メラノーマ・母斑の診断アトラス

  • ページ数 : 392頁
  • 書籍発行日 : 2014年11月
  • 電子版発売日 : 2019年10月16日
¥17,600(税込)
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商品情報

内容

悪性黒色腫診療の大家である著者がメラノーマ診断の全てをこの1冊にまとめた.総論ではメラノーマと母斑に関する基本的な知識をまとめ,診断演習として臨床・ダーモスコピー・病理組織写真を数多く掲載し,診断の実際について症例をあげて具体的に解説.最新の知見や話題は「memo」「column」で記載.母斑との鑑別が臨床的にも病理的にも難しいメラノーマについて実践的に丁寧に解説.皮膚科医,病理医,形成外科医,外科医に必携の書.

序文

メラノーマは転移を生じる危険性がきわめて高い悪性腫瘍であるから,誤診を犯さぬよう細心の注意を払わなければならない.しかし,メラノーマは臨床診断も病理組織診断も実に難しく,誤診されることがまれでない.臨床診断については,近年導入されたダーモスコピーによって診断の精度が大幅に向上したが,これも決して万能な診断法ではない.ダーモスコピーを用いたためにかえって判定に迷い,誤診するということさえ起こりうる.

メラノーマは病理組織診断も難しく,とくにSpitz母斑との鑑別でしばしば問題を生じる.しかも近年,atypical Spitz tumorという疾患概念が提唱されて,新たな混乱が生じている.また,メラノーマの早期病変に関しては,melanoma in situ病変の存在は承認されたが,これとdysplastic nevusとの関係は今なお決着がついていない.dysplastic nevusという疾患概念を全面的に否定したAckermanが2008年末に急逝して以降,再び混迷が深まっている感さえある.

本書では以上のような問題点を整理するとともに,各論点に関する筆者自身の見解を記載し,解決への道筋を明示するように努めた.

本書刊行の目的は,メラノーマ診断学をめぐる上述のような背景を踏まえたうえで,読者にメラノーマ診断の基礎的素養と実践的能力を身に付けていただくことである.そのために本書では構成・記述にざまざまな工夫を凝らした.まず総論Aにおいて,メラノーマと母斑に関する正統的で網羅的な記載を行うとともに,随所に最新知見や問題点をmemoやcolumnとして取り上げて解説した.次いで診断演習Bと症例検討会Cの章を設け,多数の症例画像を掲示し,診断の実際を具体的に解説した.これらを読み進めていただければ,おのずと所見の取り方,診断の詰め方が身に付くものと期待している.

本書の最大の特徴は臨床・ダーモスコピー・組織の画像を数多く掲載していることである.そのほとんどは筆者自身が経験した症例・標本に基づくオリジナル画像である.この中には,これまでに全国各地から筆者へ寄せられたコンサルテーション症例も多数含まれている.また,謝辞欄に記載した諸先生から今回,新たに提供していただいた貴重な症例・標本も用いた.なお,本書では高田実先生にメラノーマと母斑類の分子生物学的知見の最新情報を記載してもらい,古賀弘志先生にはweb上で閲覧できるメラノーマの診療ガイドライン等をリストアップしてもらった.

本書の刊行にあたっては,企画段階から文光堂専務の浅井麻紀さんに大変にお世話になった.皮膚科医でもある浅井さんからは当初,「難しくならないようにお願いします」と念を押されていたのだが,ご覧のように重厚な書籍になってしまった.この間,浅井さんからは「斎田先生の学問を一冊にまとめることに本書刊行の意義がある」との励ましの言葉もいただいた.筆者として本当に有り難いことであった.

終わりに,膨大かつ複雑な原稿を手際よく整理,編集し,美麗で読みやすい書籍に仕上げて下さった文光堂編集企画部の末冨聡さんに深謝致します.

本書が,メラノーマの診療を担当する皮膚科医,病理診断医,皮膚外科医などの先生方に少しでもお役に立つことができれば幸いである.


2014年中秋

斎田 俊明

目次

A メラノーマと色素細胞母斑の本態・分類・診断

Ⅰ. メラノーマの組織発生と病型

1. メラノーマの組織発生

2. メラノーマの病型分類

(1) Clark分類

1) 表在拡大型メラノーマ

2) 末端黒子型メラノーマ

a. 掌蹠の末端黒子型メラノーマ

b. 爪部の末端黒子型メラノーマ

3) 悪性黒子型メラノーマ

4) 結節型メラノーマ

(2) Ackermanの反論とメラノーマの統一概念

(3) Bastianらの分子遺伝学的分類

(4) 特殊なメラノーマ

1) 無(低)色素性メラノーマ

2) Spitz 様メラノーマspitzoid melanoma

3) 線維形成性メラノーマdesmoplastic melanoma

4) 母斑様メラノーマnevoid melanoma

5) 小細胞メラノーマsmall cell melanoma

6) 胞巣状メラノーマnested melanoma

7) 疣状型メラノーマverrucous melanoma

8) 小児のメラノーマchildhood melanoma

9) 先天性色素細胞母斑から生じるメラノーマ

10) 悪性青色母斑malignant blue nevus

11) 色素性類上皮色素細胞腫pigmented epithelioid melanocytoma

12) 澄明細胞肉腫clear cell sarcoma(melanoma of soft part)


AⅠ memo

memo 1 AckermanやKittlerらが先天性母斑と判定する組織学的診断基準

memo 2 dysplastic nevus,RGPおよびmelanoma in situ

memo 3 爪部メラノーマの呼称

memo 4 爪部メラノーマ早期病変の組織学的評価における免疫染色の有用性

memo 5 neurotropic melanomaとmelanoma with neural differentiation

AⅠ column

column 1 母斑がメラノーマへ進展する推定確率

column 2 爪の組織学的構築

column 3 Clark分類と日光紫外線曝露の関係

column 4 メラノーマ細胞の汗管上皮,毛包上皮への進展

column 5 AckermanとCerroniのspitzoid melanomaとatypical Spitz tumorに関する考え方

column 6 minimal deviation melanomaとborderline melanoma

column 7 (原発性)真皮内メラノーマ(primary)dermal melanomaとは?

column 8 pigmented epithelioid melanocytomaのリンパ節転移をめぐる問題点

II. 色素細胞母斑の組織発生と分類

1. 母斑の本態と組織発生

(1) メラノサイトの発生学

(2) 母斑の定義と組織発生論

1) 母斑とは何か

2) Happle の遺伝的モザイク説

3) 色素細胞母斑の組織発生論

4) 色素細胞母斑の統一概念

2. 先天性色素細胞母斑の分類と特徴

(1) 先天性色素細胞母斑のサイズによる分類

(2) 母斑病変としての先天性色素細胞母斑の組織学的特徴

3. 色素細胞母斑の分類法

(1) 母斑細胞の組織学的存在部位による分類

1) 境界部型母斑junctional nevus

2) 複合型母斑compound nevus

3) 真皮内型母斑intradermal nevus

(2) Ackermanによる後天性母斑の4型分類

1) Unna型母斑

2) Miescher型母斑

3) Clark母斑dysplastic nevus/atypical mole/atypical nevus

4) Spitz母斑

(3) Spitz母斑の亜型・特殊型・類症

1) Reed母斑pigmented spindle cell nevus/tumor

2) HRAS変異Spitz母斑HRAS-mutated Spitz tumor

3) 線維形成性Spitz母斑desmoplastic Spitz nevus

4) Paget様Spitz母斑pagetoid Spitz nevus

5) 叢状Spitz母斑plexiform Spitz nevus

6) 異型Spitz腫瘍atypical Spitz tumorと異型Spitz母斑atypical Spitz nevus

7) BAP1欠失を示すatypical Spitz tumor(Wiesner母斑)

4. ダーモスコピーによる母斑の分類

(1) 小球状パターン母斑globular nevus

(2) 網状パターン母斑reticular nevus

(3) 放射状パターン母斑starburst nevus

(4) 均一青色母斑homogeneous blue nevus

(5) その他の母斑

5. 特徴的所見を呈する色素細胞母斑

(A) 解剖学的部位特異的母斑

(1) 掌蹠の母斑melanocytic nevus on the palms and soles/melanocytic nevus on acral volar skin

(2) 爪部の母斑nail apparatus nevus

(3) 顔面の色素細胞母斑melanocytic nevus on the face

(4) 被髪頭部の色素細胞母斑melanocytic nevus on the scalp

(5) 若年女性外陰部の母斑genital nevus of young female

(6) 結膜の色素細胞母斑melanocytic nevus of conjunctiva

(7) その他の部位の色素細胞母斑

(B) 独特な臨床・組織像を呈する母斑

(1) 貫通性母斑,深部貫通母斑deep penetrating nevus

(2) 合併(結合)母斑combined nevus

(3) 再発母斑recurrent nevu(s persistent nevus, pseudomelanoma)

(4) Sutton母斑,白暈母斑halo nevus

(5) Meyerson母斑halo dermatitis, spongiotic change in melanocytic nevus

(6) 帽章(徽章)母斑cockade nevus

(7) Nantaの骨母斑osteonevus of Nant(a続発性骨形成)

(8) Duperrat母斑

(9) 気球(風船様)細胞母斑balloon cell nevus

(10) 新生児期に切除された先天性色素細胞母斑

(11) 大型の先天性色素細胞母斑に生じる増殖性結節proliferative nodule

(C)真皮メラノサイトの母斑

(1) 青色母斑blue nevus

(2) 太田母斑nevus of Ot(a眼上顎部褐青色母斑)


AII memo

memo 1 後天性色素細胞母斑という病名の自己矛盾

memo 2 遅発性母斑とは?

memo 3 乳児期の先天性色素細胞母斑のサイズから成人期でのサイズをどう見積もるか?

memo 4 メラノサイト系細胞の同定に有用なnuclear pseudoinclusionの所見

memo 5 母斑病巣にみられるpseudovascular spacesについて

memo 6 Miescher型母斑とUnna型母斑が異なった解剖学的分布を示す理由

memo 7 Clark母斑と先天性母斑の組織学的鑑別

memo 8 掌蹠の母斑はClark母斑か?

memo 9 Kamino小体の本態

memo 10 tubular epithelioid cell nevus

memo 11 Spitz母斑の類上皮細胞様細胞とメラノーマのpagetoid cellの形態学的差異

memo 12 angiomatoid Spitz nevus

memo 13 FISH解析はatypical Spitz tumorの診断に役立つか

memo 14 Spitz 母斑,atypical Spitz tumor,spitzoid melanomaではキナーゼ融合遺伝子が高率に検出される

memo 15 atypical Spitz tumorのダーモスコピー所見とblitz tumor

memo 16 掌蹠の色素細胞母斑のマイナーなダーモスコピーパターン

memo 17 掌蹠の母斑の組織所見とMANIAC

memo 18 掌蹠辺縁部などの母斑はメラノーマに類似する組織所見を呈することがある

memo 19 nevus nevocellularis partim lipomatodes(部分的脂肪腫性母斑細胞母斑)とは

memo 20 ancient nevus様所見を呈したproliferative nodule

memo 21 細胞増殖型青色母斑で認められる"benign metastasis"について

memo 22 青色母斑は先天性母斑か?

memo 23 遅発性両側性太田母斑様色素斑Hori's nevus

AII column

column 1 後天性色素細胞母斑と先天性色素細胞母斑の遺伝子異常

column 2 Ackermanによる先天性色素細胞母斑の組織学的分類

column 3 先天性色素細胞母斑の特殊型

column 4 ancient nevusとは?

column 5 Unna型母斑とMiescher型母斑は後天性母斑か先天性母斑か?

column 6 dysplastic nevusとは何か,メラノーマとの関係は?

column 7 atypical Spitz tumorとFISH解析

column 8 spitzoid dysplastic nevus(Spark's nevus)

column 9 lattice-like pattern(LLP)とfibrillar pattern(FP)はparallel furrow pattern(PFP)の修飾型・亜型である

III. メラノーマの診断法:手順とポイント

1. メラノーマの臨床診断

(1) メラノーマの臨床的特徴と診断基準

(2) メラノーマ早期病変の臨床診断

2. メラノーマのダーモスコピー診断:手順とポイント

(1) 2段階診断法とその問題点

(2) Ki ttl erの修正パターン分析法

(3) Chaos & Clues法

(4) Chaos & Clues法の診断実例

(5) ダーモスコピーの血管所見

(6) メラノーマの病型別ダーモスコピー診断

3. メラノーマの病理組織診断:診断基準と適用のポイント

(1) 組織構築上の特徴

(2) 細胞学的特徴

4. メラノーマの病理組織学的鑑別診断

(1) 結節型メラノーマとSpitz母斑の鑑別

(2) melanoma in situとClark母斑の鑑別

5. メラノーマの診断に役立つ特殊染色・免疫染色


AIII memo

memo 1 メラノーマと基底細胞癌の病巣表面の性状の異同

memo 2 無色素性の爪部メラノーマ

memo 3 white lines(crystalline structuresとwhite network)について

AIII column

column 1 爪のメラノーマの自動診断

B メラノーマの診断演習

I.臨床・ダーモスコピー診断

1.掌蹠メラノーマの臨床・ダーモスコピー診断(10症例)

2.爪部メラノーマの臨床・ダーモスコピー診断(11症例)

3.表在拡大型メラノーマの臨床・ダーモスコピー診断(14症例)

4.悪性黒子型メラノーマの臨床・ダーモスコピー診断(13症例)

5.結節型メラノーマの臨床・ダーモスコピー診断(13症例)

II. 病理組織診断

1.掌蹠メラノーマの病理組織診断(13症例)

2.爪部メラノーマの病理組織診断(8症例)

3.表在拡大型メラノーマの病理組織診断(13症例)

4.悪性黒子型メラノーマの病理組織診断(10症例)

5.結節型メラノーマの病理組織診断(11症例)

6.その他のメラノーマと類縁疾患の病理組織診断(8症例)

C 症例検討会

I.Ackerman先生の症例検討会(10症例)

II. 紙上症例検討会(8症例)

D 母斑とメラノーマの遺伝子異常と分子発生論

Ⅰ.メラノーマの遺伝子異常

1.メラノーマの癌遺伝子

(1) BRAF

(2) NRAS

(3) KIT

(4) GNAQ/GNA11

(5) CDK4/CCND1

(6) MITF

(7) AKT3

(8) RAC1

(9) TERT

(10) KIT以外の受容体チロシンキナーゼ

(11) グルタミン酸受容体

2. メラノーマの癌抑制遺伝子

(1) CDKN2A

(2) PTEN

(3) TP53

(4) BAP1

(5) NF1

3. 転移関連遺伝子

(1) NEDD9

(2) Kiss1

II. 母斑の遺伝子異常

1. 色素細胞母斑

2. 青色母斑

3. Spitz母斑

4. dysplastic nevus

III. 母斑とメラノーマの分子発生論

1. 癌遺伝子誘発性細胞老化と色素細胞母斑の分子発生論

2. メラノーマの分子発生論

IV. メラノーマ・母斑の補助診断法としての遺伝子解析

1. メラノーマと色素細胞母斑(dysplastic nevusを含む)の鑑別に役立つ遺伝子解析

2. メラノーマとSpitz母斑の鑑別に役立つ遺伝子解析

3. FISHによる掌蹠のmelanoma in situ早期病変の診断

4. CGHによる真皮メラノサイトの増殖症の鑑別


D memo

memo 1 BRAF変異メラノーマの臨床病理学的特徴

memo 2 field cellとは?

memo 3 病理診断の補助診断法としての遺伝子解析の意義

memo 4 CpGアイランドのメチル化

memo 5 AST/STUMPの本質は?

memo 6 atypical melanosis of the foot

D column

column 1 Bastianの病型分類とwhole exome sequencingによるメラノーマの遺伝子異常のパターン

column 2 色素細胞母斑の大きさと癌遺伝子変異

column 3 母斑とメラノーマの密接な関係

column 4 色素細胞母斑におけるBRAF変異の多様性とその意味

column 5 メラノーマの発癌経路

column 6 遺伝子解析の方法

column 7 診断困難例におけるFISHの有用性

column 8 atypical Spitz tumorとは

付録

Ⅰ メラノーマの病理組織診断における記載事項

II tumor thicknessの定義と計測法

III メラノーマ診療に役立つガイドライン・URL


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書籍情報

  • ISBN:9784830634604
  • ページ数:392頁
  • 書籍発行日:2014年11月
  • 電子版発売日:2019年10月16日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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