臨床医のための! 高齢者と認知症の自動車運転

  • ページ数 : 170頁
  • 書籍発行日 : 2018年11月
  • 電子版発売日 : 2018年12月26日
¥3,080(税込)
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商品情報

内容

厚労省研究班の中心となった著者が学際的執筆陣を結集して総力を注入した決定版!

高齢者・認知症ドライバーに直面した医師は、どのように考え、当事者にどのように寄り添うべきか。基礎知識・診断上の留意点について最新の動向を踏まえてわかりやすく解説した。実務に役立つQ&Aつき!

序文

私が認知症と自動車運転の問題の重要性に気づいたのは,1996年愛媛大学に赴任してからだったと思います.すでに大阪や東京,兵庫で認知症の診療や研究を始めていましたが,認知症診療の中でこの問題が患者と医師の信頼関係を揺るがすほどの問題になりうることや,高齢者の運転と社会の安全の両立が超高齢社会を迎えた日本で,地域社会のあり方そのものに関わるような課題であるという問題意識は持っていませんでした.もちろん,当時はまだまだ運転を継続している人が少なかったこともありますが,アルツハイマー病などによる認知症の診断が決まった患者さんや家族に,残念ながら認知症になると事故のリスクは高まるので,バスや地下鉄を使った生活に切り替えるように指導しても,都市部ではそれほど大きな抵抗はありませんでした.

ところが,愛媛大学での診療は全く異なりました.認知症が中等度まで進行し,自損事故を繰り返しているような患者さんや家族に運転中止を勧める場合でさえ,「それほど言うなら止めてやるが,2度とこの病院には(運転できないと)来られないからな」,「みかん畑から農協まで,誰がみかんを運ぶのですか?我々に死ねと言うのですか」,「お父さんが運転できなくなると,私も免許を持っていないので,買い物にも役場にも行けなくなります」と,突然診察室に緊張が走りました.何か指針となるような研究がないか探していたところ,隣県の高知県で上村先生が全国に先駆けた研究を始めていることがわかりました.そこで,上村先生達と認知症の高齢者の運転実態の把握と運転中止後の支援に関する厚生労働省の研究班(2003年-2006年)を立ち上げました.

その後,本書にも執筆してくださった先生方や多くの研究者,警察関係者,司法関係者の地道な努力の結果,2017年の3月に内容が大きく改正された道路交通法が施行され,認知症と自動車運転の問題は大きな節目を迎えたと思われます.しかしながら,10年以上前に我々の研究班が指摘していた,運転中止後の十分な支援や少なくともグレーゾーンの対象への実車検査の導入,認知症の運転リスクに関するエビデンスの構築は,まだまだ十分とはいえませません.むしろ,地方では公共交通機関網が衰退し,高齢者を含む世帯の構成人数が減少し独居高齢者が急増するなど,社会の状況は厳しさを増しているようにも思われます.超高齢社会の中で,新オレンジプランにも掲げられているように認知症の方や高齢者の皆さんが住みなれた地域でその人らしい生活をできるだけ長く続けていくことができるように,読者の皆様が改めて高齢者の運転問題を考える機会にしてくだされば望外の幸せです.


2018年8月

池田 学

目次

I 総論編 ─ 知っておくべき基礎知識と医師の責務 ─

1 高齢者における運転可否判断と運転技能の評価法

1 超高齢社会とモビリティ

2 高齢者や認知機能低下運転者に特徴的とされる事故の分析

3 交通事故の潜在的リスク検出のための運転可否判断と評価手法

4 日常的運転の評価の手法

5 臨床現場における各種指標の総合的評価による予測性

6 運転可否判断と運転中止の影響および支援の必要性

7 結語

2 高齢者の自動車運転と技術支援

1 高齢者の運転特性

2 先進安全自動車

3 知事連合の高齢者にやさしい自動車開発等の超小型車活用

4 自動運転技術の適用研究例

3 高齢運転者対策の経緯と改正道路交通法のポイントならびに施行状況

1 高齢運転者による交通事故の発生状況

2 道路交通法における高齢運転者対策の経緯

3 認知機能検査

4 認知症など一定の病気等と運転免許の関係

5 平成27年改正道路交通法の施行状況等

4 認知症と自動車運転

1 認知症と免許保持者の実態

2 道路交通法の変遷

3 運転行動・運転能力と認知症との関連性

4 認知症と運転に対する病識・態度

5 臨床的対応 ─臨時的適性検査,診断書の作成について

6 今後の対応─関連学会の提言と対応・提言

5 運転免許に係る医師の診断と法的(責任)問題

1 改正道路交通法

2 交通事故における責任

3 責任保険

4 医師の民事責任

5 医師の診断の責任

6 参考となる裁判例

7 社会的背景

II 実践編 ─ 臨床現場における医師の役割と留意点 ─

1 新改正道路交通法における認知症の運転と専門医の役割

1 診断困難例への対応

2 自主返納の促進と進行を予想した生活指導

3 専門医集団としての役割

2 新改正道路交通法における認知症の運転とかかりつけ医の役割

1 高齢者の運転免許更新に関わる診断書とかかりつけ医の役割

2 診断書作成に際して日常生活への適応状況の把握の重要性

3 日本医師会:診断書作成の手引

4 症例検討

5 運転免許証を失った高齢者へのかかりつけ医の支援

3 認知症高齢運転者の外出・移動に係る概況および運転中止までの経緯

1 認知症に罹患した高齢運転者の外出・移動に係る概況

2 認知症に罹患した高齢者の運転中止の経緯

4 運転中止後の社会支援・先進地の事例紹介

●現状と課題

III 展望編 ─ これまでの研究成果と今後の展望 ─

1 わが国におけるこれまでの研究成果

1 認知症ドライバーの実態調査

2 運転の評価

3 認知症疾患別の運転行動の特徴

4 心理教育

2 自動車運転再開とリハビリテーション

1 運転再開とリハビリテーションに関する基礎知識

2 運転再開とリハビリテーションに関する手順

3 運転適性評価に特有の検査

IV Q&A編 これだけは知っておきたい!!実務で使えるポイントQ&A

Q1 介護保険上の認知症と,医学的な認知症では,その診断基準に違いはあるのでしょうか?

Q2 診断書の作成にあたっては,長谷川式知能スケールやMMSEを行わねばなりませんか?未実施の場合はどうすればいいでしょうか?

Q3 自動車運転に係る診断書を作成した者が事故を起こした場合,処罰を受けたりすることがありますか?

Q4 診断書の書き方のポイントについて教えてください.

Q5 当診療所には画像検査装置がありません.診断書作成にあたって画像検査をしなくてもよいですか?

Q6 臨時適性検査,臨時認知機能検査とは何ですか?

Q7 認知症の運転で多いとされ,臨時適性検査の受検に繋がる交通違反とはどのようなものですか?

Q8 臨時適性検査と診断書提出命令の違いは何でしょうか?

Q9 認知機能検査は何回でも受検可能ですか?

Q10 診断書作成を依頼された場合,自分で作成すべきか,専門医に紹介すべきかの判断基準はありますか?

Q11 回復の見込みがある認知症患者さんです.6カ月以内に回復の見込みがあるとの診断をした場合,6カ月後の診断書も初めに診断書を作成した医師が記載する必要がありますか?

Q12 認知症専門医です.かかりつけ医等の診断を不服として,セカンドオピニオンを求めて受診してきた患者さんの対応はどうすべきでしょうか?

Q13 免許証の自主返納は家族から申請された場合でも受け付けられるのですか?

Q14 任意通報制度とはどのような制度ですか? また通報の基準はあるのでしょうか?

Q15 認知症の人が,免許を失効したり,自主返納したりした後も無免許で運転しようとする場合,どのように対応したらよいでしょうか?

Q16 認知症の背景疾患別で運転行動の違いや事故の危険性が異なるのでしょうか?

Q17 生活にそれほど支障をきたしていない軽度の認知症でも運転は禁止されるのでしょうか?

Q18 MCI(軽度認知障害)で抗認知症薬を処方されている患者さんは運転をしていいでしょうか?

Q19 MMSE 28点の軽度認知障害(MCI)の患者さんを専門医に紹介したところ,前頭葉機能低下により運転はできないと言われました.どうしてでしょうか.

Q20 レビー小体型認知症(DLB)の方などでは,抗認知症薬の服用でMMSEがMCIレベルに改善する場合がありますが,抗認知症薬の効果により認知症が改善しても,運転は禁止されているのですか?

Q21 認知症と診断され家族からの説得で免許を自主返納しました.その後うつ病と判明し,うつ病が治り,認知症が否定されたので,自主返納を取り消したいと本人から希望されましたが可能でしょうか?

Q22 認知症の人の運転中断の指導方法を教えてください.

Q23 診断書作成にあたり,医師の注意義務は何かありますか?

Q24 認知症の運転の問題に関して,日常臨床で参考にすべきガイドラインや専門学会の提言などにはどのようなものがあるでしょうか?

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書籍情報

  • ISBN:9784498328242
  • ページ数:170頁
  • 書籍発行日:2018年11月
  • 電子版発売日:2018年12月26日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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