重症患者における 急性肝不全・急性腎傷害・代謝異常《救急・集中治療アドバンス》

  • ページ数 : 312頁
  • 書籍発行日 : 2018年2月
  • 電子版発売日 : 2019年7月26日
¥11,000(税込)
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商品情報

内容

救急・集中治療領域では,ハイリスク患者の長期的な生命予後も含めた生活の質の向上に関心が高まっている.本書では,対応の遅れが予後を不良とする代表的な病態である急性肝不全,急性腎傷害(AKI),電解質・代謝・酸塩基平衡異常を取り上げ,人工肝補助療法(ALS)や血液浄化療法,薬物療法,栄養管理などの治療法を中心に詳しく解説.臨床に活かせる最新情報を1冊にまとめた.

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序文

人の生命の維持にもっとも大きくかかわるのは呼吸と循環である.学生や若手医師の教育では,急性期重症患者管理のきもは呼吸循環管理であると教える.しかしながら急性期医療で遭遇する病態は呼吸循環障害だけではない.ご存知の通り,生命予後にかかわる臓器機能としては中枢神経・呼吸・循環・肝機能・腎機能・血液凝固の6つが挙げられている.われわれ急性期医療にかかわる医師は,常にこの6つの臓器機能を意識し全身管理を行っていく必要がある.

肝臓は生体において解毒とグリコーゲンの貯蓄・タンパク合成という代謝に関する大きな役割を果たしている.ひとたび肝機能不全に陥れば,解毒作用の破綻からアンモニアなどの有毒物質の体内貯留をおこし,意識障害ひいては脳浮腫に至ることもある.またタンパク合成能の低下は凝固因子の低下を引き起こし,出血性合併症を引き起こす.腎臓は水分と老廃物の排泄をおもに行う.ひとたび腎機能不全に陥れば体内水分の貯留をおこし,ひいては溢水,肺水腫を引き起こす.また老廃物の体内蓄積は,尿毒症となり意識障害のみならず電解質・酸塩基平衡異常を引き起こす.このように代謝異常は肝臓・腎臓の機能障害によって容易に引き起こされ,その臓器関連性も高い.われわれ急性期医療にかかわるものは肝臓・腎臓・代謝に対する適切な理解が必要不可欠である.

シリーズ3冊目となる本書では,重症患者における急性肝不全・急性腎傷害・代謝異常に関する解説を行っている.急性肝不全は集中治療室においては比較的まれな病態ではあるが,近年では肝移植を行える施設も増加し,その治療戦略は以前とは違ってきている.非代償性肝不全は治らない疾患の一つであり,以前は集中治療の適応でさえないとされていたが,肝移植が一般的となった今日では良い移植の適応となる.しかしながらその評価,内科的治療が大切な領域であることに変わりはない.急性腎傷害も昔は急性腎不全と呼ばれ,その定義もこの20年で大きく変化した.急性血液浄化を中心とした腎代替療法も依然として治療の主役ではあるが,その使用法・考え方も大きく変わってきている.代謝異常としての糖尿病・血糖管理,電解質・酸塩基平衡異常も時代の流れとともに考え方,治療法,ターゲットなどが大きく変わってきている.

今回は,より選られた執筆陣による,より最新の情報が記載されていると自負している.重症患者管理には欠かせない,肝・腎・代謝に関する最新情報をこの一冊からぜひ読み取って欲しい.本書が皆さんの日常患者管理に貢献することを心より願っている.


2018年1月

森松博史
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科麻酔・蘇生学分野教授

目次

1章 急性肝不全の病態

1-1 劇症肝炎

1 劇症肝炎の定義,診断基準

2 劇症肝炎の成因

3 劇症肝炎発症のメカニズム

4 劇症肝炎の臨床像

5 劇症肝炎の管理

1-2 ウイルス性肝炎

1 ウイルス性肝炎の疫学

2 ウイルス性肝炎の診断

3 ウイルス性肝炎の臨床症状

4 臨床検査

5 鑑別診断

6 治療

7 肝炎ウイルス感染による肝炎

8 肝炎ウイルス以外のウイルス感染による肝機能障害

1-3 薬物性肝障害

1 薬物性肝障害の起因薬物

2 薬物性肝障害の発症機序

3 薬物性肝障害の診断

4 薬物性肝障害の病理所見

5 薬物性肝障害の治療

1-4 術後肝不全

1 術後肝不全の病態

2 術後肝不全の定義

3 術後肝不全を予防する対策

4 術後肝不全に対する治療

1-5 肝機能評価

1 肝機能に関連する血液検査

2 肝機能評価に用いられる画像検査

3 肝予備能評価法

4 慢性・急性肝不全別の肝機能評価

5 今後の課題

2章 急性肝不全の治療

2-1 急性肝不全に対する薬物療法

1 急性肝不全の分類

2 急性肝不全の診断と治療

3 急性肝不全における臓器別の臨床症状と対処法

4 劇症肝炎の薬物療法:病態からのアプローチ

5 急性肝不全の薬物療法:臓器障害の観点から

2-2 急性肝不全に対する人工肝補助療法(ALS)

1 ALSの目的

2 on-line HDF,high flow CHDFの役割

3 血漿交換(PE)の役割

4 急性肝不全に対するALSの実際

5 ALSの限界と今後の展望

2-3 急性肝不全に対する肝移植

1 急性肝不全に対する肝移植

2 肝移植の実際:症例提示

3 急性肝不全に対するABO血液型不適合成人生体肝移植

4 今後の課題

3章 急性腎傷害の定義・診断

3-1 急性腎傷害(AKI)の定義

1 歴史的背景:RIFLE分類,AKIN分類,KDIGO分類

2 sCrおよび尿量によるAKI定義の現状

3 今後の課題

3-2 AKIの病因分類

1 AKIの病因

2 腎前性AKI

3 腎性AKI

4 腎後性AKI

3-3 AKIのバイオマーカー

1 代表的なAKIのバイオマーカー

2 バイオマーカーによるAKIの早期診断

3 バイオマーカーによるAKIの重症度および生命予後の予測

4 臨床介入試験へのAKIバイオマーカーの応用

5 今後の課題

3-4 AKI診療ガイドラインのポイント

1 日本版AKI診療ガイドライン作成までの経緯

2 各章(CQ)のポイント

4章 急性腎傷害の治療

4-1 AKIに対する血液浄化法の考え方

1 血液浄化法の基礎知識

2 CH(D)Fによるサイトカインの除去

3 CH(D)F中の抗菌薬投与の基本的考え方

4 CH(D)F中の栄養成分の喪失と投与量の基本的考え方

4-2 AKIに対する血液浄化療法の開始と中止

1 現行のガイドライン

2 開始基準

3 中止基準

4-3 AKIに対する血液浄化療法の浄化量

1 血液浄化療法における浄化量とは

2 浄化量とAKIの予後の関係

3 日本における浄化量

4-4 特殊な腎代替療法-小児の血液透析と腹膜透析

1 小児の特殊性

2 急性血液浄化療法の適応

3 小児における血液透析

4 小児における腹膜透析

4-5 AKI患者の栄養管理

1 集中治療患者における栄養管理

2 AKI患者の栄養管理

3 集中治療患者における血糖管理

4-6 AKIにおける利尿薬の投与

1 尿量減少とAKI

2 AKIにおける体液過剰

3 AKIにおける利尿薬投与の是非

4 ループ利尿薬

5 ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)

4-7 AKIに対する血管作動薬の効果

1 ドパミン

2 ノルアドレナリン

3 バソプレシン

4-8 小児におけるAKI

1 小児AKIの疫学

2 小児AKIの診断

3 小児AKIの治療

4-9 高齢者におけるAKI

1 高齢者におけるAKIの疫学

2 加齢による腎臓の変化

3 高齢者におけるAKIの原因

4 高齢者におけるAKIの診断:AKIの臨床経過の把握

5 高齢者におけるAKIの短期予後と回復後の経過

6 高齢者AKIの治療戦略

7 治療の倫理的側面と問題

8 今後の課題

5章 電解質・代謝異常

5-1 ナトリウム異常

1 低ナトリウム血症(hyponatremia)

2 高ナトリウム血症(hypernatremia)

5-2 カリウム異常

1 低カリウム血症(hypokalemia)

2 高カリウム血症(hyperkalemia)

5-3 糖尿病:急性期血糖管理

1 糖尿病管理の概念

2 糖尿病の定義と診断

3 糖尿病に合併する病態のモニタリング

4 救急・集中治療領域における急性期血糖コントロール

5-4 急性副腎不全(副腎クリーゼ)

1 副腎と視床下部-下垂体-副腎系

2 糖質コルチコイド(GC)産生と代謝

3 重症疾患時のHPA系

4 炎症に関連するGC作用分子メカニズム

5 副腎不全(AI)の一般的な原因分類

6 重症疾患における副腎不全

7 副腎不全の診断

8 治療

6章 酸塩基平衡異常

6-1 重炭酸アプローチ

1 酸塩基平衡異常の解釈

2 重炭酸アプローチに基づいた酸塩基平衡の評価法

6-2 base excessアプローチ

1 base excessアプローチ以前の概念

2 base excessアプローチの実際

6-3 Stewartアプローチ

1 概念

2 strong ion difference(SID)

3 ATOT

4 SIDaとSIDe

5 strong ion gap(SIG)

6 pHの決定因子のまとめ


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書籍情報

  • ISBN:9784521743349
  • ページ数:312頁
  • 書籍発行日:2018年2月
  • 電子版発売日:2019年7月26日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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