スーパー総合医 予防医療のすべて

  • ページ数 : 392頁
  • 書籍発行日 : 2018年6月
  • 電子版発売日 : 2019年9月20日
10,450
(税込)
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商品情報

内容

聴診器を持つすべての開業医必読必携! かかりつけ医による総合診療

現在わが国の平均寿命と健康寿命の間には男女ともに10年以上の乖離があり、これからの医療費の高騰が問題視されている。
本書では健康寿命を延ばすための「予防医療」に焦点をあて、プライマリ・ケアの介入によって疾患の重症化や不必要な入院を減らしてヘルスリテラシーを高めるため、総合診療医として知っておくべき情報や、検診/健診・予防接種の実態などが詳細に記載されている。

序文

シリーズ〈スーパー総合医〉の企画が立ち上がり,そのなかの予防医療に関する巻の責任編集のお話をいただいたのは2012 年9 月のことで,そこから6 年越しの刊行となる.全10 冊中9 冊目ということで,先に刊行された他の諸先輩がたの巻を毎回拝読しながら,それらに劣らない書籍になるだろうかと,毎回身の引き締まる思いをして,構想を練っていた.また,企画着手当時は予防医療に関する優れた日本語の本はあまり多くなかったが,素晴らしいと思われるアイデアは大体他人も思いついているもので,スクリーニングの理論的基盤を包括的に解説する随一の教科書は2009 年に日本語になっており,USPSTF の推奨を中心にその背景を概説する書籍が2015 年に, また,EPG(evidence-practice gap;エビデンス-診療ギャップ)を埋める際に,実運用の段階で患者さんに伝える際に肝となるヘルスリテラシーについては,これも素晴らしいまとめが2016年に発行されたのち,翌年には「全く違う視点で」ということで,EPG を埋めるための全体像と各段階での工夫という視点から雑誌の特集をまとめる機会を他所で得てしまい,山手線ゲームの辛さというか,後になればなるほど,「me too」本,二番煎じにならないためのハードルが上がり,もっと早くに出版してしまえばよかった,と後悔しながらの本書の構想である.

そのような中で,本書のユニークな点は従来のhealth maintenance の範疇にとどまらず,発生予防(2 章),救急受診・重症化予防(3 章)の章を設けたことである.特に,3 章のACSC(ambulatory care sensitive conditions)の考え方は,海外では,ACSC をモニタリングすることで間接的にその地域のプライマリ・ケアの質を測定するということが取り組まれているにもかかわらず,まだ日本での浸透は不十分である.おそらく本書が日本で最初にACSC について詳述された書籍ではないかと自負している.

ACSC は「質の高いプライマリ・ケアによってある程度予防可能な疾患」のことを指し,ある地域の急性期病院で,ACSC に含まれる病態による救急受診や予定しない入院が他の地域に比べて多いということは,その地域のそれらの疾患をマネジメントしているプライマリ・ケアの質が他地域よりも貧弱かもしれないということを示す.今回ACSC として挙げられた各疾患の項目は,Bardsley(2013)によるリストを元に構成している.一部違和感のある項目が挙げられているかもしれないが,その構成要素についてはまだ十分なコンセンサスの得られていない概念であり,このリストを元に,今後洗練されてゆくことを期待している.病院の医師も地域の家庭医・かかりつけ医も是非本書でACSC に含まれるのがどのような病態かを理解してほしい.病院の医師が自院のACSC の疾患をモニタリングし,その質や量に応じて,地域のプライマリ・ケアを担う医師・医療機関とカンファレンス,フィードバックなどをすることで,地域のかかりつけ医の患者の予防可能な病態による救急受診や入院を減らすことができ,また,病院もそれらの予定外受診や入院が減ることにより待機的な検査,手術,診療が可能となり,それらの待ち時間が減る,また,さまざまな緊急対応,臨時対応が少なくなることでストレスの軽減となる.

一方で,救急受診・重症化予防というのは,しっかりと原疾患を治療するということでもあり,本書中の記述内容がいわゆる疾患治療マニュアルの域を出なくなった項も存在する.本来は,救急受診・重症化予防の視点から,各病態において,外来でのフォロー頻度と重症化との関係や,経済的に割に合うのかなども検討すべきであったが,まだ研究が十分になされていない領域でもあり,これは,私から各著者への依頼の際に十分に言葉を尽くせなかったことによるためどうかご容赦願いたい.

既出の書籍でも取り上げられた内容を含む1 章(予防医療と健康維持),4 章(予防医療の実践)についてはできる限り情報を最新のものにしたことと,項目の立て方を切り口の違うものにしているため,新たな視点が得られるものと信じている.しかしながら,予防医療の扱う領域は極めて広く,小児予防接種,がん以外の検診,社会的処方,多疾患併存,パネルマネジメントなど,本書で取り上げられなかったり,十分な紙数が割けなかったものも多い.

執筆陣は,現時点で私が考えるその領域のベストである方々にお願いした.私のコミュニケーション不足やリーダーシップ不足により,執筆陣の最大限を引き出せなかった部分もあると思われるが,皆,期待以上の玉稿を多忙の中からいただいている.この場を借りて改めて深謝申し上げる.また,企画から出版まで,私の処理能力の低さに我慢強く付き合いサポートしていただいた中山書店編集部の皆様には,感謝してもしきれない.

この本を通じて,徹底的な予防医療の実践ありきではなく,個々の患者,住民が望む人生を全うするための手段としての良質な予防医療が十分に提供され,より多くの人が幸せになることを期待するものである.


2018年5月

専門編集

岡田 唯男

鉄蕉会 亀田ファミリークリニック館山院長

目次

1章 予防医療と健康維持

予防医療とは

予防医療(ヘルスメインテナンス)の4領域

スクリーニング

スクリーニングプログラム

良いスクリーニングの条件,予防医療のバイアス

乳幼児健診,学校健診 疾患の早期発見により,発育発達への影響を最小限に

妊婦のスクリーニング

高齢者のスクリーニング 余命,タイムラグ,価値観をふまえた意思決定を

COLUMN 高齢者予防医療のやめどき

がん検診 推奨グレードA,B(一般成人)

がん検診 推奨グレードD(一般成人)

がん検診 I声明(一般成人)

胃がんのスクリーニング

予防接種

予防接種 総論 予防接種における誤解とその対応

日本脳炎ワクチン

百日咳ワクチン 思春期,成人の流行予防を中心に

インフルエンザワクチン

HPVワクチン

麻疹風疹混合(MR)ワクチン,おたふくかぜ(ムンプス)ワクチン 先天性風疹症候群の予防を中心に

破傷風トキソイドワクチン

帯状疱疹ワクチン

高齢者肺炎球菌ワクチン

カウンセリング

行動変容とカウンセリングのための理論 TTM(Transtheoretical Model)を中心に

タバコのカウンセリング

アルコールのカウンセリング

依存性物質のカウンセリング

その他の予防医療

予防医療の費用対効果

COLUMN 健診/検診を受けるかどうか論理的に考えると

2章 発生予防

小児の虐待・事故の予防

望まない妊娠・異常妊娠の予防

更年期症状・骨盤臓器脱の予防

サプリメント,栄養補助食品などの摂取

運動による予防 ベネフィットとリスク

スポーツ障害の予防

糖尿病・メタボリックシンドロームの予防 生活習慣改善支援

Special Lecture アスピリンの予防的内服

COLUMN 忘れられた万能の予防薬? Polypill

プレホスピタルケア 医療のフォーカスを院外へ

アドバンス・ケア・プランニング(ACP) 急性期医療との連携

高齢者総合機能評価(CGA) 高齢者は「歳をとった大人」ではない

認知症の発生予防

廃用症候群・サルコペニアの予防

褥瘡の予防

高齢者の骨粗鬆症・転倒の予防

施設での転倒・せん妄の予防

介護予防

高齢者虐待の予防

がんと診断された時からの緩和ケア 早期緩和ケアの導入によって何が予防されるのか

正常な死別の悲しみに寄り添う面接

不眠予防

自殺予防 今村弥生 188

労働者の疲労と睡眠 過労リスクとオンとオフのメリハリの重要性

交通事故予防 運転者として 歩行者として

周術期合併症予防

感染症の曝露後予防

地域での耐性菌発生予防

Choosing Wiselyキャンペーン 過剰医療がもたらす健康リスクを問う

3章 救急受診・重症化予防-ACSCの考え方

ACSCとは

ACSC関連因子

医療提供体制との関連

危険因子としての"SDH"健康の社会的決定要因

Acute ACSC

胃腸炎

脱水/栄養不良

脱水/栄養不良 成人・高齢者の場合

歯科疾患 総合診療医に知ってほしい予防歯科

耳鼻咽喉科感染症 Airwayを制する

穿孔性・出血性潰瘍

虫垂炎穿孔

尿路感染症 腎盂腎炎はどう予防する?

蜂窩織炎

壊疽

骨盤内炎症性疾患

Chronic ACSC

高血圧

狭心症

うっ血性心不全

末梢動脈疾患による下肢切断

糖尿病合併症

鉄欠乏性貧血

喘息

総合診療医が診る慢性閉塞性肺疾患(COPD) 早期発見から確定診断までのアプローチ

てんかん

Vaccine preventable ACSC

インフルエンザ

肺炎

結核

低出生体重児

熱性けいれん

不定愁訴

4章 予防医療の実践

予防を診療の中に組み込む

エビデンス-診療ギャップとエビデンス・パイプライン

いつ行い,その効果をどのように伝えるか

医療者のアプローチ CQIの実践を多職種で楽しむ文化醸成を

予防医療のシステムズ・アプローチ

Health Promotion-地域へ出よう

地域アセスメント 環境に潜むリスクのスクリーニング

Social Capital 予防としての地域づくり

予防医学の住民教育と医療者の教育 ヘルスリテラシーと早期発見,予防

予防医療のジレンマ

予防医療における臨床倫理

保険診療,診療報酬制度との兼ね合い

COLUMN 価値に基づく診療(value-based practice:VBP)と予防


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書籍情報

  • ISBN:9784521739083
  • ページ数:392頁
  • 書籍発行日:2018年6月
  • 電子版発売日:2019年9月20日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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特記事項

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