はじめに

ウソップ：「たいへんだーっみんな大変だーっ！！！海賊が攻めてきたぞーっ！！！」

村人：「よくやるよなあいつも」「まったく人騒がせなガキだ！！！」

ONE PIECE vol.3 第23話"キャプテン・ウソップ登場"

院内急変の主役は間違いなく,みなさん看護師です.入院患者の最も近い存在であり,何らかの異変に気づくのが最も早いのは,多くの場合みなさんでしょう.患者さんの様子がおかしく,主治医に連絡し,納得する答えが返ってこなかったことはないでしょうか？指示どおり連絡したのに...,呼んだのに来てくれない...,いろいろと悩みがあることでしょう.

狼少年の物語はみなさん知っていますよね.狼少年を知らない人はワンピースのウソップでもOKです.冒頭のように,「海賊が来たぞ〜」,そんなことばかり言っていると誰からも信用されなくなり,相手にされなくなるわけです.

ナースステーションは,モニターの音やナースコールが鳴り響いています.初めのうちはきちんとコールに出ていたものが,だんだんと軽視しがちになってはいませんか？よく鳴るコールが故に,これらのコールがウソップの言葉のように「まったく人騒がせな...」となってはいないでしょうか？毎日のようにアラーム音を聞いていると,アラームが鳴っているのは,"モニターが外れたんだろう","歯磨きをしているのだろう","ナースコールが鳴っているけど◯◯号の患者さんだから,おそらく大したことはないだろう"などと考えてしまいがちです.知らず知らずのうちに,患者さんがウソップ,みなさんが村人の状態になりかねないのです.

みなさん,知らないうちに狼少年のように,ウソップのようになっていませんか？「◯◯先生,△さん発熱があります」,「◯◯先生,□さんが転倒しました」,なんとなく指示どおりに,または先輩ナースに言われるがままに担当医に連絡していませんか？もちろん医師の指示どおりに,発熱を認めた場合や血圧が下がった場合にDr.callするべきであると思いますが,そこにアセスメントをつけなければ,相手に緊急度や重症度は伝わりません.「38.5℃あるので解熱薬を使用する」,「SpO2が92%なので酸素を開始する」,「転倒して頭をぶつけたので頭部CTを撮影する」,これらは行動としては決して間違いではありませんが,根本的な解決になっていないことを忘れてはいけません.常にそうなるには理由があるはずです.それを踏まえたうえで対応しなければ,適切なマネジメントはできません.みなさんがアセスメントして報告しなければ,村人のように相手は望む行動をとってくれないかもしれません.知らず知らずのうちに,今度はみなさんがウソップ,医師が村人の状態になりかねないのです.

ウソップもはじめは臆病でした.そこから仲間とともに自信をつけ実力をつけていきます.看護師の仕事は大変だと思います.しかし,患者さんの病状を理解し,自身でアセスメントし,適切な介入ができれば,目の前の患者さんの予後は大きく改善します.自信をもって担当医を動かすために, 本書を通じてともに学びましょう！

2019年3月

坂本 壮