「Medical Technology」別冊 超音波エキスパート 10 血管エコーレポート集

  • ページ数 : 148頁
  • 書籍発行日 : 2011年1月
  • 電子版発売日 : 2013年1月1日
¥5,280(税込)
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商品情報

内容

超音波検査の領域拡大と、次々に登場する新技術に対応することを意図したシリーズ「超音波エキスパート」の第10弾。

臨床に有用な検査所見を過不足なく盛り込み、的確な超音波レポートを書くための道標となる一冊であり、認定試験受験の際にも最適な参考書。

序文

監修にあたって

小生が,初めて「血管エコー」と意識して超音波検査を行ったのが25年前である.腹部大動脈の「瘤の診断」に用いたのが始まりであった.「闇夜のカラス」に例えてもよいほどの画像で,今ある最新の機器で見られる画像とは雲泥の違いがあった.悪く言えば,「心眼」で観ることが要求されていた.

その超音波検査の一番の利点は,被検者にまったく害がないことである.そして,プローブを当て,超音波が到達できる部位であれば,「画像と血流状態」をリアルタイムに観察することもできる.今や,腹部大動脈から末梢はほとんど観察可能となり,その分枝の瘤や狭窄病変の判定にも用いられるようになった.血管の「壁の硬さや弾力性」も評価でき,頸動脈では実に0.1mmまでの計測も可能となったため,近年では生活習慣病の治療評価にも応用されるようになった.また,静脈内の「血栓」の診断にその威力を発揮していることも,今や周知のことである.静脈血栓症はけっしてまれな疾患ではなく,日常生活の中で,入院中に,旅行中に,条件さえ揃えば血栓症は発生しうる.その診断に今や「血管エコー検査が第一選択である」といっても過言ではなくなった.

これらの病気には,その予防が可能な疾患も多い.また,早期に発見すれば,軽症のうちに回復,もしくは進展を防止することが可能な疾患もある.そのためには,被検者に負担なく評価できる検査法の存在が必須である.血管造影(動脈造影,静脈造影)検査はきわめて精度の高い検査法ではあるが,被検者への負担が大きく,合併症などの弊害を及ぼしたりするため,経過観察で繰り返し実施するには難点があり不向きである.その点,超音波検査にはそれらの弊害がなく,必要に応じて繰り返し,安全に実施することができる.

しかし,超音波検査はプローブを当てた範囲しか見えないし,それに加えて検査を実施している者が一番よくわかるという特徴もある.したがって,臨床においては,臨床の主治医と検査実施者とのコミュニケーションが良好でなければならない.検査の目的は明瞭であるべきで,それにどう答えるかもまた明瞭であるべきであろう.主治医の要請への回答は,「報告書」の中に記載される必要がある.要請に的確に応えるには,検査をする者も解剖・病態,そして疾患について知っている必要がある.

また,ときには要請以上に情報を提供できることもある.エコーで,動脈硬化や血栓の存在だけではなく,その程度や血栓の新旧,そしてときには原因(例えば膝窩動脈捕捉症候群,高安動脈炎など)まで考察しうる場合もある.また,動脈・静脈以外の臓器や筋肉・腱・関節などの観察情報も提供できる.しかし,いたずらに多くの情報を羅列しても良い報告書とはいえない.すなわち,要請に対して,必要な情報で簡潔に回答することが基本である.何処を,どう検査し,どういう結果だったのかを明示することである.その後の検査方針の参考にもなるので,見えない部分や観なかった部分もわかるように提示しておくことも必要である.

今回,超音波エキスパートシリーズに,「レポート」が取り上げられ,世に血管エコーのエキスパートとして知られている方々に模範レポートを例示していただくことになった.その書式が決められた中での提示ではあるが,それぞれに個性のあるレポートを呈示いただくことができた.そこには,それら全体に共通する事項,また独自に工夫している事項など,多くの事柄を学ぶことができる.模範としてそのまま真似ていただくこともできるし,参考になるところだけ取り入れて活用していただくこともできる.「臨床側」との接点にこそ,レポートの活躍できる場がある.本書が,血管エコーを臨床の場で遺憾なく威力を発揮するための端緒となれば幸いである.

平成22年11月

医療法人松尾クリニック 理事長
松尾 汎


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新しい本ができました.血管エコーのレポート集です.

2007年の秋,日本超音波医学会事務局から送られてきたのは,第1回目の血管領域の超音波検査士受験者が作成したレポートがぎっしりと詰まった段ボール箱...愕然としたのは,その量ではなく内容でした.

2006年に当時の超音波検査士制度委員長・竹中 克先生(東大病院検査部)より,「20年以上歴史ある超音波検査士制度のなかで,血管領域の資格をつくることとなり,私の師匠である松尾 汎先生とともに,血管領域の制度立ち上げにご尽力ください」という依頼を受けました.それから東京・お茶の水にある超音波医学会事務局に何度足を運んだことでしょう.2008年2月の試験に向けて,試験範囲を決めるガイドライン策定,試験問題作成など準備も進み,受験応募の締め切りも終了,そして試験委員に対して受験者が作成したレポートチェックのために届いたのが,前述の段ボール箱です.初めての血管領域の受験者ですから,長年の血管エコー経験者が受験され,レポートは素晴らしいものばかり...と思っていたのですが,納得できるレポートに出会えたのは残念ながら全体の約2割程度でした.そのときに,臨床に活かすことのできる検査レポートの参考となるものをなんとか作らないといけないという思いを強くしました.

私が国立循環器病センターに赴任した1992年,血管超音波検査報告書はもちろんすべて手書きで,シェーマや計測値を検査者が記入していました.十人十色といいますか,頸動脈エコーの報告書でも,書く人によって書式がまったく異なっていて,日常臨床にも,後の研究用のデータ活用にも不便だなと感じていました.その後,検査項目ごとに必要な計測値と必要なシェーマを印刷できるようなシステムを構築しました.とてもよくできたシステムで,新しくトレーニングする人や全国から研修にこられた方々にも好評でした.こういったレポートフォーマットをもっと普及させないといけないと感じました.

本書は,超音波検査の新しいテキストブックとして2004年にスタートした超音波エキスパートシリーズの10冊目で,光栄なことに私が編集を担当した血管領域では4度目となります.血管エコーに対する関心の高さがうかがわれます.この本の企画にあたっては,超音波エキスパートの既刊書から2つのヒントをもらっています.まず,『エキスパート6 下肢静脈疾患と超音波検査の進め方』,『エキスパート9 末梢動脈疾患と超音波検査の進め方・評価』の巻末に掲載したレポートサンプルの延長線上にこの本はあります.もう一つは,説明文なくして乳腺超音波画像の質と量で迫った『エキスパート8 乳房疾患超音波画像集』です.とても斬新な作りに,ジャンルは違えど驚き,そして参考になりました.

ところで,良い検査レポートとはどのようなものでしょう? まずは,検査目的に明確に答えられている必要があります.さらに解剖,病態,病期,重症度,合併症,鑑別診断,治療方針などを理解していないと良いレポートは書けません.そして,レポートを読むと当然のことながら検査者の技量が透けて見えます.血管エコーは,1枚の写真だけでは結果が出せないことがあります.血流評価など,左右を比較してはじめてわかる異常もありますし,血管閉塞長が長いと1枚の画像では表現しきれないこともあり,写真の配置やシェーマは他の検査以上に重要だと感じています.

本書は,日常臨床現場で経験することの多い血管疾患や,頻度は低くても知っておいていただきたい血管疾患について,1症例について見開き2ページで完結するよう構成しています.どのページからでも読んでいただけます.左ページには,患者背景,検査目的,報告文,そして検査部位に応じたシェーマやチェックリストを掲載しました.右ページは写真エリアで,基本的に8枚までとしました.左右で対比できるものは対比して配置したり,なかには治療後の画像と対比するものや,皮膚所見がわかる写真も掲載しました.さらに付加するかたちで,写真の下には超音波所見のポイント,さらに最終診断やその後の経過も明らかにしました.検査手順や手技はほとんど記載していません.その部分は他の技術書に委ねましょう.そのかわりに参考となる種々の診療ガイドラインなどを巻末に掲載しています.本書は,これから新しくレポートシステムを構築される施設ではその参考となると思いますし,血管領域の超音波検査士を受験される方には道標になると思います.

執筆は,選りすぐりの血管エコーのスペシャリストに託しました.全体のバランスをとるためにお忙しいなか何度も校正をお願いしました.その甲斐あって素晴らしい出来栄えとなりました.

本書を見た私の印象は,検査レポートは"知の結集"であり"完成された作品集"です.


2010年11月 最終ゲラを読みながら

関西電力病院 臨床検査部
佐藤 洋

目次

監修にあたって(松尾 汎)

序(佐藤 洋)

I 頸動脈(佐藤 洋)

1 異常所見なし

2 不安定プラークと安定プラーク

3 内頸動脈狭窄

4 内頸動脈狭窄 ステント留置後再狭窄

5 内頸動脈狭窄 内膜剥離術後

6 右内頸動脈閉塞 左頸動脈,両側椎骨動脈ステント留置後

7 大動脈弁閉鎖不全症に伴う拡張期血流低下

8 椎骨動脈(右後下小脳動脈分岐前)閉塞

9 椎骨動脈起始部閉塞(左)

10 頸動脈解離(大動脈解離の右頸動脈への解離波及)

11 鎖骨下動脈盗血現象(左鎖骨下動脈起始部高度狭窄に伴う)

12 高安動脈炎(大動脈炎症候群)

13 Bow hunter症候群

II 腹部大動脈(山本哲也)

14 異常所見なし

15 動脈硬化

16 動脈硬化・潰瘍形成

17 腹部大動脈瘤(腎動脈下,紡錘状瘤)

18 腹部大動脈瘤(腎動脈下,嚢状瘤)

19 腹部大動脈瘤(Y字型人工血管置換術後吻合部狭窄)

20 腹部大動脈瘤(ステントグラフト留置術後,endoleak typeII)

21 大動脈解離(腹部分枝への解離波及)

22 腹部大動脈閉塞(TASC-D病変)

III 胸部大動脈(水上尚子)

23 胸部大動脈瘤(上行大動脈,紡錘状瘤)

24 胸部大動脈瘤(弓部遠位側,嚢状瘤)

25 大動脈解離DeBakey I型

26 大動脈解離DeBakey IIIb型

27 大動脈解離DeBakey IIIb型(血栓閉塞+ULP)

IV 下肢動脈(田嶋育子(28~35),佐藤 洋(36,37),久保田義則(38,39))

28 異常所見なし

29 軽度動脈硬化

30 閉塞性動脈硬化症 総腸骨動脈狭窄(TASC-A病変)

31 閉塞性動脈硬化症 総腸骨動脈閉塞(TASC-C病変)

32 閉塞性動脈硬化症 大腿―膝窩動脈病変(TASC-A病変)

33 閉塞性動脈硬化症 大腿―膝窩動脈病変(TASC-D病変)

34 閉塞性動脈硬化症 大腿動脈ステント留置後(ステント内再狭窄)

35 閉塞性動脈硬化症 大腿動脈バイパス後(吻合部狭窄)

36 膝窩動脈外膜腫

37 急性動脈閉塞(膝窩動脈)

38 医原性疾患 穿刺部合併症 動静脈瘻(大腿動脈―大腿静脈)

39 医原性疾患 カテーテル治療後合併症(仮性動脈瘤)

V 腎動脈・腎静脈(水上尚子(40~44),佐藤 洋(45~47))

40 腎動脈狭窄なし

41 右腎動脈狭窄(線維筋性異形成)

42 右腎動脈閉塞,両側腎萎縮

43 腎実質障害

44 高度大動脈弁逆流による拡張期血流低下

45 複数腎動脈

46 腎梗塞,高安動脈炎

47 ナットクラッカー現象

VI 下肢静脈(小谷敦志(48~55),佐藤 洋(56),久保田義則(57~62))

48 異常所見なし(正常)

49 急性深部静脈血栓症(腸骨―大腿静脈病変)

50 急性深部静脈血栓症(大腿―膝窩静脈病変,浮遊血栓)

51 慢性深部静脈血栓症(腸骨―大腿静脈病変)

52 膝窩静脈病変

53 急性深部静脈血栓症(ヒラメ静脈病変)

54 慢性深部静脈血栓症(ヒラメ静脈病変)

55 深部静脈血栓症(広範囲病変)

56 下大静脈フィルター留置後 血栓捕捉

57 静脈瘤評価(異常所見なし)

58 大伏在静脈瘤

59 小伏在静脈瘤

60 不全交通枝

61 血栓性静脈炎

62 筋肉内血腫

VII その他下肢腫脹例(山本哲也)

63 Baker嚢胞

64 心不全による浮腫

65 二次性リンパ浮腫

VIII 透析シャント(小林大樹)

66 バスキュラーアクセスの造設術前

67 良好なバスキュラーアクセス

68 バスキュラーアクセスの閉塞


略語集

参考文献,各種診断・治療ガイドライン

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書籍情報

  • ISBN:9784263294600
  • ページ数:148頁
  • 書籍発行日:2011年1月
  • 電子版発売日:2013年1月1日
  • 判:A4変型
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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