コウノメソッドでみる 認知症Q&A

  • ページ数 : 292頁
  • 書籍発行日 : 2014年12月
  • 電子版発売日 : 2015年1月16日
¥4,840(税込)
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商品情報

内容

“治せなければ医者じゃない”が信条のコウノメソッドシリーズ第3弾!

認知症の診断や処方の匙加減に関するものを中心に、「よくある質問」を集めた、コウノメソッドを診療に採り入れてみた方、採り入れてみたいと思っている方の疑問に答える一冊です。

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序文

はじめに


医学書には3つのタイプがあるのだろうと思います。

1つは疾患の発見から定義,分類までもれなく書かれてあり,医師として一度は通読しておかなければならないタイプの本です。これは医学生のときに読まなければならないものでしょう。筆者の個人的な感想を述べれば,このタイプの本(いわゆる成書)は,定義や分類のあとに書かれている治療の内容が浅いことが少なくなく,そこからは時に患者や医師を突き放すような冷酷さを感じます。多くの非専門医は,薬剤の一般名を書かれてもピンとこないし,具体的な用量が書かれていないとすぐには利用できません。また「〜という試みがなされている」とか「治療法はない」などと書かれても,患者は一向に助かりません。実地医家がその本を読む価値とはいったい何でしょうか。一般教養でしょうか。

2つめのタイプは,百科事典のように,通読はしないけれども困ったときに短時間で疑問に思った事項や医学用語がわかるというものです。これはいかなる臨床医も1冊は手元に置いておきたいもの,必要なものでしょう。また医学的な原稿を執筆する者にとってもかかせない基幹知識となるものでしょう。

3つめは,世の中が一番必要としている本,つまり治療法に関する医学書です。言うまでもなく,医療の目的は診断ではなく治療です。治療という目的がなく行われる診断過程があるとすれば,それは医療費や患者の貴重な時間を浪費するだけのものです。基礎研究に携わる研究者が病理診断の究極的な議論を続けるのは大切なことですが,その議論を臨床に結び付け,なおかつ治療に直結させる仕事をしている医師が少なすぎるように感じます。筆者は,その仕事をしている途上にあります。すなわち,現時点で治療法の決定に役立たない鑑別診断(たとえば異常蛋白の分類)はいったん横に置き,病理脳から波及してくる患者の症状(output)を分類して,それにリンクした処方セットを推奨するという仕事です。症状に対して処方すべき薬剤を明確に示すことで,画像機器なしで,実地医家も現場でパニックに陥ることなく,スムーズに第一選択薬が何かがわかるようになります。しかも,その選択が高い改善率を生み出すことは,筆者が既に数万人の患者で確認しています。

新薬が出ると,その効能が大いにアピールされますが,その後深刻な副作用が知られてトーンダウンすることも多々あります。従来薬にも良薬は多く存在します。副作用の強さを考えると,むしろ古くからある薬のほうが安心して使えるといった場合もあるでしょう。処方経験数が増えると,新薬の"メッキの剝がれ"がよく見えてきます。新薬開発では,偶然化合された物質を動物に投与して,偶然見出した作用を効果・効能とする場合も少なくありません。当然,合わない患者も現れます。


筆者の認知症薬物療法マニュアル「コウノメソッド」は,1.確固たる処方哲学,2.各病態,各疾患における推奨順の薬剤処方公表,3.簡便な診断ツール,からなっています。

1.処方哲学は,介護者を楽にする処方が最優先されること(介護者優先主義),副作用の予防(家庭天秤法:抑制系薬剤の服用量は介護者が調整する),健康補助食品の活用の三本柱からなっています。

2.学会などの団体が作成する薬物治療ガイドラインは,具体性に乏しく,また必ずしも改善率が高くないもの,副作用が少なくないものが推奨されていることがあります。また,具体的な用量が書かれていない場合,経験患者数の多い臨床医には,アンダーラインを引く箇所すら見つけられません。推奨の根拠となる参考文献が山のように掲げられていても,自分の患者には合わないということをよく経験します。用量が記載されていないガイドラインは,医師の裁量を認める一方で,現場では使い物にならないのです。

3.コウノメソッドは,漢方医学のように対症療法的な薬剤選定を行いますが,一方で患者の鑑別診断もある程度できたほうが,より改善率の高い処方を選択できるため,CTなどの画像機器なしでも大方の鑑別ができるツール(レビースコア,ピックスコアなど)を考案してきました。

現在,全国にコウノメソッド実践医(コウノメソッドに従って認知症診療を行う医師)がおり,処方について迷う症例がある場合などには,筆者が相談を受け付けていますが,改訂長谷川式スケール,ピックスコア,レビースコアの3つの得点を報告してもらうことで,患者の様子が手に取るようにわかります。患者を実際に診なくても容易に診断ができ,処方方針を決めることができるのです。それほど充実した診断ツールであると言えます。ちなみに筆者は,実践医からメールで質問を受けたら,3時間以内に的確な処方案を回答しています。

日本医事新報社の拙著第1弾『コウノメソッドでみる認知症診療』は,筆者が久々に認知症総説としてまとめた1冊で,多くの方から支持され,「感銘を受けた」といった感想を頂くなど,ロングセラーとなりました。おそらく読者には,行間からにじみ出る「あきらめない姿勢」「認知症は"治せる"という絶対的自信」を感じとって頂けたのだと思います。

第2弾『コウノメソッドでみる認知症処方セレクション』は,認知症が改善するはずがないと考える医師に対して,挑戦するような気持ちで執筆したものです。そして,そこに示す改善時の処方はあくまでも具体的です。見落としてほしくないことは,前医の処方が問題となっていることが多いという現実です。

第3弾となる本書は,これまでに主にコウノメソッド実践医から受けた実際の質問をベースにして筆者が答える形式で,筆者がどのような思考回路のもとに,複雑な処方を瞬時に考え出しているのかといった処方理論などを隠さずにすべて公表しようとするものです。

筆者の31年間にわたる認知症診療の経験を,認知症急増の危機的時代において,短時間で読者に伝授しなければならないという使命感で本書執筆に取り組みました。Q&A形式ですから気楽にお読み頂ければと思います。


2014年11月 著者

目次

1.コウノメソッドの三本柱

Q1.診断を確定せずに治療することは可能なのですか?

Q2.「介護者保護主義」に基づく向精神薬の使用や「家庭天秤法」は必要なのでしょうか?

Q3.健康補助食品を積極的に活用するのはなぜですか?

2.早期発見と早期治療

Q4.認知症と確定できない場合でも,軽度認知症として治療を開始してよいでしょうか?

Q5.欧米ではなぜ認知症早期発見の弊害が言われ出したのでしょうか?

3.意識障害

Q6.せん妄がある場合は認知症と診断してはならないのですか?

Q7.レビー小体型認知症の傾眠は意識障害と言えるのでしょうか?

4.うつ病と認知症の関係

Q8.うつ病はいずれ認知症になるのですか?異なる疾患ではないのでしょうか?

Q9.認知症の患者にも自殺企図の恐れはあるのでしょうか?

Q10.石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病で自殺の既往がある場合,治療方針はピック病に準じますか?

Q11.うつ状態とアパシーが併存することはありえないのでしょうか?

Q12.パーキンソン病患者が認知症を合併した場合,パーキンソン病の治療を続けるだけでよいのでしょうか?

Q13.パーキンソン病やレビー小体型認知症で,治療の必要なうつかどうかはどのように判断すればよいのでしょうか?

Q14.「死にたい」と訴える認知症患者に対してはどのような対応が適切でしょうか?

5.認知症の病型と頻度

Q15.認知症の病型比率は研究者によって差がありますが,なぜでしょうか?

Q16.脳ドックで多発性脳梗塞を指摘された患者に対して,どのような指導が適切でしょうか?

Q17.同じ規模の脳梗塞でも,認知症になる人とならない人がいるのはなぜでしょうか?

Q18.アルツハイマー型認知症のfrontal variantやフロンタルレビーとはどのようなものでしょうか?

Q19.神経原線維変化型老年期認知症と嗜銀顆粒性認知症の特徴や処方はどのように考えればよいでしょうか?

6.Treatable dementia

Q20.抗甲状腺薬の服用で認知機能が回復しない場合,どのような可能性が考えられるでしょうか?

Q21.胃全摘後のビタミンB12欠乏で認知症が現れることがありますが,胃全摘後の患者に対してはどのようなフォローが必要でしょうか?

Q22.正常圧水頭症で手術適応と思われる患者の手術依頼を断られた場合,どうすればよいでしょうか?

Q23.正常圧水頭症にアルツハイマー型認知症などが合併していることは,どのように気づけばよいのでしょうか?

Q24.甲状腺機能亢進のある認知症患者の治療はどのように行うべきでしょうか?

7.認知症治療の考え方

Q25.「認知症は治る」とはどういう意味ですか?変性性疾患を「治る」と言ってしまってよいのでしょうか?

Q26.BPSDという概念をよく耳にしますが,コウノメソッドでこの言葉が使われないのはなぜですか?

Q27.コウノメソッドが非薬物療法ではなく薬物療法を重視するのはなぜですか?

8.中核薬4成分の使い分け

Q28.アルツハイマー型認知症の中核薬4成分を使い分ける必要はあるのでしょうか?

Q29.新薬3成分とアリセプト®との違い,用法・用量はどのようにとらえればよいでしょうか?

Q30.メマリー®には鎮静効果があるとの報告がありますが,陽証の患者に有用でしょうか?

Q31.中核薬の「釣鐘状反応性」に基づく処方とは,具体的にはどういった処方でしょうか?

Q32.アリセプト®から他剤へ切り替えるタイミングや注意点にはどのようなことがあるでしょうか?

Q33.リバスタッチ®パッチが適しているのはどのような症例でしょうか?

9.陽性症状の制御について

Q34.コウノメソッドは抑制系薬剤の処方が多すぎませんか?

Q35.錐体外路症状とパーキンソニズムは同義語ですか?

Q36.ベンゾジアゼピン系睡眠薬に対して批判的な意見がありますが,高齢者や認知症患者にも使用を控えるべきでしょうか?

10.アルツハイマー型認知症の診断と治療

Q37.診断にあたって知っておくべきアルツハイマー型認知症の特徴をあえてあげるとしたら,どのようなことがあるでしょうか?

Q38.道に迷うことが多ければアルツハイマー型認知症でしょうか?

Q39.アルツハイマー型認知症が急激に発症することはありえますか?

Q40.アリセプト®なしでも認知症の中核症状を治せますか?

Q41.アリセプト®を5mg未満で処方できないのはなぜですか?

Q42.アルツハイマー型認知症の治療を開始するにあたって常備すべき薬剤はアリセプト®だけでしょうか?

Q43.アルツハイマー型認知症の妄想を抑えたい場合に第一選択となる薬剤は何でしょうか?

Q44.アリセプト®の安全域が狭い患者への処方はどのように考えればよいでしょうか?

Q45.軽度認知障害に対する治療はどのように開始しますか?

11.レビー小体型認知症の診断と治療

Q46.認知症を伴うパーキンソン病とレビー小体型認知症は同一の疾患ですか?

Q47.うつ病とレビー小体型認知症との関連性はどのように考えればよいでしょうか?

Q48.MIBG心筋シンチグラフィの有用性と信頼性はどの程度だと考えられますか?

Q49.レビー小体型認知症に対するパーキンソン病治療薬3剤の推奨根拠は何ですか?

Q50.夜間に起き出す患者に睡眠薬を安全に使用するためのアイデアはありませんか?

Q51.セレネース®とウインタミン®の使い分け,適切な処方量はどのようにとらえればよいでしょうか?

Q52.ニコリン®H注射を打つことにためらいがあるのですが,それでも使うべきでしょうか?

Q53.ジェイゾロフト®を処方する適切なタイミングはいつでしょうか?

Q54.ドネペジルがレビー小体型認知症におけるBPSDの改善に効果があるとする報告がありますが,どう考えますか?

Q55.リバスチグミンの前頭葉賦活作用はドラッグエフェクトですか?

12.前頭側頭葉変性症の診断と治療

Q56.マンチェスターグループによる認知症分類は臨床現場の混乱をまねきませんか?

Q57.ピック病(ピック小体病)と非ピック小体ピック病の症状に差はありますか?

Q58.頭頂葉の萎縮が強ければアルツハイマー型認知症ですか?

Q59.側脳室前角の拡大がみられる症例におけるCT画像読影のポイントは何でしょうか?

Q60.CT画像において,前頭葉萎縮と硬膜下血腫の違いを読影するポイントは何でしょうか?

Q61.硬膜下水腫に対する治療は行うべきでしょうか?

Q62.硬膜下水腫が手術適応にならないのはなぜでしょうか?

Q63.アルツハイマー型認知症とピック病の合併はありうるのでしょうか?

Q64.ピック病の万引きなどによる逮捕や起訴を防ぐにはどうしたらよいでしょうか?

Q65.ピック病の陽性症状に対してウインタミン®を第一選択にする理由は何ですか?

Q66.ピック病にウインタミン®が効かない場合,ニューレプチル®を使用しても問題ありませんか?

Q67.ピック病におけるニコリン®や抑制系薬剤の使い方のポイントは何でしょうか?

Q68.アルツハイマー病理の意味性認知症にはアリセプト®を処方してもよいですか?

Q69.個々の患者に対する抑制系薬剤の選択・用量の調整はどのようにすればよいのでしょうか?

Q70.ピック病などの焦燥や徘徊には,しばしば選択的セロトニン再取り込み阻害薬が推奨されますが,コウノメソッドでは使用しないのでしょうか?

13.パーキンソン病治療薬の使い方

Q71.初めてパーキンソン病治療薬を投与する患者に対する処方開始のタイミングは,どのように見きわめればよいでしょうか?

Q72.コウノメソッドにおける推奨薬でない薬剤(過去の処方薬の再開など)を患者が希望した場合には,処方してもよいのでしょうか?

Q73.パーキンソン病治療薬を減量する際に,悪性症候群が生じる危険性はありませんか?

Q74.パーキンソン病やレビー小体型認知症でない可能性のある患者にもパーキンソン病治療薬を処方してよいのでしょうか?

Q75.心臓弁肥厚のリスクがあるペルゴリドを推奨するのはなぜですか?

14.LPC,LPC症候群の診断と治療

Q76.LPCという疾患概念を提唱したのはなぜですか?

Q77.LPCの概念は,臨床現場においてどのようなメリットを発揮しますか?

Q78.リバスチグミンはどのような歩行障害に有効ですか?

Q79.歩行障害の治療において,グルタチオン点滴はどのような位置付けですか?

Q80.LPCの食欲不安定に特化した処方はありませんか?

Q81.多系統萎縮症の患者がもの忘れ外来を受診してきた場合,どのように対応したらよいでしょうか?

Q82.プライマリケア医が大脳皮質基底核症候群を見逃さないためのポイントはありますか?

15.認知症患者の社会的側面

Q83.高齢者の胃瘻造設には賛否がありますが,コウノメソッドではどのように考えますか?

Q84.認知症患者(ピック病など)の自動車運転の可否はどのように判定すべきでしょうか?

Q85.症状があるにもかかわらず,認知機能検査の結果から要介護認定を取り消される可能性がある場合はどうしたらよいでしょうか?

16.事例編―コウノメソッド実践医の質問から

Q86.ウインタミン®の副作用によって肝障害が生じた場合,その後の治療はどのようにすべきか教えて下さい。

Q87.緊急事態における処方方針が正しいかどうか教えて下さい。

Q88.パーキンソニズムの急速進行に対して適切と思われる処方を教えて下さい。

Q89.進行性核上性麻痺のハイテンションの抑え方を教えて下さい。

Q90.アルコール依存のある認知症患者に対する適切な処方を教えて下さい。

Q91.奇異反応を示し,陽性症状がおさまらない患者に対する適切な処方を教えて下さい。

Q92.外傷性偽性ピックが疑われるレビー小体型認知症に対する処方の見直し方について教えて下さい。

Q93.レビー小体型認知症の診断と治療内容が適切だったかどうか教えて下さい。


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書籍情報

  • ISBN:9784784943623
  • ページ数:292頁
  • 書籍発行日:2014年12月
  • 電子版発売日:2015年1月16日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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