サーカディアンリズムと睡眠

  • 書籍発行日 : 2018年7月
  • 電子版発売日 : 2020年4月24日
¥6,050(税込)
ポイント : 110 pt (2%)
今すぐ立ち読み
今すぐ立ち読み

商品情報

内容

睡眠・覚醒やホルモン分泌などにみられる約24時間周期のリズム“サーカディアンリズム”について、その発振メカニズムや、サーカディアンリズム睡眠・覚醒障害の検査・治療、さらにはサーカディアンリズムを利用した時間治療までを網羅した。最新の知識・情報をエキスパートが丁寧に解説!

序文

序文

地球は、24時間周期で自転している。そして人類は、この地球上で生命活動を営んでいる。

人間の生命活動(身体的・精神的活動)は、大きく3つの次元に分けられる。すなわち、身体的次元(脳や臓器など)、心理社会的次元(心理、対人関係など)、および、実存的次元(人生の目標、生命の質など)である。これら3つの次元の活動は、密接に関連しながら統合された活動として存在している。たとえば、17歳の男子高校生が、身体的次元では「健康な状態にある」 、心理社会的次元では「良好な友人関係に支えられている」、実存的次元では「進学という人生の目標に向かって勉強している」という状態は、それぞれの次元の生命活動が望ましいかたちで統合されたものといえる。

一方、地球の自転による昼夜の環境変化は、哺乳類の体内にあるさまざまな臓器のサーカディアンリズムの発現に深くかかわっているが、これらの臓器のリズムを同調・調和させているのは、視交叉上核に存在する生物時計(体内時計)であることが明らかにされている。すなわち、体内時計は、中枢時計(指揮者)として、諸臓器にある末梢時計のリズムを調和させながら、睡眠・覚醒、体温、メラトニンなどのサーカディアンリズムを生み出して生命活動を支えている。

このように、人間は、昼夜の環境変化のなかで、諸臓器のサーカディアンリズムを調和させながら、身体的次元・心理社会的次元・実存的次元の生命活動を営んでいる(図)。

一方、臨床の現場では、「サーカディアンリズム睡眠・覚醒障害(Circadian Rhythm Sleep-Wake Disorders:CRSWD)」が注目されている。CRSWDは、体内のサーカディアンリズムと体外(外界)のサーカディアンリズムとの不調和によって生じるもので、6つの病型に分けられている。

その代表的病型として「睡眠・覚醒相後退障害」がある。これは、睡眠と覚醒の各時間帯が後退するというもので、原因の1つに体内時計の何らかの機能障害が推定されている。では、どのような症状が出るのか。前述したような高校生に本病型が発症した場合、睡眠時間帯は朝方〜昼ごろまでという時間帯にずれ込む。通常の時刻に起床しようとしても完全に覚醒できず、もうろうとして、不機嫌や抑うつを呈する。身体的には、頭痛や吐き気、食欲低下、嘔気、腹痛、めまいなど多彩な身体症状が現われる。また、朝に登校できないため、友人との交流が希薄となり、孤立していく。さらに、学業成績は次第に低下して、進学などの目標を断念せざるを得なくなる。

CRSWDのもう1つの代表的病型は「交代勤務障害」である。わが国の労働者の4人に1人が交代勤務者であるため、この病型は少なくない。本病型では、いつもは睡眠中の時間帯なのに覚醒して勤務するという深夜勤の場合のように、“体内時計”と“体外時計”とのずれによって、体内の種々のリズム間に内的脱同調が生じる。このため、不眠症や日中の過剰な眠気、消化器系・心血管系などの身体疾患が引き起こされる。さらに、抑うつ・易怒性などの心理的変化、家庭・地域社会からの孤立や離婚、などの心理社会的障害がみられることもある。

このように、CRSWDでは、身体的、心理社会的、および実存的次元において深刻な影響が現われる可能性があるため、本症の早期診断・早期治療が重要である。

さて、2017年度のノーベル賞(生理学・医学賞)は、サーカディアンリズムの時計遺伝子とその機序を発見したヤング博士、ロスバッシュ博士、およびホール博士に対して授与された。彼らの業績は、サーカディアンリズムからみた時間医学、時間薬理学、および、時間治療学という新しい医学を大きく発展させる原動力になっている。

このような状況のなかで、「サーカディアンリズム」と「睡眠」に関するわが国のエキスパート12人が結集し、この分野の総集編ともいうべき本書を上梓することになった。本書の特徴は、図表がとても多く、最新の知識・情報が非常にわかりやすく紹介されていることである。したがって、第一線で活躍されている医師や歯科医師、薬剤師、看護師などの医療従事者や医学生・看護学生の皆様に、「サーカディアンリズム」と「睡眠」の世界への入門書としてご利用いただければ幸いである。

結びに、執筆者を代表して、私どもの執筆をご支援いただいた新興医学出版社社長 林 峰子氏、ならびに編集部 下山まどか氏に心から感謝する。


2018年4月

千葉 茂
本間研一

目次

第1部 ベーシックリサーチ

1 概日時計と睡眠・覚醒リズム

 1. ヒトのサーカディアンリズム/フリーランリズム

 2. リズム同調

 3. サーカディアンリズムと睡眠の発達と老化

 4. まとめ

2 サーカディアンリズム睡眠・覚醒障害の中枢神経機構

 1. サーカディアンリズム発振の分子機構

 2. 生物時計を構成する多振動体と階層性

 3. サーカディアンリズム睡眠・覚醒障害の分子・細胞メカニズム

 4. まとめ

第2部 クリニカルリサーチ

1 現代社会と睡眠

 1. 睡眠は必要なのか ─断眠実験は語る

 2. 現代の日本社会と睡眠障害

2 診断・治療をめぐって

 ①基礎知識─睡眠・覚醒の神経機構

  1. 睡眠・覚醒の実行系

  2. 睡眠と覚醒が出現するタイミングの決定

  3. 睡眠・覚醒に関与する物質

 ②睡眠障害の検査法

  1. 睡眠評価法

  2. 睡眠ポリグラフィ(Polysomnography:PSG)

  3. 身体的検査法

 ③睡眠障害の分類と診断

  1. 睡眠障害の国際分類

  2. サーカディアンリズム睡眠・覚醒障害

  3. 診断をめぐって

 ④治療

3 サーカディアンリズム睡眠・覚醒障害の疫学

 1. 疾病分類と評価方法

 2. 主な疫学研究

 3. まとめ

4 サーカディアンリズム睡眠・覚醒障害の各病型 (北島剛司)

 1. 睡眠・覚醒相後退障害(delayed sleep-wake phase disorder:delayed SWPD)

 2. 睡眠・覚醒相前進障害(advanced sleep-wake phase disorder:advanced SWPD)

 3. 不規則睡眠・覚醒リズム障害(irregular sleep-wake rhythm disorder:irregular SWRD)

 4. 非24時間睡眠・覚醒リズム障害(non-24-hour sleep wake rhythm disorder:non-24-hour SWRD)

 5. 交代勤務障害(shift work disorder)

 6. 時差障害(jet lag disorder)

 7. 特定不能なサーカディアン睡眠・覚醒障害(circadian sleep-wake disorders not otherwise:NOS)

5 サーカディアンリズム睡眠・覚醒障害と精神疾患

 1. 睡眠障害国際分類におけるCRSWDの分類と診断の変遷

 2. CRSWDと精神疾患との関連を検討する際の限界

 3. CRSWDにおけるうつ状態・うつ病

 4. 精神疾患におけるサーカディアンリズム指標異常

 5. 時計関連遺伝子と精神疾患との関連

 6. まとめ

6 子どものサーカディアンリズムと睡眠

 ①発達に伴うサーカディアンリズムと睡眠

  1. 1日単位の睡眠の変化

  2. 睡眠時間の経時的変化

  3. サーカディアンリズムの発達

 ②子どもにみられるサーカディアンリズム睡眠・覚醒障害

  1. 分類・症状

  2. サーカディアンリズム睡眠・覚醒障害の発症に関連する要因

  3. 慢性疾患や障害のない小児のサーカディアンリズム睡眠・覚醒障害

  4. 神経発達障害─神経系の慢性疾患や障害のある子どものサーカディアンリズム睡眠・覚醒障害

  5. 身体疾患、精神疾患をもつ子どものサーカディアンリズム睡眠・覚醒障害

  6. 診断

  7. 治療

7 高齢者のサーカディアンリズムと睡眠

 ①サーカディアンリズムと睡眠の加齢変化

  1. 生物時計機能の加齢変化

  2. 睡眠構築の加齢変化

  3. 早寝早起きがさらなる朝型化を招く

  4. サーカディアンリズムと睡眠とのかかわり

 ②認知症・せん妄の睡眠障害

  1. アルツハイマー病(Alzheimer disease : AD)

  2. アルツハイマー病以外の認知症

  3. せん妄

  4. 治療

  5. まとめ

8 サーカディアンリズムと身体疾患

 1. 生体機能の日内リズム

 2. 生体リズムと身体疾患

 3. 時計遺伝子による生体リズムの制御機構

 4. 時計遺伝子と疾患との関連

 5. 実験動物を用いた研究

 6. 時間治療

 7. まとめ

便利機能

  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応
便利機能アイコン説明
  • 全文・
    串刺検索
  • 目次・
    索引リンク
  • PCブラウザ閲覧
  • メモ・付箋
  • PubMed
    リンク
  • 動画再生
  • 音声再生
  • 今日の治療薬リンク
  • イヤーノートリンク
  • 南山堂医学
    大辞典
    リンク
  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応

対応機種

  • ios icon

    iOS 10.0 以降

    外部メモリ:10.7MB以上(インストール時:27.0MB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:42.8MB以上

  • コンテンツのインストールにあたり、無線LANへの接続環境が必要です(3G回線によるインストールも可能ですが、データ量の多い通信のため、通信料が高額となりますので、無線LANを推奨しております)。
  • コンテンツの使用にあたり、M2Plus Launcherが必要です。 導入方法の詳細はこちら
  • Appleロゴは、Apple Inc.の商標です。
  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

まだ投稿されていません

特記事項

※今日リンク、YNリンク、南山リンクについて、AndroidOSは今後一部製品から順次対応予定です。製品毎の対応/非対応は上の「便利機能」のアイコンをご確認下さいませ。


※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。


※コンテンツの使用にあたり、M2Plus Launcher(iOS/iPhoneOS/AndroidOS)が必要です。


※書籍の体裁そのままで表示しますため、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。