動脈血栓症(SMAT)がある.SMAEは心房細動,僧帽弁狭窄症などの基礎疾患で心内に生じた血栓が遊離し,腸間膜動脈の末梢で塞栓子として血管閉塞をきたす.SMATやSMVTは粥状動脈硬化による狭窄部や大動脈解離部に血栓を生じ閉塞をきたすが,腸間膜動脈の近位側で起こるため塞栓症よりも虚血の範囲が広く予後は悪い.NOMIは腸間膜動・静脈に閉塞を認めず,循環血液量低下による腸間膜血流減少を契機に腸間膜血管の攣縮が生じ発症すると考えられている.NOMIは腸間膜血管の動脈硬化性狭窄を基礎疾患にもつ高齢者に多い.

血管炎型には,原疾患が血管炎である「原発性血管炎(血管炎症候群)」と膠原病など他疾患に血管炎が合併する「二次性血管炎」がある.原発性血管炎のうち消化管病変に関す る報告は,結節性多発性動脈炎,顕微鏡的多発動脈炎,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (Churg‒Strauss症候群),IgA血管炎(Henoch‒Schönlein紫斑病)などの中型~小型血管炎で比較的多く認められる.これらの消化管病変は,血管炎の重症度,罹患血管のサイズや範囲などに左右されるため,病変形態はびまん性・多発性の粘膜浮腫,発赤,粘膜出血,びらん,アフタ,潰瘍,腸管壊死や穿孔など軽重さまざまで,病変範囲も消化管の限られた領域から広範に及ぶものなど多彩である.病変好発部位は小腸(とくに空腸)や十二指腸 であるが,大腸や胃など他の消化管にも病変を認める.二次性血管炎としては,全身性エリテマトーデス(SLE)によるループス血管炎や関節リウマチ(RA)によるリウマトイド血管炎がある.これらは中・小動脈の血管炎で,SLEでは消化管病変として蛋白漏出症やループス腸炎などがある.ループス腸炎の増悪はSLEの活動性に一致することが多い.病変が小血管炎に起因する場合,びらん・潰瘍は著明でなく軽度の虚血性変化(腸管の棘突 像,皺襞浮腫像,拇指圧痕像)が主体であり小腸に広範囲に認められることが多い.また, RAでは空腸,盲腸,S状結腸などに単発性や多発性の類円形潰瘍が多いと報告されている.

血管変性型には腸間膜静脈硬化症やアミロイドーシスなどがある.腸間膜静脈硬化症でさんししは静脈壁の線維性肥厚と石灰化を認める.近年,腸間膜静脈硬化症は漢方薬成分の山梔子との関連性がいわれており,発生機序的には薬剤性型として分類したほうがよいのかもしれない.アミロイドーシスでは血管壁にアミロイドが沈着し,血管脆弱性による粘膜易出血性や血腫形成などを認める.

その他の範疇には,虚血が病変形成の主体ではないが,血流障害が副次的に起こりうる疾患が主として含まれる.したがって,肉眼像や組織像で虚血性変化(粘膜浮腫・出血,立ち枯れ様腺管など)を呈さないものもある.そういった観点からはアミロイドーシスもこちらの範疇に含めてもよい.放射線性腸炎は放射線による血管内皮の障害から血管内膜の 肥厚と血栓形成を認めるが,肉眼および組織像は典型的な虚血性変化を呈していない.閉塞性腸炎は,大腸癌などによる閉塞・狭窄部の口側腸管に内圧亢進と過度の腸管攣縮のため血流障害をきたす.宿便性潰瘍は滞留便による腸管壁の機械的圧迫による血流障害をきたす.感染症によるものでは,サイトメガロウイルス(CMV)感染症や腸管出血性大腸菌腸炎(O157など)が挙げられるが,前者は血管内皮細胞にウイルスが感染し血流障害に関与し,後者は血管障害性を有するベロ毒素を産生する.抗生物質起因性出血性大腸炎は薬剤による直接作用やアレルギー反応により局所の循環障害をきたす.これらのなかで虚血性腸炎に似た組織像を呈するものは閉塞性腸炎,腸管出血性大腸菌腸炎,抗生物質起因性出血性大腸炎などである.

血流障害が関与する消化管病変の病態や病変形態は多様である.本号が,血流障害による消化管病変の成因と病態に関する読者の知識と理解を深めることを期待する.


平田 一郎

目次

巻頭言

1.血流障害と消化管疾患の疾患概念

2.虚血性腸病変

(1)虚血性大腸炎

(2)虚血性小腸炎

(3)閉塞性大腸炎

(4)非閉塞性腸管虚血症(NOMI)

(5)上腸間膜動脈(SMA)塞栓症/血栓症

(6)腸間膜静脈硬化症

3.血管炎

(1)IgA 血管炎による消化管病変

(2)血流障害を伴う膠原病と消化管病変

4.その他

(1)宿便性潰瘍

(2)放射線性腸炎

(3)アミロイドーシス

(4)IBD と血流障害

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書籍情報

  • ISBN:9784004003401
  • ページ数:120頁
  • 書籍発行日:2018年12月
  • 電子版発売日:2019年3月1日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:2

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