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サイコネフロロジー診療ガイド
日本サイコネフロロジー学会診療ガイド作成委員会 (編集) / メディカ出版
商品情報
内容
序文
はじめに
サイコネフロロジーは腎疾患の患者、家族、およびその医療にかかわる人たちの精神・心理・社会的課題を扱う学問です。
わが国におけるサイコネフロロジーの歴史は、1990(平成2)年に日本サイコネフロロジー研究会という小さな研究会がつくられたことに端を発します。その後、30年の年月を経て、2019年に一般社団法人日本サイコネフロロジー学会として新たなスタートを切りました。学会になってからは各種委員会も整備され、その一つとして「診療ガイド作成委員会」がつくられました。
サイコネフロロジーは、個別の症例・実践に焦点が当てられがちですが、そこには学問的な基盤が必要です。ただし、サイコネフロロジーに関連する研究報告は世界的に見てもまだまだ少なく、ガイドラインとしてのエビデンスを示すことは難しいという現状があります。そこで、本書は「診療ガイド」というかたちで、症例へのアプローチのヒントを紹介することを目指しています。
そのうえで、単なる経験談にとどまらないよう、サイコネフロロジーに携わる精神科医・心療内科医・公認心理師など「こころの専門家」が、第2 章ではよくある精神症状に関する総論的な内容について、また第3章ではよくあるケースへの疑問に答えるかたちで、腎疾患・腎代替療法(透析・腎移植)にかかわる医療者が最低限知っておくべき知識について、コンパクトに解説しています。
この「診療ガイド」の作成にあたり、こだわったポイントがいくつかあります。1. 腎不全のさまざまな病期における課題にフォーカスすること
腎不全は、その経過によって、保存期、腎代替療法期(透析・腎移植)、終末期など、さまざまな段階があり、各段階でサイコネフロロジーに関連する課題は異なります。本書では、それぞれの段階で適切に対応できるようにまとめました。2. よくある精神症状の解説に加え、現場でよく遭遇するケースをまとめること
第2章ではサイコネフロロジーを扱ううえで必須となる症候の知識を記載し、そして第3章では現場でよく遭遇するケースをもとに基本知識とアプローチのヒントをまとめました。これらをひととおり学んでいただくことで、現場におけるサイコネフロロジーにかかわる問題で困ったときの手引きになるような「診療ガイド」を目指しました。3.専門家を含む多職種が執筆に携わっていること
サイコネフロロジーにおいて、多職種協働は非常に重要なキーワードです。そのため、第3章ではできるだけ多くの職種の方々に執筆いただき、「多職種の視点」として各職種ならではのオリジナルな視点をできるだけ加えました。サイコネフロロジーの専門家は全国的にも稀有で、周囲に相談できる人がいないという方も少なくないと思います。そのようなときに、本書が少しでもお役に立てればと思います。
本書の出版をご快諾いただきましたメディカ出版、また企画段階から多大なるご尽力をいただきました編集室の方々には厚く御礼申し上げます。
本書が、腎臓と「こころ」とのつながりを理解し、患者に寄り添いながら包括的なアプローチを提供するための一助となり、サイコネフロロジー診療の未来への道が拓かれることを願っております。
2024年2月
編集者を代表して 西村勝治
目次
【第1章】サイコネフロロジー診療ガイド作成の意義とその歴史
1 診療ガイドの意義:「段階的ケア」を意識したチーム医療を目指す
2 わが国のサイコネフロロジーの歴史~太田和夫と春木繁一のメッセージ~
【第2章】現場で出合う症状のアセスメントと初期治療・ケア
1 抑うつ
2 不安
3 不眠
4 認知症
5 せん妄
6 「死にたい」と話す患者の理解と対応(希死念慮・自殺企図など)
7 幻覚・妄想
8 怒り
9 発達障害(神経発達症)・知的障害
10 パーソナリティ障害
11 心理的要因が影響する身体症状
【第3章】慢性腎臓病の各病期にみられる症例
1 保存期のCase
Case1 保存期にみられることが多い心理反応
Case2 通院・服薬アドヒアランスに困難を抱える患者
Case3 食事療法を継続しにくい患者
Case4 ステロイドによる精神症状をもつ患者
Case5 薬剤(ベンゾジアゼピン系薬)によるせん妄をきたした患者
Case6 内分泌疾患による抑うつ症状を呈した患者
Case7 民間療法を繰り返す患者
2 腎代替療法選択・導入初期のCase
Case8 腎代替療法選択・導入初期にみられることが多い心理反応
Case9 家族と患者本人の意向が異なる事例
Case10 背景に認知症がある事例
Case11 精神疾患・精神症状による意思決定困難
Case12 腎移植の適応に苦慮する事例
3 腎代替療法維持期のCase
Case13 腎代替療法維持期にみられることが多い心理反応
Case14 怒りや不満を医療者にぶつける事例
Case15 認知症のBPSDのために透析中の安静を保てない事例
Case16 喪失体験を長期に引きずる事例
Case17 むずむず脚症候群(RLS)による不眠事例
Case18 長く続く身体症状を訴える事例
Case19 家族間でドメスティック・バイオレンス(DV)がある事例
Case20 希死念慮がみられる事例
Case21 知的障害にともなう困難事例
Case22 発達障害(自閉症スペクトラム)にともなう困難事例
Case23 パーソナリティ障害にともなう困難事例
Case24 腹膜透析に対する不安が強い事例
Case25 摂食障害(神経性やせ症)にかかわる事例
4 終末期のCase
Case26 終末期にみられることが多い心理反応
Case27 認知症で保存的腎臓療法を選択した事例
Case28 がんも慢性腎臓病(CKD)も終末期で予後予測が困難な事例
Case29 代理意思決定者・サポートが不足していた事例
Case30 事前指示書を作成していたが判断に苦慮した事例
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書籍情報
- ISBN:9784840484763
- ページ数:216頁
- 書籍発行日:2024年4月
- 電子版発売日:2024年5月2日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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