顔美学 見られる顔から見せる顔へ

  • ページ数 : 220頁
  • 書籍発行日 : 2019年5月
  • 電子版発売日 : 2019年8月30日
¥4,180(税込)
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商品情報

内容

「顔美(顔の美)」という未完の分野に一石を投じる意欲的な一冊!!

新しい医療の一つのあり方として,顔美学を基礎とした審美歯科ならびに形成外科への提案を行っています.
顔の各部位のもつ意味論,顔の全体的な美認識にも触れながら,顔の表情,魅力といった動的な美,美の経年変化等についてもわかりやすく解説.

序文

まえがき

顔の整形・形成の専門書・啓蒙書・ハウツー書・セミナー,あるいはSNSを介しての症例紹介などが世に氾濫している.これらの情報源から発信される量は過剰気味で,その内容を理解あるいは正誤を判断し得る受信側の能力と許容量を,はるかに超えている.いわゆる情報消化不良の状態である.人間の脳は少ない情報量を最大限に活用できるように進化してきたはずである.記憶容量が大きいのに出力が小さいという脳の特徴は,一時に大量の情報を処理することはできないが,少ない情報を貯め込み活用するのには向いているはずである.

「美顔(美しい顔)」と言えば,すぐに話がまとまってしまうような感じがする一方,「顔美(顔の美)」となると,何か奥がありそうな期待感がある.本書を読み進んでいくと,たしかに「顔美」は幅も奥行きもあり,未完な分野であることがわかるであろう.

最近の研究では,生活上重要と思われる因子に,「美しい人は,より望ましい結果に到達でき,好ましい人物と評価される.したがって,有利な扱いを受ける」とある.ここに,Beauty and Body DysmorphicDisorder(BBDD)という言葉がある.これは自己認知不調であり,身体異常形態不調ともいえる.外観への非存在感が損なわれている先入観である.最近の研究によると,全人口の0.7〜2.4%にB(body)DDが発生している.他のデータでは,6〜16%に何らかの審美的治療を望んでいる結果が示された.そして,より多くの人々が皮膚科での治療や整形外科的な治療を,ある時点で希望している.

しかし,このような患者は治療にあまり満足しておらず,皮膚科医ですらわずか15%だけが審美的治療に成功している,とする報告がある.これ以外にも,歯科治療に含まれる審美歯科あるいは矯正歯科の施術内容も追加される.口を開かないと認識できない白い歯や美しい歯並びといった口腔審美性は,口が顔の一部であるとは言え,上述のBBDDに含まれていなかったゆえに,これらを考慮すると上述の数字は異なってくるはずである.

世の中には「整形外科」「審美整形外科」「形成外科」「審美形成外科」等々の外科的施術法が提案され,それを希望する患者に施されている.患者のニーズにある程度あった結果が得られれば,成功とされている.いわば,外面から施術者の責任の下で患者の顔をその美的アイデアに沿うように,術を施しているのである.ここには,変貌するであろう患者自身の美への期待,不安などの内面的変化はあまり介入されない.したがって,術の結果は施術者の腕にかかってくる.

医者が狙い,患者が望む「美」は,はたしてこれで完結しているのであろうか?筆者は,この点に常に大きな疑問を抱いている.美を追求する医療行為であるとはいえ,はたして,美学本来の基礎をしっかりと理解したうえでの治療計画が綿密に行われているのか,いたって疑問である.というのも,美学に関わる学問の多岐にわたる特性と,その深さには驚かされる.そこには,ざっと考えても,美術解剖学,社会美学,顔美学,顔の認知,顔の印象と表現,対称性と黄金比,顔によるコミュニケーション,非言語コミュニケーション,表情の美,魅力,老いの美学,顔の変化と内面的変動の関連性,美の創造性と創造主の責任,等々が列をなしている.これらは,巧みにして複雑系を呈し,絡み合っているのである.そのうえ「美顔」は,いたって個人的であり,同じコンセプトや術法をすべての患者に使えるとはかぎらない.さらに「顔の美」には,静的な美と動的な美,顔そのものの経年変化と,それに伴う施された人工美の経年変化の認識等をも考慮する必要がある.

そこで,筆者はこれからの新しい医療の一つのあり方として,「顔美学を基礎とした審美歯科ならびに形成外科への提案」を主な趣旨に,本書を世に送り出した.患者に対し,もろもろのテクニックと材料を用いて一応美顔となっても,はたしてどれだけの「真の美」や「幸が伴う美」を患者が獲得しえたか,今の段階では答えがない.

日本人の好む美顔と他の国民の好む美顔とは,明確に異なる.たとえば,日本人(正面顔の美が重要)と韓国人(横顔の美が重要)との間でも,差異があることは自明である.今の医療現場で,どれだけ上述した諸問題を正確に把握し,患者を施術しているかも全くわからないが,想像するに決して多くはない.もしそうであれば,これら「顔の美」が主流になってよいはずである.まさに,これからの新しい「美顔を求める」医療のあり方が,自然と見えてくる.「整形顔をいかにして,見抜くか?」といった,施術者への新たなチャレンジもある.ますます施術者,患者,傍観者の間の「美」を介しての葛藤が激しくなってきているのが,現状である.

最近,特に審美臨床外科で小顔やアンチエイジング等が取沙汰されていることは,周知の事実である.そのなかでも,その人そのものを表現し,さらに非言語としての情報まで発信しうる顔には,特別な興味が集まっており,勢い美容形成外科の治療対象者も「顔」に集中してきている.ここで,「美」の概念と「顔」にまつわる概念を統合した「顔美学」という新しい学際的な学問が誕生する機が熟してきたと筆者は感じた.まさに,実行(「する」という動詞は,ラテン語faciaに由来する顔faceから派生した動詞facioであり,作る・実行を意味)するときである.

「顔」には一人ひとりの個人的な歴史もあり,情報を発信し得る特異性がある.一方,歴史の長い哲学,文学,芸術,音楽の対象である「美」には,鑑賞する美と,創造する人工美がある.「美」には,この人工美以外に,自然美と最近加わった社会美がある.本書で取り扱う「美」は,人の顔に関するので,人工美と社会美のいずれか,あるいは双方を意味する.

ここで,美容形成外科の立場から「美」を見ると,一般的に言われる「対称性の高い美顔」や「平均顔に近い美顔」を患者の顔というキャンバスの上に,外科医はそれなりの美的感覚に基づいて創造するわけである.その際,外面的な美が重視され,患者の内面的変化は,あまり問題となりえない.ただし,患者の期待から大きく異なる結果となった場合には別問題となるが,はたして美容外科医は,「美」の創造をどの程度の感性をもって施術しているのか,察しがつかない.西田幾多郎曰く「作られるものが,作るものを,作る」のである.ここではじめて,「美」を患者に提供する臨床外科医としての内面的な成長が期待できるわけである.

世にあふれる過剰気味の情報量を逆手に取り,うまく整理することもできて不思議ではない.本書を準備するに際し,以下に述べる手法を実践した.研究を通しての新しい学問づくりは,通常,図左のように新たな学問に関与する(たとえば3つの)異なる専門分野(discipline)が重なる領域で得られた知識を共有する,学際的なアプローチである.これが一般に実施されている多分野をまたぐ学問づくりと理解され,実施されている.しかし,これでは新規に誕生した学問の幅が狭く,適応範囲にも限界がある.より積極的な新しい学問づくりには,図右のように素分野のなかで目指す新たな学問に,実用的なセグメントを縦横無尽に切り開き,並び替え,整理して,一つの独立した輪(学問)をつくりあげようとする手法である.

図の右も左も日本語に訳すと,ともに「学際的」となる.しかし英語では,新しい学問創りのプロセスをinter-とtrans-とで,明白に区別している.なお,この両者の間にmulti-disciplinaryという言葉もあることを付記しておく.もちろん,以上の学際的なアプローチのなかに,歯科と医科の連携も含まれる.歯科治療のメインであるinside-outの方向性をもつ施術法と,整形外科のメインであるoutside-inのメスの切り込む方向性をもつ施術法との連携で,初めてわれわれの求めている究極の顔の「美」が獲得できるのではないであろうか!特に,スマイル顔を作るには口元の美化が重要であるので,審美形成外科と審美歯科との連携なしには,達成されない領域である.この点も上述した,学際的なアプローチが必須である.

「整形」でなく「形成」であるため,美への探求には一歩深く入り込んでいる.しかも,美学であるため,多面的に形成された顔の美を考える.顔は,非言語コミュニケーションの最強の道具として,情報の発信,そして受信側の反応に,多くその役割が課せられる.ときとして,無意識のうちの顔の表情が,その個人の人格,履歴までを映し出す場合がある.現状での形成外科の施術内容は,結局のところ,「静の美」を患者の顔に整えるのを究極の目的としているが,施術後の患者の「動の美」に対する配慮に欠けており,これをも含めたケアが必要である.

美容形成や整形が盛んとなっている現在,自己の身体イメージを改善する方向に走り出すと,次々と気になりだして堂々巡りしてしまう場合もある.

美容形成や整形が盛んとなっている現在,自己の身体イメージを改善する方向に走り出すと,次々と気になりだして堂々巡りしてしまう場合もある.そこには,悩む心の癒しであるはずの術式が,かえって自己のアイデンティティを奪うようなことになりかねない危険性もある.現在の顔の「美」の基準が将来にも同じ基準であり続けるという保証はない5).年を重ねるに従い,身体のいたるところは明らかに変化してくる.今獲得した顔の「美」と同じ顔で20年後,30年後を過ごせる自信のある人は,そう多くないであろう.自分の20年後,30年後のイメージをもつことが,長い目で見た「美」の追求といえるのではないかとも思える.

本書は,形而上学的美の意義,探求,認識から考察を始め,美の社会への影響,美の顔との出会いに続き,顔の表情,印象,情報の受信・発信源等を網羅する顔学に言及する.さらに,顔の各部位のもつ意味論,顔の全体的な美認識にも触れる.ここまでは,顔の静的な美が主な主眼であるが,本書の後半は,顔の表情,魅力といった動的な美,美の経年変化等を考察する.

目次

1.まえがき

2.「美」とは,何であろうか?

3.美の探求と美の形態

4.美の意識と認識

5.社会美学

6.顔と顔学

7.顔の表情

8.顔の認識,印象,記憶

9.顔の情報とコミュニケーション

Coffee break 人と人との間?距離学について

10.美術解剖学と顔パーツの役目

11.審美形成外科の概要とその必要性

12.審美歯学・矯正歯学の意味と美への貢献度

13.黄金比

14.平均顔

15.顔の対称性と非対称性

16.魅力について

Coffee break 情報過多消化不良症候群

17.食と美

18.顔魅力

19.対人魅力

20.笑顔とその効果

21.表情美学と化粧

22.人の老化と美の劣化

23.自分の顔,実像と鏡像

24.あとがき

索引

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書籍情報

  • ISBN:9784263461464
  • ページ数:220頁
  • 書籍発行日:2019年5月
  • 電子版発売日:2019年8月30日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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