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- 臨床高次脳機能評価マニュアル2000
商品情報
内容
著者が20年間脳神経外科臨床の現場で用いてきた高次脳機能検査法について述べています。
これまでのデータをまとめた結果にもとづく、浜松方式高次脳機能スケールは全項目を実施しても検査そのものは15分ほどで終了する検査法となっています。
急性期から、慢性期の症例にも対応した一冊。
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序文
プロローグ
脳損傷の患者さんが入院している病棟を回診していく。「時計の文字盤に1から11までの数字を右半分にしか書いていない右頭頂葉の腫瘍による半側空間無視」よくしゃべっているけれど,正しい単語が少なく話の内容がほとんどわからない左側頭葉の脳梗塞による感覚性失語症」「動脈瘤の手術後無気力でボンヤリしている前頭葉症状」といった説明に,神経心理学に憧れを持つ若き医学徒は,患者さんを診察しただけで脳損傷の前後左右がたちどころに解明できることに驚きの目を見張る。
そして神経心理学的検査所見がCTで輪切った像の病巣に対応して,前後左右損傷の特徴あるパターンで表せないだろうかという妄想にとりつかれる。20年が経過し,完成品とはいえないけれど素描の形になんとかたどりつく。前頭葉損傷や側頭葉損傷の典型的プロフィールはこんな形と夢見つつ,今日も患者さんに私達の高次脳機能スケールをあてる。
本書は過去20年間,私たちが脳神経外科臨床の場で用いてきた高次脳機能検査法について述べたものである。
最近20年間,神経心理学的観点から研究・臨床に取り組む方が漸増し,さらに高次脳機能障害のリハビリテーションにおいても,言語療法士,作業療法士をはじめとした方々の力が発揮されてきた。そのためこれらの方々にとって,ウェクスラー成人知能検査(WAIS)に代表される知能検査,記憶検査の標準スタイルであるウェクスラーメモリースケール(WMS),ウェスタン失語症バッテリー(WAB)や標準失語症検査(SLTA)などの失語症の検査,失行,失認の検査法などは身近なものになっている。しかしこれらの検査を系統的に行うためには30分以上かかることが多く,脳神経外科臨床で遭遇する急性期の患者さんには実施が困難である。だからといって高次脳機能の評価が省略されてよいものではない。
本書では,これまで私たちが診てきた患者さんのデータをまとめた結果にもとづき,大脳内の病巣によって生じた高次脳機能障害の評価に,発症後急性期から慢性期まで適応できる,浜松方式高次脳機能スケールについて解説する。浜松方式高次脳機能スケールは従来一般に用いられてきた高次脳機能検査のうちから,利き手をはじめとして,見当識,単語の記憶,図形の記憶,構成障害,半側空間無視,前頭葉関連機能など11項目について評価している。データ分析の結果,左右差のはっきりした項目もあり,損傷部位では前頭葉,側頭葉,頭頂葉,辺縁葉のいずれが優位かを推測することも可能になってきた。1~11章プロローグではおのおのの検査の実施法,健常者の成績,臨床評価の有効性について解説する。12章ではそれらの総合判定に関する諸問題を取り上げる。巻末には検査手引き書の書式をまとめた。浜松方式高次脳機能スケールは全項目を実施しても検査そのものは15分ほどで終了する。脳損傷を持つ患者さんを診る機会のある方々にとって,高次脳機能評価の第一歩に利用していただければ幸いである。
なお,以上のことをねらいにして執筆したので,すでに標準化した手引き書や解説が出版されている失語,失行,失認,記憶検査,知能検査の詳しい実施手順についてはおのおのの検査マニュアルを御参照願いたい。
―改訂第2版によせて―
第1版を出版してから約2年が経過し,著者は主に急性期の病態を診る施設から慢性期のリハビリテーションを行う施設に勤務移動した。慢性期の症例に対してもこのマニュアルを使用し,前頭葉障害や注意障害の検出には非常に役立った。いままで著者自身は評価のみにとどまり実際のリハビリテーションにたずさわる機会がなかったが,現在の施設においては,これらのリハビリテーションを実施することも可能になった。そして訓練効果の評価にも使用しうるマニュアルであったと実感している。改訂にあたり補遺として図形模写における構成障害について記述できたのは,勤務移動後短期間に集中して右半球損傷の症例を多く観察でき,いままでの蓄積症例とまとめて検討する機会を得たからである。2年間のうちに高次脳機能障害の標準検査がいくつか出版され,機能画像を用いての新しい知見が発表された。細かな部分の改訂では参考文献の項にこれらの情報を追加した。
『臨床高次脳機能評価マニュアル2000』として,第1版に引き続き利用いただければ幸いである。
―謝辞―
このような出版の機会を与えて下さった新興医学出版社の編集部,数多くの症例を診る機会を与えてくださり,ともに検討してきた浜松医科大学脳神経外科および教室の皆様,浜松リハビリテーションセンターの職員の皆様に深謝いたします。
浜松リハビリテーションセンター
浜松医科大学脳神経外科
今村 陽子
目次
第1章:利き手
第2章:見当識
第3章:数唱問題
第4章:数唱学習
第5章:単語の記憶
第6章:類似問題
第7章:7シリーズ
第8章:動物名想起
第9章:仮名ひろいテスト
第10章:図形模写と直線の二等分
第11章:図形の記憶
第12章:高次脳機能検査所見の総合判断
補遺:図形模写−構成障害
付録:浜松方式高次脳機能スケール(実施手引き)
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書籍情報
- ISBN:9784880022758
- ページ数:129頁
- 書籍発行日:2000年2月
- 電子版発売日:2015年6月19日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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