商品情報
内容
各分野のエキスパートが、自身の手技のコツ・診断上の工夫をステップごとにカラー写真を交え紹介。乳癌診療に携わる先生方必読の一冊です。
序文
1894年に発表されたHalsted手術以降、100年間にわたって、癌の治療は手術が中心であり、en bloc切除が基本であった。ホルモン療法が奏功する乳癌では、他の固形癌に先んじて、癌をsystemic diseaseと捉え、術後補助療法が確立された。そして、1980年代に発表された根治的郭清術と腋窩放射線治療の長期成績に差がないとするNSABP-B04の大規模比較試験の結果と、1990年代に登場したセンチネルリンパ節(SLN)理論は、癌治療の基本であったen bloc郭清の意義を大きく覆すことになった。
腋窩郭清の省略が、術後の腕の浮腫や知覚・運動障害などの合併症を軽減させることから、SLN生検は瞬く間に普及した。1990年に日本で初めて行われた腹腔鏡下胆嚢摘出術が、1992年には保険適応になったように、先進医療として行われていたSLN生検は、日本乳癌学会が主導した多施設共同試験において安全性が証明されると、2010年4月に保険適応となり、現在、多くの施設では郭清が省略されるようになっている。
さらに、最近発表されたACOSOG Z0011試験の結果は、SLNに転移を認めても、それが2個以内であり、術後照射と適正な術後療法が行われれば、腋窩郭清を省略できる可能性を示した。この臨床試験の結果が腋窩郭清の回避に拍車をかけることは明らかであるが、SLNが正しく同定、生検されているという大前提が担保されていなければならない。
SLN生検に関しては、いかに正確にSLNを同定し偽陰性をなくせるか、生検すべき適正なリンパ節の個数、転移リンパ節の術前診断、SLN生検でも起こりうる上肢浮腫をなくすための方策、病理診断の方法、非浸潤癌への適応、術前化学療法後のSLN生検の信頼性、消化器外科領域での有用性など、未だ解決されていない多くの課題が存在する。
本書はこれらの課題に応えるべく、全国の第一人者の先生方にお願いして、各施設におけるSLN生検の手技の実際や、エビデンス、ピットフォールを中心に、現時点でのスタンダードについてご執筆いただいたものである。日本医事新報社の協力により、カラー写真・イラストを多用したビジュアルな解説書として上梓することができた。
医療の進歩は著しく、日々新技術が開発される。この本に書かれた最新の技術が過去のものになり、新しく改編される日が来ることも大きな楽しみである。
2012年 4月
丹黒 章
目次
第1章 乳癌センチネルリンパ節生検:日本の現状と海外の動向
第2章 乳癌センチネルリンパ節生検:国内臨床試験の結果と展望
第3章 センチネルリンパ節生検に必要なリンパ管とリンパ節の解剖
第4章 センチネルリンパ節の画像診断
リンフォシンチグラフィ①
リンフォシンチグラフィ②
造影CTおよび磁性体造影剤SPIOを用いたMRIによる乳癌センチネルリンパ節転移診断
3D-CTリンパ管造影
腋窩リンパ節の評価:MRI,PET-CT,超音波とCTLGの比較
第5章 センチネルリンパ節の同定法と生検手技
色素法・アイソトープ法①
色素法・アイソトープ法②
色素法・アイソトープ法③
色素法・アイソトープ法④
色素法・アイソトープ法⑤
ICG蛍光法① 赤外線観察カメラシステムPhotodynamic Eye(PDE)を用いたICG蛍光法
ICG蛍光法② カラー蛍光カメラHyper Eye Medical System (HEMS)を用いた乳癌センチネルリンパ節生検
CTLGで描出されたセンチネルリンパ節の生検手技
Virtual sonography法①
Virtual sonography法②
内視鏡下センチネルリンパ節生検①
内視鏡下センチネルリンパ節生検②
Lap-Protector法:センチネルリンパ節生検の安全な習得のために
第6章 センチネルリンパ節の転移診断法
迅速病理診断①
迅速病理診断②
OSNA法
転移診断に関する問題点
第7章 乳癌センチネルリンパ節生検のピットフォール
ピットフォール①
ピットフォール② 偽陰性について
第8章 センチネルリンパ節生検とリンパ浮腫
第9章 消化管癌のセンチネルリンパ節生検
消化管癌におけるセンチネルリンパ節理論と同定手順
胃癌センチネルリンパ節生検の現状と臨床応用
食道表在癌に対するCTLGを用いたセンチネルリンパ節診断
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書籍情報
- ISBN:9784784943241
- ページ数:240頁
- 書籍発行日:2012年5月
- 電子版発売日:2013年10月4日
- 判:AB判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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