救急·集中治療(26巻7・8号)Damage Control Resuscitation

  • ページ数 : 188頁
  • 書籍発行日 : 2014年8月
  • 電子版発売日 : 2015年4月10日
¥6,160(税込)
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内容

- 重症外傷の凝固線溶異常に対する蘇生のすべて -

従来行われてきた外傷に対する外科的治療は、非外傷性のelective surgeryと同様に“すべての損傷に対する根本治療を受傷後早期にすみやかに終了する”ものであった。しかし、複数の出血源を有する重篤なショック症例の治療において、“すべての損傷の外科的修復は行えたが、救命することはできなかった”ということは、稀ではなかった。・・・損傷に対するすみやかな“コントロール”のみを行い、根本治療を行うことなく、手術操作を最小限に抑える外科的治療戦略が“Damage control”である。(本文より抜粋)

序文

◆ はじめに

外傷は死亡原因とともに永続的な機能障害の原因として,最も重要な疾患の一つである.全世界的にみると,若年者では死亡原因の第1位である.出血は外傷による48時間以内の死亡原因の40%を占め,頭部外傷とほぼ同頻度であり,また,頭部外傷に出血を合併した病態も加えると,外傷急性期の死亡の50%近くに大量出血を伴う病態が関与する.さらに,大量輸血施行例の死亡率は50%を超え,出血のコントロールをすみやかに行うことができず,ショックが遷延した場合には,急性期以降の敗血症・多臓器不全による死亡に大きな影響を与えうる.このような外傷では,主要な出血源の制御が行えないことより,coagulopathyを含む生理学的破綻のために救命できないことが多く,外傷後の凝固異常病態の把握と出血の制御は最も大きなテーマとなる.そして,外傷死の少なくとも10%は防ぎ得た可能性があり,その15%は治療開始後2~3時間以内の凝固異常に関連したものであることが指摘されている.


◆ 重症外傷に対する外科治療の転換:定型的術式からDamage controlsurgeryへ

従来行われてきた外傷に対する外科的治療は,非外傷性のelective surgeryと同様に"すべての損傷に対する根本治療を受傷後早期にすみやかに終了する"ものであった.しかし,複数の出血源を有する重篤なショック症例の治療において,"すべての損傷の外科的修復は行えたが,救命することはできなかった"ということは,稀ではなかった.大量出血を伴う重症外傷患者の術中・術後の最大の死亡原因は,主要な出血源をコントロールできないことによる失血ではなく,代謝性アシドーシス,低体温,血液凝固異常のlethal triad of death(外傷死の三徴)とされる生理学的恒常性破綻によるものであるとされる.これらの生理学的破綻をきたすと,①止血のための外科的処置に難渋している間に増悪する,②術中に是正を試みてもきわめて困難であり,生理学的破綻からの離脱のためにはいったん手術を中止する必要がある.このような状態を回避するために,損傷に対するすみやかな"コントロール"のみを行い,根本治療を行うことなく,手術操作を最小限に抑える外科的治療戦略が"Damage control"である.


◆ Damage control surgery with aggressive resuscitationに伴うresuscitation-associated coagulopathy補正と回避へ

Damage control surgeryが重症外傷治療の中心的テーマとなり広く用いられるとともに,Damage control surgery を要する症例に対するcrystalloidsを中心とした輸液製剤によるaggressive resuscitationが行われてきた.外傷初期診療のスタンダードとされるAdvanced Trauma Life Supportにおいても,2008年改訂の8th editionまでは"aggressive resuscitation"である.そして,外傷に伴うcoagulopathy の主たる要因であると考えられたresuscitation-associated coagulopathy:代謝性アシドーシス,低体温,血液凝固異常に対しては,Damage control surgeryとともに体温管理や十分な凝固因子の補充を行うことにより,一定の治療成績改善を認めている.


◆ 外傷そのものに起因する凝固異常の存在

外傷急性期の凝固障害は治療に伴い生じるものであり,resuscitationassociatedcoagulopathyとして避けることの困難な副産物であると考えられていた.欧米において外傷そのものに起因する凝固異常の存在が明確に認識されたのはこの10年のことである.

"Acute traumatic coagulopathy"などとして論じられているが,凝固障害発現の回避と迅速な治療を念頭におくDamage control resuscitationを行うためには,本病態の適切な認識に基づくアプローチが必須である.


◆ Damage control surgery with Damage control resuscitation

外傷急性期に認められる凝固障害(出血傾向)は,①外傷そのものに起因する凝固異常と,② resuscitation-associated coagulopathyの複合的要因により形成される.一般的には,物理的な衝撃を受けた際に,そのダメージや被害を最小限に留める事後の処置をダメージコントロールというが,Damage controlresuscitationは,大量出血を伴う外傷に対する凝固異常の回避と是正のための外傷受傷後の処置といえる.Holcombらは,Damage control resuscitationとして,外傷死の三徴である代謝性アシドーシス,低体温,血液凝固異常への対応を主張したが,現在は,希釈性凝固障害を予防のための晶質液過剰投与制限(permissive hypotension),早期より十分量のFFPを中心とした凝固因子補充(hemostatic resuscitation)が中心的要素とされる.最近のレビューなどでは,さらにトラネキサム酸の使用,外科的あるいはinterventionalradiologyによる止血,要素も含めて定義されている.


凝固異常のリスクを伴う外傷診療において,Damage control surgery withDamage control resuscitationは必須の概念であり,治療的アプローチである.


編集 久志本成樹
東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学分野

目次

【Damage control resuscitationのための基本知識】

1.Damage control surgeryとAbdominal compartment syndrome

Damage control surgery:理論的背景と実際

Damage control surgeryにおけるOpen abdomen management Abdominal

compartment syndrome Damage control IVR

2.外傷による凝固線溶異常

Coagulopathy of traumaとAcute coagulopathy of trauma-shock(ACoTS)
─ACoTs側から見た外傷直後の凝固障害の病態─

外傷による凝固線溶異常の病態─線溶亢進型DIC─

外傷急性期における凝固異常のモニタリング

低体温・アシドーシスと凝固異常


【Damage control resuscitation:その実際】

3.外傷蘇生のための輸液製剤の功罪 晶質液による蘇生

膠質液による蘇生 アルブミンによる蘇生

4.凝固線溶異常を予防・回避するための蘇生

Damage control resuscitationの基本コンセプトと適応

外傷蘇生のゴール─末梢循環不全と凝固異常に対する蘇生─

Permissive hypotension

カテコラミン

赤血球輸血:適応と目標,投与法─欧米のガイドラインをもとに─

FFP輸血

外傷と血小板輸血

フィブリノゲン製剤

トラネキサム酸

Factor Ⅶa─背景とこれまでの非外傷および外傷に対する有効性評価,今後の可能性─

抗凝固・抗血小板薬使用例へのアプローチ


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書籍情報

  • ISBN:9784883785308
  • ページ数:188頁
  • 書籍発行日:2014年8月
  • 電子版発売日:2015年4月10日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:2

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