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臨牀消化器内科 2018 Vol.33 No.11 消化器病漢方治療―理論と実践
臨牀消化器内科編集委員会 (著者) / 日本メディカルセンター
商品情報
内容
【特集】消化器病漢方治療―理論と実践
・「証」と「症状」と「診断」いずれを優先するか?
・総論:消化器疾患―どのように処方するか (1) 東洋医学の消化器疾患治療法
・総論:消化器疾患―どのように処方するか (2) 西洋医学からみた漢方薬治療法
他
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序文
巻頭言
漢方に初めて出会ったのは40年ほど前,東京大学医学部附属病院での若手医師による勉強会であった.集まったメンバーは私より2~3年先輩の若手のドクターで,勉強会で行ったことは「傷寒論」の読み合わせであった.傷寒論の原文を読む会で,漢文で書かれた本を手分けして担当し勉強会当日に解説し,理解を進める会であった.その会に参加していた先生方は大変に勉強熱心で何人もの先生が今や漢方医学の指導者になられている.そのなかのお一人が今回の特集号の執筆者でもあり,日本東洋医学会会長の佐藤 弘先生である.私は数回出てみたものの途中で脱落してしまったが,それでも貴重な経験をさせていただいた.当時,北里大学東洋医学総合研究所の副所長であられた大塚恭男先生が来られて,私たちの受けもっている症例について診察を行い「証」を明らかにして処方まで指導してくださるという恩恵にあずかった.私の症例は,慢性膵炎と診断された腹痛を主訴とする女性であった.数カ所の医療機関を受診してもなかなか軽快しないということで東大病院を受診されたわけだが,私も早速,大塚先生の処方された漢方薬を用いて治療を開始した.2~3カ月治療したと記憶するが,その結果思わぬ効果が表れた.当初の目的である腹痛は漢方薬を服用しても変わらなかったが,なんと腹痛のほかに長年続いていた冷え症がなくなったのであった.冬でも布団から足を出して寝るという暑がりのような状態に変わったのである.ご本人も笑いながら暑がりの様子を語ったことが今でも鮮明である.この症例を通じて漢方の診断,すなわち「証」を探り,その診断に基づく治療の効果を見ることができたのである.漢方医学では西洋医学の診断と違い,胃潰瘍や逆流性食道炎など,画像診断や病理学的診断による病名ではなく,患者の表す症状・症候,すなわち「証」に基づき診断し,その「証」を重視して治療薬を決めるのである.その患者さんでは腹痛の治療は不十分だったが,もう一つの症状,冷え症が完治したことで大変に喜んでいらっしゃった.「証」を決めることの意味ははっきりと分かったわけではなかったが,それでも患者さんが悩んでいる症状の解決に役立つ治療が「証」を決定することによって得られたこと,しかもその見立てが全身に及ぶものであることがみえて漢方医学の特徴に触れた貴重な経験であった.
伝統的な漢方医学の実践においては西洋医学の診断とは異なる診察法と病態の分類があるが,漢方医学を理解するには,この「証」など独特な分類法と西洋医学による「診断」との関係性を明らかにする必要があるのではないかと思っている.虚証あるいは実証とは生理学的にはどういう状態かなどである.以前に比べると漢方を用いた医療は日常の診療においてもよく遭遇するようになった.消化器病領域においてはとくに機能性消化管障害が注目されており,治療には漢方薬が用いられ,その有用性が確認されている.研究分野ではいくつかの漢方薬について基礎研究がかなり進み,これまでに知られていなかった漢方薬の薬理作用が明らかになってきた.著者も関与している六君子湯とうの研究においては,六君子湯の血中グレリンの増加作用とその感受性の亢進作用を,多くの研究者が証明している.グレリンの生理作用である食欲増加作用や胃運動亢進作用が機能性消化管障害の治療に効果を生んでいることは明らかである.最近では動物実験において六君子湯が寿命に関わると思われているサーチュイン1遺伝子を活性化し,老化モデルのマウスの寿命が延長したことも報告されている.この作用にもグレリン増加が関与していることが示唆され,六君子湯が健康寿命を延ばす可能性を示唆している.
また,近年,悪性腫瘍に対する化学療法がよく行われるようになってきて,治療成績も向上しており,今後ますます化学療法が実施されるものと思われるが,化学療法の問題はその重篤な副作用にある.漢方薬はこれらの副作用を軽減できることが報告されている.漢方薬の新たな役割として,これら悪性治療に対する化学療法あるいは放射線療法,さらに外科手術後に対して治療が完遂されるように副作用を軽減,あるいは食欲を維持する悪性腫瘍に対する支持療法としての価値が注目されている.
本特集号においては,この漢方薬治療が西洋医学の医療現場において正しく理解されその持ち味が発揮できるように,最近進歩した科学的研究によって証明された理論を論じていただくこと,さらに実践の領域では日々の臨床に応用できるように東洋医学からみた治療法の適応と使用法,さらに西洋医学的な観点からの各疾患及び症候に対する処方法についての執筆をお願いした.本特集が,日常臨床における漢方医学の実践に役立つことを期待したい.
屋嘉比 康治
目次
巻頭言
1.「証」と「症状」と「診断」いずれを優先するか?
2.総論:消化器疾患―どのように処方するか
(1)東洋医学の消化器疾患治療法
(2)西洋医学からみた漢方薬治療法
3.理論:漢方薬作用機序の科学的解明
(1)六君子湯
(2)大建中湯
(3)半夏瀉心湯
(4)潤腸湯/麻子仁丸
4.実践:漢方薬治療の実際―このように治療する
(1)食欲不振―フレイルも含めて
(2)胃食道逆流症(GERD)や嚥下障害
(3)胃もたれ,機能性ディスペプシア
(4)便秘・下痢・過敏性腸症候群
(5)炎症性腸疾患
(6)外科領域における漢方治療
(7)がん化学療法副作用軽減と支持療法
Dr.平澤の上部消化管内視鏡教室―この症例にチャレンジしてください
特殊型胃癌
検査値の読み方
PBC‒AIHオーバーラップの1例
学会だより
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書籍情報
- ISBN:9784888755037
- ページ数:118頁
- 書籍発行日:2018年9月
- 電子版発売日:2019年2月15日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:2
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