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実践 アニメ療法 臨床で役立つ物語の処方箋
パントー・フランチェスコ (著) / 中外医学社
商品情報
内容
アニメこそ,現代の日本社会で最もアクセスしやすいメンタルケアツールだ.自らも「アニメに救われた」経験を持ち,イタリア人でありながら日本で医師免許を取得した気鋭の若手精神科医が,「アニメ療法」=アニメを臨床的なセラピーの場で活用する手法について,具体的な症例や作品名をまじえながら丁寧に解説.読めばあなたも今日から,アニメを臨床で活かしたくなる!
【本書で取り上げた作品】
ワンパンマン/この素晴らしい世界に祝福を!/宝石の国/DEATH NOTE/ヴァイオレット・エヴァーガーデン/チェンソーマン/葬送のフリーレン...
序文
序
「アニメ療法って何?」
怪しい民間療法? と不審に思う方もいるかもしれません。
アニメ療法は僕が現在開発、臨床応用しているセラピーで、すごく簡単に言ってしまうと「アニメ作品を精神科のカウンセリングの中で活用する手法」です。
僕は日本の文化を研究しているイタリア出身の精神科医です。欧州と日本で医師資格を取得し、現在も日本で、現役の医師として働いています。子どもの頃から日本で創られたアニメ、漫画、ゲームなどの作品に接し、文字通り「救われた」と感じるような体験をしてきました。
日本のサブカルチャー作品は、欧米の作品と比較して画え的なクオリティが高く、量の多さでも比類がありません。何より独特な「雰囲気」があり、ファンを惹きつけてやみません。その「雰囲気」の源は入り組んだ物語構成と描写の深み、生身の人間さながらのcomplexityを持つキャラクターの多さ、といった特徴だと僕は考えています。欧米作品は子ども向けの“cartoons”が主で、とても比べものにはなりません。
こういった特徴を持つ作品群は、日本国内では「オタクコンテンツ」などと称されることが多いようですが、本書では便宜的に〈アニメ的作品〉と呼びたいと思います。
作品に登場するキャラクターに対して、視聴者が感情的な関わりを持つことが、視聴者自身の心理的成長に大きな役割を果たすことがあるのではないか。
「アニメ療法」が生まれたきっかけは、僕自身が〈アニメ的作品〉の視聴を通してそのような発想を持つに至ったことです。そして、その役割を最も効果的に果たしうるコンテンツが〈アニメ的作品〉だと僕は考えています。
〈アニメ的作品〉は娯楽として消費されるだけにとどまらず、自分を知るため、他者の気持ちを知るための最適な術(すべ)であり、日常生活や臨床現場に最も導入しやすい心理的サポート手段の一つになりうるものなのです。
僕はこれまでにも「アニメ療法―心をケアするエンターテインメント」(光文社新書)を刊行し、本書はその実践編として、アニメ療法を扱った書籍としては2冊目になります。
なぜ僕がこんなに〈アニメ的作品〉の治癒力を信じ、医療現場でも推進しているのか。理由はいろいろあります。
まず一つの理由として、精神医療の分野においても予防が重要だと考えているからです。
身体と同様、心も壊れる前に動いておけば、壊れ始めてから治療する時間や労力を減らせるだけではなく、不可逆的なダメージを受ける前に守ることができます。精神症状が出現してから医療機関を受診すれば治癒には時間がかかり、症状が重ければ薬物治療も必須となってしまいます。
しかし、アニメコンテンツという形で日常生活や普段の趣味にメンタルヘルス向上のきっかけを取り入れておくことができれば、気づかないうちに病気にかかったり、症状が悪化する確率も下がります。エンタメなら楽しく、めんどくさくないので、ドロップアウト率も低くなるでしょう。
もう一つの推しポイントは、この国において〈アニメ的作品〉は質量ともにコンテンツが非常に豊かであるということです。これはそのままクライアントtailoredの治療のやりやすさにつながります。
千差万別の作品が使えるということは、千差万別のストーリーとキャラクターが活用できるということです。クライアントが憧れる、お手本にできる生活スタイルや、理想の姿と性格がどこかで必ずみつけられます。そうしたわかりやすい比較対象があれば、クライアントは自分の欲求も言語化しやすく、特定しやすくなります。
アニメ療法を“推せる”理由は、このほかにもたくさん挙げられます。これから本書を読んでくださる読者の方々も、読み進めるに従って新しい理由を思いつくかもしれません。ひとまず実践につなげて確かめてみましょう。
2024年5月
パントー・フランチェスコ
目次
第I章 アニメ療法の一般論
1.「アニメ療法」とは何か?
アニメ療法とは
〈アニメ的作品〉とは
2.物語にはどんな精神的効果があるのか?
「物語る」ことと精神的治療の関係
ナラティブセラピーの目的と物語の意義
3.セラピーで物語作品を使うことによって期待される効果
物語作品から間接的な観察学習を行うことができる
物語作品への感情移入が感情や認知のプラスの変化を助ける
4.〈アニメ的作品〉が最適であると考える理由
物語作品を使ったセラピーにはどんなものがあるのか
とりわけ「アニメ」でなければならない理由は?
5.アニメ療法の臨床的なセッティング
基本的な考えかた
一対一セラピーの一般論
グループセラピーの一般論
第II章 アニメ療法カウンセリングの手順
1.アニメ療法の提供者、対象者、目的
誰が、どこで提供するもの?
対象は「患者」?「クライアント」?
アニメ療法の目的
2.作品を選ぶ
作品形態を選ぶコツ
作品のストーリーラインを選ぶコツ
クライアントの作品選択に寄り添うコツ
3.ターゲットとゴールを設定する
4.鑑賞体験を「3つのディメンション」で分析する
5.セッションの実際
第1セッション:物語の意義について
第2セッション:物語の中へ、自己への窓口
第3セッション:比較を通じた外在化
第4セッション:キャラクターとの類似性を描く
第5セッション:現実との架け橋、作業着手
第6セッション:新しい自分―ヒーローになるためのレシピ
第7セッション:キャラクターから受けたインスピレーションを再現する
6.半構造化、アニメ療法「風」の診察の活用
第III章 アニメ療法カウンセリングの実例
0.本章の構成
1.気分障害、抑うつ状態の例
うつ病の一般的な治療選択
作品紹介:『ワンパンマン』
症例紹介
治療とアニメ療法の立ち位置
アニメ療法の実際
2.気分障害、不安障害の例
一般的な治療選択
作品紹介:『この素晴らしい世界に祝福を!』
症例紹介
アニメ療法前の治療
アニメ療法の実際
3.適応障害、環境を変えられないときの例
一般的な治療選択
作品紹介:『宝石の国』
症例紹介
アニメ療法前の治療
アニメ療法の実際
4.パーソナリティー特性/障害におけるアニメ療法の可能性
一般的な治療選択
作品紹介:『DEATH NOTE(デスノート)』
症例紹介
アニメ療法前の治療
アニメ療法の実際
5.自己開示、自尊心の向上、他者への共感、雑多な効果の例
自尊心と精神的健康についての一般論
作品紹介:『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』
症例紹介
アニメ療法の実際
6.社会と個人の衝突、バランスを取り戻す例
社会性と精神の健康に関する一般論
作品紹介:『チェンソーマン』
症例紹介
アニメ療法前の治療
アニメ療法の実際
7.グリーフケアできた例
グリーフケアにおける一般論
作品紹介:『葬送のフリーレン』
症例紹介
アニメ療法前の治療
アニメ療法の実際
第IV章 アニメ療法理論編
1.アニメ療法の治癒効果
2.自己変容体験をもたらす「没入」という鑑賞体験
3.アニメ療法に適したコンテンツの特徴
文章表現や音楽表現
ストーリー
キャラクター
4.僕がアニメ療法を「推す」理由
第V章 対談 将来の展望 斎藤 環×パントー・フランチェスコ
1.アニメ療法のおさらい
アニメ療法の進む2つの形
アニメ療法の定義と手順
アニメ療法の導入と傾向
アニメ療法の手法と形式
アニメ療法の副作用
2.アニメ療法ができるまで
自身が救われた経験から
〈アニメ的作品〉をめぐるムーブメント
〈アニメ的作品〉の効能
3.アニメ療法のこれから
「アニメ療法」をアニメ作品の一ジャンルに
バーチャルキャラクターによるカウンセリング
保険診療と自由診療のはざまで
参考文献 アニメ療法のエビデンス
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書籍情報
- ISBN:9784498229624
- ページ数:188頁
- 書籍発行日:2024年6月
- 電子版発売日:2024年6月19日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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