実験医学増刊 Vol.35 No.20 総力戦で挑む老化・寿命研究

  • ページ数 : 212頁
  • 書籍発行日 : 2017年12月
  • 電子版発売日 : 2018年11月23日
¥5,940(税込)
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商品情報

内容

超高齢社会を迎え,老化・寿命研究はどう進むのか?

老化機構を解き明かし制御する基礎研究の全体像と,社会実装の現状にいち早く迫る総説集.キーパーソンの本音に迫るインタビューも5本収録.

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序文

~総力戦のなかの老化・寿命研究の役割~


「人間五十年、下天一昼夜」

インドの仏教論書である倶舎論にあるこの文句は,人の世の50年は,(天上界の六欲天の最下位の世である)下天のわずか一昼夜にしかあたらない,ということを意味している.この一節は,人の世の時間の刹那さ,儚さと比較したときの,天界の神々の寿命の長さを謡ったものと考えられている.しかし,老化・寿命研究に携わる筆者らにとっては,限られた人生の時間をより豊かにすることの大切さを再認識させられる文句であり,どこかProductiveAgingのコンセプトとも共鳴するものを感じさせられる.

天界の時間で考えれば刹那とはいえ,人類の平均寿命は飛躍的に延び,生命科学の進歩が,この寿命延長に大きな貢献をしてきたことは疑いの余地がない.しかしながら,臨床医療への応用,技術(テクノロジー)の開発,経済の発展,社会制度の充実,そして何より広い国民の理解なくしては,今日の長寿大国日本はなかったと言えよう.そして,今,日本は,長寿社会の実現とともに姿を現した超高齢化社会という未曾有の難問を解決するために,再びすべての叡智を結集し,国全体で総力を挙げて取り組む必要に迫られている.いわば総力戦とも言えるこの状況下で,この至上命題に対して,大局的な視点で,老化・寿命研究が果たす役割を考えたい,それが本増刊号を企画する原動力となった.

筆者らは,2013年にも老化・寿命研究の最前線を特集する実験医学増刊号を編集させていただいた.その後4年の間に,老化・寿命研究は,われわれの予想を超える勢いで発展し,ブレークスルーと呼べる発見も相次ぎ,また,臨床応用,社会実装への勢いも加速した.これら最先端の研究内容から,医療・経済・社会的意義まで,幅広い視点で老化・寿命問題に切り込んだ本増刊号の刊行は,各分野で第一人者として活躍されている国内外の執筆者の方々の多大なるご協力なくしては実現しえなかった.この場をお借りして,本増刊号に寄稿していただいた全執筆者の方々に厚く御礼申し上げる.さらに,今回の特集号では,老化・寿命研究分野のキーパーソンである研究者の方々に,インタビュー形式で最新の研究内容をお聞きし,今後の老化・寿命研究に提言をいただくという新しい試みを行った.綺羅星とも言える研究者たちの肉声が,読者の方々に届けばと切に思う.また,最後に,このような前例のない挑戦的な企画で,編集作業の最前線で格闘していただいた実験医学の編集部の方々にも深く御礼申し上げたい.

冒頭で紹介した倶舎論の一節は,戦国の英雄,織田信長が桶狭間の出陣前に謡い舞ったとされる幸若舞の演目の1つである「敦盛」の原典としても有名である.超高齢化社会の問題は,日本が総力戦で望むべき喫緊の課題と言っても過言ではない.本書が,老化・寿命研究の進むべき方向を考え,この難局を突破するきっかけとなることを切に願うばかりである.


2017年10月

吉野 純,今井 眞一郎,鍋島 陽一

目次

第1章 老化・寿命研究の最先端

1.外的環境シグナルによる老化・寿命の制御
―親世代で獲得した生存優位性は子孫へ継承される

2.臓器連関による個体レベルの代謝制御と老化

3.視床下部における睡眠および体温調節のメカニズムと哺乳類の老化・寿命制御の関係

4.臓器老化におけるステムセルエイジングの役割

5.腸内細菌と細胞老化による発がん促進機構

6.KEAP1-NRF2制御系による酸化ストレス応答と抗老化作用

7.α-Klothoの発見とその分子機能の解析を基盤とした恒常性維持機構の研究

8.老化の比較生物学
―長寿齧歯類ハダカデバネズミを例に

第2章 世界における老化・寿命研究と医療の現在

1.健康寿命を延ばすための臨床試験の展開とその世界的影響

2.老化研究におけるドイツのマックス・プランク研究所の役割

3.細胞老化研究と英国における動向

4.フレイル,サルコペニアにみる日本の老年医療の現在

5.日本における百寿者研究の最先端

第3章 エビデンスに立脚した抗老化方法論を求めて

1.老化・代謝制御における腸内細菌叢

2.NAD+生物学研究の最前線
―NMNとNRの重要性と可能性

3.システム論とデータ駆動分析から可能となる老化研究

4.アスピリンの大腸がん予防効果

第4章 キーパーソンインタビュー
―次世代の老化・寿命研究に向けて

1.Dog Aging Project
市民とともに進める新しい形の老化研究

2.抗老化方法論の標的としてのサーチュイン
"Sirtuin Guy"が語る老化研究の未来

3.老化細胞除去による健康長寿
ブレイクスルーを生むのに大切なこと

4.老化研究の道筋を示す旗印Geroscience Initiative Japanの設立

5.ベンチから世界へNADワールドが描く老化研究のBig Picture

第5章 Productive Agingを目指して
―社会実装の試み

1.運動の抗老化作用とその実践

2.時間軸を踏まえたアルツハイマー病発症予防

3.高齢者を活かす福祉工学のアプローチ
―JSTプロジェクト「高齢社会を豊かにする科学・技術・システムの創成」を例に

4.認知トレーニングによる高齢者の認知機能の向上効果の検証

第6章 老化・寿命研究の社会的重要性

1.米国でみた老化研究

2.わが国における老化研究の方向性について
―老化メカニズムの解明・制御プロジェクトの推進

3.生涯現役社会の実現のために
―医学・生命科学研究への期待

4.増え続ける貧困高齢者とその対策

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書籍情報

  • ISBN:9784758103671
  • ページ数:212頁
  • 書籍発行日:2017年12月
  • 電子版発売日:2018年11月23日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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