基本がわかる放射線医学講義

  • ページ数 : 255頁
  • 書籍発行日 : 2024年12月
  • 電子版発売日 : 2025年1月17日
¥4,950(税込)
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商品情報

内容

医療者として説明するためのエッセンスをコンパクトに.
X線,CT,放射線治療,医療被ばく,災害医療.医療者として説明するために,知っておきたい基本かつ最新知見が詰まった入門書.171のチャートと講義スタイルで,学生のはじめの1冊に,医療者の学び直しに最適

序文

2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故は,医学放射線教育の世界にも大きなインパクトを与えました.2014年には日本学術会議から提言「医学教育における必修化をはじめとする放射線の健康リスク科学教育の充実」が発出され,新たに放射線災害医療やリスクコミュニケーションが学修項目に加えられた医学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂版)が発表されました.この考え方は令和4年度(2022年度)改訂版にも反映され,さらに看護教育の分野では,この年に放射線診療と放射線事故災害時の両面における水準の高い看護を提供する「放射線看護専門看護師」の認定が始まりました.一方,原子力災害時対策も新たに構築され,その両輪をなす原子力災害時医療と緊急時モニタリングに係る人材の育成も始まっています.このように,医学放射線教育はこの10年間,基礎教育から専門教育まで,試行錯誤しつつも大きく進化,拡大を続けてきました.

本書は,そのような現在の放射線医科学のエッセンスとは何かを示しつつ,それらを容易に理解することを目的にしています.「放射線や放射能の基礎知識や人体に与える影響について知りたい」「放射線科学を学びたい」「放射線医学を極めたい」と考えておられる医療系はじめ理系の学生や医療関係者,放射線測定・管理・防護関係者,あるいは原子力・放射線災害関係者の方々が,求められるレベルまで最短ルートを歩めるガイドとして作られました.

構成を簡単に紹介しますと,第1章 生体と放射線では,まず放射線の物理的な基礎を述べ,次に生体影響のメカニズムを知るための実験科学と,人体影響を推定するための疫学に分けてそれぞれの領域の若手研究者が解説します.

第2章 医療と放射線では,臨床医の視点による放射線診断,放射線治療の解説に加えて,これらの療法で受ける患者さんと術者の被ばくリスクとその防護に踏み込んでいます.また,核医学の最新状況も詳しく紹介しています.

第3章 リスクのモノサシでは,放射線防護や安全管理を守備範囲とする研究者から規制科学,すなわち放射線とうまく付き合うためのルールと,被ばく線量の編み出し方を解説し,健康リスクを定量的に解釈するためのいくつかのモノサシを示してみました.

第4章 リスクと向き合うは計画外の被ばくが生じた場合の対応について,看護師と医師の視点から紹介しています.1つは放射線災害医療,もう1つはコミュニケーションです.読者のなかから,これらの新しい分野の今後を牽引する方が出てくるかもしれません.

本書は各項目で自己完結するように編集しており,基礎的な事項に関しては重複して出てくることも多くあります.ですので,チャートを眺めながらの「つまみ読み」は大歓迎です.通読をあまり意図しませんが,それでも全体を通読できれば,かなりの“放射線通”になれます.様々な角度から,医学放射線ワールドを学んでもらえればありがたいと思います.

これらの内容に,過去に放射線災害を経験し,独自の放射線教育を構築してきた長崎大学,広島大学,福島県立医科大学を中心とした執筆陣が挑んでいます.執筆者の医療者および研究者としてのバックグラウンドは極めて多岐に渡り,現役の大学教員として医学部・大学院講義を担当し,研究者としても専門領域で実績を積み上げています.本書には,その教育研究上のノウハウがすべて込められています.

本書は,2019年の日本医学教育学会で,試行錯誤の真っ只中にあった放射線の健康リスク科学教育の状況を発表したとき,羊土社の冨塚氏とお目にかかったことが発端となり生まれました.当時はまだ成書にできるだけの構想には至りませんでしたが,その後の冨塚氏とのキャッチボールの中で,私の知りうる限り,極めてユニークな教科書になったと思います.福島原発事故の記憶や,その後の「放射線を正しく知り正しく怖がる」ことへの思いは,時間の経過とともに薄れていくかもしれません.本書が読者の方々の知識形成に役立つとともに,この10年間の試行錯誤の成果を次世代に繋いでいく一助になれば幸いです.


2024年11月

執筆者を代表して
長崎大学名誉教授
松田尚樹

目次

第1章 生体と放射線

1 放射線の物理的性質

 1 実は身近な放射線

 2 放射線の利用

 3 放射能と放射線のちがい

 4 同位体と放射性同位元素

 5 放射性壊変の原因

 6 放射性壊変の種類

 7 放射性壊変と放射能

 8 放射能と半減期

 9 放射線の分類

 10 静止エネルギーと運動エネルギー

 11 放射線の透過力

 Column 放射能漏れと放射線漏れ

2 放射線と物質の相互作用

 1 放射線と物質の相互作用とは

 2 光子と物質の相互作用

 3 物質による光子の吸収

 4 電子と物質の相互作用

 5 距離による放射線の減衰

 6 放射線の測定

3 放射線の生物影響(実験科学)

 1 放射線による生物影響の概観

 2 分子レベルの影響

 3 細胞レベルの影響

 4 臓器・組織レベルの影響

 5 個体レベルの影響

 Column 放射線の遺伝性影響

 Column 毛細血管拡張性運動失調症

4 放射線の人体影響(疫学)

 1 疫学とは

 2 原爆被ばく者およびその子供のコホート研究

5 日常的な微量被ばく

 1 自然放射線

 2 世界各地の大地の放射線レベル

 3 高自然放射線地域でのがんの発生リスク

 4 原発周辺作業に従事した作業者の被ばく線量

 Column 100 mSv以下の低線量放射線被ばくによる健康影響

 章末問題

第2章 医療と放射線

1 放射線診断

 1 単純X線撮影

 2 X線透視検査

 3 コンピュータ断層撮影(CT)

 4 インターベンショナルラジオロジー(IVR)

 5 核医学

2 放射線治療

 1 がん治療

 2 治療機で使用できる放射線の種類と特徴

 3 治療技術の進歩

 4 核医学治療

 5 核医学の臨床

 6 ホウ素中性子捕捉療法

 7 最後に

 Column アブスコパル効果

 Column 症例提示

 Column 超高線量率放射線療法(FLASH照射)

 Column 福島第一原子力発電所事故での被ばく線量との比較

3 医療における被ばく

 1 放射線防護の基礎

 2 放射線診断のモダリティ別の検査頻度と線量寄与率

 3 CTにおける被ばくのリスク

 4 CTにおける被ばく防護

 5 IVRにおける被ばく防護

 6 核医学における被ばく防護

 章末問題

第3章 リスクのモノサシ

1 放射線防護の体系と基準

 1 放射線防護の目的と基本原則

 2 放射線防護に用いられる量

 3 実効線量と名目リスク

 4 放射線被ばくにかかわる区分

 5 放射線防護のための基準値

 6 被ばくを低減するための方策

 7 放射線防護にかかわる国際組織

2 測定値の意味するところ

 1 放射線の単位

 2 放射線を測ってみよう

 3 被ばく線量を算出し健康リスクを推定する

 4 自分のモノサシを持とう

 Column 東京電力福島第一原子力発電所事故では被ばく線量推定のためにどのような測定器が使われたか

 Column 放射線障害の防止のためにどのような法律が定められているのか

 章末問題

第4章 放射線のリスクと向き合う

1 放射線災害医療

 1 放射線事故と原子力災害のちがい

 2 放射線事故・原子力災害の歴史

 3 放射線災害医療の診療と心のケア

 4 原子力災害医療ネットワーク

 5 放射線災害医療に関連する法律と国際機関

 6 放射線災害医療分野の人材育成

 Column チョルノービリ(旧チェルノブイリ)原子力発電所事故

 Column 東京電力福島第一原子力発電所事故

 Column 東海村JCO臨界事故

 Column 大洗研究開発センター燃料研究棟における汚染事故

 Column 放射線の「被ばく」と「放射能汚染」のちがい

 Column 原子力災害医療の実際①

 Column 原子力災害医療の実際②

2 リスクコミュニケーション

 1 リスクとは

 2 リスクに対する基本的な考え方

 3 リスク選択時の主な判断方法

 4 コミュニケーションとは

 5 リスコミとは

 6 クライシス・コミュニケーション

 Column 専門家の「常識」が人々を追い詰める

章末問題

巻末正誤問題

付録:各モデル・コア・カリキュラムとの対応表


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書籍情報

  • ISBN:9784758121774
  • ページ数:255頁
  • 書籍発行日:2024年12月
  • 電子版発売日:2025年1月17日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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