人間の運動学 -ヒューマン・キネシオロジー-

  • ページ数 : 804頁
  • 書籍発行日 : 2016年9月
  • 電子版発売日 : 2024年5月29日
¥8,800(税込)
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商品情報

内容

教育、臨床の垣根をとりはらった、すべての「運動の専門家」のための運動学テキスト。

運動器の解剖学、生理学、関節運動学、運動心理学、運動発達学など、教育課程で習得する基礎知識にとどまらず、臨床での運動分析や評価、病態解釈に欠かせない脳科学、認知科学の知識までを網羅した画期的な内容構成。

序文

はじめに


『人間の運動学 ヒューマン・キネシオロジー』は、リハビリテーション医学の中でも理学療法、作業療法、言語聴覚療法の基礎を勉強する学生たちを対象とするテキストとして企画したものであるが、臨床で働く医師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、義肢装具士、看護師、介護福祉士、柔道整復師、体育、スポーツ科学やロボット工学の関係者など、人間の運動とその病態を理解しようとする人々の参考になれば幸いである。

本書は、序章『人間の運動の誕生─サルからヒトへの奇跡』から始まっている。運動学のテキストを、サルからヒトヘの進化の過程から始めるのは、その人類学上の感動的な物語を学生たちに伝えたいからである。今、この瞬間に存在している自分自身のルーツを知ることによって、運動学への興味が喚起されるはずである。第Ⅰ部『人間の身体』では解剖学、運動学、神経学、生理学などの基本的な知識をまとめた。第Ⅱ部『運動する人間』では上肢、下肢、体幹の関節運動や筋作用のメカニズムについて説明した。第Ⅲ部『動作する人間』では子どもの運動発達と認知発達、成人の姿勢、動作、歩行などの臨床的な知見を説明した。第Ⅳ部『行為する人間』では行為のニューラルネットワーク、運動学習、システムの基礎を説明した。第Ⅴ部『身体化された心』では脳、空間、コミュニケーション、意識などをめぐる学際的な知の領域との関連性を考察した。

そして、終章『ヒューマン・パフォーマンス』では「身体化された心」という視点から行為(身体、物語、人生)の意味を捉えるために、世界、歴史、社会、文化の中で他者と共に生きる人間の営みの実例をいくつかの写真と言葉で表現した。だが、まだ本書は人間の運動の秘密を解き明かしてはいない。しかし、21世紀の運動学は「狭義の運動学(科学としての運動学)」から「広義の運動学(科学と心の融合した運動学)」へと、新しい歩みを始めている。それは「運動学」から「人間の運動学」への歩みであり、それこそが我々の希望である。

読者諸氏の御批判、御教示をお願いしたい。運動学の進歩に貢献した研究者たちに感謝する。数多くの遺産や貴重な知見を参考にさせていただいた。また、協同医書出版社の中村三夫社長、編集部の宮本裕介氏、そして制作およびイラストを担当していただいた方々のご尽力に感謝する。


2016年8月

宮本省三、八坂一彦、平谷尚大、田渕充勇、園田義顕

目次

【はじめに】

【序章】「人間の運動」の誕生~サルからヒトへの奇跡

[1]人類の誕生

[2]人間の運動の進化

[3]第1の運動革命~樹上生活での移動と手の使用

[4]第2の運動革命~サバンナ生活による直立二足歩行と手の対立運動の発達

[5]手の進化

[6]人間の営みとしての行為

【第Ⅰ部】人間の身体

第1章 身体の解剖学

[1]解剖学は「運動器」という概念を誕生させた

[2]身体は左右対称形だが、「運動器」の変化によってさまざまな「姿勢」がつくられる

[3]骨は支持器官であり、運動の可動性を決める

[4]関節は連結器官であり、運動の空間性をもたらす

[5]靭帯は保護器官であり、運動の安定性を与える

[6]筋は実行器官であり、運動の出現を可能にする

[7]「人間機械論」の誕生  

第2章 身体の運動学

[1]運動学は運動、動作、行為の「観察」から始まる

[2]運動学には「キネマティクス」と「キネティクス」がある

[3]キネマティクスの基本

[4]キネティクスの基本

[5]立位における重心、重心線、アライメント、基底面、体重、抗重力筋

[6]運動連鎖と筋収縮シークエンスを観察する

[7]基本姿勢、日常生活動作、随意運動、代償運動を観察する

[8]19世紀の整形外科医と神経科医たちが運動学を進歩させた

第3章 身体の神経学

[1]随意運動のメカニズム

[2]大脳皮質の機能局在

[3]大脳皮質の運動制御機構

[4]運動制御のための下行路

[5]運動制御の感覚調整機構

[6]大脳皮質の可塑性

[7]皮質下の運動調節機構

[8]脊髄の運動制御

[9]発達と学習

[10]社会脳としての心の器官

第4章 身体の生理学

[1]筋収縮のメカニズム

[2]運動の感覚調節機構

[3]運動時の内部環境を調整する呼吸・循環

[4]体力トレーニング

【第Ⅱ部】運動する人間

第5章 肩関節の運動学

[1]肩関節の基本事項

[2]肩関節における運動学のポイント

[3]肩関節の進化と機能の変遷

第6章 肘関節と前腕の運動学

[1]肘関節と前腕の基本事項

[2]肘関節と前腕における運動学のポイント

[3]肘関節と前腕の進化と機能の変遷

第7章 手関節の運動学

[1]手関節の基本事項

[2]手関節における運動学のポイント

[3]手関節の進化と機能の変遷

第8章 手指の運動学

[1]手指の基本事項

[2]手指における運動学のポイント

[3]手指の進化と機能の変遷

第9章 股関節の運動学

[1]股関節の基本事項

[2]股関節における運動学のポイント

[3]股関節の進化と機能の変遷

第10章 膝関節の運動学

[1]膝関節の基本事項

[2]膝関節における運動学のポイント

[3]膝関節の進化と機能の変遷

第11章 足関節と足部の運動学

[1]足関節と足部の基本事項

[2]足関節と足部における運動学のポイント

[3]足関節と足部の進化と機能の変遷

第12章 脊柱と頭部の運動学

[1]脊柱の基本事項

[2]脊柱における運動学のポイント

[3]頭部の基本事項と運動学のポイント

[4]脊柱と頭部の進化と機能の変遷

【第Ⅲ部】動作する人間

第13章 発達の運動学

[1]子どもの反射と反応

[2]子どもの運動発達

[3]運動発達と反射・反応の関連性

[4]手の運動発達

[5]感覚運動統合

[6]子どもの発達理論

[7]自己意識の誕生

第14章 姿勢と動作の運動学

[1]姿勢

[2]上肢の動作

[3]寝返り動作

[4]起き上がり動作

[5]座位

[6]立ち上がり動作

[7]立位

第15章 歩行の運動学

[1]人間の歩行は巧緻運動である

[2]歩行周期

[3]パッセンジャーとロコモーター

[4]関節運動と筋活動

[5]重心移動

[6]床反力

[7]ロッカー機能と足圧の変化

[8]歩行の開始・停止・方向転換

[9]歩行分析

[10]歩行の決定要因

[11]歩行調節における3つのポイント

[12]歩行調節における各関節の機能

[13]歩行の障害

[14]ヒトの二足移動の特徴

【第Ⅳ部】行為する人間

第16章 行為のニューラルネットワーク

[1]行為に向けられた観察者のまなざし

[2]行為を生み出す神経システムの基礎

[3]末梢神経系のニューラルネットワーク

[4]中枢神経各部のニューラルネットワーク

[5]脊髄反射のサーキット

[6]ヒトの行為と脳機能システム

第17章 行為の運動学習

[1]運動学習が運動行動を生み出す

[2]運動学習理論

[3]運動学習における知覚の役割

[4]運動学習における注意の役割

[5]運動学習における記憶の役割

[6]運動学習における感覚フィードバックの役割

[7]運動学習における言語の役割

[8]運動学習の転移と発達の最近接領域

第18章 行為システム

[1]行為はシステムによって制御されている

[2]“認知する行為”という捉え方

[3]行為システムの階層性

[4]上肢、体幹、下肢の行為システム

[5]情報性の運動学へ

【第Ⅴ部】身体化された心

第19章 運動の鍵盤支配型モデルを超えて

[1]運動の鍵盤支配型モデルの誕生

[2]頭のないカエル

[3]反射から脳へ

[4]生命の演ずる人形劇

[5]ベルンシュタインの「運動制御理論」

[6]アノーキンによる機能システムの概念

[7]遠心性インパルスだけでは運動を制御することは不可能である

[8]“美しい音楽”を奏でる「運動野のピアノ」には音符と和音がある

[9]人間は“無限の意図の自由度”を奏でる

第20章 空間を生きる

[1]空間の誕生

[2]身体表象

[3]空間表象

[4]身体空間

[5]身体周辺空間

[6]身体外空間

[7]「私」というイメージ

第21章 コミュニケーション行為

[1]世界と対話するための行為

[2]“指差し”という行為

[3]身振りとしての行為

[4]道具使用という行為

第22章 人間は“意識”を動かして行為する

[1]意識とは何だろうか?

[2]“意識の志向性”と“志向的な関係性”

[3]意識による行為の制御

[4]行為の発達、学習、回復のために

[5]身体を生きる

[6]身体化された心

【終章】 ヒューマン・パフォーマンス

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書籍情報

  • ISBN:9784763995438
  • ページ数:804頁
  • 書籍発行日:2016年9月
  • 電子版発売日:2024年5月29日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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