特集編集にあたって

成人領域の重症患者管理では，さまざまなエビデンスやガイドラインが作成され，治療やケアの標準化が進められつつあります．しかし，小児の集中治療領域は，限られた施設で管理されている現状や，適応できるガイドラインが少ないことから，成長・発達段階に応じて解剖・生理学的な根拠や経験を手がかりに日々の看護実践を行っている現状にあるといえます．集中治療を必要とする小児へのケアは，安全にかつ合併症なく経過すればそれでよいというわけではありません．ケアにおいては，小児へのストレスを最小限にしながら治療効果を最大限に引き出し，安楽にかつ早期にその小児らしい生活に戻ることを目指す必要があります．また，小児は，成長・発達段階における課題も多く，今後の小児の成長・発達や家族関係に及ぼす影響にも考慮した看護が必要で，同じ病態を生じた小児であっても月齢や年齢が異なれば行われるケアも異なり，全身状態や年齢，経過や治療に対する反応によって，具体的なケアの方法は個別なものとなります．

集中治療を受けている小児への看護は，年齢や病態，置かれている状況や，エビデンスの意味することを理解しながら治療や生理学的根拠に基づいて適切に判断し，全身状態の評価，今後の予測，家族への影響など小児にとりまくすべての影響をアセスメントして実践することが必要です．

本特集は，集中治療室で受ける小児をケアする看護師が理解しておきたい内容のポイントを，全国で活躍されている知識や経験の豊富な小児ケアの専門家にまとめていただきました．

全体の項目としてまず「集中治療を必要とする小児の特徴と看護」によって，重篤な小児の特徴や看護師の役割を再確認し，「小児患者のアセスメント」によって小児患者のアセスメントや集中治療で行われる治療や安全対策，早期離床，家族へのケアについて基本的な考え方を解説いただきました．また，管理が難しいとされる人工呼吸療法や先天性心疾患術後の看護を取りあげ，具体的にイメージできる内容で解説をいただきました．さらに，集中治療室で必須のモニタリング機器の小児における特徴や新しいトピックを含めた解説を加えた構成となっています．集中治療を受ける小児への看護のすべてを網羅しているわけではありませんが，臨床で迷ったりする場面のヒントになる項目が多分に含まれています．執筆者の皆さまには，多忙な現場で勤務する傍らで常に臨床での活用を意識して執筆いただき心より感謝いたします．

最後に，特集の内容が少しでも集中治療を必要とする小児への看護を行うための道しるべとなり，臨床現場の看護の質が少しでも向上する機会になれば幸いです．

聖路加国際大学 看護学研究科会
中田　諭