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子ども虐待の臨床

坂井 聖二 奥山 眞紀子 井上 登生 (編著)

南山堂

  • ISBN : 9784525282011
  • ページ数 : 333頁
  • 電子版発売日 : 2011年5月31日
  • 判 : B5判
  • 種別 : eBook版 → 詳細はこちら
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¥11,000 (税込)
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商品情報

わが国初の“虐待医療の成書”である「子ども虐待の臨床」の電子書籍版です。

■ 序文

子どもの虐待は小児期の重大な疾患である.年間推定発生数は3万5千件を超えており,毎年200人近くの虐待死が確認されている.子どもへの虐待は一過性に終わることはまれで,再発を繰り返しながら次第にその重症度を増していくことが多い.虐待環境を生き延びた子どもは,身体的および精神的発達に様々な問題を抱えている.養育者の暴力の結果,障害児となる子どもも少なくない.人生の早期に幼い子どもがさらされた,想像を越える恐怖と悲しみの体験は,子どもの人格形成に深刻な影響を与えずにはおかない.子どもは癒されることのない深い心の傷を抱えたまま,様々な困難が待ち受けている人生に立ち向かわなければならない.

子どもの虐待を疑った場合には,子ども自身の心身に発生している異常事態を診断し,治療するとともに,子どもの安全と成長を保障することを最優先させなければならない.しかし,この疾患の発生を予防し,早期に発見し,再発を防ぐためには,家族への援助が不可欠である.そのためには,医師や看護師などの医療関係者だけではなく,児童相談所,保健所・保健センター,福祉事務所,保育所・保育園,学校,民間の虐待専門機関など,複数の機関が協力して援助活動を展開することが必要である.

しかし,虐待によって傷ついた子どもが救急車によって搬送されてくるのは病院である.保育園や学校で子どもの体に虐待を疑わせる傷が発見され,その診断を求められるのは医師である.体重増加不良や心身の発育不全の背後に虐待やネグレクトの存在を見抜くことは,小児科医に課せられた重大な責務である.医師は,虐待された子どもの第一発見者になることが多い.この重大な疾患を見落とすことは深刻な結果を招来する.虐待を疑い,正確な診断のためのプロセスを踏み,適切な治療的対応を実践することは,一連の医療行為として理解されるべきである.

子どもの虐待は小児期の重大な疾患であるにもかかわらず,わが国では,その診断学の専門書が出版されていなかった.本書はその最初の試みである.虐待の診断学はようやく第一歩を踏み出したばかりである.しかし,虐待に関する医学的データベースの多くは欧米の文献に依存しており,わが国における独自の調査に基づく情報分析は不完全なままである.また,虐待の診断には,未だに結論が出ていない複数のテーマが残されている.しかし,子どもと家族が置かれている事態は深刻度を増しており,医師に求められている責務は緊急性を帯びている.今回,我々編集者が必ずしも満足していない内容で出版に踏み切ったのは,このような状況に配慮したためである.したがって,本書の出版は,今後その内容を充実させ,より科学的で説得力のある診断学のテキストを完成させるスタートを意味している.

本書が,臨床現場の第一線で格闘している医療関係者に力を与え,追いつめられている子どもと家族を逆境から救い出すために役立つことを願っている.

最後に,本書の完成のために,素晴らしい原稿を執筆してくださった方々,および長期間に亘る困難な編集作業に携わってくださった南山堂編集部の方々に,心より感謝の意を表する.


2004年 11月

編集者代表
坂井 聖二

■ 目次

第I部 虐待の臨床医学的所見

第1章 身体的虐待の診断

A.一般的問題

・医学的診断へのアプローチ

・ヒストリーの聴取と記録

・虐待を疑わせるヒストリー

・診察

・検査

・記録

B.皮膚の損傷

・挫傷

・挫傷の経時的変化

・診断の進め方

・鑑別すべき疾患

・その他の皮膚表面の損傷

第2章 熱傷所見

・虐待における熱傷の頻度と好発年齢

・虐待者の種類とその比率

・虐待における熱傷の臨床的特徴

・熱傷部位の特徴

・熱傷痕と熱傷源物体の特徴

・熱傷源物体や受傷機転が特定できない熱傷

・虐待による熱傷への対応

第3章 虐待による頭部外傷

・虐待による頭部外傷に対する基本的対応

・虐待による頭部外傷の受傷機転

・虐待による頭部外傷の病態と特徴

・虐待を疑った場合の画像診断法と手順

・虐待による急性硬膜下血腫の特徴と注意点

・shaken baby syndrome (SBS)について

・虐待の診断

・虐待の治療上の問題点と特徴

第4章 眼科的所見

・被虐待児にみられる眼合併症

・虐待医療に関連する眼科学的検査

・眼科医の役割

第5章 耳鼻科学的所見

・耳鼻咽喉科領域における症状

・声帯結節:嗄声を訴えた症例

・虐待により難聴を示したと考えられた症例

・虐待による聴力障害の特徴

第6章 虐待の歯科所見

・児童の歯科的特殊性

・子ども虐待の歯科所見

・外傷に継発する歯の硬組織,歯髄,根尖部歯周組織の変化

第7章 Shaken Baby Syndrome

・SBSとは

・SBSの臨床症状

・SBSの所見とメカニズム

・虐待の判断

・加害者

・予後

・SBSの予防

第8章 画像診断

・画像診断の意義

・行うべき画像診断検査とその適応

・技術

・骨折の画像診断

・頭部外傷の診断

・胸腹部損傷

第9章 臨床法医学からみた子ども虐待

・臨床法医学の役割および医療機関との連携

・臨床法医学的所見

・事例

第10章 Failure to Thrive

・定義

・疫学

・臨床症状

・評価と診断

・対応

・予後

第11章 ネグレクトと医学的所見

・ネグレクトの定義

・ネグレクトの分類

・ネグレクトの頻度

・ネグレクトされた子どもの特徴

・ネグレクトを医学的に診断する

・ネグレクトの子どもに対する医学的治療

・ネグレクトを行う親の特徴

・ネグレクトをする親への援助

・ネグレクトの予後

第12章 医療ネグレクト

・医療ネグレクトとは

・医療ネグレクトにはどのようなものがあるか

・わが国における文献例の報告

・親の言う理由

・背景因子からの分類

・対応について

第13章 Munchausen Syndrome by Proxy

・定義

・疫学

・臨床像

・診断

・初期介入と治療

・治療目標

・合併症

第14章 障害児と虐待

・障害児における虐待の現状

・虐待の後遺症としての障害

・虐待された障害児の要因・背景

・虐待された障害児とその家族への対応

・障害児とその家族への支援制度

・今後の課題

第15章 性的虐待とその所見

・歴史的背景

・性的虐待とは

・疫学的状況

・性的虐待の症状

・虐待者の特徴

・医療現場での対応

・刑事事件としてのプロセス

・少数の被害者群

・性的虐待の予防

第16章 性的虐待の診察・検査

・性的虐待の婦人科的診察,およびSTD

第17章 虐待死とその所見

・子ども虐待の実態

・虐待死亡児の所見

・虐待死診断の要領


第II部 虐待のケース・マネージメント

第1章 子ども虐待への介入と予防

・医療における子ども虐待の位置づけ

・医師に期待される役割

・子ども虐待に介入する際の心構え

・子ども虐待への対応

・医学的所見のまとめ方

第2章 リスク判定

・リスク評価指標の確立

・子ども虐待への介入におけるリスク評価とリスク判定の位置づけ

・リスク評価の実際

・虐待ネットワーク会議とリスク判定

第3章 周産期医療の虐待予防

・周産期における虐待予防とは

・妊娠・出産と虐待リスク

・妊娠・出産と精神疾患

・周産期における虐待予防または治療的介入の方法論

・周産期からみた虐待予防の今後の課題

第4章 子ども虐待に関する法令

・児童虐待と親権

・児童虐待の定義

・通告義務

・一時保護,施設入所と病院

・親のケア

・児童相談所や家庭裁判所への協力

・ネットワーク

第5章 児童相談所の機能と連携

・児童相談所の組織

・子ども虐待への対応と最近の変化

・虐待の発見と通告

・緊急一時保護

・児童福祉施設入所

・在宅での支援

第6章 保健機関における取り組み

・保健所と市町村保健(福祉)センターの機能と役割分担

・保健師の役割

・子どもの虐待やグレーゾーン(予備群)を早く発見するには

・虐待予防の視点からの母子保健の対象

・新生児訪問指導について

・ハイリスク児への支援

・産後うつ病への対応:育児不安

・ネットワークミーティング(実務担当者のケースカンファレンス)の開催


索引

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