医学の古典をインターネットで読もう

  • ページ数 : 270頁
  • 電子版発売日 : 2011年6月1日
¥4,180(税込)
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商品情報

内容

様々なジャンルから古典的論文を厳選し、それが書かれた経緯、背景、内容、意義を興味深く解説した「医学の古典をインターネットで読もう」の電子書籍版です。

序文

はじめに

 10年前の2000年に『医学の古典を読む』を出版しましたが,それは私が中心となって発行してきた雑誌"Anesthesia Antenna"に連載してきた「古典」をまとめたものでした.本書はその続編なので,当初は同じタイトルに『続』とか『第二』といった接頭語をつけようと考えていました.
 前作では,古典の原論文を入手する際,図書館で司書の方にお願いするか自分で探していました.本書も,前作と同様にAnesthesia Antennaに連載したものが中核となっていますが,他に雑誌『呼吸』に掲載した「インターネットでみる『呼吸器』」などの記事から一部採用しています.そちらは,基本的には比較的新しい情報を扱っていますが,調査の過程でインターネットに古典の情報の掲示が多くなった点に気づきました.それで,図書館から入手した記事を改めて調査してみると,実はインターネットに掲示されている数が急速に増えています.それで本書に,『医学の古典をインターネットで読もう』というタイトルをつけることにしました.本書の元の資料は,少数の例外を除いてすべてインターネットにあります.
 読者の方が本書の記述を読んで興味を惹かれて原本あるいは原典に当ろうとする際,図書館に頼むのは面倒と逡巡するのは自然ですが,インターネットで電子的にアクセスできるならずっと簡便です.タイトル変更には,そんな意識も働いています.

 特筆したいのは,インターネットにオープンアクセスの情報つまり「誰でも無料で得られる情報」が増えた点です.医学や科学系の雑誌では,JBC(J Biol Chem)やJCI(J Clin Invest)はしばらく前から完全公開になり,最新の半年か1年を除いて公開しているものはもっと数多くあります.本書に引用したものでも,PNAS(Proc Natl Acad Sci USA)やJP(J Physiol),それに私の専門領域の雑誌 Anesthesiologyも同じ範疇に属し,最新のもの数号を別として完全に公開しています.「古典」の論文は当然古いので,このグループの雑誌は完全オープンアクセスと実質的に同じです.私自身もそうですが,施設の図書館が契約している雑誌が乏しい場合,インターネットの情報取得に制限がつく場合も少なくありません.オープンアクセスの情報はその点から福音で,メドラインも"free text"(つまりオープンアクセス)という指定が可能になっています.NEJM(N Engl J Med),Science,Natureなどの"prestigious journals"(「特級的な雑誌」でしょうか)は基本的には記事を公開しませんが,それさえも一部の論文や記事を一般にひろく知らせたいとの意図で公開してくれます.また費用をかけず,ただ登録すればダウンロードさせてくれる場合もあります.本書に引用したものでは,BMJ(Brit Med J),Science,NEJMがそうです.またメカニズムは不明ですが,Am J Physiolも全体はオープンアクセスではないものの,記事によって公開しており,たとえばAhlquistの受容体の論文(1948年)は特に登録せずにダウンロードできました.試してみるものです.
 もう一つ驚嘆するのが書籍で,けっこうな数が全面的に公開されており,その点も知って欲しいと感じます.このグループは,これからさらに数が増えるでしょう.本書の冒頭に登場させた大古典であるHookeのMicrographiaなど,その図があまりに見事で,それをパソコンにダウンロードできるのは豪華な贈り物を受けた気持ちになりました.

 読者の方々がそうした楽しみを味わう際に,本書が一つの助けになれば幸です.


2010年 11月

諏訪 邦夫

目次

第1部 呼吸

1.フックの業績と大著「マイクログラフィア」

弾性の法則と物理学

フックの変わった人工呼吸法

顕微鏡とマイクログラフィア

気質とポートレイトと

2.1920年代のpH測定:化学者Clarkについて

電極開発者のクラークについて

もう一人のクラーク:1910年代からのpHの研究者

クラークの書籍でみるpH測定の苦労

間違いの源

3.炭酸脱水酵素:精製と性質

論文の要旨

序論にみる当時の状況

論文の本体部分:作用の確認と酵素の抽出など

第一著者Meldrumのことなど

4.ヘモグロビンを4量体と確定し4段階結合説を提案した

アデアの業績

アデアの2つの業績までの道

アデア:4量体の確定

4段階結合説への道

5.鉄の肺の開発と普及

人工呼吸の歴史

鉄の肺の装置の記述

代謝への作用

胸郭と横隔膜の動きの鑑別

臨床応用

著者の所属について

鉄の肺から陽圧式人工呼吸へ

6.Fenn,Rahn,Otisの高空の肺胞気組成の解析:

O2/CO2ダイアグラム

論文の流れ:1-4まで

論文の流れ:5-10まで

おわりに

7.1952年コペンハーゲンでのポリオ蔓延と

陽圧式人工呼吸の創始

最初の経緯

気管切開施行の優先

治療の原則・各面のスタッフと会議

嚥下困難と気道内分泌蓄積の問題

おわりに

筆者の注

8.ARDSを確立した金字塔

タイトルと序論の魅力

症例提示と分析方法

結果はどうなっているか

どう考察したか

充実した内容にこの論文の価値が

9.アセタゾルアマイドで高地順化が促進される

炭酸脱水酵素の働き

高山病とアセタゾルアマイドの作用

高地移動の呼吸:低酸素刺激は二酸化炭素の調節能で

 打ち消される

アセタゾルアマイドが高山病や高地順化に効くメカニズム

薬物としてのアセタゾルアマイド

10.睡眠時無呼吸を解き明かす

この論文の重要性

睡眠観察パラメーターが充実

麻酔科医の視点から

精神科医の論文

11.IMVの端緒とウィーニングへの応用

ウィーニングの問題点

IMVによるウィーニングの主張

症例6例の提示

筆者のコメント

12.酸塩基平衡に関するStewart理論と"Strong ion difference"

酸塩基平衡に対するStewartのアプローチ

Stewartのアプローチの狙い

Stewartの提案への優れた解説

Stewartの提案に対するコメントと疑問

おわりに

13.蘇生時には混合静脈血の二酸化炭素が著増する

論文の内容

この論文の問題点

酸素供給障害でPCO2が上昇するメカニズム

嫌気性代謝の二酸化炭素当量

悪性高熱の高二酸化炭素血症もこれ

14.バークロフトの教科書に失望

書籍の基本データと第一章

ヘモグロビン酸素解離曲線の考察

ヘモグロビンと酸素親和性への酸とくに二酸化炭素の影響

本書への感想とコメント

その他の書籍について

第2部 循環

15.フォルスマンの心臓カテーテルの論文

論文の冒頭部分

屍体での検討

自分自身での生体実験

臨床応用例

その他のコメント

フォルスマンの人生と子供たち

論文と英訳について

16.コムロウの大動脈小体の論文

まずサマリーから

論文の構造にとまどう

論文の内容

背景・意図・意義など

17.クールナンと心臓カテーテル

論文の基本構造

もう一つの論文について

18.循環系のガイトンモデルの創始

論文サマリーの紹介

重要な概念と研究手順

数式の提案

コンピュータモデル

19.冠状動脈バイパス手術の創始

画期的な論文は単純

CABGまでの道

Favaloro氏のたどった道

良好な成績が印象的

書籍のこと

20.心疾患患者に一般手術をするリスク:

多変量解析による分析

CABGの始まった時代が背景に

論文のアウトライン

GoldmanとShahの解析

それでもGoldmanか

21.コムロウ氏の"Retrospectroscope"が読めます

"Retrospectroscope"の内容

アクセスの仕方と目次リスト

pdfファイルの実際

書籍との比較

第3部 麻酔・手術・薬理

22.エーテルの麻酔作用を記述したファラディ

化学者ファラディとその業績

論文の全文と全訳

エーテル麻酔実用化との関連

論文の所在と表現など

23.リスターと滅菌概念の確立

リスターの有名な論文

この有名な論文の朗読

リスターの業績の受容とパスツールとの関係

リスターの人物と経歴

24.高峰譲吉によるアドレナリンの発見

タカジアスターゼ開発まで

アドレナリンの発見

高峰のアドレナリンの論文

エイブル・裁判・エピネフリン

「アドレナリン」か「エピネフリン」か

私自身の誤りと問題点と

25.ウィップルの手術の創始

1935年の医学と医療

論文の著者の分析から

対応の論理

論文の考察

麻酔について

アプガー女史との関係

26.交感神経系のα受容体とβ受容体

「受容体」概念の歴史:ラングレイからキャノンまで

「興奮」と「抑制」ではなくて単に2種類

証明する手順

わかったこと

考察でもう一度念を押す

この論文を紹介する経緯

27.笑気麻酔で身体が摂取する笑気の量

笑気の摂取量をなぜ知りたいか

実測の方法

現実に再現してみる

28.切断四肢と指趾の再接合

当時の背景

症例について

コメントや考察など

この群の手術と私自身の縁

2010年に気づいたこと

第4部 医学と科学一般

29.テスラ:電磁気学史上の天才

単位「テスラ」は人名由来

テスラの業績:三相交流の基本技術

テスラのモーターの論文

テスラとエジソン:二人の格闘

テラスとエジソン:ノーベル賞を断わる

テスラの奇人ぶり

30.クレブスとクエン酸回路の発見

クレブス回路の論文のアウトライン

ドイツ生まれのイギリス人

重要性が認識されるのに時間がかかった

クレブスとリップマン:CoAの役割

私がクレブス回路を知った頃

31.クライバーの法則:代謝は体重の何乗に依存するのか

クライバーの法則に関心を抱く経緯

代謝は2/3乗か3/4乗か

代謝はなぜ体重の3/4乗に比例するか

現時点での反論

検討を終えて

32.ポーリング:たんぱく質のらせん構造(αヘリックス)など

多彩な業績

ポーリングの研究のリスト

αヘリックスモデルの提唱

ポーリングメーター

ポーリングの麻酔理論

核兵器廃絶運動とノーベル賞

風邪とがんとビタミンC

33.アデニン/チミンとグアニン/シトシンの塩基ペアを

突き止めたシャーガフ

シャーガフの法則とは

二重らせん発見で果たした役割

科学への懐疑と賞賛と

34.ミッチェルの化学浸透理論

ミッチェルの化学浸透理論

ミッチェルの経歴

いまだに「理論」と書く理由

プロトンポンプとその阻害薬

35.フリドヴィッチらによる

スーパーオキサイドディスミュテース発見

物質に関する歴史の概観

ディスミューテイションとは

論文の結果の提示

素晴らしい予言と的中

おわりに

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  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

  • ISBN:9784498048027
  • ページ数:270頁
  • 書籍発行日:Invalid date
  • 電子版発売日:2011年6月1日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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