薬を扱うなら知っておきたい!薬剤経済はじめの一歩

  • ページ数 : 132頁
  • 書籍発行日 : 2020年2月
  • 電子版発売日 : 2020年2月21日
¥3,190(税込)
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商品情報

内容

薬物療法をどう選択する?
新薬と既存訳をどう比較する?
薬の「価値」を見抜くには?


薬の「価値」を効果と値段の両面から評価する手法の,医療者・学生のためのコンパクトな入門書.基礎編は,薬剤経済の概要と分析の基本を,実践編は,感染症対策や糖尿病治療・膵がん化学療法などへの応用例を紹介.

序文

はじめに

免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の開発に貢献したことが認められて,2018 年に京都大学の本庶佑先生がノーベル医学生理学賞を受賞した.この「オプジーボ」は,がんの画期的な治療薬であることから,2014 年の発売当初は非常に高い値段がつけられたことでも有名である.しかし,多くのがん患者の治療に使うには「高額すぎる」との批判もあり,市場拡大や用量用法変更などさまざまな理由で,現在では4 分の1 以下まで値段が引き下げられている.では,「オプジーボ」の本当の価値は,いくらだったのであろうか? 「薬剤経済学」は,薬の「価値」を治療効果と値段の両面から評価するための方法である.医療に関しては「人の命に値段や優劣をつけるのは好ましくない」という考えから,経済評価はあまり行われてこなかった.しかし,「オプジーボ」のような効果的だが高額な治療法の登場で,近年注目を集めている分野である.国が医薬品や医療機器の価格設定に使うだけでなく,製薬企業での経営戦略,医療機関での医薬品選択など,医療にかかわるさまざまな人たちが,この「薬剤経済学」を学びはじめている.もちろん医療現場で活躍する医師,薬剤師,さらに新薬の開発に携わる研究者にも,限られた医療資源のなかで,患者にとって最大の利益を求めるためには「必須アイテム」になる.

実は,日本薬学会の「将来展望委員会」が2010 年冬に出した提言書「薬学の展望とロードマップ」のなかに「Ⅲ . 薬科学者を育てる 47.薬剤経済学」がある.提言書の原稿を依頼された私は,薬剤経済学の将来展望について次のように書いた.

『薬剤経済学研究は,薬価設定の根拠や償還の可否といった政策レベルでの利用以外にも,医療機関における採用医薬品の選択,診療ガイドラインやクリニカルパスの策定などにも利用できる.また,製薬企業にとっては医薬品のライフサイクルを考えたうえで,有効性や安全性に加え,経済性をアピールする重要な戦略ツールとなる.さらに,臨床の場で活躍する薬剤師にとっては,薬剤管理や医療安全にかかわる貢献度を定量評価することにより,薬剤師の技術料ともいえる診療報酬加算を裏づける資料にもなりうる.6 年制の薬学教育のなかで「薬剤経済」がコアカリキュラムに盛り込まれるなど,薬剤師にとって必要な学問として教育体制の整備が進んでいる.しかし,諸外国と比べると,研究ガイドラインやデータベースが未整備であるなど課題も多く,薬剤経済学の発展のために意思決定プロセスでの積極的活用と環境整備をすすめる努力が望まれる』

その後,約10 年の間,この研究分野は大きく進歩し,医薬品や医療機器の価格設定プロセスに費用対効果評価が本格的に導入される,医療機関や地域医療の場で医学的妥当性や経済性等を踏まえてフォーミュラリーが作成されるなど,医療政策レベルだけでなく,実臨床の場でも「薬剤経済学」の考えが浸透し使われはじめている.しかし,国,企業では,薬剤経済学の専門家が不足しており,実臨床の場ではほとんどいない.薬学教育モデル・コアカリキュラムでは「薬物療法の経済評価手法について概説できる」という項目が含まれており,全国薬学部・薬科大学で薬剤経済学の教育が行われるようになってきた.しかし2017 年時点で行った調査結果では,講義内容が大学によって大きく異なり,学ぶべき範囲の明確化や体系化された教育ツールを望む声が多かった.そのため,「薬剤経済学」の考え方・実践例を知識ゼロの状態から学ぶための教科書としてこの本を企画した.基礎編では,薬剤経済学の基礎をできるだけやさしく概説した.また,実践編では,国内外で行われた薬剤経済学研究の実例を紹介した.国の政策目的だけでなく,医療現場での問題解決につながるような事例もできるだけ盛り込んだ.

この本を手にとった読者は「薬剤経済学」という言葉には興味があるのだと思う.この本を読むことで,その「薬剤経済学」という新しい世界に一緒に飛び込んでみませんか.


2020年1月

赤沢 学

目次

はじめに

基礎編

1 薬剤経済学とは

1.医療の経済評価はなぜ必要か

2.医療経済と薬剤経済の違い

3.費用対効果の考え方

4.増分費用効果とは

5.投入と結果を比較する

6.分析の立場

7.薬剤経済学にかかわる人たち

確認問題

2 病気に関するお金の話

1.病気の値段とは

2.医療費の推計について

3.コストとチャージ

4.患者・家族の負担

5.生産性損失

6.支払い意思額

7.国民医療費を減らすために

確認問題

3 薬物治療の効果とは

1.治療効果のあらわし方,比較のしかた

2.真のエンドポイント

3.臨床試験から

4.QOLによる重み付けQALY

確認問題

4 費用と効果を比べる

1.費用効果分析

2.費用便益分析

3.モデル分析

4.感度分析

5.割引

確認問題

実践編

1 感染症対策の経済評価について

2 抗凝固薬の適正使用について

3 糖尿病治療の長期予後について

4 膵がん化学療法について

5 ワクチン接種による疾病予防について

6 ビッグデータを使った費用推計

薬剤経済学の政策利用(あとがきにかえて)

確認問題正答

参考図書

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書籍情報

  • ISBN:9784758109444
  • ページ数:132頁
  • 書籍発行日:2020年2月
  • 電子版発売日:2020年2月21日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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