麻酔 2024年6月号 投稿論文掲載号

  • ページ数 : 95頁
  • 書籍発行日 : 2024年6月
  • 電子版発売日 : 2024年9月4日
¥2,970(税込)
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内容

投稿論文掲載号

序文

巻頭言
若手麻酔科医へ贈る言葉

医師として40 年間,麻酔科医として38 年年間,そのうち大学病院で33 年間勤務し,2024 年3 月末に定年退官を迎えた。

学生時代や,研修医の1 年目には麻酔科医になろうというつもりはまったくなく,2 年目は内科にフィックスして循環器内科,消化器内科,呼吸器内科,血液内科そのほかを3 カ月ずつローテトして3 年目以後は呼吸器内科に進むつもりであった。内科ローテ中は新たに入院してきた患者を受け持つことになり,多くが集中治療室(intensivecare unit:ICU)に入室していたため,1 年間いつも自分の受け持ち患者がICU にいる状態であった。ある時,重症肺炎で入院してきた高齢の患者さんを受け持つことになり,抗菌薬を投与していたがよくならず,挿管して人工呼吸器を開始し,その管理に大変難渋した。そして最終的に多臓器不全(MOF)になり亡くなってしまった。今考えてみれば十分起こりうることではあったが,当時の私は抗菌薬があるのにいまどき肺炎で亡くなってしまうのかと非常にショックで,呼吸器内科医になるのであれば人工呼吸のことをもっと学ばなければならないと強く思った。また,循環器を回っている時は,スワン・ガンツカテーテルによる循環管理をとても面白いと思った。そんな経験から,呼吸器内科医になる前にICU での研鑽を積みたいと思うようになり,ICU は麻酔科で勉強するらしいと聞き,初めて麻酔科を一時的に勉強してみようと思った。そこで3 年目に大学に戻って麻酔科の研鑽を始めた。

大学では麻酔のトレーニングを3 年間受けてから,ICU の研修を1 年間積み,4 年たった時点で内科に戻るなら今しかないがどうすると迷った。ペインクリニックも麻酔科3 年目から開始し,反射性交換神経性萎縮症(RSD)と呼ばれる病態(今のCRPS)に非常に興味を持った。指導医に恵まれていたこともあったと思うが,麻酔科の奥深さと,幅の広さに魅了され,そのまま麻酔科を続けることにした。

その後,大学では定員が増えない中で麻酔件数増加に対応するため,自分たちが立ち上げたICUから撤退することになってしまい,それで一時大学を出た時期もあった。その後,大学に戻り縁あって母校の麻酔科教授となり16 年弱の期間担当させていただいた。

教授就任前,重症患者の術後管理を外科医が行っていると,その外科医の行う術後管理に合わせた麻酔をしないと結局患者の予後が悪くなることを痛感し,真に患者にとって良い術中管理をしようとしたら,術後も自分達で見なければ本当の重症患者は救えないと思った。また,真に実力のある麻酔科医を育てるためにも麻酔科で運営するICU で術後重症患者を診なければならないと思い,自分の代で外科系ICU を開設して麻酔科で担当させてもらい,16 年かけて麻酔,集中治療,ペインクリニックの3 領域を広くカバーする麻酔科の礎を築くことができた。

自分が麻酔科に進んだのは,もともとICU 管理を学びたいと思ったことがきっかけであるが,術中の大量出血や,心停止に陥った患者を何とか助けて,無事退院させるためには,術中から術後にかけての一貫した方針に基づいた管理が必要になるのは自明の理であり,もし麻酔科医が術後ICU管理に関わらないと,独りよがりな麻酔管理になるのではないかと危惧する。

38 年間麻酔科医をやってきて,これから麻酔科の研鑽を積んでいく若手麻酔科医に一番伝えたいことは以下の点である。術中麻酔管理と術前・術後のICU管理は一体であり両者に取り組んで初めて理想的な周術期管理ができるため,麻酔科医はぜひ集中治療も深く取り組んでほしい。そしてペインクリニックも学ぶと,術後慢性痛予防も念頭に置いたより良い周術期管理に近づけると思うため,手術麻酔を主体に麻酔科医として活動するにしても一時期はぜひペインクリニックも深く学んでほしい。そして,患者にとって最も良い周術期管理のできる,真に実力のある麻酔科医に育ってほしい。


(名古屋大学名誉教授 西脇公俊)

目次

巻頭言

若手麻酔科医へ贈る言葉 (西脇公俊)

症例対照研究

小児腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術において筋弛緩薬非使用の全身麻酔に併施する硬膜外麻酔と腹直筋鞘ブロックが手術視野に与える影響―後ろ向き研究― (小栁 幸ほか)

症例報告

MLT(Microlaryngeal Tracheal)® 気管内チューブで気道確保できた高度気道狭窄を伴う巨大縦隔甲状腺腫摘出術の麻酔経験 (島崎 咲ほか)

重症呼吸不全を伴う高度側彎症患者の経尿道的手術に,超音波ガイド下脊髄くも膜下麻酔が有用であった1 症例 (安達大揮ほか)

中枢性尿崩症患者の開心術周術期に体液管理に難渋した1 症例 (齊藤志穂ほか)

体外循環を要した腎摘出術中に大動脈解離が生じ,経食道心エコー検査で診断しえた1 症例( 金本真希ほか)

穿通胎盤に対する二期的子宮摘出術でREBOA(resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta)が有効であった1 症例 (江島隆平ほか)

重症大動脈弁狭窄症を合併した患者の大腿骨近位部骨折手術に対する末梢神経ブロックによる麻酔管理は血行動態を安定化させる (石岡慶己)

硬膜外鎮痛を用いて分娩管理を行った脊髄損傷合併妊娠の1 症例 (山本由美子ほか)

造血器悪性腫瘍の分子標的治療薬投与中に多臓器不全を来した2 症例 (木村めぐみほか)

膝痛に抑肝散が奏効した注意欠如・多動症児の1 症例( 間嶋 望ほか)

小児の喉頭裂Ⅰ型に対してビデオ喉頭鏡を用いた評価を行った1 症例 (大岡直哉ほか)

パラガングリオーマ合併患者に対する3 回の全身麻酔経験 (岡野滉司ほか)

外国文献紹介

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書籍情報

  • ISBN:9784014007306
  • ページ数:95頁
  • 書籍発行日:2024年6月
  • 電子版発売日:2024年9月4日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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