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- 協同医書出版社
- 精神科 作業療法士の仕事 -社会に生きる手助け」という役割-
商品情報
内容
何から何まで、とても細かく、そして具体的に説明
その半生を「作業療法」の臨床で過ごしてきた作業療法士が、自分の仕事の全てを次の世代の作業療法士たちに伝えるために執筆した、即戦力として活用できる実践的な内容のガイドブック。
作業療法の目的に適ったプログラムの立て方、作業手順の指導方法と観察の仕方、治療効果の判断の方法まで、細かく具体的に解説。
序文
はじめに
「仕事をすることは自然のもっともすぐれた医師であり、それが人間の幸福の条件でもある」
これはその著作が1500年もの間にわたり、イスラム世界や西欧諸国の医学を支えてきたと言われるガレノスの言葉です。この言葉を知ったとき、これは作業療法の真髄と思い、私の作業療法士としての支えとなっています。私は精神科病院2箇所、県こころの健康センター、福井医療技術専門学校、温泉病院、大学病院、市の保健福祉センター2箇所、通所リハビリテーション施設とさまざまな施設、そして街中での活動支援施設を約10年と、作業療法に携わってきてほぼ半世紀になります。この半世紀の間に一貫して考えてきたことは、どうしたら障害を抱えた人たちが社会生活を営めるようになるかということです。そう思うきっかけは、最初の就職先であった山梨県甲府市の精神科の花園病院(現・HANAZONOホスピタル)で働いていたときでした。当時の患者さんの多くは、若い頃から入院し、幻聴や妄想が消失せず、長い入院生活を送っていました。そして、その患者さんの多くが退院することなく、その生涯を精神病院で終えていました。この病院で働いている中で、症状の重い患者さんがどうしたら退院して社会生活を送れるようになるのかということが治療していく上での課題となりました。その後、夫の金沢大学への転勤がきっかけで13年間務めた花園病院を退職し、金沢に移り住むことになりました。ところが、当時はリハビリテーションという言葉もまだ知られておらず、作業療法士として働く場は皆無に等しい状況でした。これが幸いしてか、さまざまな病院や施設で試しにやってもらえないかという依頼がありました。
週1回という条件の中で県こころの健康センターを皮切りに、前述のさまざまな場所や学校教育にも関わり、これらの経験は人が社会で生きていくためにはどのような条件が必要なのかを考えるヒントになりました。そして、「作業療法とは何か?」と改めて初心に戻って考えたとき、作業療法はリハビリテーションの一分野であり、リハビリテーションの目的は、社会復帰だと思いました。社会復帰とは、社会生活を営めるようにすることです。では、社会生活を営めるとはどういうことなのでしょうか?障害を持ちながら一人の社会人として生きていくためには、どんな能力が必要なのでしょうか?
障害とは、一人の人間が一生持ち続けていくものです。切断された手や足が新たに戻ってくるわけではありません。麻痺した四肢が健常時と同じ状態に戻ることは極めて少ないです。これは、精神疾患も同じです。幻聴が消えるまで、妄想がなくなるまでとしたら、退院など何時になるか分かりません。とすると、どこまで治療訓練をすればよいのか、その目途、見極めはどうすればよいのか。これを突き詰めて考えたのが、「社会で生きていくためにはどのような能力が必要か」ということです。それが第5章で扱っている社会生活能力指標になります。この指標を満たすように作業を組み立てて行うことが作業療法の治療、訓練であると考えています。
その社会生活能力指標を作業療法場面で見られる患者さんの障害と照らし合わせ、社会生活能力がどの程度、身についているかを評価するための評価表を考えました。この社会生活能力指標と評価表を基に作業の組み立て方と指導方法について一連の方法を考え、今日に至るまで実施してきました。初め、私は統合失調症を対象にこの本の執筆を考えていました。しかし、さまざまな病院や施設で働いているうちに、自分が実施してきた方法が精神疾患のあらゆる障害や疾患にかかわらず、すべてに適用できるのではないかと考えるようになりました。精神障害、身体障害や認知症など、それがたとえどのような障害があっても、社会で生きるための社会的生活能力という基本的な考え方は同じであると考えています。この本を読んで下さった方達がその基本的な考え方を基に応用、発展、創造してくださればよいと考えています。そして、現在でもこれらの考えを基に、富山大学での精神科作業療法を続けています。また街中でモノ作りカウンセリングと標榜して、平成24年7月からT&N活動支援研究所(通称T&Nリサーシャ)いう名で個人的な支援施設を運営しています。
作業療法が治療であるためには、基本の方法が一定で、一定の効果を上げることが必要です。私だけができたのでは意味がありません。この本を読んで下さった皆様が実践してくださって同じ効果があることが必要だと思っています。これらの作業療法の知識と技術を作業療法に関わり始めた皆さまに、作業療法の苦労とその先にある面白さ、楽しさを一緒に伝えたいと長年思っていました。そして、10年前に協同医書出版社の中村三夫氏と出会う機会があり、その夢が叶うことになりました。ところが、いざとなるとどうお伝えしようか考えるだけで手が止まってしまい、今日まで来てしまいました。
この10年の間、私の次男である関規寛(せきのりひと)とともに作業の効果判定を目で見て、数値的にも分かるようにすることにも取り組んできました。それについては臨床経験を通して少し説明したいと思いますが、いずれにしても、作業の効果判定を数値的に分かるようにすることは今後の課題と考えています。
第6章の図1の治療の流れに書いた「生活範囲の拡大」についても、今では私が作業療法士になりたての頃と比べると福祉施設や就労支援施設なども充実し、さまざまな職種の人が生きづらさを抱える障害者の支援に関わるようになってきました。私が作業療法士としてリハビリテーションに関わり始めた頃は、身体障害の人たちも自宅に引きこもっていました。それが50年近くを経た今では、2021年のパラリンピックを見ても障害を持つ人たちの生活環境も変わり、障害を持っている人とは思えないほどの活躍をする人たちが増え、随分と時代が変わったなと思います。かつて埼玉県で行われた日本精神病院協会が主催した精神病院学術研修会の作業療法部門に参加された医師より、「作業療法なのに作業をあまり使っておらず、生活技能訓練あり、レクリエーション療法あり、喫茶療法ありでやっていることがまちまちで、専門性がない。このままでは、作業療法はだめになる。今以上に保険点数を上げるわけにはいかない」と言われたことがあります。この話は10年以上も前の話ですが、今でもこのことは変わっていないように思います。
さらに近年では、作業療法士になったものの介護士とどこが違うのかとまで言われるようになり、失望して辞めていく若い作業療法士の人が多いとも聞いています。この本で、「作業療法士って何?」と思われている人たちに、作業療法の面白さをお伝えできればと思います。
原稿を書き進めていく中で、似たようなことが繰り返し述べられているような気もしていましたが、物事を覚え、理解するためにはこうした繰り返しも必要であろうとあえて書きました。作業療法については一貫した姿勢を保ち続けてはいますが、それでも私の知識も古くなり、うろ覚えのところも増えてきました。そこのところはご容赦願います。
目次
第1章 作業療法って何だろう?
第2章 病気・障害とは何か?
第3章 作業療法場面で見られる障害のタイプと認知障害
第4章リハビリテーションの目的
第5章 社会生活を円滑に行うために必要な社会生活能力
第6章 作業療法の流れ
第7章 治療目標
第8章 社会生活能力を養うための作業療法の治療的な進め方
第9章 作業の組み立て方
第10章 指導方法
第11章 作業分析の方法
第12章 治療の捉え方
第13章 再発を防ぐ
第14章 家族への対応
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書籍情報
- ISBN:9784763995490
- ページ数:200頁
- 書籍発行日:2022年8月
- 電子版発売日:2024年6月22日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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