LUTS診療ロードマップ

  • ページ数 : 288頁
  • 書籍発行日 : 2015年3月
  • 電子版発売日 : 2016年10月14日
¥9,350(税込)
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商品情報

内容

もう迷わない! LUTS診療に必携の一冊

泌尿器科医が日常診療で最も多く遭遇する蓄尿・排尿症状の総称であるLUTS(lower urinary tract symptoms)。
本書は、原因疾患の確定に苦慮するLUTSについて、初期診療から原因疾患の治療までの流れを俯瞰できる診療“ロードマップ”を掲載し、各論では検査の基本評価、その後の確定診断と治療までを詳解します。

序文

LUTS診療の要点

LUTS診療のノーハウは,泌尿器科医に必須の診療技術である。しかし何となく判り難くて自信がもてない若い泌尿器科の先生方も多いのではないか。本書はそんな皆さんにLUTS診療のロードマップを提供することを目的に編集された。
男女ともに加齢により様々な下部尿路症状が出現する。例えば,過活動膀胱は加齢とともに増加し,40歳以上の男女の12.4%に認める。しかし下部尿路の解剖学的性差は大きく,男性では過活動膀胱症状に加えて前立腺肥大症による排尿症状・排尿後症状が多いのに対して,女性では骨盤底脆弱化による腹圧性尿失禁などの蓄尿症状が多い(下図参照)(ただし骨盤臓器脱に伴う排尿障害も少なくない)。一方,夜間頻尿は男女ともに最も多く,かつ最もQOLに影響を与えるLUTSである。そして原因は膀胱蓄尿障害だけでなく,夜間多尿や睡眠障害がむしろ主役であることが多い。

つまり,以上をざっくりまとめると,「男女ともに加齢とともに,頻尿(特に夜間頻尿)になり,男は尿が出にくく,女は漏れやすくなる」ということになる。もちろん,ばりばりの「神経因性膀胱」はあるが,この原則はすべての症例に通用し,どう治療するか迷った時に役に立つ。 次に「どの程度の症状が治療の対象になり,またどの程度まで治すのか」を考えてみたい。もちろんIPSSやOABSSなどの質問票で有意な症状が確認され,患者が治療を望んでいれば,治療対象となる。しかし一つの目安として,私は次の「正常の基準」を念頭に診察している。すなわち,1)排尿間隔は3時間以上もつか,2)1回排尿量は200mL以上あるか,3)排尿は30秒以内で終わるか,4)1日尿量は1,500mL程度か,5)5時間は続けて寝られるか,の5つである。1日尿量は20〜30mL×体重/日が適当なので,大体1,500mL程度が理想的。だとすると1分間に1mL尿が作られることになり,200mL溜められる膀胱なら3時間はもつはず。仕事,外出などの日常生活動作は大体3時間で完結するのでQOLも維持される。その膀胱なら夜間多尿でなければ,5時間は寝られるはずだし,高齢者は5時間の睡眠でほぼ充分。排尿はどんなに尿が溜まっていても,腕時計を見て30秒以上かかるようなら排尿障害があり,不便を感じる。またこの5つの基準は治療目標のゴールにもなるから,患者さんの話を良く聞いて治療法を工夫しながら,これらの実現を目指せば良い。

では具体的なLUTS診療の手順を考えてみる。はじめに,p.4,p8の「男性・女性LUTS診療ロードマップ」を見てみよう。ここでは,まず必須の「基本評価」として,問診,身体所見,尿検査,質問票による症状評価(男性では国際前立腺症状スコア:IPSS,女性では主要下部尿路症状スコア:CLSS)を挙げた。また症例によって行うオプション評価としては,超音波検査,残尿測定がある。これらは既刊のガイドラインにも提示されている項目である。これらの評価によって,主に「蓄尿症状を呈する」症例,「排尿・排尿後症状を呈する」症例,「LUTS+問題がある病歴・症状・所見を呈する」症例のカテゴリーに分類する。前述のように,「蓄尿症状を呈する」症例では過活動膀胱,(夜間)多尿,各種尿失禁などが,「排尿・排尿後症状を呈する」症例では排尿筋低活動や男性なら前立腺肥大症が想定される。最後の「LUTS+問題がある病歴・症状・所見を呈する」症例では下部尿路の器質的疾患や神経因性膀胱などの疾患によって2次的にLUTSが生じていることになる。ロードマップでは,各カテゴリーで考えられるすべての病態・病名を示し,その「確定診断/治療方針決定のための評価」を行う手順とした。その結果,治療開始のために必要な診断(確定診断と症状の程度評価)が得られ,「原因疾患の治療」が可能となる。ロードマップには,この過程で必要な症状・QOL質問票,検査項目に参照ページが記載されているので分からない項目があったら,ぜひ本文を読んで欲しい。「原因疾患の治療」も泌尿器科専門医として必要な情報をコンパクトにまとめたのでお読み頂きたい。

初めて通る道や慣れない道は誰でも分かりません。読者の皆様には,本書でLUTS診療に必要な基本的知識を素早くマスターした後,独創的で見識のある知識と確かな技術をさらに習得して,悩める多くのLUTS患者さんのためにご活躍下さることを期待します。


2015年1月31日 自宅にて
髙橋 悟

目次

I LUTSを診る

LUTS診療ロードマップ

男性LUTS診療ロードマップ

基本評価

基本評価による診断

確定診断/治療方針決定のための評価

原因疾患の治療

女性LUTS診療ロードマップ

基本評価

基本評価による診断

確定診断/治療方針決定のための評価

原因疾患の治療

・男性LUTS診療ロードマップ

・女性LUTS診療ロードマップ

LUTSの基本評価,確定診断/治療方針決定のための評価

問診

方法

評価と診断

質問票・理学的所見・診察

■主要下部尿路症状質問票(CLSS)

CLSSとは

CLSSの評価

CLSSによる診断

■国際前立腺症状スコア(IPSS)

IPSSとは

IPSSの評価

評価方法

前立腺肥大症影響スコア(BPH Impact Index;BII)

■過活動膀胱スコア(OABSS)

OABSSとは

OABSSの評価

■夜間頻尿特異的症状スコア(N-QOL)

夜間頻尿とは

夜間特異的症状QOL質問票(N-QOL)とは

N-QOLの評価

N-QOLの妥当性

N-QOLの採点方法

■間質性膀胱炎症状スコア・問題スコア(ICSI・ICPI)

ICSI/ICPIとは

ICSI/ICPIの評価

ICSI/ICPIの実際と問題点

■NIH-前立腺症状スコア(NIH-CPSI)

NIH前立腺炎症状インデックス(NIH-CPSI)とは

日本語版NIH-CPSI の評価

NIH-CPSIの判定

■ICIQ-SF

ICIQ-SFとは

開発版ICIQ-SF

スコア化ICIQ-SF

日本語版ICIQ-SFの妥当性

■キング健康質問票(KHQ)

キング健康質問票(KHQ)とは

KHQの評価

■OAB質問票(OAB-q)

OAB-qとは

OAB-qの評価

■排尿記録

排尿記録の方法

排尿記録の評価と解釈

排尿日誌から得られる情報による診断

■身体所見

方法

評価と診断

■Q-tipテスト[女性]

Q-tipテストの方法

Q-tipテストの評価と解釈

Q-tipテストによる診断

■ストレステスト[女性]

ストレステストの方法

ストレステストの評価と解釈

ストレステストによる診断

検査

■尿検査

採尿のポイント

尿定性検査(試験紙法)

尿沈渣

混濁尿

■尿培養

検体採取法と保存

尿中細菌の定量培養

原因菌の同定

薬剤感受性検査

尿路結核

クラミジア感染症

■尿細胞診

尿検体の種類と留意点

標本作製方法

標本の観察

細胞診の判定

尿細胞診以外のバイオマーカー

■PSA測定[男性]

PSAとは

PSAが上昇する病態

PSAが低下する病態

年齢階層別PSA基準値

PSA関連パラメーター

PSA検診

■超音波検査

LUTS診療における超音波検査

走査法の特徴

経腹走査法と検査の評価

■経直腸超音波検査

前立腺の経直腸超音波検査

排尿時経直腸超音波検査(voiding TRUS)

LUTS診療における超音波断層診断の位置づけ

■残尿測定

残尿測定の方法

測定結果の評価

残尿測定による診断

■尿流測定

尿流測定の方法

測定結果の評価

尿流測定による診断

■パッドテスト[女性]

パッドテストの方法

パッドテストの評価と解釈

パッドテストによる診断

■ウロダイナミックスタディ

ウロダイナミックスタディ

膀胱内圧測定(cystometry)

内圧尿流検査(PFS)

尿道内圧測定(UPP)

腹圧下尿漏出圧測定(ALPP)

外尿道括約筋筋電図(sphincter electromyography)

■鎖膀胱尿道造影[女性]

鎖膀胱尿道造影の方法

鎖膀胱尿道造影の評価と解釈

鎖膀胱尿道造影による診断

■上部/下部尿路・骨盤部の画像評価

方法

評価

診断

■膀胱尿道鏡検査

膀胱尿道鏡検査とは

膀胱尿道鏡検査による評価,診断

II LUTSの原因疾患を治す

■過活動膀胱

過活動膀胱の診断基準

過活動膀胱の病態

神経系の疾患・病態

治療方針決定のための評価

過活動膀胱の治療

■慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群

慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群の診断基準

慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群の病態

治療方針のための評価

治療:薬物療法

■間質性膀胱炎

間質性膀胱炎(IC)の診断基準

間質性膀胱炎の病態

治療方針のための評価

間質性膀胱炎の治療

予後

■夜間頻尿(夜間多尿,睡眠障害によるもの)

夜間多尿

夜間多尿の原因

夜間多尿の診断

多尿,夜間多尿の治療

睡眠障害

睡眠障害と夜間頻尿の関係

睡眠障害の診断

睡眠障害の治療

■多尿

多尿の原因

多尿の鑑別診断

多尿の治療

■心因性頻尿と排尿障害

心因性頻尿・排尿障害とは

心因性頻尿・排尿障害の特徴とウロダイナミクス

心因性頻尿・排尿障害の病態機序

心因性頻尿・排尿障害の治療

■腹圧性尿失禁(SUI)[女性]

腹圧性尿失禁の診断基準

腹圧性尿失禁の病態

治療方針のための評価

腹圧性尿失禁の治療

■腹圧性尿失禁(前立腺手術後)[男性]

疾患の診断基準

腹圧性尿失禁(前立腺手術後)病態

治療方針のための評価

腹圧性尿失禁(前立腺手術後)の治療

■混合性尿失禁(MUI)[女性]

混合性尿失禁(MUI)の診断基準

混合性尿失禁の病態

治療方針のための評価

混合性尿失禁の治療

■溢流性尿失禁(重度の排尿障害を伴う)

疾患の診断基準

溢流性尿失禁の病態

治療方針のための評価

溢流性尿失禁の治療

■膀胱頸部(出口部)閉塞(女性)

女性の膀胱頸部(出口部)閉塞の診断基準

女性の膀胱頸部(出口部)閉塞の病態

治療方針のための評価

女性の膀胱頸部(出口部)閉塞の治療

■前立腺肥大症[男性]

前立腺肥大症の診断基準

前立腺肥大症の病態

治療方針のための評価

前立腺肥大症の治療

■排尿筋低活動

排尿筋低活動の診断基準

排尿筋低活動の病態

治療方針のための評価

排尿筋低活動の治療

■尿道狭窄

尿道狭窄の診断基準

尿道狭窄の病態

治療方針のための評価

尿道狭窄の治療

■尿道憩室[女性]

膀胱憩室の診断基準

尿道憩室の病態

治療方針のための評価

尿道憩室の治療

■薬剤性排尿障害

薬剤性排尿障害とは

排尿障害を起こしうる神経系薬剤

薬剤性排尿障害の治療

■骨盤部手術・放射線治療既往(低コンプライアンス膀胱・排尿筋低活動)

疾患の診断基準

病態

低コンプライアンス膀胱の原因

治療方針のための評価

治療

■神経疾患(神経因性膀胱)

神経因性膀胱の診断基準

神経因性膀胱の病態

治療方針のための評価

神経因性膀胱の治療

■骨盤臓器脱[女性]

骨盤臓器脱の診断基準

骨盤臓器脱の病態

治療方針のための評価

骨盤臓器脱の治療

合併症とその対策

■膀胱・尿道腟瘻[女性]

膀胱・尿道腟瘻の診断基準

膀胱・尿道腟瘻の病態

治療方針のための評価

膀胱・尿道腟瘻の治療

合併症とその対策

■その他の原因疾患

尿路感染症:急性細菌性前立腺炎

 急性細菌性前立腺炎の診断/急性細菌性前立腺炎の病態/治療方針のための評価/急性細菌性前立腺炎の治療

尿路感染症:急性膀胱炎

急性膀胱炎の診断/急性膀胱炎の病態/治療方針のための評価/急性膀胱炎の治療

尿路感染症:尿道炎

尿道炎の診断/尿道炎の病態/治療方針のための評価/尿道炎の治療

膀胱癌

膀胱癌の診断/膀胱癌の病態/治療方針のための評価/膀胱癌の治療/表在性膀胱癌の治療/筋層浸潤癌の治療/術後化学療法と転移を有する膀胱癌の治療

前立腺癌

前立腺癌の診断/前立腺癌の病態/治療方針のための評価/前立腺癌の治療/内分泌療法/手術療法/放射線療法

尿路結石

尿路結石の診断/尿路結石の病態/尿路結石の治療

膀胱憩室

膀胱憩室の診断/膀胱憩室の病態/膀胱憩室の治療

女性生殖器の異常

女性生殖器異常の診断/女性生殖器異常の病態/女性生殖器異常の治療


付録:ガイドライにおける治療法の推奨グレード

前立腺肥大症の薬物療法

前立腺肥大症の手術療法

前立腺肥大症の保存療法・その他の治療

女性下部尿路症状の治療法--行動療法

過活動膀胱(頻尿・尿失禁)の治療薬

腹圧性尿失禁の治療薬

排出障害の治療薬

腹圧性尿失禁に対する術式

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書籍情報

  • ISBN:9784758312615
  • ページ数:288頁
  • 書籍発行日:2015年3月
  • 電子版発売日:2016年10月14日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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特記事項

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