「医療統計力」を鍛える!

  • ページ数 : 308頁
  • 書籍発行日 : 2015年3月
  • 電子版発売日 : 2015年10月9日
¥3,080(税込)
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商品情報

内容

医療統計の基本的な考え方を各章で解説!

統計のテクニカルなことよりも考え方を中心にまとめ、数式を使わずに医療統計の基本的な考え方をマスターするための一冊に。
全編カラーで数式はほとんどなく、イラストも各所に掲載されており、統計学に苦手意識を持っている方も理解が深まります。

序文

まえがき

風邪をひきました.なので風邪薬を飲んで寝ました.すると,翌朝には風邪は治りました.さて,ここで質問です.

この風邪薬は効きましたか?

「YES」と答える人が少なからずいると思います.では,「YES」と答えた人にさらに質問です.

もし風邪薬を飲まずに寝たら,翌朝に風邪は治っていませんでしたか?

この答えは誰にもわからないはずです.なぜなら,「風邪薬を飲まずに寝る」ということをしていないからです.もし,風邪薬を飲まずに寝ても翌朝には風邪が治っていたならば,風邪薬が効いたことにはなりませんね.

あれ,じゃあ,風邪薬飲まなくていいんじゃ.......でも,もしかしたら,風邪薬を飲まずに寝ていたら治ってなかった可能性も否定はできない.では,いったいどうすれば風邪薬の効果って調べられるのでしょうか?

その方法を考えるのが医療統計なのです.

「統計」と言うと,数学の仲間でやたらと数式が出てくるイメージがあるかもしれません.大学などで統計の講義を受けたことのある人の中には,数式がだんだん難しくなってきたなぁ......,そろそろ意識を失いそうだ,というところに,お偉い先生方の名前が付いた複雑な数式が出てきたりして,ますます意識が遠のく.よくわからないままなんとか単位は取ったものの,ふと気づくと「統計って何の役に立つの?」という疑問だけが残った人もいるでしょう.

確かに,統計ではよく数式を使います.しかし,複雑な数式の内容や実際の計算は,統計の専門家や一部の数学好きな人が理解すればよいのであって,それ以外の人にとってはそれほど重要なことではありません.難しい数式を使わなければならない統計処理は,今やコンピュータがやってくれます.ましてや,文献にある統計結果をみる場面では数式はほとんど必要ありません.統計が教えてくれる有益な情報を正しく見極める,ということにおいては,実際に複雑な計算をする必要はないのです.

先ほどの風邪薬の話において,大切なことは「どうすれば風邪薬の効果を調べられるのか」を知ることであり,「これで風邪薬の効果が証明できるのか」が判断できることなのです.これは,数式を使わなくても,医療統計の基本的な考え方さえマスターすれば,ある程度できることです.

本書は,このことを念頭におき,統計のテクニカルなことよりも考え方を中心にまとめてあります.各章の冒頭には,文献等から引用した,その章のテーマに沿った内容のものを掲載してあります.しかし,注意してほしいのは,そこに書いてあることは必ずしも正しものばかりではない,ということです.そこに書いてあることは本当に正しいのか,正しくないとすれば何が正しくないのか,なぜ正しくないのか,を理解するための医療統計の基本的な考え方を各章で解説していきます.

本書が,統計を正しく使うこと,統計結果を正しく見ることの一助となれば嬉しく思います.

なお,この本の内容には,私が大学院で受けた,佐藤俊哉先生の医療統計学I,松山裕先生の医療統計学IIの講義にもとづいているところがあります.国語力の高い妻には校正の協力をしてもらいました.また,イラストのアイデアを出してもらいました.近畿大学医学部の学生のみなさんからは,講義等を通していろいろなアイデアをもらいました.企画から出版までお世話になった総合医学社の菊池葉子さん,渡瀬保弘さんをはじめ,これら多くの方々に感謝いたします.


千葉 康敬

目次

1章 医学研究における『コントロール』
治療の『効果』を調べるために

1 はじめに

2 コントロールの重要性

●コントロールとは?

●とにかく集めてみる

コントロールがあっても......

3 ランダム化の重要性

●平均年齢を揃えてみる

●様々な要因

●観察できない要因

●ランダム化

4 治療効果を調べるために

5 麦飯は糖尿病に効果的か?

2章 ランダム化研究
ランダム化すればOKなわけではない

1 はじめに

2 単純でないランダム化

●人数が少ないと......

●人数を増やせば......

●人数が多くないときの対処法

●ランダム化しなくても......

3 プラセボ効果と盲検化(マスク化)

●プラセボ効果

●盲検化(マスク化)

●さらに盲検化(マスク化)

4 内部妥当性と外部妥当性

5 食物アレルギーのランダム化臨床研究

3章 効果の指標
効果を測るものさしを考えてみよう

1 はじめに

2 割合と率

●日常会話の中での割合と率

●医療・保健・福祉の分野での割合と率

●割合と率の計算

●割合と率,どっちを使う?

3 グループ間の比較

●リスク差とリスク比

●効果の指標と関連の指標

4 認知症予防に「運動・栄養・昼寝」?

4章 統計的仮説検定
どこから違いがあると言えるの?

1 はじめに

2 本当のことは誰にもわからない

●4つのタイプの人たち

●ランダム化研究

3 統計的仮説検定の原理

●背理法

●統計的仮説検定と背理法

4 統計的仮説検定の方法

●たまたまの可能性を考える

●シミュレーション

●p値

●有意水準

●補足

5 検定すればOKではない

●人数によって変わるp値

●統計的仮説検定をする意義

6 「磁石」には痛み緩和の効果なし?

5章 信頼区間
その効果の指標,どれだけ信頼できるの?

1 はじめに

2 統計的仮説検定の復習

3 信頼区間って何?

●『有意差なし』となる仮説

●反対側も考える

●95%信頼区間

4 信頼区間で何がわかる?

●信頼区間と統計的仮説検定

●信頼区間と推定の精度

5 p値と信頼区間のおかしな説明

6章 研究に必要なサンプルサイズ
何人集めて研究すればいいの?

1 はじめに

2 医学的に意味のある差vs.有意差

●差はなくても有意差あり

●差はあっても有意差なし

●問題は「研究に参加する人数」

3 第一種の過誤と第二種の過誤

●第一種の過誤

●第二種の過誤

4 サンプルサイズ設計の原理

●人数によって変わる第二種の過誤

●サンプルサイズ設計の考え方

●サンプルサイズ設計の手順

5 何人の赤ちゃんが必要?

7章 平均値の比較
平均値を計算すればいいってもんじゃない

1 はじめに

2 平均値と中央値

●平均値と中央値の計算

●分布の偏り

3 ばらつきの指標

●標準偏差

●パーセント点

4 平均値の比較

●平均値の差に意味がある?

●サンプルサイズ設計

5 数学力テストの問題

8章 観察研究デザイン
どうやってデータを集めたかが大事

1 はじめに

2 観察研究とは?

●介入研究と観察研究

●観察研究での因果関係の評価

3 横断研究と縦断研究

●簡単で時間のかからない調査

●病気であることと病気になること

●横断研究と縦断研究

4 前向き研究と後ろ向き研究

●コホート研究

●ケース・コントロール研究

●ヒストリカルコホート研究

5 「タバコを吸うと肺がんになる」は大ウソ?

9章 『オッズ比』という指標
リスク差やリスク比じゃダメなの?

1 はじめに

2 コホート研究vs.ケース・コントロール研究

●コホート研究の短所

●ケース・コントロール研究の短所

3 コホート研究におけるオッズ比

●オッズ比の計算

●オッズ比の解釈

4 ケース・コントロール研究におけるオッズ比

●オッズ比の計算

●オッズ比の意義

5 ブラジャーを着用すると乳がんに罹りやすい?

10章 交絡の問題
だから観察研究では因果関係が調べられない

1 はじめに

2 交絡とは?

3 交絡要因であるための条件

●ある要因が交絡要因であるための条件

●中間変数

●交絡要因のまとめ

4 交絡要因の特定

●効果がある?ない?

●交絡要因を特定するための統計的仮説検定

●交絡要因を特定するために......

5 妊娠中は喫煙した方がいい?

11章 相関関係と回帰分析
相関関係があれば因果関係があるわけではない

1 はじめに

2 相関関係

●日常生活の中での相関関係

●統計学の中での相関関係

●相関関係と因果関係

3 相関係数

●相関係数の値

●相関係数を計算すればOKではない

●相関係数の統計的仮説検定

4 回帰分析

●2つの変数間の関係

●回帰分析すればOKではない

5 ワープロ使う人ほどゲームしない?

12章 回帰分析による交絡の調整
これで観察研究でも因果関係が調べられる!?

1 はじめに

2 リスクのための回帰モデル

●リスク差の回帰モデル

●リスク比の回帰モデル

●オッズ比の回帰モデル

●ケース・コントロール研究でのロジスティック回帰モデル

3 交絡の調整

●交絡を調整するための回帰モデル

●一般化

4 回帰分析すればOKではない

●効果の指標の修飾

●観察研究の限界

5 ダミー変数

●喫煙「本数」を考える

●ダミー変数の使用

6 目覚めの一服,31分は我慢!?

13章 スクリーニング検査の評価
病気の診断について考えてみよう

1 はじめに

2 スクリーニング検査の評価指標

●正診率(一致度)

●感度と特異度

●偽陰性と偽陽性

3 私たちが知りたいこと

●陽性的中度

●陽性的中度の推定

●陰性的中度

4 ROC曲線

●ROC曲線によるスクリーニング検査の評価

●カットオフ値の推定

5 精神疾患は血液で判定できるか?

14章 生存時間データの解析
『率』で評価するのは難しい

1 はじめに

2 生存時間解析とは?

●『生存』に限らず......

●打ち切り

3 生存時間データの評価

●これまでに登場した評価指標

●生存曲線

4 生存曲線の特徴

●ランダムな打ち切りとランダムでない打ち切り

●推定精度

●生存期間中央値

5 冬虫夏草は肝細胞がんに効果的か?

15章 『ハザード比』という指標
でもやっぱり『率』で評価したい

1 はじめに

2 生存曲線の比較

●生存期間中央値の比較

●log-rank検定

3 生存時間解析におけるハザード比

●『比例ハザード性』という条件

●比例ハザードモデル

4 比例ハザードモデルによる交絡の調整

●ユーイング肉腫の例での解析の問題

●交絡を調整するための比例ハザードモデル

●ユーイング肉腫の例への適用

5 コーヒーは天使か悪魔か

16章 治療不遵守の問題
治療『方針』の効果を調べる

1 はじめに

2 治療不遵守とは?

3 解析対象集団

●Per Protocol Set

●Intention-to-Treat

●治療『方針』の効果

●ITTvs.PPS

4 臨床試験の『質』

●ランダム化研究であっても......

●プロトコールの重要性

●研究の質を評価する

5 薬を飲まなくても......


あとがき

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書籍情報

  • ISBN:9784883788897
  • ページ数:308頁
  • 書籍発行日:2015年3月
  • 電子版発売日:2015年10月9日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:2

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