これからのゲノム医療を知る

  • ページ数 : 126頁
  • 電子版発売日 : 2011年5月31日
¥3,520(税込)
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商品情報

内容

ゲノム情報を研究に活かしたい方にも、ゲノム医療の最前線を知りたい方にもオススメの書籍「これからのゲノム医療を知る」の電子書籍版です。

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序文

2000年に故小渕恵三元首相の肝入りでミレニアムゲノムプロジェクトが開始されたことを契機に本書(初版『先端のゲノム医学を知る』)を出版した.わずか10年にしかならないが,この分野は急速な発展を遂げ,大きく様変わりした.10年前にはSNP(一塩基多型)などどんな利用価値があるのかと問われたが,今や,遺伝子多型を利用した疾患の遺伝的背景を探る研究は,世界の大きな潮流とり,2007年には Science 誌の「Breakthrough of the Year」の第1位に「HumanGenetic Variation」が選ばれた.医療・健康といった,われわれが生きていくために最も基本的に求められる重要な課題と関連するので当然ともいえるが,残念ながらわが国でのこの分野に対するプライオリティーは依然としてそれほど高くない.

原因のひとつは,国家として将来の医療政策・健康や医療に関わる産業政策の欠如がある.20年後・50年後に国民に対してどのような質の医療を提供すべきか,あるいは,将来の国家の産業基盤をどうするのかといった青写真が描けていないことが問題である.医療の質が高まれば,必然的に経済的な負担が増えてくるが,「国家の財政支出を減らし,税金を抑えるために,医療の質を下げる」ことと「税金は増えるが,医療の質は高まる」ことのいずれを選択するのか,国家的な議論をすべきではなかろうか.今の医療制度改革は,医療費の削減がまずありきで,結果的に介護が必要な人を増やし,介護制度も歪めつつある.医療崩壊を防ぐためにパッチワーク的な対策がとられているが,このままでは医療制度がますます歪になっていくだけではなかろうか?これに対して,欧米先進国は健康・医療産業を21世紀の産業の基盤と考えた対策をとりつつあり,その基盤として重要な課題とゲノム医科学研究は位置づけされている.医療は重荷であるとの偏った考えではなく,国が発展するための投資であるという発想がそこにはある.おそらく,ゲノム研究は過去の研究分野だと考えている人が多いのは日本だけであり,ゲノム医科学研究が医療全般にわたって大きな影響を及ぼす研究分野であるとの再認識が必要である.医療産業分野においては,日本は大きな輸入超過となっているが,この傾向が拡大すると医療経済は間違いなく破綻する.日本発の医薬品開発を推進するためにも,質の良いオーダーメイド型医療を世界に先駆けて構築するためにもゲノム医科学研究のさらなる発展が不可欠である.

また,最近,「医療の不確実性」が話題となっているが,その不確実性の背景には非常に多様な現象の積み重ねがある.その一因が遺伝的な多様性であるが,この国では遺伝学教育・統計学教育が貧困であるため,その原理がなかなか理解されにくい.この改訂版では,最新の情報だけでなく,基本的な遺伝学的知識に関することも追加した.メンデル遺伝は遺伝学の基本知識であり,これに基づく連鎖解析を理解することが,遺伝子多型の理解に不可欠であると考えたからである.

本書はⅡ部構成となっている.Ⅰ部では,ゲノム医学の基礎知識として,遺伝子・ゲノムの基本(第1章),遺伝子多型と病気とのかかわり(第2章)を解説した.多型解析としては現在SNP解析が主流であるが,最近では CNV(コピー数多型)と呼ばれる新しいタイプの多型も研究現場で広がってきている.また昨今,次世代 DNAシークエンサーによるシークエンス解読の超高速化が急進展している.2008年にはDNAの二重らせん構造を解明したワトソン博士のゲノム解読が報告され話題となったが,個々人の全ゲノムを解読するパーソナルゲノムシークエンス時代に向けて,日々開発が進む新型シークエンサーの現状も紹介した.Ⅱ部では,薬理ゲノム学(第3章)から,ゲノム情報を利用した創薬(第4章),バイオバンク計画(第5章)まで,ゲノム医療実現へ向けた様々な取り組みと課題について解説した.現在,文部科学省の支援のもと「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」に取り組んでいる.本プロジェクトでは,東京大学医科学研究所のバイオバンクへDNA や血清試料・臨床情報を収集する活動を行うとともに,それら試料をもとに,一人一人にあった個別化医療へ向けて,DNA多型と薬剤の効果・副作用との関係などについて研究を行っている.その他,癌をはじめとする分子標的薬の開発も近年進展が目覚ましい.そうした医療の最前線にも触れた.

ゲノム情報がもたらす未来の医療への可能性を正しく理解するためにも,また超高速シークエンサーをはじめ日進月歩の技術の進展を正しく応用していくためにも,歴史的な背景を含め,幅広い知識を身につけていくことが欠かせない.本書がそのような役に立てれば幸いである.


2009年 5月

中村 祐輔

目次

Ⅰ部 ゲノム医学の基礎知識

第1章 ゲノムと遺伝子

1 ゲノムとは

2 遺伝子とは

3 ゲノムと遺伝子

4 各細胞で働いている(発現している)遺伝子の数

第2章 遺伝子多型と病気とのかかわり

1 遺伝子多型とその歴史

1)SNP・RFLP

2)VNTR多型,マイクロサテライト多型,STRP多型

3)CNV

2 病気と遺伝子

3 疾患発症に対する危険因子と決定因子

1)病気へのかかりやすさとは

2)ゲノム研究による病気の解明

4 疾患の決定因子の同定

1)遺伝子多型を利用した遺伝性疾患の原因遺伝子の探索(連鎖解析)

2)連鎖解析の原理

5 国際ハップマップ(HapMap)プロジェクト

1)国際ハップマッププロジェクトの経緯と意義

2)ハプロタイプ地図

6 SNPを利用した病気関連遺伝子の関連解析法

7 アソシエーション(関連)法を行うための理論的根拠=連鎖不平衡

8 パーソナルゲノムシークエンス時代に向けて

1)454FLX チタニウムタイプ(ロシュ社)

2)SOLiD(Sequencing by Oligonucleotide Ligation and Detection,アプライドバイオシステムズ社)

3)Genome Analyzer(イルミナ社)

4)HeliScope(Helicos社)

5)Single Molecule Real Time(SMRTTM)DNA Sequencing(Pacific Biosciences社)


Ⅱ部 ゲノム医療への躍進

第3章 ゲノム情報と薬理遺伝学(薬理ゲノム学)

1 薬理ゲノム学

1)"とりあえず型"医療

2)薬剤の選択基準

3)治療効果と副作用リスクの予測

2 遺伝子多型と薬剤の応答性

1)遺伝子多型と有効性

2)遺伝子多型と薬剤による副作用

3)遺伝子多型による薬剤用量の予測

4)薬剤の作用の延長線上で説明できない副作用の遺伝的要因

3 遺伝子多型と倫理問題

第4章 ゲノム情報から医学有用情報,そして創薬へ

1 病気関連遺伝子(産物)を標的とするエビデンスに基づく創薬

2 癌に対する分子標的治療法の開発

1)分子標的治療薬

2)抗体治療薬

3)癌ワクチン療法

3 新規分子標的薬剤のスクリーニング法

4 遺伝子治療法

5 癌に対する遺伝子治療

6 細胞療法

7 抗生物質耐性菌に対する新規抗生物質開発の戦略

8 新規医薬品と患者QOL・医療経済

第5章 バイオバンクジャパン計画(第1期 2003~'07年度;第2期 2008~'12年度予定)

1 遺伝子多型情報の蓄積と整備

2 オーダーメイド医療実現化プロジェクト

3 個人情報の保護対策

4 DNAバンク・血清バンク

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書籍情報

  • ISBN:9784758120043
  • ページ数:126頁
  • 書籍発行日:Invalid date
  • 電子版発売日:2011年5月31日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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