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- 画像と病理から学ぶ 結核・非結核性抗酸菌症
商品情報
内容
結核と非結核性抗酸菌症を画像と病理を比較しながら学べる書。結核症,非結核性抗酸菌症に画像を通じてアプローチしているすべての方へ!
序文
結核は今日なお人類最大の感染症である。治療法は確立したが,蔓延状況は依然深刻で,世界中の関係者の努力にもかかわらず改善は遅々としている。わが国においても,年間罹患数はようやく2万人の大台を割ったが,依然高齢者を中心に発症が続いており,また新しい医療技術がもたらした生物学的弱者などからの発症も跡を絶たない。
結核症は単一菌による感染症であるが,その病像は,無症状の緩慢な経過から,高熱と激しい症状を伴う急速な展開まで多彩で,また病理形態学的所見も複雑である。感染から発病までの時間も数カ月から数十年までと広大なスパンに及ぶ。これはこの菌のいくつかの特性に由来する。分裂速度が極めて緩慢である,菌としては比較的弱毒菌であるが,食細胞の殺菌機構に抵抗して食細胞内で増殖することができる,さらに宿主免疫との複雑な相互作用を通じて病変を形成,進展させ,宿主免疫が強い場合は肉芽腫を形成させその中で代謝経路を変更して生き延びる,などの性質である。
この感染症としての複雑な過程はなかなかその全体像が明らかにならなかったが,わが国の結核病学の先達,岡治道,小林義雄,千葉保之,隈部英雄,岩崎龍郎らの努力を通じて初感染発病学説が確立され,ようやく解明された。またその研究成果はこの疾患の予防対策にまで及び,わが国の結核制圧に大きく寄与した。また岡,隈部,岩崎らは,その病理形態学を精細に究めるのみならず,当時急速に実用化されてきたX線写真にそれが投影されることに着目,これを方法論的に整備し,radiologic ─ pathologic correlationという方法論を世界に先駆けて開拓した。今日われわれは,呼吸器臨床の場においてHRCTを駆使し,その所見の由って来たるところを病理に求める習慣が確立しているが,その方法の淵源は実は,世界のどこでもない,わが国の結核病学の先達の業績にあるのであり,このことは若い世代の医師たちに是非知っておいていただきたいところである。
HRCTによって,われわれは今や肺内に展開する病変の様相を精密に,あたかも病理標本を眼前に見るかのように観察することができる。ここで,先達が精密に織り上げた結核の病理形態学という偉大な遺産が導き手となってくれる。驚くべき精密さでそれは展開を終えてわれわれの前にあり,われわれはそこから実に多くのことを学ぶことができる。眼前の患者の診断だけでなく,その患者の肺に長い年月をかけて起こってきた事態の閲歴に至るまで,画像は問う人にさまざまなことを教えてくれる。
一方,近年は非結核性抗酸菌症が激増している。世界的な傾向ではあるが,わが国の増加ぶりは突出している。2015年に発表された全国規模の調査によれば,罹患率は14.7/人口10万人と推定され,菌陽性肺結核の罹患率を超えた。有病率は100を超えると推計されている。しかもその多くは難治であり,今後も増加が予測されるこの疾患群の診断,治療は呼吸器科医にとっての新たな試練である。非結核性抗酸菌は結核菌と同じ抗酸菌属に属するとは言え,その病像は大いに異なり,また病理,従って画像形態も微妙に異なる。診断学の確立は急務であるが,これまで病理に基づいた精緻な画像診断学は未完成であった。
本書は,結核予防会結核研究所において人生の半ばの数年を過ごし,当時いまだ矍鑠(かくしゃく)と知的活動を続けていた古典結核病学の完成者岩崎龍郎に個人指導を得るという,またとない幸運を得た筆者の一人,徳田の発案でスタートした。非結核性抗酸菌症の画像診断の第一人者,氏田の参加を得,また清瀬時代徳田の学術上の指導者の一人でもあった岩井が,非結核性抗酸菌症の病理についての豊富な蓄積をもとに,その基本的な特徴をまとめており,それらを多数の病理写真とともに提示するという形で,成立の運びとなった。
3人で何度も意見交換の場を持ち,内容,用語に至るまで討論を重ねた。雑誌の特集企画としてはいくつかの先行業績があるが,1冊の単行本としては初めてのものとなる。この書物が,結核症,非結核性抗酸菌症に画像を通じてアプローチしようとしながら,まとまった成書のない現状の中で苦労しておられる現場に,特に若い世代の医師たちに,診療上の一助となり,また結核病学の先達の,病態を見据える観察力,深い思考力に,医学の過去,現在,未来につながる根本的な何かを学んでいただければ,筆者らの幸いこれに過ぎるはない。
2016 年陽春
徳田 均
なお貴重な病理写真を御提供頂いた河端美則先生,蛇澤晶先生,武村民子先生,伊藤春海先生,また筆者からの度々の問い合わせに対し深い学殖を惜しみなくお示し頂いた倉島篤行先生に深く感謝します。伊藤先生にはまた,結核の形態学上最も重要でありながらまた最も取り扱いの難しい概念である「細葉性病変」につき御高閲,御助言を賜りました。併せて御礼申し上げます。
目次
第I章 結核症
1 結核症の現状(疫学)
世界の結核・日本の結核 その歴史と現状
2 結核の経過:感染の成立と進展
1)結核の免疫
2)結核性病変の基本形とその自然経過
3)感染から発病まで
COLUMN:典型的な一次結核症
3 肺結核症の諸相
1)細葉性病変
2)結核性肺炎
3)空 洞
COLUMN:空洞の鑑別
4)小範囲に限局する結核症
COLUMN:結核腫と肺癌の鑑別
5)広範囲に展開する結核症
6)岡分類IIB
4 血行性播種性結核
粟粒結核
5 気管支の病変
気管・気管支結核
6 胸膜の病変
結核性胸膜炎
7 宿主条件
免疫低下宿主の結核
COLUMN:妊娠と結核
8 肺結核症のX線所見分類
日本結核病学会病型分類
第II章 非結核性抗酸菌症
1 非結核性抗酸菌症の臨床
1)非結核性抗酸菌とは
COLUMN:非結核性抗酸菌の語源
2)非結核性抗酸菌症の現状
3)非結核性抗酸菌症の診断
4)非結核性抗酸菌症の病理
2 MAC症
1)結節・気管支拡張型
2)線維空洞型
3)孤立性結節型
4)過敏性肺炎型
5)全身播種型
6)胸膜炎
7)関節リウマチ患者とMAC症
3 その他の非結核性抗酸菌症
1)Mycobacterium kansasii症
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書籍情報
- ISBN:9784771904590
- ページ数:180頁
- 書籍発行日:2016年4月
- 電子版発売日:2018年11月16日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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