序文

本書「最新主要文献とガイドラインでみる 小児科学レビュー2024」は，雑誌『小児科臨床』に1年間に掲載された「小児科学レビュー ―最新主要文献とガイドライン―」を１ 冊にまとめたものです。したがって本書は他の教科書や書籍にはない以下の４ 点の特長を有します。

① 内容が最新です。すなわち，主に2022～2023年の論文が紹介されています。

② 構成が非常にユニークです。すなわち，各テーマに関する最近の研究動向とガイドラインが小児科医の日々の臨床や研究に役立つようにまとめられています。最新のガイドライン，論文を紹介するのみならず，背景，執筆者の貴重な意見，今後の課題についても言及されています。

③ 小児科学の広範なテーマを網羅的に取り上げています。すなわち，救急医療，呼吸器疾患，感染症，循環器疾患，消化器疾患，神経疾患，神経筋疾患，血液疾患，固形腫瘍，腎尿路疾患，水電解質異常，内分泌疾患，先天代謝異常，原発性免疫不全症，アレルギー疾患，膠原病と類縁疾患，先天異常症候群，精神疾患・こころの問題，新生児疾患，児童虐待，です。

④ 執筆者はそれぞれの分野の文字通り第一人者です。間違いなく“知っておくべき話題・知らなければならない話題”を取り上げていただき，かつわかりやすく執筆いただいています。

日常臨床に忙しいフロントラインの小児科医の皆様は，本書をご活用いただくことで“効率的に”学ぶことができます。また最新の情報を広範に学ぶことができます。読者の皆様により本書の活用方法はさまざまです。１ ページ目からじっくり読むもよし，目の前の患者さんに関係するテーマから読むもよし，各テーマ冒頭の「最近の研究動向とガイドライン」をまず通読するもよし，興味をもった論文の原著に当たるもよし，です。それぞれのお立場で，それぞれの利用方法で学んでいただくことが可能です。

さらに，専門分野の研究もしているという若手・中堅の小児科医の先生にも本書はお勧めです。あえて，ご自分の専門領域以外の話題にお目通しいただくと新しい視点を見つけることができるはずです。エビデンスレベルの高いデータの示し方，新しい診断方法や治療法に関するテクノロジー，コペルニクス的転回にいたる考え方，などは領域を超えた普遍性があるからです。専門領域外の話題の中に，ご自身の臨床や研究のヒントが隠れていることも稀ではありません。

末筆になりますが，ご多忙の中，執筆にご協力いただいた全国の先生方に厚く御礼申し上げます。本書が全国の読者の皆様の臨床，研究の一助になれば望外の喜びです。

2024年8月 長谷川奉延

加藤 元博