片麻痺を治療する[Ⅰ]体幹 -座位,起立,立位のリハビリテーション-

  • ページ数 : 326頁
  • 書籍発行日 : 2018年9月
  • 電子版発売日 : 2024年5月31日
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商品情報

内容

「体幹」の機能回復、「正しい座位」の実現が生活行為向上のキーポイント。

すべての生活行為の基盤となる「体幹の治療」はリハビリの中心であり、「体幹」を捉え返し、「正しい座位」のための体幹の治療の手続きと実施上の技術を詳述。
これからのリハビリテーションを変え、患者さんの生活行為を確実に向上させる大きな可能性を秘めた画期的な内容。

序文

はじめに 「トルソ」


「体幹(trunk)=身体の中心」は「胴体(torso)」と呼ばれる。トルソとはイタリア語で「木の幹」という意味である。美術の世界ではギリシャ時代の壊れた彫刻で頭部や手足を欠いた胴体像を指す。それをひとつの芸術作品として扱った最初の彫刻家がFrançois-Auguste-René Rodin(1840-1917)である。ロダンは壊れたギリシャ時代の彫像の胴体の形に無限の美が宿っていると感じたという。彼の手によってトルソは芸術として昇華した。

ロダンのトルソに“まなざし”を向けてみよう。誰もが「ある一定の量をもったかたまり」から生命力の喚起を感じ取るだろう。それは「肉体の重量感(存在の重み)」と「肉体の内部空間のフォルム(存在の空間的な変容性)」の融合である。そして、この融合の秘密を「量塊(mass=質量)」という。

また、トルソには安定性と不安定性の調和が宿っている。それは量塊が「支持性(stability)」と「可動性(mobility)」という相反機能を有しているからである。トルソには静止と動きの「アンビバレンス(ambivalence=両価性)」が同居している。いつも静止は動きに向かい、動きは静止に向かっている。そして、この形態の秘密を「姿勢と運動の一体化(Gestalt=ゲシュタルト)」という。あるいは、「運動モルフォロギー(Morphologie=型や像)」という。

確かに、身体が動く時、頭部や四肢は声高に叫び、体幹は沈黙しているかのように見える。しかし、それは致命的な錯覚である。トルソの発する声に耳を澄ませば量塊がいつも自らの存在を強く主張していることがわかるはずだ。あるいは、トルソの静止と動きを見つめれば姿勢と運動が調和していることがわかるはずだ。つまり、トルソの「アイデンティティ(identity)」は、自らの量塊の動的な変化をつくり出すことによって姿勢と運動を統合する点にある。

そして、トルソは空間を知覚する「生きる肉塊」である。さらに、生物的には内臓を収納しているし、途切れることなく呼吸調節を営んでいるし、人間的な情動(エモーション)を喚起する能力も有している。

したがって、この「ある一定の量をもったかたまり」は想像以上に複雑な知覚運動システムを有している。一体、何のために運動するのか、知覚するのか、呼吸するのか、情動を喚起するのか。それは「行為(action)」するためである。トルソは頭部や上下肢と連動して無数の「運動スキル(skill)」を生み出している。

だから、セラピストは体幹への“まなざし”を研ぎ澄ますべきである。そして、この行為する「身体の中心」、空間を知覚する「生きる肉塊」、運動スキルに満ちた「柔軟な胴体」の回復を図るリハビリテーション治療を探求すべきである。

目次

【第Ⅰ部】片麻痺の体幹を理解する

エビ足の少年

第1章 片麻痺の体幹への“まなざし”

1.1 片麻痺の臨床神経学

1.2 片麻痺の体幹への“まなざし”の誕生

1.3 片麻痺の体幹と姿勢の神経生理学

1.4 片麻痺の体幹とジャクソニズム

1.5 片麻痺の体幹へのリハビリテーション

1.6 片麻痺の体幹へのブルンストローム法とボバース法

1.7 片麻痺の体幹へのデービス法と運動再学習プログラム

1.8 片麻痺の体幹への認知運動療法

1.9 片麻痺の体幹の問題はまだ解決していない

第2章 座位と体幹の運動分析

2.1 座位の再獲得と再学習

2.2 正しい座位

2.3 座位の安定性と不安定性

2.4 体幹の運動分析

2.5 体幹の予測的姿勢制御,筋のシナジー,重力の学習

2.6 座位への発達

2.7 体幹の知覚と空間認知

2.8 座位は“生活の質(QOL)”に直結する

第3章 片麻痺の体幹の崩れ

3.1 片麻痺の「体幹の崩れ」

3.2 体幹の崩れが最重度な症例

3.3 体幹の崩れが重度な症例

3.4 体幹の崩れが中等度な症例

3.5 体幹の崩れが軽度な症例

3.6 体幹の崩れがほぼ正常な症例

3.7 体幹のアライメント異常の観察

3.8 体幹の「目に見えない問題」を観察する

3.9 体幹の崩れを修正する能力の観察

第4章 なぜ,体幹の崩れが生じるのか?

4.1 体幹の崩れは痙性麻痺が原因である?

4.2 体幹の崩れは弛緩麻痺が原因である?

4.3 体幹の崩れは前皮質脊髄路の損傷が原因である?

4.4 体幹の崩れは内側運動制御系の機能解離が原因である?

4.5 体幹の崩れは体性感覚空間の変容が原因である?

4.6 体幹の崩れは正中線の偏位が原因である?

4.7 体幹の崩れは半側空間無視やプッシャー症候群によって生じる?

4.8 体幹の崩れは「坐骨がない」のが原因である?

第5章 体幹の姿勢制御とリハビリテーション

5.1 体幹の姿勢制御の回復を目指す

5.2 座位のリハビリテーションにおける基本原則

5.3 急性期のベッド・サイドでの座位保持訓練

5.4 側臥位から座位への移動

5.5 座位における静的な体重移動

5.6 座位における動的な体重移動

5.7 座位バランス訓練としての体重移動

5.8 座位バランス訓練としての上下肢の操作

5.9 座位バランス訓練としての支持基底面の操作

5.10 膝立ち位と片膝立ち位での体幹のバランス訓練

5.11 椅子からの起立訓練

5.12 体幹の姿勢制御はシステムの産物である

第6章 体幹は運動の巧緻性に満ちている

6.1 体幹は木の幹で,四肢は枝なのか?

6.2 体幹の運動は粗大で,手の運動は巧緻なのか?

6.3 体幹の感覚は鈍感で,手の感覚は敏感なのか?

6.4 体幹は姿勢で,四肢は随意運動なのか?

6.5 体幹は自動的で,四肢は意図的なのか?

6.6 体幹は無意識的で,四肢は意識的なのか?

6.7 体幹と四肢は同時に運動制御されている

6.8 体幹への“まなざし”の転換

第7章 脳のなかの体幹

7.1 ホムンクルスの体幹

7.2 体性感覚野の「知覚情報処理プロセスのヒエラルキー」

7.3 第一次体性感覚野における手の身体部位再現

7.4 第一次体性感覚野における体幹の身体部位再現

7.5 第二次体性感覚野における体幹の身体部位再現

7.6 頭頂連合野における身体部位再現

第8章 “脳のなかの体幹”の病態を探求する

8.1 体幹の身体意識の病態

8.2 体幹の変容性,可変性,適応性の病態

8.3 体幹の変容性の病態

8.4 体幹の可変性の病態

8.5 体幹の適応性の病態

8.6 体幹の認知過程の病態

8.7 体幹の身体図式の病態

8.8 体幹の運動イメージの病態

8.9 体幹のキネステーゼの病態

8.10 体幹のアフォーダンスの病態

8.11 行為の意図の病態

8.12 体幹のリハビリテーションの羅針盤

【第Ⅱ部】片麻痺の体幹を治療する

ゾウの鼻,カメの甲羅,ヴァルパンソンの浴女

第9章 体幹の行為,機能,情報の回復を目指す

9.1 行為,機能,情報のヒエラルキー

9.2 体幹の機能システム

9.3 体幹の対称機能

9.4 体幹の垂直機能

9.5 体幹の支持機能

9.6 体幹の到達機能

9.7 体幹の機能システムの評価

9.8 体幹の機能システムの回復を目指す

第10章 体幹の認知神経リハビリテーション

10.1 体幹の何の回復を,どのように達成するのか?

10.2 どのような片麻痺患者に適用するのか?

10.3 体幹の行為,機能,情報の回復を,脳の認知過程の活性化によって達成する

10.4 体幹の認知神経リハビリテーションの基本概念

10.5 体幹に認知問題を適用する

10.6 体幹への空間問題

10.7 体幹への接触問題

10.8 体幹に対する訓練の組織化

10.9 訓練の目的,テーマ,内容,方法,目標

第11章 体幹の対称機能を治療する

11.1 体幹の対称機能とは何か?

11.2 体幹の体性感覚空間に意識を向ける

11.3 体幹の空間的な対称性を比較する

11.4 体幹の接触的な対称性を比較する

11.5 体幹と上下肢の空間アライメントの左右比較

11.6 体幹の左右比較の精密化と垂直位の保持

11.7 上下肢の左右比較の精密化と垂直位の保持

11.8 体幹の自己中心座標系と物体中心座標系の比較照合

11.9 体幹の対称機能の回復

第12章 体幹の垂直機能を治療する

12.1 体幹の垂直機能とは何か?

12.2 体幹の垂直位への準備

12.3 体幹の崩れが最重度な症例

12.4 体幹の崩れが重度な症例

12.5 体幹の崩れが中等度な症例

12.6 体幹の崩れが軽度な症例

12.7 体幹の非対称性の修正

12.8 体幹の垂直位を目指す

12.9 体幹の直立座位を試みる

12.10 体幹の直立座位を保持する

12.11 体幹の空間アライメントの微調整

12.12 体幹の直立座位と健側上肢の細分化

12.13 体幹の直立座位と患側上肢の細分化

12.14 体幹の直立座位と両側上肢の細分化 

12.15 体幹の直立座位と健側下肢の細分化

12.16 体幹の直立座位と患側下肢の細分化

12.17 座位の意味,片麻痺の座位,座位での上下肢の機能検査

第13章 体幹の支持機能を治療する

13.1 体幹の支持機能とは何か?

13.2 「直立座位の保持」から「直立座位の制御」へ

13.3 体幹の方向づけ機能の回復

13.4 体幹の予測的姿勢制御機能の回復

13.5 体幹の重心移動を制御する機能の回復

13.6 体幹の直立座位と上下肢の運動を分離する機能の回復

13.7 座位バランスの随意的な制御の向上

第14章 体幹の到達機能を治療する

14.1 体幹の到達機能とは何か?

14.2 リーチング空間の拡張

14.3 体幹の「立体配置(コンフォメーション)」

14.4 体幹と上肢のリーチングの連動と分離を目指す

14.5 座位で体幹の直立位を制御して健側上肢を他動運動でリーチングする

14.6 座位で体幹の直立位を制御して患側上肢を他動運動でリーチングする

14.7 座位で体幹の傾斜位を制御して健側上肢を自動運動でリーチングする

14.8 座位で体幹の傾斜位を制御して患側上肢を他動運動,自動介助運動でリーチングする

14.9 不安定板上の座位で体幹の傾斜位を制御して健側上肢を他動運動,自動介助運動,自動運動でリーチングする

14.10 不安定板上の座位で体幹の傾斜位を制御して患側上肢を他動運動でリーチングする

14.11 不安定板上の座位で体幹の傾斜位を制御して患側上肢を自動介助運動でリーチングする

14.12 不安定板上の座位で体幹の傾斜位を制御して患側上肢を自動運動でリーチングする

14.13 体幹と上肢のリーチングの協調性は「行為に埋め込まれている」

第15章 座位から起立,立位,歩行へ

15.1 起立

15.2 起立のための治療

15.3 立位

15.4 立位のための治療

15.5 歩行

15.6 歩行時の体幹のグライダー機能

15.7 歩行のための治療

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書籍情報

  • ISBN:9784763995643
  • ページ数:326頁
  • 書籍発行日:2018年9月
  • 電子版発売日:2024年5月31日
  • 判:B5変型
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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